『ポケモンGO』リモパス価格変更の真意は!? ディレクター&Niantic代表取締役にリアルイベント再開への想いを聞いてきた

2022-08-11 18:00 投稿

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ポケモンGO

6周年を迎えた『ポケモンGO』の未来を探る

2022年8月5日から7日の3日間に渡って『ポケモンGO』のリアルイベント“GO Fest2022 札幌”が開催された。

そこで、フリーライター・深津庵が現地でディレクターを務めるMichael SterankaとNianticの代表取締役社長である村井説人氏にコロナ禍が運営方針にどんな影響を与えたのか、さらに、お得感がなくなってしまったリモートレイドパス3個パックの価格変更に関する真意などを直接聞いてきた。

ちょっと長めのインタビューになるけど『campfire』に関する情報もあるので、ぜひ最後まで読んでもらいたい。

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志をかえず貫く決断をした2年半

――コロナ禍をきっかけにリアルイベントが軒並み中止。“ともに歩いて冒険する”を社是にするNianticにとってはとくに困難な状況が続いていると思います。そのあいだ、チームとしてどういった方針のもと運営・開発に挑んできたのでしょうか?

Michael Steranka(以下、マイケル)この2年半は我々にとっても困難な事態であり、そうした中でも楽しんでもらえる仕組みを模索する時期でした。『ポケモンGO』は世界中で遊ばれているゲームです。各国の状況や属性を分析しながら調整を進めていく中で大切になるのは、この2年半で“何が起こっていたのか、何をユーザーに届けるべきなのか”という課題です。世界が完璧にもと通り、ということは難しいだろうと考えたとき、『ポケモンGO』は新しい世界に合わせていく必要があります。そのひとつの例が先日実装した“おさんぽおこう”でもあるわけです。

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▲毎日1回15分、歩くことでつぎつぎとポケモンが出現。レアのポケモンを捕獲できるチャンスもあるのが最新アイテム“おさんぽおこう”だ。

村井説人(以下、村井)コロナ禍になった2年半前、Nianticはさまざまな議論を重ねました。マイケルはその中心に立った人物です。我々の社是、ミッションである“Adventures on Foot”否応なく世界中で困難な状況になってしまいました。解決するのが1年後か何年も先になるのか見当もつかない。しかし、どれだけ時間がかかってもいつかはみんなが外に出るときがくると信じ、あえてミッションを変えず進んできました。

――『ピクミン ブルーム』はまさにこの時代にマッチしている。ミッションを貫いた成果のひとつというわけですね。

村井 その通りですね。当時の意思決定があったからこそ、Nianticがこうして存続できているのだと感じています。少しずつでも世界がもと通りになってきたとき、我々のアプリケーションを通じて外に出るきっかけや、再びコミュニケーションを取るきっかけを作ってもらえたらという想いを抱いたのが約3年前。そのあいだに築いてきた我々のプロダクトを出せるときがようやく来たなと実感しています。

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▲スマホの画面を見ることなく歩いているだけで基本的な遊びが叶う『ピクミン ブルーム』は日常に寄り添うカジュアルなアプリだ。

沖縄イベントのきっかけは『Ingress』

――今年の5月には沖縄でもリアルイベントが開催されました。今回の札幌を含め、再びユーザーを外に導く試みはとてもハードルの高いものだったと思います。

マイケル 開催するにあたり我々が第1に考えたのは、トレーナーのみなさんが不安に感じるようなイベントにはしたくないということでした。日々変化する状況の中でどこに的を絞るのか。とても難しい面もありますが、人々の中にある“外に出たい”“交流をしたい”といった想いを叶えるきっかけ、わずかでも心を癒やす体験を提供できればと想い描いてきました。

村井 2020年2月、沖縄県那覇市で開催予定だった『Ingress』の大型イベント“ペルペトゥア・ヘキサスロン那覇”“ラック・ザ・ボックス那覇”がコロナ禍によって中止されました。過去にも沖縄では『Ingress』のイベント(アノマリー)を開催するなど、我々にとってもたくさんの思い入れのある場所です。そんな沖縄が観光面で困難な状況になってる。そこで、本来なら2年前に開催する予定だったリアルイベントを今回は規模を小さくして『ポケモンGO』で実施しようという決断に至りました。コロナ禍でどうやってイベントを開催するべきなのか、当時の経験がこの札幌に活かされていると思っています。

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▲『Ingress』はふたつの陣営が陣取りだけでなく、世界を旅するナビにもなる位置情報ゲーム。沖縄にはとても深い縁があるのだ。ぜひ、あの日実現しなかったイベントの再始動も検討してもらいたい。

――今年でポケモンGOは6周年を迎えました。いまだから話せるリリース当時の不安や手応えなどをぜひ。

マイケル 私は『ポケモンGO』のローンチ直後の入社だったので、ここはぜひ説人(村井)の話を聞いてみたいね!

