母との親子ゲンカで暗殺祭り!暴君・ネロの治世【しゃれこうべが語る元ネタの世界 第15回】

2020-01-29 12:00 投稿

今回はゴリ押すぜ!(画像的な意味で)

え~と、2月の観戦予定は……、と!

ひい、ふう、みい……、9大会!!

チケット代や何やで財布の氷河期が止まらない!!

編集U「さっさと原稿書いて稼ぐんだよォー!!」

一理ある!

ってことでこんにちは! 今週も“元ネタの世界”のお話でございます!

今回扱うのは神話でもなく、伝説でもなく! 歴史上に名を残すローマ皇帝・ネロ!

暴君と呼ばれた皇帝の時代のお話でございますよ!

【目次】
・若き皇帝の陰に、母・アグリッピーナ
・ネロ、反抗心に目覚める
・暴君はじめました
・燃えるローマと落ちる芸術家
・次回は妖精のお話でも!

若き皇帝の陰に、母・アグリッピーナ

今回扱いますは古代ローマ帝国の皇帝・ネロ!

一般的には暴君としてその名を知られていますね! 言うまでもなく元ネタは男性ですよ!

20200128_ネロ (1)

ネロが皇帝の座についたのは西暦54年、なんと16歳と10ヵ月という若さですよ!

編集U「は~、いまで言ったら高校生か」

ちなみに、当時一般的には公職に就くのは30歳からとされていたそうで、そこを考えても異例の若さですね!

ネロがそんな若さで皇帝となったのは、彼の母・アグリッピーナの暗躍あってのことでした!

アグリッピーナは前皇帝・クラウディスが前妻を失くしてから結婚した女性であり、アグリッピーナの前夫とのあいだに生まれたネロは、皇帝の養子となります!

そして、説によってはアグリッピーナがクラウディスを毒殺し、さらにクラウディスの実子であるブリタニクスを差し置いてネロを皇帝にした、と言われていますね!

20200128_ネロ (7)

編集U「図の雑さ。

しかしふつうに考えたら、実子のブリタニクスが皇位継承しそうなもんだが」

そこはどうも、ブリタニクスは身体が弱いからといちゃもんをつけたとか、アグリッピーナの前夫がカエサル(シーザー)の血を継いでいたことから、血筋的な資格はネロにもある、と主張したとか何とか!

アグリッピーナは『乖離性ミリオンアーサー』には登場しませんが、シーザーのほうは出ていますね! 女体化で!!

20200128_ネロ (11)

編集U「は~ん。ってかネロとシーザーって親戚だったんか」

つっても6世代ぐらいまたいでますけどね!! 遠縁ってレベルじゃない気もしますが!

さておき、皇帝の妻という立場にありながら夫を暗殺し、今度は皇帝の母となったアグリッピーナ!

目的はやはり、自身が摂政的な立ち位置となり、政治に口出しをするためでありました!

その証拠に、当時は皇帝や女神の顔を模した通貨が作られていたそうですが、ネロの皇帝就任後に作られたコインには、ネロとアグリッピーナの顔が向き合うように彫られていたのだとか!

皇帝の母親が、しかも同じ立場であるかのように向き合った形でコインに彫られるってのは前代未聞だったそうですね!

その後も政治に口出しをするわ、ことあるごとに「いまのお前の立場があるのは私のおかげ」とアピールしてくるわと、なかなかにうっとうしいオカンだった模様!

当然のことながら、ネロ青年のなかには次第にそんな母親への反抗心が生まれてくるのでありました!

ネロ、反抗心に目覚める

ことあるごとに恩着せがましいことを言ってくることに嫌気がさしたネロは、敢えてアグリッピーナの反感を買うような行動をとるようになりました。

その一環に、というだけではありませんが、ある日ネロは奴隷のアクテに恋をします。

母親への反抗心もあっての恋とは言え、はじめのうちはアグリッピーナにばれないようにアクテとの密会を重ねていたネロですが、そう長くないうちにふたりの関係はアグリッピーナの知るところとなります。

当時、すでにネロは前皇帝・クラウディスの娘であるオクタヴィアと結婚していましたが、アグリッピーナが腹を立てたのは不倫をしたことではありませんでした。

「奴隷女と関係を持つなどと、なんと愚かなことか!」

そう罵倒されたネロは、より一層アグリッピーナへの反発心を増し、アグリッピーナのためにいろいろと働いていた軍人を解任するなど、反撃に出たのです。

20200128_ネロ (2)

編集U「つまり権力をからめつつの親子ゲンカになった、と」

とばっちりを受ける周囲はたまったもんじゃありませんがね!

