終焉を迎えるストーリーと新たなチャレンジ。『Arcaea(アーケア)』のディレクターが明かす本作に込められた想い

2022-07-07 13:00 投稿

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Arcaea

ストーリー完結編の配信がスタート

全世界で800万以上のダウンロードを突破したモバイル向けリズムゲーム『Arcaea(アーケア)』。その第5弾となるメジャーアップデートが2022年7月7日に実施。

5年に渡って展開してきたストーリーの完結編“Final Verdict”では、4つ以上の楽曲と新しいコースモードも追加された。

そこで本記事では『Arcaea』のディレクターであり、イギリスと日本の共同スタジオ“lowiro”のスタジオディレクターを務めるアントン・プリダトコ氏に、ストーリー完結編に当たる第5弾のメジャーアップデートにかける想いと今後の展開など、気になるポイントをフリーライター・深津庵が聞いてきたぞ。

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ストーリーと音楽を併せ持つ世界

――まず最初に『Arcaea』とはどういったコンセプトのリズムゲームか、これから始めるプレイヤーに向けてぜひお願いします。

アントン・プリダトコ(以下、アントン) 本作をひと言で紹介すると、リズムに合わせてタップ、スライド、ホールドなどの操作をタッチスクリーンで行うアーケードスタイルのリズムゲームです。ですが、ゲームを進めていくにつれて、プレイヤーは未知の世界に迷い込んだ複数のキャラクターを描く緻密に編まれたストーリーを発見したり、隠された魅力的な楽曲を解禁。それらストーリーと楽曲が織りなす世界観を楽しんでいただける内容になっています。

――プロアマ問わず数多くのアーティストが楽曲を提供している点も魅力ですよね。

アントン はい、本作では同人の個人アーティストからプロの作曲家まで、100人を超える作曲家の皆さまに手掛けていただいた個性豊かで思い出深い名曲の数々を揃えています。たとえば、活動初期からご協力いただいているLaurさん、スウェーデンで有名なアニソン作曲家のRasmus Faberさん、韓国の作曲家であるM2Uさん。そして今回のアップデートではTeddyLoidさんからも楽曲を提供いただいています。

――上段と下段、ふたつのラインが印象的です。どういった着想から生まれたのでしょうか?

アントン 『Arcaea』のリリースは5年前になりますが、当時のモバイル向け音楽ゲームは2Dやトップダウン型が多く、フラットビューなど全体的にシンプルな仕様になっていた印象でした。また、そのころは3D技術を駆使したモバイルゲームが登場し始めた時期でもあり、私自身も3Dの可能性を広げられるような、より没入感のある柔軟なゲームプレイが作り出せたらと考えていました。そこから“3D空間でタッチスクリーンをフル活用するにはどうしたらいいか”とアイデアが生まれ、それを突き詰めていった結果、アークノート(上下段を流れるノート)ができあがったというわけです。

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楽曲を作るうえで心がけたふたつのポイント

――楽曲でとくに意識した点は?

アントン 『Arcaea』には“よりよいゲーム体験”“質のいいストーリー”、ふたつの大きな柱があると考えています。開発する際はそうした点を強く意識してきました。実際、本作のために制作された楽曲の多くはその延長線上にあり、“どういったストーリーを持っているのか”“キャラクターがどう関わってくるのか”といったテーマ性を意識したアーティストへの依頼と監修をしてきます。その結果として、ボーカルの有無やテンポやリズムの感覚。全体的な楽曲のフィーリングからジャケットに描かれる要素まで、楽曲として可能な限り多くの部分で統一性を持たせることができたと思います。

――今回発表されたメジャーアップデートはどういったテーマになるのでしょうか。

アントン 今回リリースされるのは2年前のアップデートで登場したメインストーリーパック“Black Fate”の続編です。本作のメインストーリーはふたりの少女、“光”“対立”がそれぞれ記憶のないままこの世界で目覚め壊れた世界の意味を知っていく、そんな旅にまつわるストーリーです。そして、第5弾のストーリーパック“Final Verdict”では、これまで5年に渡って展開してきた旅路がついに完結を迎えます。これは個人的にもプレイヤーのみなさまが文字通り打ち震えるような、そんな内容に仕上がったと手応えを感じています。

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――追加パックも単なる楽曲の詰め合わせということではなく、ストーリーを動かす役割も担っていましたよね。

アントン その通りです。とくにメインストーリーパックは洗練された内容ばかりでした。楽曲の解禁によって紐解かれるストーリー、リズムゲームらしい挑戦的な隠し要素など、さまざまな体験が深く絡み合う演出や仕掛けを詰め込んできました。みなさまには楽曲パックが売上のための曲の詰め合わせなどではなく、コミュニティに向けた1種のイベントとして捉えていただけるとうれしいです。ぜひこの新たなストーリーに飛び込んでもらって“とある旅路の終わり”“そこで待ち構えるもの”、のすべてを味わってもらいたいですね。

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支持されているあいだは運営を続ける

――最終アップデートと伺っていたのですが、今後はどうなっていくのでしょうか?

