スクエニ安藤ブログ“スマゲ★革命 シーズン2 SP対談(第2回)「『ブレフロ』に込められた熱きゲーム愛」

2014-04-12 14:00 投稿

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早貸氏&高橋氏の過去も明らかに

おなじみスクウェア・エニックスの安藤武博氏(文中、安藤)によるスマゲ★革命。今回は、『ブレイブ フロンティア』(以下、『ブレフロ』)の総監督・早貸久敏氏(文中、早貸)と、同作のプロデューサー・高橋英士氏(文中、高橋)との対談記事を全3回に渡ってお届け。ゲームづくりにただならないこだわりを見せる、三者三様のゲーム論を熱く語ってもらったぞ!

第2回となる今回は、『ブレフロ』のバトルUIの誕生秘話をはじめ、おふたりがゲーム作りを培った古巣のお話まで、過去にまつわるお話が満載!

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▲高橋英士氏(写真左上)、早貸久敏氏(写真右上)、安藤武博氏(写真左下)。

バトルシステム誕生秘話

安藤 『ブレフロ』のバトルのUIは、その手触り自体が気持ちよくて秀逸なんですよね。とても気持ちがいい。ただ、このシステムを誰かが企画書通りのレイアウトで作ったとしても、いきなりこの触り心地には絶対ならない。これを作るには、感覚的なものがかなり必要になってくると思います。早貸さんは、この部分をどう表現されたのでしょうか?

早貸 感覚的なものを大事にするという意味では、目線誘導の部分はこだわりましたね。『ブレフロ』が一般的なRPGのように技を選択するシステムになっていたら、技を選ぶために一度無機質な下の画面に目を移す必要が出てしまいます。せっかく上の画面で気持ちいい展開が起きているのにそれが見れず、面白さが半減してしまいます。でも、キャラクターのコマンド場所を体が覚えて、目線を動かさずに技を発動できれば、気持ちのいい体験ができる。ここがポイントになっていると思います。ただ、やはり感覚として作った場所なので、どう表現したかと言葉にするのは難しいですね(笑)。

高橋 作りながら工夫していくしかない場所ですよ(笑)。こればかりは、企画としてはじめから詳細な設計なんて出来ない。

安藤 システムに強いこだわりがあるのは分かりましたが、そもそもどういう発想でこの形になったんですか?

高橋 最初から、6人分キャラクターをタッチして戦うというのは考えていたので、まずはそれをプログラマーに作ってもらいました。「1ターンに6回も画面をタップするのは、面倒くさくない?」という意見もあったのですが、とりあえず作ってもらったらこれが意外と嫌じゃなくて。で、次に“ブレイブバースト”ですね。最初はキャラクターの顔を押したら発動するとか、ブレイブバーストモードに切り替えて選択するとか、いろいろなアイデアがあったんですけど、これの触り心地が悪かったんです。

早貸 ブレイブバーストに関してはみんなでずっと悩んでいたんですよ。風呂に入っているときも、ご飯を食べているときも。そうしたら、ある日夢の中でいまのシステムが降りてきたんです。そのときは、1秒でも早く会社に行ってみんなに自慢したくて(笑)。

高橋 最初は「フリックって言葉を最近覚えただけなんだろ?」とか言って茶化していたんですけど、長押しからのフリック操作は気持ちよさの演出にもなりますし、スマホっぽい操作でもありますからね。実際に試したらイケそうだったので、そこからエフェクトやパラメータといったデータ設定に移っていった感じです。

早貸 話はズレますけど、高橋のこのデータ入力へのこだわりがハンパじゃないんですよ! データの調整とかエフェクトを出すタイミングとか。とくにエフェクトを出すタイミングは、1フレームズレるだけで気持ちよさが変わってくるので、凄まじいこだわりを見せていましたね。

安藤 ゲームの面白さって、その1フレームの調整がハマるかどうかが大きいですからね。僕が業界に入って、最初にビックリしたのもそこでした。表面上ではちょっとした数字の変化なのに、そこが変わるだけで見違えるように面白くなるんですよね。

