『Ingress』エアアノマリー神戸とは何だったのか!?張本人と開発陣を交えた対談をマジでやってみた

2020-04-30 15:00 投稿

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Ingress Prime(イングレス プライム)

噂から始まった幻の大規模イベント

Nianticの位置情報ゲーム『Ingress』を代表する大規模イベントのひとつにXMアノマリーというものがある。

世界各地でふたつの陣営が陣取りなどさまざまな戦いに挑み、勝敗だけでなく、ゲーム内のストーリーやキャラクターの生死まで決する没入感のあるリアルワールドイベントだ。

昨年、そんなXMアノマリーの候補地に神戸が浮上。開催日が2020年4月18日と具体的な情報まで流れるも、そうした噂は早々に消え去り幻と化す。

そして迎えた噂の当日、ひとつのツイートに添えられたハッシュタグ、“エアアノマリー神戸”をきっかけに、エージェント界隈は大盛り上がり。幻のイベントをTwitter上で開催する事態にまで発展した。

本記事ではそのきっかけを作った両陣営のエージェントをPoCに見立て、Nianticのアジア統括本部長である川島優志氏(以下、川島)をはじめとするスタッフを交えた対談を決行。

フリーライターの深津庵が“エアアノマリー神戸”の舞台裏に迫っていく。

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【最初に】始まりは全部Twitterのつぶやき

幻のXMアノマリーをみんなで妄想しようぜというくらいの発想ではじまった今回の“エアアノマリー神戸”は、あたかも現場でイベントに参加しているようなツイートを行い、疑似体験しようという軽いノリだった。

それに筆者も参加、下記のツイートをする。

もちろんこれもエア、つまり冗談だ。

しかし、ひとつくらい本当のことがあってもいいじゃないかと思い立ち、当日中に今回参加してくれた各人にコンタクト。

最初につぶやいたレジスタンスのmiyawakigomaさん(以下、みやわき)と問題のタグを提案したumadaさん(以下、うまだ)。
エンライテンドでそのツイートに気づき最初に乗ったdarkchaiderさん(以下、メディア王)を両陣営のPoCに筆者の独断で設定

Nianticの川島さんを筆頭にマーケティングマネージャーの山崎富美さん(以下、山崎)、PR担当の斎藤香さん(以下、斎藤)を巻き込み迎えたのが、こうして書き記している2020年4月28日というわけである。

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幻をカタチにした運命のハッシュタグ

――まずは、エアアノマリー神戸お疲れ様でした。こちらで確認したところでは4月17日、みやわきさんのツイート“そっか明日は神戸アノマリー……”に対して、うまださんが今回のタグを提案。その流れを早々に知ったメディア王が乗り、幻のXMアノマリー神戸が動き出したと認識しています。このツイートをするきっかけは何だったのでしょう?

みやわみ 数名の知り合いがスクショといっしょに“明日本当は”といったコメントをツイートしていたんです。それを見ていて“そんな噂もあったよな”と思い、何気なくツイートしたのが最初でした。

――それに対してうまださんの反応がじつに早かった。

うまだ 神戸で本当にXMアノマリーが開催されるなら行くつもりだったんです。しかしそれは幻で終わり、すっかり忘れていた4月17日、みやわきさんのツイートで思い出し、エアアノマリーを開催したらおもしろそうだなとタグを提案しました。

――この幻と呼ばれることになった神戸の件、実際のところ神戸がXMアノマリーの候補になっていたということなんでしょうか?

山崎 いえ、これは都市伝説ですw

川島 山崎が都市伝説というなら都市伝説ですw

一同 爆笑

山崎 日本でXMアノマリーを開催したいという想いはありました。ただ、4月18日に神戸でという確定的なものはありませんでしたね。もともと5月9日のミュンヘンは決まっていたのですが、それ以前のものに関しては……ね。いろいろな噂が飛び交い、それを止めることもなく、みなさんのあいだで話題が膨らんでいったと認識しています。

――神戸が候補地ではあった?

