『Ingress』や『ポケモンGO』を手掛けるナイアンティックが発足した開発スタジオ“Niantic Tokyo Studio”が目指す未来

2018-08-24 16:58 投稿

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ポケモンGO

新たなゲームを開発するためのチャレンジ

ナイアンティックといえば『ポケモンGO』や『Ingress』など、ARや位置情報を活用したコンテンツを手掛ける北米の企業である。

その新しいプロジェクトとして2018年7月31日、東京を拠点に新たなゲームを開発する“Niantic:Tokyo Studio”の発足が多くのメディアを通じて報じられた。

本記事では、その代表であり『ポケモンGO』の生みの親である野村達雄氏に、当日明かされなかったもう1歩踏みこんだ内容をライターの深津庵が直接聞いてきた。

4月に開設されたナイアンティックの新たな開発スタジオに属するエンジニアやデザイナー計6人のスタッフが目指す未来、そのはじまりを覗いてみよう!!

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▲Niantic: Tokyo Studio代表であり『ポケモンGO』生みの親である野村達雄氏。

本記事のポイント
●『Ingress』や『ポケモンGO』にもない体験
●ゼロから作るからこそ魅力を感じるチャレンジ
●東京に拠点をおくと決めた4つの理由と確信

『Ingress』や『ポケモンGO』にもない体験

――ナイアンティックはテクノロジー企業でありゲーム会社ではない。そう認識していたので今回の発表に少なからず衝撃を受けました。なぜ、あえて“ゲーム”と名言したのか、その真相を教えてください。

野村達雄氏(以下、野村) ありがとうございます。まず、ナイアンティックがゲーム会社ではないと念頭に置いていただけていることを光栄に思います。弊社はご存知の通りARや位置情報などを活用したプラットフォームを作り、その技術を開発者に提供していく会社を目指しています。ただ、そうは言ってもさまざまなチャレンジが必要だとも考えています。その初期段階にあったのが『Ingress』ですが、当時はプラットフォーム構想はありませんでした。それが『ポケモンGO』の開発を始めていく段階で、ARや位置情報を使ったマーケットに需要があると感じたと同時に証明することができた。とはいえ、2タイトルしか出ていない状態でプラットフォーム化をするにはまだ努力が必要だとも感じていたんです。

――その中で登場したのがワーナー・ブラザースとともに開発している『Harry Potter: Wizards Unite』であり、今回発足したNiantic:Tokyo Studioというわけですね。

野村 その通りです。そうした自社のファーストパーティーを作りながらプラットフォームを育てていく。積み重ねていくプロセスの中で少しずつ外部の方に入っていただき、活用してもらえるような仕掛けを考えています。

――ナイアンティックを代表する『Ingress』は複雑なルールからコアユーザー、一方の『ポケモンGO』はシンプルで遊びやす点からライトユーザーに多く支持されているという印象があるようです。Niantic:Tokyo Studioがあえて“ゲーム”と明言したタイトルは、どういった層をターゲットにしているのでしょうか?

野村 私は『Ingress』と『ポケモンGO』はけっして対局にあるものとは考えていません。『Ingress』ユーザーの中には家族ぐるみで楽しまれている方も多く、『ポケモンGO』ユーザーでいえば生息地やタイプごとの相性や強さなどを熟知している方も多い。これからNiantic:Tokyo Studioで開発していくタイトルをどちらに位置づけるかという点でいえば、そうしたユーザーを含む幅広い層に届けるチャンスがあると思っています。

――位置情報を使って外の世界に、それをきっかけに多くのコミュニティ作りにもつながり、ゲーム経験のない層にも大きな影響を与えていますよね。そうした体験をさらに広げていきたい、と。

野村 日本だけでも人口1億2千万人、世界に目を向ければもっとたくさんの人々が生活しています。その中には『Ingress』や『ポケモンGO』をプレイしていない方も多い。ゲームの経験がない人を含め、世界中の人に新しい体験を提供できるものを我々Niantic:Tokyo Studioは目指していきます。

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▲野村氏はGoogleMapの開発に携わっていたエンジニアであり、GoogleMap上でポケモンを探す“GoogleMap ポケモンチャレンジ”というエイプリルフール向けのゲームを開発したことでも知られる。

ゼロから作るからこそ魅力を感じるチャレンジ

――新しい体験と聞いて最初に御社が発表した“Niantic Occlusion”が浮かびました。そうした技術を取り入れたゲームを開発しているということでしょうか?

野村 “Occlusion”とは何に隠れるといった意味もあります。映像上のオブジェクトをアルゴリズムで認識させ、ARキャラクターが対象に乗ったり影に隠れるといった基礎技術であり、現在おもにベイエリア(サンフランシスコ)やロンドンで開発を進めています。ベイエリアではおもにマルチプレイヤーで空間を共有する“マルチAR”を、ロンドンで“Occlusion”深度推定に関する開発が行われていて、我々はそうした技術を取り入れていこうとさまざまな構想を練っています。

――昨年発売された自伝本の中で、“迷ったときはチャレンジする”と書かれていたのですが、とはいえ今回のNiantic:Tokyo Studio。しかも代表という大役に迷いはありませんでしたか?

