“Go Global”アジアから世界に羽ばたく先駆者の言葉 Googleが見据えるつぎのアプリ市場とは?
2017-09-27 19:17 投稿
世界中の人が遊ぶアプリを開発するために
2017年9月19日、Googleは、日韓台湾合同のプレスイベント“Go Global”を開催。イベントでは、Google Playが狙う次の市場や各国のゲームメーカーによるグローバル展開の事例が紹介され、アプリ開発における海外市場の重要性について講演がなされた。
●東アジアのアプリ市場の成熟とAndroidユーザーの変化
●データで見る東アジアとつぎに見据えるべきアプリ市場
●ディベロッパーが活躍できる環境を整えるGoogle Play
●日本・韓国・台湾でグローバルに成功している先駆者たち
東アジアのアプリ市場の成熟とユーザーの変化
講演の始めに、Google Playのアジア地域責任者であるJames Sandars氏より、“Go Global”と題された本イベントに沿って、まずは東アジアのアプリ市場とAndroidデバイスの普及について簡単に紹介された。
氏はまず、日本、台湾、韓国の3カ国のモバイル環境について述べ、その先進性を説明。国内だけで約7500億円の市場規模がある日本は、「ゲーム市場の中ではもっとも成熟した市場である」と語る。
携帯電話の普及率が高く、地下鉄でも200MBクラスの接続性がある韓国や、東のシリコンバレーと呼ばれ、急速に発展している台湾も、今後10億ドル以上の市場価値になるとも予想している。また、大きなアプリ市場の成立には、やはり根幹となる通信環境と開発力も持ったディベロッパーが共通項としてあることも確認できた。
現在、Androidデバイスは、20億人のユーザーの手に行き渡り、アプリは合計で820億ものダウンロードがされている。氏は、「Google Play上でアプリを公開するだけでも、世界の人口の約4分の1にその情報を公開できるできる時代に突入している」と、デバイスの普及により、ユーザーへの訴求も拡大していることを説明した。
また、Google Playの課金者も大きな変化を見せている。定期購読、定期課金などのサブスクリプション形式の課金システムの普及により、Google Playの課金者は年々増加傾向にあるとのこと。課金額は世界全体で見ると過去3年間で10倍という脅威の成長力だ。
このような課金スタイルの変化により、「アプリ開発者は、定期的に安定的な収入を得る環境が整ってきている」と、アプリ開発者のビジネスチャンスが広がりつつあることを示唆した。
データで見る東アジアとつぎに見据えるべきアプリ市場
続いて、アプリ市場のデータや分析ツールを提供するApp AnnieのCEO、Bertrand Schmitt氏が登壇。James Sandars氏の挨拶に付け加えるように、よりわかりやすいデータを添えて日本、韓国、台湾のアプリ市場について説明した。
日本、韓国、台湾のユーザーは他国と比較すると、「アプリの使用時間が他国よりも長く、さらに年々増加傾向にある」と、東アジア地域のユーザー特性を説明。平均2時間とされるアプリの使用時間だが、韓国は3.3時間、台湾は3.1時間、日本は2.7時間と、1人がプレイする時間も平均より長くなっていることがわかる。
アプリの使用時間と比例するように、3カ国のアプリ総収益も増加傾向にある。2年前と比較すると全体で62%の増加、GooglePlayの国別収益ランキングを見ても、この3カ国が全体のTOP5に入るなど、アプリ市場を牽引していることがわかる。
各国の詳細な売上比率を見ると、また別の特性の違いが見て取れた。日本は、この2年間で50%の売り上げの伸びがあり、そのうち90%を国内で売り上げている。また、台湾と韓国は、2年間で100%以上もの売り上げの伸びがあり、この2カ国に関しては、アメリカやヨーロッパ、中国などの海外市場も多く取り込んでおり、日本よりも海外比重が高いことが特徴として挙げられた。
つぎに見据えるべき市場として、インド、ブラジル、インドネシアなどの新興国が伸びる傾向にあると氏は言う。これにはAndroidデバイスの普及も大きな要因のひとつと言えるが、2017年上半期のアプリのダウンロード数をグラフで見ると一目瞭然。先進国を遙かに超える勢いで新興国のダウンロード数が伸びていることが分かる。
最後に、「ダウンロードは売り上げに繋がる。時間をかけてマネタイゼーションをおこなっていくことが大切だ」と新興国へのアプローチの重要性を説明。アップアニーとしては、これらの数字やデータをもとに今後のビジネスの発展に役立ててほしいとコメントを残した。
ディベロッパーが活躍できる環境を整えるGoogle Play
ここからは、Google Play上でゲームを配信しているディベロッパーや彼らのグローバルの展開に向け、“Google Playが具体的にどのようにサポートをしているか”について紹介された。
