犬神&鎌鼬に一本だたら!妖怪談義3本立て【しゃれこうべが語る元ネタの世界 第39回】

2020-07-15 12:00 投稿

某ウォッチは触ったことがないけども

『ゴースト・オブ・ツシマ』発売直前!!

早く遊びてェ~~!!!

ってことで早々本編突入ですよ、“元ネタの世界”!

今回は犬神鎌鼬(かまいたち)、一本だたらの日本に伝わる妖怪3体をご紹介!

鎌鼬はともかく、犬神と一本だたらがどこまでゲームやらで登場してるかは怪しいところですが、気にせずいってみまっしょい!

【目次】
・犬神
・鎌鼬
・一本だたら
・一本だたらに近くて遠い猪笹王
・次回は……?

犬神

まず取り上げますは、犬神!

20200714_犬神鎌鼬一本だたら (2)

名前を見てもわかる通り犬の霊である犬神でございますが、こちらは人に取り憑くタイプの妖怪です。

犬神に取り憑かれた人間は四つん這いで歩いたり、高い熱にうなされて寝込んだり、といった症状が出ると言われています。

徳島県のあたりでは、犬神に憑かれた人間は驚くほどの大食いになり、死ぬと身体に犬の歯形のような跡が残るとの伝えられているとか何とか!

犬神による症状は医者では対処のしようがなく、祈祷師などに犬神を落としてもらうよりほかにはないそうな。

20200714_犬神鎌鼬一本だたら (3)

犬神の正体はネズミのような小動物であるとも、白黒のまだら模様を持つイタチのような動物、あるいは赤と黒のまだら模様を持つ手のひらサイズの犬、などなど諸説ありますが、いずれも(犬神という名前のわりには)小さなものとして伝えられているようです。

この犬神、特徴的なのはおもに人工的に生み出される妖怪である、というところ。

※この先グロテスクな内容なのでご注意ください。

その方法は犬の頭だけを出して地中に埋め、ギリギリ食べられない位置に餌を置き、犬が餓死しそうになるまで放置。そして餓死寸前の犬の首を切り落とすというもの。

このほかにも、壺のなかで毒虫を戦わせて生き残った虫に強い毒を宿らせる蟲毒(こどく)に近い方法で、獰猛な犬同士を戦わせ、生き残った犬に褒美の餌を食べさせる直前に首を切り落とす、といった方法もあるそうな……。

20200714_犬神鎌鼬一本だたら (4)

こうして生まれた犬神を人に取り憑かせることで、先ほど書いたような症状を起こさせることができるのですが、一方で犬神を使役する側の家系は“犬神憑き”、あるいは“犬神筋”と呼ばれます。

こういった動物の霊を使役する家系、いわゆる“憑きもの筋”は伝奇ものとかではけっこう定番、なような……?

さておき、愛媛県では犬神筋の家には家族の人数と同じ数だけ犬神がいるとされ、犬神筋の娘が嫁ぐと、嫁ぎ先の家族の人数ぶんだけ犬神が増えていくと伝えられています! また、犬神は犬神筋の者にだけ見え、一般人の目には映らない、ともいいます。

犬神の由来を伝える話はいくつか存在し、そのひとつには和製キメラこと(ぬえ)が関わっているものもあります。

20200714_犬神鎌鼬一本だたら (6)

猿の頭に狸の胴体、手足は虎で尻尾は蛇、と伝えられる鵺ですが、源頼政によって退治された際に身体が4つに分かれ、そのうちのひとつが犬神となった、というのです。

「鵺に犬要素ないやんけ!」という感じがしますが、別の説だと犬の頭、猿の胴体に蛇の尻尾を持つ獣が退治されて犬神になった、とも言われており、それが鵺の伝承と混ざったのかもしれないですね~!

そのほかにも、弘法大師こと空海がとある村で暴れているイノシシを犬の絵が描かれた札に封印したところ、その札から犬が飛び出して犬神となった、といった説もあります。

なお、犬神を用いた呪法は室町時代まで使用されていたと伝えられています。

憑きもの筋は動物霊を使役して他人の財産を奪って栄える反面、次第に動物霊が増えて捧げものの要求が増え、最後は食いつぶされてしまうというパターンが多いようなので、わりと自然に消滅した、のかもしれないですね~。

鎌鼬

今回扱うなかでは知名度がいちばん高いであろう、鎌鼬! 最近はかまいたち、と崩す表記のほうが多いかもしれません。

20200714_犬神鎌鼬一本だたら (1)

旋風に乗って現れ、人の身体を切りつけていく妖怪と伝えられており、鎌鼬が作る傷は大小さまざま、場合によっては傷が骨にまで達することもあったそうな。

鎌鼬が作る傷は、できた瞬間には痛みもなく出血もないが、後から激痛と大出血がある、という奇妙な特徴があります。

科学的には旋風が生み出す真空による裂傷、と説明されることもありますが、一方で鎌鼬の作る傷は大きさのわりに治りが早いという特徴もあり、その点も含めるとまだ厳密には説明がつかないのだとか。

20200714_犬神鎌鼬一本だたら (5)

岐阜県飛騨地方では、鎌鼬の正体は3人組の神であるとされており、ひとり目が人を転ばせ、ふたり目が身体を切りつけ、3人目が薬を塗る、と伝えられており、それゆえに傷から血が出ないのだと言われております。

マンガなんかでは、薬を塗る3人目がいなくなり、そのせいで傷つけられた人間が大量に血を流す、という事件で登場するパターンが多い気もしますね!