アントン 今回のアップデートで本作のメインストーリーは完結します。ですが、この5年を超える道のりで登場した数々のキャラクターにはまだ語られるべきストーリーが残されています。私たちとしても楽曲や新たなコラボレーションを通して、これからも本作を更新し続けるつもりです。そのうえでモバイルゲームというジャンルの可能性と限界を広げていく、そんな展開を今後は模索していきたいですね。

――まだまだ『Arcaea』の世界を楽しめるってわけですね。

アントン 私たちの力が及ぶ限り、そしてプレイヤーの皆さまに『Arcaea』というゲームとそのキャラクターたちを楽しみにしていただけるあいだは、無期限で運営を継続できればと思っています。

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いまだから話せる開発の思い出

――2017年のローンチから現在まで、『Arcaea』に対してユーザーからどのような反応があったのでしょうか。

アントン 本作は当初、小さいインディーズゲームとしてリリースされたこともあり、ほぼ話題になることはありませんでした。その後、私と数人のスタッフで数ヵ月かけて最初のメインストーリーパック“Vicious Labyrinth”をアップデート。これが多くの人々に本作をプレイしてもらう大きなきっかけでした。隠しボス曲である“Grievous Lady”は多くのプレイヤーに支持される1曲として現在でも多くの反響をいただけているのはうれしいことですね。そこからの小さな積み重ねがいまの『Arcaea』につながり、1歩ずつみなさんと紡いできた大きな節目が今回の完結編なのです。

――とくに印象深かった反応は?

アントン 数え切れないほどありますが、その多くはモチベーションを高めるものばかりでした。弊社のアカウントにひと言“すき”というリプライを送ってくれるなどのリアクションがあって、私たちは今日まで頑張って来れたと思います。

――いまだから話せる苦労話があれば教えてください。

アントン プログラミングやデバッグ、または難易度調整というイメージがあるかもしれませんが、私たちにとって大変だったのは、高まり続けるみなさまの期待に応えるためにチームを成長させることと、過去の内容を凌駕するようなアップデートを今日まで重ね続けることでした。たったひとりで始めたプロジェクトから世界中に10人以上のスタッフを抱えるまでになったことは、『Arcaea』と“lowiro”にとって非常にうれしくもあり大変な挑戦でもありました。みなさまからの反響に応えるため、同じ志を持つ仲間を見つけることはゲーム企業にとって本当に難しいことだと思います。

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国内ユーザーが多い理由とSwitch版の反響

――日本のユーザーが多い理由はどこにあると思いますか?

アントン 最大の理由としては、本作が日本のゲームセンターにあるような音楽ゲームシーンから強い影響を受けて作られているからだと思います。具体的には、定期的なアップデートのほかにコラボレーション企画。そしてキャラクター重視の設計などでしょう。もちろんこれを語るうえで、日本で活躍されているイラストレーター、シエラさんに手掛けていただいたうつくしいキービジュアル。キャラクターや世界観の初期デザインの存在は無視できません。シエラさんを含む世界各地、大勢のイラストレーターさまからの密接な協力のおかげで今日があると言えます。そんな日本の音ゲーファンの皆さまになじみあるゲーム体験を提供することを目標に始動した『Arcaea』が、スマートフォンやタブレットを通して世界中に広がっていったのだと思います。

――昨年、Nintendo Switch版が配信されましたよね

アントン Nintendo Switch版については、全コンテンツを1度に購入できること。全楽曲に対応した新しいコントローラモードでポータブルプレイできるといった点で大きな反響をいただきました。また、私たちにとっても長年にわたってアップデートされるモバイルゲーム開発の中で、今回のフルパッケージ版と向き合った体験はチームとして大きな学びの機会となりました。Nintendo Switch版にはモバイルゲームと異なるゲーム体験を求める熱心なプレイヤーがたくさんいらっしゃいますので、それらに応えるためのサポートを引き続きしていきたいと考えています。

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――最後に、日本のユーザーに向けてコメントをお願いします。

アントン まずはすでに『Arcaea』をプレイしてくださっているプレイヤーのみなさまへ。何年にも渡るご愛顧と応援、本当にありがとうございます。これが私たちにとってどれほど大きなことか、言葉では表しきれません。この場を借りて改めて、大きな感謝を伝えさせてください。そして今回、『Arcaea』を初めて知ったあなたへ。まずはぜひ1度軽い気持ちでプレイしてみてほしいですね。ただのスマホ向けの音ゲーではないことを私たちがお約束します。それと、終章“Final Verdict”のストーリーに乗り出すあなたは……どうか、覚悟を決めてください。そしてどうか……希望を手放さないでください!!



今回のメジャーアップデートが最後ではなく、いったんの終わりであり新たな始まりに向けた大きな1歩になるようだ。

5年続いたリズムゲームをいまさらと感じる読者もいると思うが、新章が動き出すまでのあいだにじっくり壮大なストーリーと数々の楽曲に触れ、『Arcaea』の世界を味わってみるのもいいだろう。

今後どういった展開があるのか、まずは終章で描かれるストーリーと楽曲に注目していきたい。

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P.N.深津庵
※深津庵のTwitterはこちら

Arcaea

対応機種iOS/Android
価格無料(アプリ内課金あり)
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ジャンル音楽
メーカーlowiro
公式サイトhttps://arcaea.lowiro.com/ja
公式Twitterhttps://twitter.com/arcaea_jp
配信日配信中
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