山崎 そうですね、日時はともかく候補のひとつではありました。

うまだ 噂って怖いですね。

――その噂の結果がこの対談ですからね。何が起こるかわかりません。実際、川島さんは今回の流れをリアルタイムで確認していたのでしょうか?

川島 一体何が起こっているんだというのが最初でした。え、神戸? アノマリー!?って驚きながらも、“エアアノマリー神戸”というタグで少しずつ状況が掴めてきたんです。ただ、弊社からは何も聞いてなかったので、これはエージェントたちが自発的に始めたことなんだと理解しました。

――冗談、エアのはずなのですがどれもリアリティがありましたよね。

川島 そこなんです、“間違えて三宮に行っちゃった”とか、日本国内なのに“パスポートを用意した”と言い出す人もいる。タグを追えば追うほどわからなくなっていくのですが、突然始まったエアアノマリーなのにみなさんの動きが秀逸。本当のことのようにTwitterが盛り上がっていくのをみているのが楽しかった。

――公式アカウントもあの流れに乗ってましたが、どなたが書いたんですか?

川島 弊社PR担当の斎藤によるものなんです。

斎藤 じつはあれ、誰にも許可を取らずにやったんですw アカウントが乗っ取られたんじゃないかと勘違いされないように、早々にジョン・ハンケ(CEO)や上司に説明しました。そのときジョンやブライアン・ローズ(プロデューサー)たちは、こういったアクションを起こして盛り上げてくれる国はほかにないと感動していました。

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▲今回の件を海外チームにも知ってもらうためtogetterにまとめたら、それをエージェントが発見。とくに拡散していなかったがあっという間に話題になり驚いたと山崎氏は当時を振り返る。

■必見!これが山崎氏のまとめたtogetter
https://togetter.com/li/1495436

思い出フォルダが火を噴いた疑似神戸体験

――あのハッシュタグに参加したエージェントの多くが、神戸に関連する自前の画像を添付。さらに公式が乗っかり山崎さんはパスコードまで提供する事態になった。初動からは想像もつかない大規模な展開になしましたね。

川島 あの流れに山崎が乗ってパスコードを配布したのは驚いたけどよかったですね。

山崎 当時のツイートにも書きましたが手元に少数しか持ち合わせがなく、私の個人アカウントに掲載したら反響がすごかった

川島 エアアノマリーだからダミーのパスコードなのかと思ったら本物だったw

山崎 本物のほうがおもしろいかなと思い、ここぞとばかりにw

川島 そこはエアじゃないのかってねw

――エアじゃないといえば、メディア王が緊急連絡としてツイートした“シャードポータルにたどり着けず”というもの。あそこに映っているイノシシは本物?

メディア王 去年一昨年と六甲山に登頂。お風呂に入って帰ってくるということをしていたんです。写真にあるポイントはポータルにもなっていて、先客が残したかこぼしてしまった食べ物をイノシシが食べていたのでこっそり撮影した1枚なんです。シャードを山に飛ばすエージェントがひとりは出てくると想定してツイートしました。

――突発的に始まったエアアノマリーでしたが神戸関連の写真を持っているエージェントが多かったのはなぜでしょう?

みやわき きっと以前NL-1331のイベントが神戸であった(2018年2月13日)ので、そのときの写真をみなさん手元に残していたんだと思います。

山崎 神戸のグルメや景色などたくさんの写真が今回のエアアノマリーをさらに盛り上げるきっかけになっていましたよね。

川島 木野陽さん(エージェントでありイラストレーター)の記念バイオカードもよかったな。

みやわき 昨年、神戸で開催という噂が出たとき、この世界的緊急事態は誰も想像もしていませんでした。それがいま、外出もままならない状況に私自身が立たされ、“あのときこんな噂があったよな”と思い返す瞬間があったんです。きっと今回、神戸の写真を添えて拡散してくれたエージェントの中には、できて当たり前だった体験を擬似的にでもみんなで共有したいという想いがあったんだろうと感じているんです。

――なるほど、そも想いの強さが XMアノマリーの前日から始まって当日、さらに翌日にはエアミッションディへと続いていったと。

山崎 事前の作戦会議やイベント会場に向けて移動するといった流れ。XMアノマリーで起こりうることが今回のタグを通じてきれいに展開。本当にあった出来ごとのように追体験することができましたよね。