登壇したのは、Google Playゲーム事業開発部、日本統括の金清司氏。氏からは初めに、Google Playで行っている3つのサポートについて説明がなされた。
プラットフォーム
「ディベロッパーの海外支援のためには、前提として、自分たちのプラットフォームが持続的に成長していく必要がある」と氏は始める。
現在、20億台以上のAndroid端末が利用されており、インドやブラジルなどの新興国の市場では昨年1年間で新たに3億台ものデバイスがユーザーの手に渡ったことを受け、「リーチができるユーザー数の拡大に加えて、マネタイゼーションも無視できない要因になっている」と続ける。
GooglePlayでは昨年一年間で課金者が30%増加、1億人以上のユーザーがキャリア課金、プリペイドなど、新たな課金方法を得たため、マネタイゼーションについても確実に前進している模様。ディベロッパーにとって魅力的なプラットフォームであるために、今後もAndroid全体のユーザーベースの拡大と実際にゲームに課金をするバイヤーベースの拡大に投資を行っていくようだ。
ツール
Google Playでは、日々デベロッパーツールの進化・改善に力を入れており、その中には海外展開に重きを置いたツールもある。講演ではその中の一部の機能が紹介された。
【デバイスカタログ】
Androidの特性の一つに“多様性”がある。世界中で普及しているAndroid端末だが、端末種類の多さが大きな魅力になっている反面、デバイスの検証やデバックなどの情報管理の手間はディベロッパーにとっては大きなハードルになっていた。
そこで生きてくるのがデバイスカタログの機能。
これは、Googleが実際に所持している数千もの端末の詳細なスペック情報と、ビジュアルを簡単に確認できるもの。この端末はどのようなチップやRAM、GPUを使っていて、スクリーンサイズやOSバージョンがどうなっているか、を簡単に把握できるツールだ。
自分の国で販売されていない端末なども確認でき、自分のゲームが実際にどの端末でどの程度のユーザーにインストールされていて、どの程度の売り上げをあげているのかがデータとして一目でわかる便利ツールとなっている。
【ユーザーレポート】
世界中のGoogle Playストアで、自分のアプリのページにどの程度のユーザーが訪問しインストールしたか、またその先で実際に購入活動をしたのかどうかを国別で見ることができるレポート。ビジネスにおいて肝となる情報がパネル形式で簡単に見ることができるようだ。
【A/Bテスト】
上のユーザーレポートとあわせてよく使われるのがA/Bテスト。これは「どちらが良いかは、ユーザーに聞いてしまうのがいちばん早いのではないか?」という考えのもと、ユーザーごとにストア掲載情報を変え、よりコンバージョン率が高いものを採用できるという優れもの。
仮にアメリカで自分のアプリへのコンバージョンが悪かった場合、ページに掲載しているスクリーンショットやゲーム紹介文をその国にあわせて改善しようとするのがほとんどだが、どんな表現が受け入れるかは現地の人しかわからない。
そんなときは、このA/Bテストを使うことで課題を解決することができる。過去の例では、スクリーンショットを変えただけで、コンバージョン率が40%も上がったという報告もあるようだ。
プログラム
いかに優れたツールやプラットフォームを作っても、うまく活用してもらえなければ意味はない。そのため、GooglePlayでは、世界各地でさまざまなディベロッパーイベントや付随するプログラムを開催している。
「海外で成功を治める可能性は、すべてのディバロッパーに等しくある」と熱く語る金氏。
『ねこあつめ』や『マインクラフト』などのインディーゲームを例に上げ、「スモールチームが作ったこれらのゲームが、今でも世界中の老若男女から愛されている」と小規模なディベロッパーの可能性を強調。
その後、世界で活躍を目指す、可能性を秘めたスモールチームを応援するため、日本と韓国でインディーゲーム向けのコンテストを2018年4月に実施することを発表した。
“インディーゲームフェスティバル”は2016年韓国・ソウルを皮切りに、北米、ヨーロッパへと広がった、Google Play公式のインディーゲームコンテスト。優勝したディベロッパーは、ビジネスとして成功するためのコンサルティングや、GooglePlay上での露出、そのほか多くのマーケティングサポートを受けることができる。
来年4月に日本で初開催。氏は「このプログラムを通して、スモールチームのクリエイティビティに光をあてることで、より独創的なゲームを多くのユーザーに楽しんでもらうためのきっかけになる」と、“インディーゲームフェスティバル”に強い期待を示した。
日本での応募開始は2018年2月1日。キックオフイベントは2017年10月28日を予定している。
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日本・韓国・台湾でグローバルに成功している先駆者たち
