【新作】南極で飛行機が墜落!! 過去の記憶と向き合い生還を目指すアドベンチャー『South of the Circle』

南極条約の裏でうごめく奇妙な物語

1964年、英ケンブリッジ大学に所属する研究者ピーターの搭乗する飛行機が南極大陸で墜落。

負傷して動けない操縦者を残し、はるか遠くで点灯するイギリス所有の基地を目指して猛吹雪の中を歩き始めるのだが……。

本記事で紹介する『South of the Circle』は、救助を求め基地を目指すピーターが過去と向き合い、目の前で起きている奇妙な事態に翻弄されていくナラティブ・アドベンチャーゲーム。

南極の地を平和かつ科学的な調査するため1959年に定められた南極条例を題材に、国家間の対立を独自の目線で描くミステリアスなストーリーに注目だ。

救助を求め吹雪の中をさまよう孤独な旅

大荒れの南極でセスナ機が墜落、パイロットはコクピットに足を挟まれ身動きが取れず。

同乗していた英ケンブリッジ大学所属の研究者ピーターは救助を求め、かすかに見える赤い光りの先にある基地に向かって歩き出す。

置き去りにしたパイロットは死亡フラグ全快。

地図もなく極寒の地に飛び出すプロローグは絶望的だが掴みはバッチリだ。

ピーターの行動や発言はシーンごとに出現する“シンボル”によって変化する。

困惑や心配（赤丸）、強い意志（白丸）や好意的な感情（太陽）など、感情を示すシンボルの中から任意のものを選択。

該当するアンサーがなければ放置するなど、制限時間に迫られる中での意思表示はとてもおもしろい。

命からがらたどり着いたイギリスの基地はものけのから。

そんなはずはないと戸惑うピーターは、そこで発見した雪上車と地図を頼りにノルウェーやソビエトの基地を目指して進んでいく。

誰もいな各国の基地、何かのトラブルを連想させる数々の奇妙な手紙や資料。墜落したという自身の境遇なんて忘れてしまうミステリアスな展開にどんどん引き込まれていくのだ。

条約をめぐる国家間の争いと男の回想録

南極の平和的利用と科学的調査を目的として1959年に定められた南極条約。

簡単に言えば、特定の国家が独占することで発生しかねない紛争を未然に防ぐための条約だが、国家間の壁はそう容易くフラットにはなりえない。

対立関係にある国家が所有する基地を訪れるピーターの言動からはそうした側面が数多く感じられる。

そんな本作もう1つの見どころが遭難する以前、時折フラッシュバックする英ケンブリッジ大学で研究者として過ごしていたピーターの日常だ。

研究者として行き詰まるピーターは講師を務める1人の女性と出会う。

スコットランドの首都エディンバラから遠路イギリスを訪れていた彼女に心を惹かれていくのだ。

しかし、他国からのスパイ問題が大学内で浮上。5人目は誰なのか、十分警戒するようピーターは忠告を受ける。

核兵器から世界を救おうと行動を起こす人々との出会い、その人物との接点を持つ彼女。

それら過去の記憶が無人の基地にどう関係してくるのか、最悪の予想が的中するのか気になっていくのだ。

1908年にイギリスが南極地域の1部に対して領有権を主張。それをきっかけにオーストラリアやニュージーランド、ノルウェーなども自国の領有権を主張し始め、紛争の火種が生まれた過去が実際にある。

本作がどこまで史実になぞれれていくのか。

各国の基地から人々が消えてしまった真相など、少しでも興味を持てたのならぜひプレイしてもらいたい。

P.N.深津庵
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