――開催エリアのマップを作って拡散されているエージェントもいましたよね。あのツイートは印象深い。

メディア王 もうね、それっぽい場所をちゃんと抑えているんですよね。

――あまりにもみなさんの流れがリアルで、エージェントではない知り合いから、“神戸で何かやってるの”とメッセージが来て、どこから説明すべきか迷うくらい。

斎藤 どなたか、このエアアノマリーが架空のものであること、勘違いしないようにとアナウンスしていましたよね。

川島 起こりうるいろいろなトラブルを伝えるツイートも印象的で、それを見ながらインテルマップが落ちるんじゃないか。どちらかの陣営が日本を巨大なコントロールフィールドで覆うんじゃないかとドキドキしていました。

みやわき 『Ingress』の公式ツイートに『ポケモンGO』のトレーナーが絡んでくるみたいな小細工をしているエージェントまでいましたよね。あるあるネタをわざわざエージェントがしてくる流れは見ていておもしろかったですw

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▲『Ingress』のアイテム、メディアをとことん収集するプレイスタイルからメディア王と呼ばれることになったこの方。過去には実際にPoCを務めるなど、イベントに参加するエージェント界隈で知らない人はいない。この日は愛猫といっしょに参加、時折聞こえる鳴き声が最高にかわいかった。

Twitterの投票機能を使った陣営バトル

――外出を控えるいまだからこその展開でしたし、改めて『Ingress』の魅力を知るきっかけになったと思いますね。

川島 その通りですね。また、ポータルを介して世界と繋がることができなくても、エージェントという存在があればこんな体験ができるんだと、今回のエアアノマリーが教えてくれたと実感しています。目から鱗が落ちるような、本当にみなさんのアクションには感服しましたね。

――Twitterのアンケート機能を使ってリチャージや攻撃など、それらしい攻防が行われていたのもみごとでしたよね。っと、このエアアノマリーってレジスタンスが負けてましたっけ?

山崎 リチャージ戦は55%でレジスタンスが勝利。そして、クラスター戦は“レジスタンスポータルを攻撃”が50.8%と僅差でエンライテンドが勝っているようですね。ただこれですね、外国人エージェントの中には誤認したまま押している方が多かったようなんです。

――えーっ!記載されているネーム名から脊髄反射で投票したら自軍を攻撃していたという可能性も?

山崎 英語訳されたものが出回るまでのあいだに誤って押してしまったという可能性が。ただ、何であれみなさんが楽しんでいたのならそれでいいんですよねw

メディア王 そこにもう1つ、メディアの数選手権みたいなものもありましたよね。

うまだ それはメディア王に勝てる人いないんじゃない?w

メディア王 それが僅差だったんですよ。

みやわき レジスタンス側は少しずつ数を増やしていきましたが、エンライテンド側がメディア王がいるから大丈夫っていう流れがあったのかも知れませんね。

メディア王 レジスタンスの方で何百という数を持っている方もいましたよ。

――エアアノマリー前日、17日からエアGORUCKもやってませんでした?

うまだ 六甲山に向かってるとか浜で水に浸かってるとかあった。

メディア王 エアアノマリー神戸の前日受け付けもやってましたよね。

川島 それを合わせたら足掛け3日間のエアアノマリーですね。

山崎 エージェントのみなさんが自発的に考え実行した流れに公式が乗っかった、みたいな。本当にありがとうございましたとお礼を言いたいですね。

みやわき 最初、うまださんがタグを付けようと提案してくれたとき、私たち2人しかいなかった。これ本当に盛り上がるのかと不安だったんです。それでもとりあえず、FF(フラッシュファーミング:アイテムを効率よく収集する行為)は東遊園地(神戸三宮駅東口方面)かなくらいは書いたんですけど、ここまでのことになるとは思いもしませんでしたね。

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▲自宅にいながらどうやれば『Ingress』を楽しめるのか。日々考える中、まさかこんな方法があったのかと驚いたことを明かす川島氏。『Ingress』における強みはエージェントであり、それが発揮されたのが今回のエアアノマリーと山崎氏は振り返る。