ここからは、実際に海外で大きな成功を収めている3つの会社から、ディベロッパー視点での、それぞれの“Go Global”ストーリーが紹介された。
バンダイナムコエンターテインメント
日本からはバンダイナムコエンターテインメントのNE事業部事業部長の金野徹氏が登壇。昨今のモバイル分野の推移と海外展開についてのプレゼンテーションが行われた。
モバイル関連の売り上げ推移は、スマホゲームが順調に拡大。海外比率についても順調に成長しており、売り上げの内訳で、今年度は海外比率25%を目指しているとのこと。氏は「日本はグローバルの中の1つの国にすぎない」と俯瞰した意見を述べつつ、“今後海外展開をどのように拡大していくか”を中心に話が進められた。
まずは、売り上げ拡大要因のタイトル群が紹介された。
『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』は全米で第1位、『アイドルマスターシンデレラガールズ』は日本で1位。『ONE PIECE トレジャークルーズ』は韓国で2位。『ソードアート・オンライン メモリー・デフラグ』は台湾で8位など、「日本のモバイルタイトルはなかなか世界で通用しない」とささやかれている中、確実に各国のセールスランキングで実績を積み上げてきている。
このような実績の背景には3つの海外戦略の手法があると言う。
1.ワールドワイドで共通の手法をとる
この手法の事例として『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』が挙げられた。
『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』では“ユーザーがプレイを開始してからかめはめ波を打つまでの時間が継続率に影響する”というほかのゲームではありえないKPIが存在するとのこと。
これは、国が変わっても、ユーザーが『ドラゴンボール』に求める魅力は変わらないことを示しており、IPの魅力は万国共通にあるということを証明している。配信する国によって手法を変えるのではなく、ストレートにIPの魅力を伝えることが大切なようだ。
2.配信国にあわせたコンテンツ開発
「IPの魅力はそのまま伝えるが、それを伝えるための手法はローカライズする必要がある」と、配信国にあわせてプロモーションを変化させているバンダイナムコエンターテインメント。
ここでは、『ONE PIECE トレジャークルーズ』の韓国版が事例として挙げられた。
韓国で展開されている原作コミックやTVアニメを見ているユーザーが、違和感なくゲームを楽しむために、効果音にまで拘った翻訳を行っているとのこと。
プロモーションを含めた運営に関しても、各国で好まれるような表現を採用しており、日本では当たり前のゲームの機能も、国によっては丁寧に説明するように変化を加えているようだ。
3.キャラクターマーチャンダイジング
バンダイナムコエンターテインメントは、豊富なIPを活用して、世界各国のエンターテインメント分野において幅広く展開している。
モバイルアプリが“点”で市場に出ていくのではなく、玩具や家庭用ゲーム、TVアニメとともに“面”として市場に出ていくことで、IPの認知を高めつつ魅力を高めることができるそう。
このような取り組みでワールドワイドに展開しているバンダイナムコエンターテインメント。まだまだ手探りの部分が多いと話すが、今後の海外展開の動向に注目だ。
ネットマーブル
ネットマーブルジャパンの代表Taesoo Kim氏からは、海外展開に本腰を入れたこの3年間のノウハウをもとにプレゼンテーションが行われた。
2015年〜2016年に海外展開をするという目標を掲げてから、『MARVEL Future Fight』や『リネージュ2 レボリューション』など、世界中で遊ばれるヒット作を生み出しているネットマーブル。
実績についても、ここ3年間の伸び率を見ると間違いなく成功しており、2017年度は第1四半期の時点で3位となっている。
ネットマーブルの特徴は、いろいろなジャンルに特化した開発スタジオを持っているということ。『リネージュ2 レボリューション』のような壮大なMMORPGや『MARVEL Future Fight』などのアクションRPG、ターン制RPGの『セブンナイツ』など多彩なジャンルを開発ができるのが強みと話す。
また、「大きな市場を狙うのであればその国にあわせたコンテンツ開発が重要だ」氏は続ける。韓国で開発したゲームをそのまま日本で配信するのではく、日本のゲームとして生み出す、開発力が必要なようだ。
あわせて、その国の市場にあうIPを使うことで、さらに受け入れられやすくなる模様。たとえば、英語圏なら『MARVEL』シリーズ、日本なら『妖怪ウォッチ』や『ザ・キング・オブ・ファイターズ』といった具合に、各国に適したIPで展開することも成功に一役買っているようだ。