高橋 そうなんです。この細かい調整がゲームに与える影響はすごく大きいんですよね。『ブレフロ』も調整が終わって遊んでみたら、すごく気持ちのいいものにはなってました。ただ、それでも何か足りない気がして。

早貸 緊急会議を開いたんだよね。

安藤 そこで何かを付け足すってなったら、開発側は「え? このタイミングで?」ってなりませんでした?(笑)。

早貸 まぁ、なっていたでしょうね(笑)。実際、コンボとかチェインを入れようかって話も出たんですけど、ゲーム性を入れたら入れたでテクニックが求められるようになってしまい、僕らが目指していた簡単なバトルから離れてしまいます。そこで高橋「SPARKを入れよう」というアイデアを出して、いまの形になったんです。SPARKが入ったことで、“簡単なバトル”“気持ちいい操作性”はそのままに、ワンランク上のバトルに昇華させることができました。

ふたりの原点“ジー・モード”

安藤 おふたりは、もともとジー・モード(※1)にいらっしゃって、フィーチャーフォンの時代からRPGを作っていたんですよね?

(※1)ジー・モード:日本のIT企業。フィーチャーフォン全盛の時代には、多数のカジュアルゲームを配信してきた。2014年2月に親会社であるONE-UPに吸収合併され、事実上の解散となった。

早貸 そうですね、ジー・モード出身です。

安藤 先日、ジー・モードがなくなってしまったときは、どんな感じでした?

高橋 それはもうショックでしたね。本当にビックリしたし、寂しかったです。

早貸 僕らにとって、ゲームの基礎を学んだ場所ですから。

安藤 やっぱりジー・モード時代は、宮路武さん(※2)とのやりとりは多かったですか?

(※2)宮路武 氏:ゲームクリエイターであり、株式会社ジー・モードの元代表取締役社長。『ガングリフォン』シリーズや『グランディア』シリーズの生みの親でもある。

早貸 すごく多かったですよ。宮路さんは、よく僕たちの肩を揉みにくるんです。「早貸ぃ、それ何作ってんだ?」って。

高橋 そんな感じですごく近い距離でゲーム作りをしていましたね。僕が1手30時間制限の8面同時指しができる将棋ゲームを作ったことがあったんですが、宮路さんもテストプレイヤーとしてずっと遊んでくれて。宮路さんは将棋が好きだったので、なんのバグもなかったのに、ひとりで延々と遊び続けていましたが(笑)。

安藤 へぇー。あの時代に1手30時間8面指しの将棋って、新しいですね!

早貸 そうなんですよ。高橋は、通信ゲームをかなり多く作っていて、チャレンジングなものが多かったですね。

安藤 そう言われてみると、ジー・モードがリリースしていたものは、フィーチャーフォン時代からしてみると、すごくチャレンジングなものが多かったですよね。それに、リリース量もハンパなかった。

高橋 年間120本リリースしていましたからね。3キャリア合計で360本オーバーという年もありました。

安藤 さっき話にあった手触りとか感覚的なものを鍛えられたのは、その数をこなしたからなんですね。面白いものを作るなら質も大事だけど、やっぱり量も大事なのだと再確認させられます。

高橋 そうですね。いまの僕は累々たるクソゲーの上に立っていますから(笑)。振り返って見ると、フィーチャーフォン時代のジー・モードというのは、僕らにとってすごくありがたい環境だったんだなと感じます。多作なフィーチャーフォンゲームの環境というのは、ゲーム作りの基礎体力作りに非常に役立ちました。

安藤 そのほかに、ジー・モードや宮路武さんから教えられたものはありますか?

早貸 なんか、宮路さんはずっと自慢ばっかりだったよね(笑)。

高橋 そんなことないでしょ(笑)。宮路さんから言われたことですごく印象的だったのは「ゲームはおもてなしだ」ということですね。「ゲームはお客様に楽しんでもらって、おもてなしをするものだから、お客様が楽しめなければダメだ」と何度も言い続けられました。

早貸 あと「ゲームは愛だ」って言い続けていたよね。

安藤  「ゲームは愛だ」という言葉は、すごく難しい概念的な言葉で、ロマンチックでもあり、哲学的でもあり、示唆的でもあります。おふたりはこの言葉に、どういう意味というか、どんな答えを感じました?