野村 迷いはありませんでしたね。『ポケモンGO』のゲームディレクターとして関わっているわけですが、新しいことにチャレンジしたいとも考えていました。その中には新しいプロダクトを作るということもありますが、チームをゼロから作ってみたいとも思っていたんです。もちろん『ポケモンGO』も小さなチームから始まったのですが、本当に何もないところからのチャレンジに大きな魅力を感じました。

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▲今回のインタビュー中、裸足で社内を歩き回っていた野村氏。その自由なスタイルと何ごとにもチャレンジする好奇心が、Niantic:Tokyo Studioをどう導いていくのか期待が高まる。

東京に拠点を置くと決めた4つの理由と確信

――ゼロからのチャレンジにあるNiantic:Tokyo Studio。2018年7月31日に開催された“プレスラウンドテーブル”で、東京に拠点を置いた4つのポイントが明かされていました。そのひとつ目、“国内には両タイトルの熱狂的なファンが多く、市場としての可能性を感じる”ということでしたが可能性をどう広げていくとお考えでしょう?

野村 日本は他国と比べて安全で歩きやすい点がフィットしていると感じています。また、両タイトルを運営していく中でユーザーからいただく反響も興味の湧くものが多い。印象的なエピソードとして、“渋谷の道玄坂で水タイプのポケモンがよく出てくるポイントがあり、その理由を調べたら暗渠となった川が流れていることを発見した”という声をいただいたことがあります。日本にはそうした興味深いスポットが多く、先ほどお話しした通り安全で歩きやすい国内であれば我々が目指す“人を外に連れ出し冒険を通じてつながっていく”というミッションに最適であると実感しているからですね。

――ふたつ目に“長い歴史を持つ日本は街の中におもしろいスポットが数多い”というポイントをあげていますが、それにリンクすることですね。しかし、過疎地はいまだ『Ingress』のポータル、『ポケモンGO』でいうポケストップやジムが少ない。その打開策はあるのでしょうか?

野村 『Ingress』のポータル情報は弊社にとって大きな資産でありユニークなものです。大型店やランドマークに限らず、地元の人でもあまり知られていないスポット(位置情報)もたくさん登録されているので、それらを引き続き使っていきたいと考えています。ただ、おっしゃる通りそうした情報が少ない地域でプレイしにくい状況が発生している点も大きな課題だと認識しています。そのひとつとして、『Ingress』で行われているポータル申請に該当する機能を『ポケモンGO』にも導入することを考えています。もちろんそれで解決するとは思いませんが、これから開発してくタイトルに関してもそれを前提としたうえで、ポータルを増やすのかそれとも違う遊びかたを提供するのか。どんなプレイ環境でも楽しめるものを作っていくのが我々のチャレンジだと思っています。

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▲ポータルでありポケストップの数に関してはとても深刻な問題。野村氏もそれをしっかり受け止め、その解決策をつねに考えていると語る。

――3つ目、“ポケモンをはじめとするグローバルに向けて発信できるコンテンツが多数ある”という点。これはすでに何らかの大きなIPを狙っている、もしくはすでに動き出しているものがあるのでしょうか?

野村 なるほど、これは言葉を選ばなければいけませんね(笑)。ノーコメントとしかお答えできませんが、いろいろなところからお話しはいただいている、という段階ですね。

――4つ目に挙げていた“エンジニアやデザイナーだけでなく、アニメやゲームにおいても優秀なタレントが多数いる”という内容。こちら、クリエイターの多くが興味を持っていると思います。ここでいう“優秀なタレント”とはどのような人材をさしているのでしょうか?

野村 おもにアニメーターや3Dアーティストを考えています。アニメやゲームは日本を代表するコンテンツであり、これから大きなチームになっていくNiantic:Tokyo Studioには欠かせない人材になるでしょう。とくに現在は経験者、募集サイトには英文で書かれていますがそれを読んでマッチしているという方ですね。少々ハードルが高く感じるかと思いますが、多くの方からの応募を待っています。

――ずばり、“新しいゲーム”の開発状況は? ゲーム雑誌によくる“開発状況◯◯%”的なざっくりなものでもいいので知りたいですね。

野村 あはは、現状は0%なんですがそうですね“0.1%”ってところでしょうか。現在、Niantic:Tokyo Studioのスタッフがさまざまなことを試している段階で、それを具体的に数値化するのが難しいところではありますが、スタッフ全員の端末でその動きが閲覧できる状態にあり、多くのアイデアを出し合いながら毎日アップデートをくり返しているところです。最終的にユーザーのみなさんが楽しんでもらえるものを目指す。そこにいたるプロセスでの苦労は問題ではなく必要なもの。どんなものが完成するかは私自身も予想ができませんが、ぜひ期待してください!!

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▲ユーザーが楽しいと感じてもらうことが大前提で、そのための努力は苦労ではないと語る野村氏。0.1%という開発状況の中には、それを100%にひっくり返すだけで案が膨大に詰め込まれていると感じ取ることができた。

Niantc:Tokyo Studioのプロジェクトは始まったばかり。

“プレスラウンドテーブル”と銘打たれたイベントでは、東京に拠点を置いたという情報以外、あまり具体的な内容が明かされなかったが今回のインタビューでその方向性が少しずつわかってきた。

今後、どのようなスタッフを迎え、どんなゲームを開発していくのか。野村氏同様いずれ各スタッフにも直撃してみたい。

 

さてこれは余談だが、野村さんといえばやはり『ポケモンGO』のことを聞きたい。今回何点か伺うことができたのだが、その中で先日のコミュニティディが18時からの3時間に行われた理由を、猛暑続きの日本で従来のタイムスケジュール(正午から15時までの3時間)は危険だと判断しかたらだと答えてくれた。

位置情報を使ったゲームには多くの課題もあるが、このように人間味のある配慮はとてもナイアンティックらしい。

P.N.深津庵(撮影協力:あしたづひむ)
※深津庵のTwitterはこちら

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対応機種iOS/Android
価格無料(アプリ内課金あり)
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ジャンルその他
メーカーナイアンティック
公式サイトhttp://www.pokemongo.jp/
公式Twitterhttps://twitter.com/PokemonGOAppJP
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