つぎに、ネットマーブル視点の海外展開をする際のヒントとして3つのポイントを紹介した。
1.Google Play Consoleをフル活用すること
一つ目は、Googleが提供するデベロッパー向けツールGoogle Play Consoleをフル活用すること。事前登録機能やA/Bテストをしっかり活用し、各国の転換率を見ながら、ターゲットにあわせた展開をすることが大切なようだ。
2.先入観(ステレオタイプ)を捨てよう
ネットマーブルらしさが際去ったのがこの項目。
ここでは、『リネージュ2 レボリューション』が事例として紹介された。「日本ではMMORPGやPvPのような対人戦は玄人向けのジャンルなので、そんなにうまくいかない、という先入観があった」と氏は話す。
8月にローンチされた同タイトルは、セールスランキングでも上位を獲得している。「この国でこういうタイプのゲームは受け入れられない」という先入観をなくして開発に臨むことがディベロッパーには重要なようだ。
さらに、「そのゲームのコアコンテンツは変えてはならない」と氏は続ける。
『リネージュ2 レボリューション』であれば、基本的には100対100などの対人戦が軸となっているが、「日本では対人戦は受け入れられない、だから協力プレイのコンテンツでいこう」というような、根本のコンテンツを変えてまで配信する選択は良くない。
そのゲームが持つもっともおもしろいところは変えずに、“(主力コンテンツに)どうやって導線を引くのか”が大切なようだ。
3.Global One Bild(GOB)より独自のビルド
3つ目は、海外展開をする際は、ひとつのビルドではなく、国ごとにビルドを設けた方がいいということ。
たとえば、日本の場合多くのゲームでコラボを行っているが、これがGOBだと、版権元との問題や、時差による問題があるため、あまり現実的ではない。GOBでは国単位でのイベントやアップデートを行うのが難しいため、海外展開をする際は独自ビルドで展開したほうがいいとのことだ。
レイアーク
『Deemo』や『VOEZ』の音楽ゲームで知られるレイアークのCEO、 Ming-Yang Yu氏が台湾代表として登壇。2011年に16人でスタートしたスモールチームが114人の従業員がいる大手ディベロッパーへと成長できた要因についてプレゼンテーションが行われた。
初めに台湾の市場のユニークな特徴を紹介。氏は「台湾の市場は非常に多様性に富んでいる」と話す。
台湾の文化は、中国、西洋、日本など多様な文化が入り混じっており、プレイするゲームもそれだけ多様性に富む傾向にある。つまり、どのタイプのゲームも台湾で売れる可能性があるが、日本や韓国のように、1作品で大きな成功を治めることは難しいようだ。
そのため、アメリカや日本などの大型市場に行く前に、台湾市場でテストするような試験的な市場としては効果的であると氏は話す。
続いて、アプリを開発する際の3つのポイントが紹介された。
1.収益をとるかDLをとるか
ディベロッパーとして新しいゲームを作るときは、“どのポイントに優先順位を置くか”が重要であると氏は話す。大型、中型のディベロッパーに対しては、ゲームを作るときに高額の収益を得たいのか、DL数を上げたいのかを決める必要があるようだ。
また、広告に大きな予算がかかるため、小型のデベロッパーはユーザーの獲得も難しくなってきている。そこで大切なのがブランディング。一旦ブランドが知られていれば、つぎのゲーム、またつぎのゲームというようなサイクルが生まれ、それが結果的に収益に繋がるようだ。
2.生き残るためのスタイルの確立
また、スタイルを確立することもグローバルで生きていくための秘訣と氏は続ける。
ここではTCGのジャンルを例に上げて紹介。西洋のウォークラフト的なスタイル、日本のアニメスタイル、中国に至ってはこれらがミックスされまた違ったテイストになっていることがわかる。
これらのゲームは内容は似ているが、スタイルがまったく違う。世界的にすべての人を満足させるのは難しいので、ゲームを作るときは、まずどのスタイルでいくのか、というのも決める必要がありそうだ。
3.Google Play Consoleでアプリを日々改善
ここでは、新作『ストーリカ』という作品の分析事例が紹介された。
CBT(クローズドβテスト)やOBT(オープンβテスト)のトライアルをやっているが、A/Bテストをした結果、「アプリのアイコンは4%ほどグリーンがかったほうがいい」という結果を見ることができた模様。「社内でどっちにするかを決めるのは困難なためプレイヤーがどちらを気に入るかを見れるのは貴重」と氏は話す。
ほかにも、アプリをよりよい方向に変えているために、FirebaseやBigQueryを用いて、「リアルタイムに毎日分析をすることが大切である」と言葉を残し、講演を終えた。
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