状況に対応し発展する今後のプラン

――5月のファーストサタデーも自宅から参加できる特別仕様になりましたよね。

川島 すでに世界450都市、14000人以上の参加申請を頂いています。

山崎 TelegramやZoomなど何を使うかわかりませんが、我々もどこかに参加できないかと考えています。

川島 エアアノマリーにインスパイアされたところはありますよね。

山崎 物理的にお会いすることはできませんが、オンラインを通じてコミュニティのみなさんと同じ時間を共有できるのはすばらしいことだと思います。

メディア王 せっかくなのでいちばん遠い場所に参加しようと考えているエージェントもいるようですね。

川島 日本だけでも10ヵ所以上、札幌や石巻、エアアノマリーの舞台になった神戸など多くの場所がスポットになっています。

みやわき 南極にもポータルがあるのでそこも今回の対象になるなら参加したいというエージェントもいましたねw

――いま、この現状の中、Nianticはどういった勤務形態なのでしょうか?

川島 各国のオフィスを閉めて在宅勤務というスタイルで対応しています。今回の対談も各自自宅からですし、この環境に慣れていくことを我々は目指しています。

――FSをバーチャルで開催するなど、今後も自宅から参加できるイベントを考えているのでしょうか?

川島 オリジナルメンバーだったブライアンがチームに戻り、エージェントたちの声に耳を傾け、何が求められ何を提供できるのか模索しています。また今後、『Ingress Prime』はさらに新しい機能を実装。改善を進めていきますので、みなさんには引き続き支えていただきたいと思いますね。

山崎 Apexという新しいアイテムを実装するなど、2020年はこれまでにない体験を提供できると考えています。また、アメリカから始まったポータルスキャンが日本でも行えるようになりました。川島からもありました通り、今年は新たな機能をお届けできると思いますのでご期待ください。

川島 今回のエアアノマリーのようにエージェント自身がイベントをホストできる機能もチーム内で進めています。いつロンチできるかはここでは言えませんが、そちらも楽しみにしていただけたらうれしいですね。

――先日、ポータルスキャンの対象レベルが8まで開放されましたよね。

川島 これまでに13万件以上のポータルスキャンが行われており、そのうち20%くらいは日本のエージェントによるものなんです。ただし、いま外出を控える必要のある事態なので、なかなかポータルスキャンをしにくい状況でもあります。まずはお住いの地域が発表している規則に従い、可能な範囲でチャレンジしていただけたらと思っています。

――『Ingress』はまだまだ楽しめると期待してよろしいでしょうか?

川島 世界が今後どうなっていくのかわかりませんが、環境が許さる方はこれまで通り楽しんでいただきたいですし、そうではない状況にある方でも『Ingress』をプレイできる仕組みをチームが取り組んでいます。いかなる状況の中でも役立ててもらえるものに改善を進めていきますので、今後もぜひ、よろしくお願いします。

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▲対象のポータルを選んでスキャンを開始する仕組みであり、大きな対象物は何回かに分割してスキャンすればひとつのポータルとしてデータが保存されるとのこと。現在の緊急事態が落ち着き次第、近所のポータルをめぐってほしいと川島氏。

2020年4月28日現在、1ヵ所に留まっていては何もできない『Ingress』は、『ポケモンGO』や『魔法同盟』と比べても圧倒的につらい状況。

そんな中でエージェントたちが自発的に始めて盛り上がった今回のエアアノマリー神戸というアクションは筆者にとって紛れもなく“本物”だった。

バーチャルで開催されるファーストサタデーはもちろん、今回の取材でさらなる新機能や試みを検討していることが判明。それがどういったものなのか、今後も動きがあり次第継続して取材を進めていくのでご期待ください!!

追記
イベント運営と企画に携わる成沢千明氏から、「来年は本当のアノマリーを日本でもできることを願ってがんばります。みんなにまた会えるのを楽しみにしています!」とメッセージをいただいた。
また、会える日を楽しみにしていますよ!!

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P.N.深津庵
※深津庵のTwitterはこちら

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