『ドラゴンコレクション』のシステム拡張の変遷を教えます【OGC 2012】

2012-03-16 18:54 投稿

●人気ソーシャルゲームを支える技術とは?

KONAMIの『ドラゴンコレクション』と言えば、ソーシャルゲームを代表するコンテンツのひとつ。会員数も573(コナミ)万人を超えたばかりで、その勢いがとどまることを知らない。サーバーの増強とかたいへんなんだろうなあ……とは、いち『ドラコレ』ファンとして素人っぽく思ったりもするのだが、そんなシステム構築をテーマにしたセッションが、OGC(Open“Game”Contents)2012で行われた、コナミデジタルエンタテインメント ドラコレスタジオ マネージャー 廣田竜平氏による“大人気ソーシャルゲームを支える技術~ 拡大し続けるシステムの軌跡”だ。廣田氏はアミューズメント機器やオンラインモバイルゲームの部門などを経て、いまは『ドラゴンコレクション』の技術責任者を務めている方だ。ちなみに、この場合“システム”とは、廣田氏いわく“インフラ×アプリ”とのことだ。

  

廣田氏いわく、「技術者よりのセッション」というだけあって、なかなかに文系の記者には敷居が高いセッションだったのだが、極めて興味深かったのが、『ドラゴンコレクション』システム拡張の変遷。サービスイン当初、社内的にも評判がよかったために「標準的なソーシャルアプリよりも手厚くやったつもり」(廣田)という『ドラゴンコレクション』のシステム構成だが、あまりのユーザーの増加に2週間で早くも増強。その後も1ヵ月、3ヵ月……と増強が続き、「この闘いは延々と続きました」と廣田氏。「最初の半年はお客様の伸びに対してシステムを追いつかせるのがたいへんで、余裕を持たせられたのは配信開始後8ヵ月後くらいでした」(廣田)という。『ドラゴンコレクション』の人気ぶりの一端をうかがい知ることができるエピソードと言えるだろう。

  
 ▲こちら標準的なソーシャルアプリのシステム構成。▲MMOのシステム構成。
▲上からリリース直後、2週間後、1ヵ月後、3ヵ月後のシステム構成。もりもりと増強されていくのがわかる。これも『ドラゴンコレクション』の勢いを示すものと言えるだろう。ちなみに、記者も勉強しがてら補足しておくと、Load Balancerとは、外部ネットワークからの要求を一元的に管理し、同等の機能を持つ複数のサーバーに要求を転送する装置のこと。Web Serverは文字どおりメインとなるサーバー。DB Serverはデータベース(DB)を保有し、クライアントから検索や更新などの要求を受けたときに処理を行い、結果をアプリケーションに返すサーバーのこと。Chache Serverとは、インターネット上の各種サーバーのデータを一時的に保存しておき、ユーザーからの要求に応じて本来のサーバーの代わりにデータを送るサーバーのこととなる。ひとえにサーバーといっても、これだけのシステムが必要になるようだ。

ユーモア精神あふれる廣田氏は、システム運用のPDCA(※)に関しては、理想は「障害が発生する前に事前に察知すること」とコメント。いざことが起きてからの対応だと、精神衛生上よくないし、コスト的にも跳ね上がるし、さらには「上司に叱られるし……(笑)」と廣田氏。「課題解決をアプリだけ、インフラだけで解決しようと思わないこと。両方を理解したうえで、ベストプラクティスを導き出すことが大事」(廣田)とのことだ。

※PDCA:Plan(計画、目標)、Do(実施、運用)、Check(監視、点検)、Action(改善、見直し)の略。

  

そして、廣田氏が明かしてくれた秘策が“輪番アクセス”。これはサーバーをパンクさせないための安全策で、ユーザーをIDからいくつかのグループにわけて、定期的に利用できる範囲を変えていく方法だという。サービス全体だけでなく、特定の機能に関してもこの方法で開放率をコントロールできるようにすることで、特定の機能のために、サービス全体が止まることを防ぐことができるのだとか。日々の運営のなかで編み出された方法論だと言えるだろう。

質疑応答では、知りたがる聴講者とそれをかわす廣田氏とのやりとりがおもしろかった。『ドラゴンコレクション』のサーバー台数を聞かれた廣田氏は、苦笑したあとで、「明確にはお答えできませが、3桁です」とのこと。また、プログラマーの人数を問われると、「(苦笑)。リリースするときはふたりでしたが、いまはいっぱいです」(廣田)とのお返事だった。

ちなみに、『ドラゴンコレクション』でサーバーに多大なる負担をかけると思われるのが“ランチタイムガチャ”。「“ランチタイムガチャ”は想定内でしたか?」との質問には、「最初のころは正気か?という感じでした(笑)」と廣田氏。ソーシャルゲームのスピード感に合わせるために、突貫でサーバーを増やしたそうだが、「かなり余裕を持って増やしたおかげで、1回サービス停止をしただけで済みました」(廣田)とのこと。廣田氏の講演を聞くと、ソーシャルゲームは縁の下の力持ち的な尽力があってこそ、初めて快適なサービスが保たれているのだということがよくわかる。

  

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