早貸 僕はもう単純ですよ。自分の愛情を注ぎ込むだけ、自分の熱量をどれだけゲームに注ぎ込めるかだと思います。なので、基本的にほかの人のことは考えないですね。

安藤 早貸さんは、自分に向けてゲームを作るタイプなんですね。

早貸 そうですね。ただ、自分の作ったゲームは絶対に遊びませんけど(笑)。

高橋 早貸は、ゼロからイチを作り出すところに最高の喜びを感じるタイプの人間だから、作り終わったものにはあんまり興味を示さないんですよ。

安藤 ターゲットは自分っておっしゃられていますけど、それはいつの早貸さんなんでしょうか? いろいろな方に伺っていると、昔の自分に向けて作られている方が多いイメージですが。

早貸 現在進行形の”いま”の自分ですね。なので、ガチャを入れても面白いゲームが作れると思うから、ガチャも入れます。

安藤 なるほど。高橋さんはどうですか?

高橋 僕も早貸と同じで、愛情を込めてゲームを作るという想いはあります。それに加えて、さっきも話したように宮路さんは「ゲームはおもてなしだ」「遊んでいる人が気持ちよくなったり、ハッピーになれなかったらダメだ」とよく言っていたので、ユーザーさんへの愛というものも、僕らが受け継いだ「ゲームは愛」という言葉に含まれていると思います。宮路さんは、ユーザーさんにネガティブな感情を与えないために『グランディア』(※3)では絶対にキャラクターを死なせませんでしたし。

(※3)『グランディア』:1997年12月18日に発売したセガサターン用RPG。宮路氏が総監督を担った。

プレミアムゲームの行く末

安藤 別の雑誌で行った過去の対談では「エンディングがある、売り切りのパッケージゲームのようなゲームが、スマートフォン業界からなくなってはいけない」という話をしましたよね。

高橋 しましたね。売り切りという形で楽しめるスタイルがなくなるのは不幸だって話ですよね。

安藤 その話の中で、高橋さんはフリーミアムアプリ(無料アプリ)とプレミアムアプリ(有料アプリ)の違いを「路上でゲリラ的にやっている大道芸人やお笑いを見て、面白かったらお金を払う人がいる。その反対で、笑おうという明確な目的を持ち、入場券を買って劇場にお笑いのライブを見に行く人もいる。フリーミアムとプレミアムには、それくらいの違いがある」と語っていましたよね。

早貸 え、なにそんなカッコイイこと言ってるの(笑)。

安藤 いやでも、フリーミアムとプレミアムの違いを例えるのに、これ以上の例えが見つからない。それくらいスゴイ的確な例えなんですよ。フリーミアムユーザーもプレミアムユーザーも、どちらも同じお客様でプレイヤーなんですけど、パッケージゲームってKPI(※4)的に言うと課金率が100%かつ、ARPPU(※5)が一律8800円とかじゃないですか。これはもはや、プレイヤーというよりファンなんじゃないかと思うんですよ。いまはフリーミアムのほうが商業的に強くなっていますけど、時代が変わったからといって、ファンの方をないがしろにするのは乱暴すぎなんじゃないかと思いますね。

(※4)KPI:key performance indicator(重要業績評価指標)。組織の目標達成の度合いを定義する補助となる計量基準群の意。スマートフォンゲーム業界では、おもにゲームの売り上げなどを示す際の総称として用いられる。

(※5)ARPPU:Average Revenue Per Payed Use。利用者が1ヶ月あたり平均でいくら使っているかを示す値のこと。アプリ内課金のある無料ゲームの場合は、有料課金額の平均を指す。

高橋 僕らが時代の流れに合わせてフリーミアムばかりを作っていたら、パッケージゲームというものが絶滅してしまいますし、それを好きでいてくれていたファンの方々も絶滅してしまう。という話で、前回は盛り上がったんですよね。

早貸 それはまさにスクエニさんに言いたいですね! 僕はファンなので(笑)。スクエニさんがプレミアムアプリで一時代を築く瞬間をずっと待っているんですよ。いまの時代の流れだと、スクエニさんしか出来ないと思います。

安藤 そうですよね。これまでの対談でも「いつか、みんなで作ろうぜー!」みたいなモヤモヤした感じで終わっていて。早貸さんは、そういった売り切りのものを作りたいと思ったことはありますか?