ネロへの怒りを抑えられなくなったアグリッピーナは、ある日、前皇帝の実子であるブリタニクスを新皇帝として擁立する構えがあるようなことを匂わせました。

実子と養子とでは、実子により正当な継承権があるのは明らか。

アグリッピーナなら本当にやりかねないと不安になったネロは、側近たちの助言もあり、血がつながらないとは言え弟であるブリタニクスを暗殺してしまったのです。

20200128_ネロ (8)

編集U「皇帝の息子って生まれなのに残念な人生だな……」

この後、アグリッピーナを皇宮から追放し、特別につけていた親衛隊も解除するなど、彼女を“皇后にして皇帝の母”という特別な存在から、一般の女性と変わらない立場にまで落としたのでありました。

が、アグリッピーナも諦めはせず、私有地を売却した資金で兵士たちを味方につけようと動き、さらにネロに浮気されているオクタヴィアを慰めるという形で彼女に接近し、オクタヴィアのことを慕う民衆をも味方につけようとしていたのです。

と、アグリッピーナがいろいろ動く一方で、ネロの反抗的な行動も加速!

同年代の取り巻きを連れて夜のローマにくり出し、好き放題やって警察ともみ合いになり、顔面にアザを作ったまま翌日の議会に出る、なんてこともあったそうな!

20200128_ネロ (3)

若気の至りエピソードでもうひとつ言うと、当時の水道はいくつかの泉が水源となっておりまして、当然ながらその泉で泳ぐことは禁止されていた訳ですよ!

編集U「まぁそりゃ衛生的にな」

が、ネロ皇帝はまさかの全裸でダイブ!

しかも水がキンキンに冷えていたせいで風邪を引くという!!

編集U「馬鹿かな?」

当時、皇帝と言えば年をとった堅物が当たり前だったこともあり、こういう若気が至りまくりなところが逆に愛嬌ありとして、民衆にはけっこう人気だったらしいですね!

ちなみにこのへんでネロは22歳!

ここまではあまり暴君という感じはありませんが、この後けっこうヤバいことになっていきます!

暴君はじめました

妻のオクタヴィアにも、かつて恋をした奴隷のアクテにも、どこか女性としての物足りなさを感じていたネロ。

彼はいつしかポッペア・サビーナという女性に惚れ込むようになります。

しかしポッペアは愛人という立場は満足せず、オクタヴィアと離婚して自分を妻にしてほしいとせがみます。

この大胆欲求に対し、アグリッピーナは猛反対をしました。

というのも、前皇帝の養子だったネロが皇帝の座につく正当性を保証する要素のひとつが、前皇帝の実子であるオクタヴィアとの結婚だったからです。

編集U「ってなると離婚は論外だよな」

いかにも!

が、側近たちの助言に動かされてか、みずからの意志か、ネロは頑なに反対するアグリッピーナの暗殺を企ててしまうのです!

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編集U「また極端な……!」

アグリッピーナを乗せた船を沈めて溺死させる作戦に出たネロ!

が、アグリッピーナはプロ級の泳ぎでこれを突破!!

20200128_ネロ (5)

策略から生き延びたアグリッピーナは、自分を殺そうとする陰謀があることに気づきならも、そのことには触れず、自分が無事だとのみ書いた手紙をネロに送ります。

ネロとその側近たちは、アグリッピーナがすべてを察したことに気づき、相談の結果、直接兵士を送り込んで彼女を殺めることに決めました。

乗り込んできた兵士たちに囲まれながらも、アグリッピーナは「刺すならば皇帝を産んだこの腹を刺せ」と言い放ち、その直後無数の剣に身を貫かれてこの世を去ります。

編集U「やだ、散り際が格好いい……」

さて、当時のローマでは家族というものが重要視されており、ネロが暗殺したと直接言われた訳ではないにせよ、母殺しの汚名を背負ったネロは若干人気を落とすことに!

幸いにというか何というか、民衆へのアグリッピーナの評判がいまいちだったおかげで、まだ致命的な不評にはいたらなかったようですね!

20200128_ネロ (9)

このあたりから、ネロはブリタニクスやアグリッピーナなど、自分の命令で死んでいった者たちの亡霊にうなされ、怯えるようになっていったとか!

アグリッピーナが亡くなり、皇帝就任時からネロを支えてきた側近たちもあるいは病に倒れ、あるいは老いを理由に引退すると、ネロはついにオクタヴィアと離婚し、愛人だったポッペアを正式に妻とします。

オクタヴィアは流刑に処されただけでなく、彼女のことを強く慕っていた民衆のデモを恐れたネロ(あるいはその配下)によって叛逆の疑いをかけられ、命を奪われることになってしまうのです。

20200128_ネロ (10)

編集U「一方的に離婚して流罪の上に暗殺……、これは暴君」

しかし一方で、数万人単位の死者が出た暴動を報復措置なしで穏便にことを収めたり、長年続いた敵対国との問題を平穏無事に一時終結させるなど、政治面で言えばなかなかにいい成績を残していたりしますね!

ぶっちゃけアルメニア、パルティア問題に関しては敵にすら尊敬されたと言われる稀代の名将・コルブロ将軍の知略によるところが大きい、というかほぼ彼ひとりの功績だったっぽいですが!