村井 世界とくらべて日本でのローンチが後発になったのはみなさんご存知の通りです。このズレ込んだスケジュールに関して当時いちばん大変だったのが、世界中でも日本だけだったマクドナルドさんとのパートナーシップについてです。本来ターゲットした日が変更するなんてことはないのですが、我々としてはシステムがちゃんとしていないとローンチはできない。その調整に追われていく中で、マクドナルドさんと何度も話し合いをしたのがとても印象的ですね。

――マクドナルドとのパートナーシップはとても大きな反響がありましたよね。レイドバトルをするため集まったトレーナーの数を見て本作の話題性を再確認したのをよく覚えています。

村井 みなさんの反響は想定を超えるものでとてもうれしかったですね。その話題性からたくさんの取材を受け、メディアに露出していくわけですが、1週間もするとみなさん冷静になっていくわけです。ただ楽しいというファーストインプレッションから一転、プレイヤーから届くさまざな意見に対応していく経験はとても大きな学びになりました。また、京都府ならびに岩手県・福島県・宮城県・熊本県といった被災地のみなさんと取り組んできたことと中島公園(札幌)でやっていることの想いは同じなんです。

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▲「『ポケモンGO』だけでなく開催地を楽しんでくれること、盛り上がっていくことこそがNianticにとってうれしいことです」と村井氏。

――マイケルはその中心に立っているというわけですね

村井 その通りです、じつはコミュニティ・ディもマイケルのアイディアなんです。

マイケル ローンチされた当初、1ユーザーとして感じていた“これがあればもっと楽しいのに”という想いを実現できたのがコミュニティ・ディです。まだまだ実現できていないアイディアがたくさんありますし、『ポケモンGO』はこの先も続いていくので、ぜひ楽しみにしていてほしいですね。

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▲じつはマイケル、日本語がとても上手。というのも彼はもともと日本で生活していた時期があり、むしろちょっとずつ下手になっているとか。マイケルとのインタビューはいつも和やかで居心地がいい。

外に出るきっかけを大切にするための変更

――リモートレイドパスは今後どういった扱いになっていくのでしょうか?

マイケル まず、リモートレイドパスはなくなりません。ただし、人々との交流や発見といった点はNianticにとってとても大切にしている要素です。どうすれば人々がジムまで足を運んでレイドを楽しんでくれるのか。社内でもこのリモートレイドパスをどう扱っていくのか話し合いを続けているところです。ユーザーのみなさんにはぜひ、今後実装する新しい機能も楽しんでもらえるとうれしいですね。

――リモートレイドパス3個パックの価格が実質定価(250から300)に変更されお得感がなくなってしまいました。また、事前告知もなく突然だったこともありユーザーを困惑させる結果になっていますが、どういった趣旨で価格が変わったのでしょうか?

マイケル パスのひとつにプレミアムレイドパスというものがあります。また、さきほどお話した通り我々としては外に出るための検討もしてもらいたい。しかし、お買い得である限りそちらを利用してしまうだろうという考えから価格の見直しを行ったわけです。もちろんこれは我々にとって難しい判断でしたし、ユーザーのみなさんが喜ぶ仕様変更ではなかったことは十分理解しています。それでも“Adventures on Foot”というミッションを明確に打ち出すことはできたと思っています。

村井 リモートレイドパスはとても人気のあるアイテムです。経営面から考えればこのままの価格で販売し続けるのがふつうですし、さらに大きくプロモーションを打ち出していけばいいでしょう。しかし、我々はミッションを変えないという決断をしました。みなさんにとっては残念なお知らせになったと思いますが、マイケルが言う通り、外に出てほしいという想いは変わらない。とはいってもニューノーマルな時代なのでハイブリッドなカタチを作っていく必要もある。それこそが価格を修正した大きなポイントになっています。

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▲プレミアムレイドパスとリモートレイドパスの価格を同じにすることで、プレイスタイルをユーザーに委ねる。雨の日はリモパ、晴れの日は気分転換にプレパ。そんな感じで使い分けるのもいいなとふたりの話から感じ取ることができた。

――“おさんぽおこう”の適応タイミングがユーザーごとに違った理由は?