また、一風変わった説では、鎌鼬の傷は鬼神の刃に当たってできるものとされており、それゆえに“構太刀”と表記してカマイタチと読ませている、なんてパターンもあります。

そのほかにも、愛知県東部に伝わる話では、犬神と同じ憑きものとして使役される飯綱(いづな)が野生化し、暴れまわって鎌鼬となる、などとも言われております。

なお、窮奇と書いてカマイタチと読ませることもありますが、こちらは中国の妖怪である窮奇(キュウキ)が風神であると解釈されたことから混同されているのだとか!

中国の窮奇は人を食らう妖怪とされており、その姿はハリネズミの毛を持つ牛だったり、翼を持つ虎だったりと、いわゆる鎌鼬のイメージとはだいぶかけ離れたものらしいですね!

一本だたら

そして、個人的には某『女神転生』シリーズなんかでおなじみな妖怪、一本だたらでございます!

一本だたら、という名前の通り一本脚、ひとつ目の妖怪であり、和歌山県と奈良県の県境に位置する果無山脈(はてなしさんみゃく)などに出現し、宙返りをするように飛び回ると言われています。

こちらは画像がないので自作イメージドン!

20200714_犬神鎌鼬一本だたら (7)

一本だたらは12月の20日に出現するとされ、この日は“果ての20日”として厄日扱いになっているそうです。雪の上に片足だけで移動したような足跡があったなら、それは一本だたらが出た痕跡なんだとか何とか。

また、名前の“たたら”は製鉄に関わる者であることを意味している、という解釈もあります。『もののけ姫』に出てくる、あのたたら場ですね!

たたら場で働く者は、炉に空気を送るためのふいご(たたら)を踏み続けるために酷使した脚が弱り、また燃え盛る火を見つめ続けるために片目が潰れてしまう、一本だたらにはその姿が反映されている、という訳です。

日本神話では天目一箇神(アメノマヒトツノカミ)もひとつ目の鍛冶神であり、ひとつ目の代表格であるギリシア神話のサイクロプスも、鍛冶に関連する神としての側面を持っています。

また、ギリシア神話の鍛冶神であるヘパイストスは片脚が不自由であるという特徴を持っています。そう考えると、一本脚でひとつ目な一本だたらが製鉄と関係が深いというのも納得できるような……?

一本だたらに近くて遠い猪笹王

見た目は不気味な一本だたらですが、基本的には人を襲わないものとされています。ただし、その正体が大猪の霊・猪笹王(いのささおう、あるいは熊笹王)の化けたものであれば、話は別です!

猪笹王の誕生譚はこんな感じ!

背中に熊笹が生えた巨大な猪の猪笹王は、ある日猟師に撃ち倒されてしまいました。

猟師に復讐するべく化けて出まが猪笹王でしたが、猟師には逃げられてしまいます。

やがて猪笹王は山道に現れては人を襲うようになり、その道は誰も通らぬ廃道となってしまいました。

その後、丹誠上人(たんせいしょうにん)がそこに地蔵尊を勧請し、猪笹王を封じたことで旅人たちは再び安心してその道を通れるようになったのです。

しかし猪笹王を封じる際、毎年12月20日だけは自由に振舞えるようにする、という条件が付けられていたため、“果ての20日”だけはその地の厄日とされ、その日だけは旅人もその道を避けたのでした。

と、山中に出る一本脚の妖怪という点では似ていますが、人を襲う襲わないといった部分ではけっこう違いのある一本だたらと猪笹王でございました!

一本脚やひとつ目というのはけっこう代表的な妖怪要素ですよね~!

次回は……?

ってことで、今回は妖怪談義でございましたよ!

夏と言えば怪談ものもアリな気がしますが、そう言えば“お岩さん”とかはそこまでゲームなんかで扱われていないような印象があるような。妖怪よりは扱いにくいからですかね……?

さて次回ですが、次回は……、未定ッ!!

最近また元ネタ色が薄くなってきた気がするので、もうちょいゲーム系で登場しているものからピックアップしていく、かもですね!

したらば、アタシャ『ゴースト・オブ・ツシマ』にどっぷりハマってきますんで、このへんでおさらば! たァーのしみィーー!!

【“元ネタの世界”まとめはこちら】

文/しゃれこうべ村田(@SRSWiterM

参考文献

草野巧・戸部民生(1994)『日本妖怪博物館』新紀元社.
村上健司(2000)『妖怪事典』毎日新聞社.

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