編集U「まぁでも任命した皇帝様の実績になった、と」

で、おそらくネロの起こした事件のなかでもとりわけヤバいのが……!

燃えるローマと落ちる芸術家

ネロ皇帝26歳のころ、ローマの街中でかなり大規模な火事が発生!

火事は9日間も続き、住宅に木材が多用されていたうえに、住宅同士が隣接していることも多かったローマはこれによって大打撃を受けることに!

火事からの復旧作業においては歴史家も目を見張るほどの手腕を見せたネロでしたが、この大火に関し、彼には黒い噂がついて回りました!

ひとつは、そもそもネロがこの火事を起こしたのではないか、というもの!

編集U「それが本当なら最低だぞ皇帝!」

20200128_ネロ (6)

これも真偽がはっきりしないようですが、どうもネロが建設しようとしていた豪邸やら自然公園やらの建設予定地と、火事で焼け落ちた範囲がけっこうなレベルで被っていたそうで!

焼け落ちた土地なら安く買い叩ける、という計算で火を放ったのでは、なんて疑惑が出たそうな……!

編集U「マジでそうだとしたらまさに暴君だな……」

もっとも、放火犯説には怪しいところも多いとかですが、もうひとつは黒い噂、というかマジでやっちまったヤバムーブ!

大火のせいで落ち着かない民衆に捧げるスケープゴートとしてか、「放火はキリスト教徒によるものである」との発表を出し、キリスト教徒の大虐殺を行ったのです!

民衆の前で処刑したキリスト教徒たちを犬に食わせたり、柱にくくりつけたキリスト教徒の全身に油をぶっかけて燃やす“人間松明”としたり、鬱憤を晴らすパフォーマンスなのか、かなり盛大にやった模様!

編集U「さすがに引くわ」

民衆もわりと引き気味だったようですがね!

母殺し、妻殺しに続いてこの虐殺!

次第に民衆からの人気も下火となっていき、もはや皇帝を変えるしかあるまいと判断した元老院により、ネロは国家の敵として認定されてしまう訳です!

最後にはみずから手首を切って死ぬこととなったネロ、彼が最期に残した言葉は、こんなものだったと言われていますね!

「これでひとりの芸術家が死ぬ。なんと惜しいことだ」

と!

芸術を愛し、ローマにギリシアのような文化を根付かせようとお祭りを開き、劇場に大勢の人を招いては自分の歌を聞かせるリサイタルを開くなど、政治よりも芸術に情熱を傾けた皇帝、その最期も皇帝としてよりも芸術家としての気持ちが強かったのやも、ですね!

歌の実力に関しては何とも微妙なレベルだったようですが、若気の至りで愛されたのと同様に、皇帝みずからがパフォーマンスをするという部分や、ステージ上ではあくまでもひとりの芸術家として振舞ったことなどがあって、意外と民衆からは死後も愛されていたそうな!

30歳でこの世去った皇帝の墓には、その後も新鮮な果物や花が供えられ続けたそうですよ!

編集U「キリスト教徒の弾圧があったとは言え、それ以外だと暴君性が民衆にはあんま向いてなかったってのがデカいのかね~」

ふつうにいち芸術家として暮らしていたら、とか思っちゃいますよね~!

次回は妖精のお話でも!

ってことで、今回はネロのお話でした!

ネロに関してはですね~、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』とかでおなじみの安彦良和先生による『我が名はネロ』という漫画がめちゃんこおもしろいのでね! ぜひ読んでいただきたい!

こちらでは母・アグリッピーナとネロとの愛情がすれ違う様子がじつに悲しくて、いやもうおもしろいんですよ!

編集U「謎の宣伝」

2巻で完結してるから読みやすさもバッチリですよ!

ってな話はさておき、次回は!

今回まではわりとデカいお話を扱ってきたのでね!

ここいらでこう、ヨーロッパに伝わる妖精たちのお話なんかをしちゃおうかな、と!

毎度画像をお借りしている『乖離性ミリオンアーサー』にも妖精は多数登場していますのでね! 助かる!!

20200128_ネロ (14)

名前は知っていても実態はよう知らん、なんて妖精も多いのでは! ってことで次回もお楽しみに!!

いっやしかしね! 先週行ってきたスターダムの大阪大会!

いやもーうよかった!!

退団前ラストマッチとなった花月が長年のライバルである岩谷麻優と最初で最後のタッグを組んで!

それだけでもアツいのに、その日限りのタッグ衣装ときたもんだ!! アァーたまらない感動!!

花月引退まで残り約1ヵ月! 2月の観戦スケジュールは濃いぞォ~~!!!

編集U「原稿の納期は守れよ」

……、尽力します!!

文/しゃれこうべ村田(@SRSWiterM

参考文献

塩野七生(2005)『ローマ人の物語 20 悪名高き皇帝たち [四]』 新潮社

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