マイケル 仕様変更は世界中のユーザーに関することなので、つねに少しずつリリースすることを心がけています。これは“おさんぽおこう”や『ポケモンGO』に限りません。大きなバグがないかテストを重ね、最終的にすべてのユーザーに届けていくわけです。先行したユーザーに何か特別な対応をしているとかは一切なく、完璧にランダムで提供していまして、ちなみに私の友だちからは「おさんぽおこうはいつなんだ」と怒られました。

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▲ローンチ当時少しプレイするもやめてしまった友人が『ポケモンGO』を再開。遊びの幅が格段に増えて楽しいというメッセージがうれしかったとマイケル。

『campfire』は全タイトルをつなぐコミュニティ

――コミュニケーションアプリ『campfire』がポケモンGOユーザーにどんなメリットを与えるのでしょうか。

村井 我々が提供しているアプリはいずれも多言語に対応し、さまざまなカルチャーに合わせたマーケティングを続けてきました。ではなぜ、『Ingress』や『ポケモンGO』、『ピクミン ブルーム』を世界中に届けたいのか。それは地球上すべての人に使っていただきたいと思っているからなんです。たとえば、『ポケモンGO』が10億ダウンロードされましたといってもNianticからすれば“たった10億”なんです。なぜならば、この地球上には70億人以上いるわけで、それを前提にするとまだまだということになる。世界中にあるすばらしい文化、歴史などをひとりでも多くに感じてほしい。家に閉じこもっていては体験できないものに触れてほしいわけです。

――その垣根をなくしたものが『campfire』だと。

村井 その通りです。たとえば、『ポケモンGO』をだけを楽しんでいる人の父親が『Ingress』のエージェントかもしれないし、母親は『ピクミン ブルーム』で散歩をしている可能性もある。しかし、それぞれがプロダクトで分断されているとNianticが考えるコミュニケーションの起点にはならない。どのアプリを利用するかはみなさんに選んでいただき、個々の体験や成果を横断的に共有できるのが『campfire』なんです。

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▲フレンドと共有するNianticプロフィールと紐づく『campfire』を通じ、“今日はあそこで陣取りをしたんだね”とか“こんなポケモンを捕まえたんだ”と体験を共有できるようだ。そうした会話が異なるタイトルに興味を持つきっかけになればうれしいと村井氏。

――特定のゲームでユーザーが凝り固まる世界を作りたいわけではないと。

村井 ゲームにはライフサイクルがありますよね。人気が維持できるのは数年ですが、我々はそれにとらわれず使い続けてもらえる万歩計のような存在を目指しています。そこで大切になってくるのが多くの人とつながっていくことです。その輪を広げ体験を共有するためのアプリが必要になるわけです。

――『Ingress』や『ポケモンGO』、『ピクミン ブルーム』をプレイするユーザーが立ち上げたコミュニティが『campfire』を介してすべて可視化されるのでしょうか?

村井 オープンにしている場合はそうなりますが、基本はフレンド同士になります。まったく知らない人とつながるといったことはないですし、フレンドになっていたとしてもコミュニティに参加できるかは選択できるので安心してください。

 

世間はいま、コロナ禍にどう向き合っていくのか大きな分岐点に立たされている。

さまざまな意見があるなかで従来通りの文化を取り戻せることもあればそれが叶わない現実もあるだろう。

多くの位置情報ゲームを運営するNianticにはとても困難な時代になっているが、“Adventures on Foot”というミッション、従来の方針をかえずハイブリッドな運営に挑む決断をした。

もちろん、後手に回るアナウンスや改善のみられない不具合などユーザーにとっては安心してばかりはいられない状況だが、今後もそれにめげずNianticと向き合っていくつもりだ。

さぁて、つぎはどんなインタビューをしようか、いまからいろいろ楽しみだ。

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▲ふたりが並んでのインタビューはとてもめずらしい。今回は札幌イベントの真っ只中で忙しかったので次回はゆっくりアレコレ探ってみたいところだ。

P.N.深津庵
※深津庵のTwitterはこちら

▼『Niantic Campfire』のダウンロードはこちら

ポケモンGO

対応機種iOS/Android
価格無料(アプリ内課金あり)
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ジャンルその他
メーカーナイアンティック
公式サイトhttp://www.pokemongo.jp/
公式Twitterhttps://twitter.com/PokemonGOAppJP
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