早貸 うーん、いまのところは作る暇がないですね。なにかとバタバタしているので。

安藤 ということは、もう次のものを作り始めているんですか?

早貸 具体的なことはお話できないので、それに対してYESともNOとも言えません。ただ、もし2年後くらいに新しいものを作るとしたら、やっぱり次もRPGになると思います。泣けるRPGがいいですね。僕はそういうのが大好きなんで。

安藤 泣けるRPGですか。早貸さんの中で泣けるRPGの傑作っていうと、どんなタイトルでしょうか?

早貸 それはもう『ファイナルファンタジー』ですよ。中でも『ファイナルファンタジーⅣ』がイチバン。でも、ちょっと前にニンテンドーDS版を遊んだんですが、それは泣けなかったんですよね(笑)。

安藤 なんで泣けなくなったんでしょうね? CGとか音楽がリッチになりすぎて、行間を読むことができなくなっちゃったとか?

早貸 そうですね。3DCGというのに、何か冷たいものを感じてしまったというのはあります。ドット絵だと表現の技術レベルがシンプルなので、いろいろ想像で補える部分があるじゃないですか? 全部リアルなCGがやってしまうと、それがすべてになってしまって、どこか冷たく感じちゃうんですよね。

安藤 それは同感です。でも、それとは逆に『ファイナルファンタジーⅦ』や『ファイナルファンタジーⅩ』のように、リアルにしたからこそ感動できるというものもありますよね。

早貸 たしかに『ファイナルファンタジーⅩ』は泣けましたね。単純に自分が涙もろくなっているだけな気もしますが(笑)。でも、そう言われるとCGならではの泣ける演出というものも、色々とやりようがありそうですね。

高橋 泣ける演出という話の延長になりますが、早貸はゲームを作る上で、泣けるかどうかを異常に重要視するんですよ。「『ブレイブフロンティア』は、チュートリアルのストーリーで泣かしたい」なんて言い出しましたからね。あれは一番困りました。

早貸 映画みたいに、冒頭5分で泣かせたいんですよ!

安藤 (笑)。早貸さん流の泣かせるテクニックみたいなものってあったりします?

早貸 テクニックかどうかは分からないですが、自分でシナリオを書いていてウルッとくればオーケーみたいな判断基準はあります。ただ、現在のスマホの表現、あの紙芝居みたいな感じだと、やっぱりどうしてもやりたい表現ができなくて。そこは今後テクニックとかでなんとかしていきたいですね。

安藤 ちなみに、泣けるシーンや涙にも”別離”や”再会”など、早貸さんが好きな涙はどういった類のものですか?

早貸 僕が好きなのは、仲間が助けにくるときの感動ですね。友情に弱いんですよ。仲間が再結集して盛り上がって感動! みたいな。ああいう感情をスマホでどうにか表現したいですね。やろうと思えば出来るプラットホームだと思うので。

ゲームの作りかたそれぞれ

安藤 早貸さんは、RPGを作るときはシナリオから作るタイプですか? それともストーリーから作るタイプですか?

早貸 お話も大事ですが、僕は結構システムとかゲームデザインのほうを重視するタイプですね。たとえば泣けるゲームを作ったとしても、結果的にゲームですからシステムがよくなければ泣けるところまでみんな遊びません。『ブレフロ』も、世界観より先にバトルシステムのアイデアから始まっています。

安藤 なるほど。ではゲームの企画を考えるときはどうですか? システムから入ります? それとも世界観の構築から?

早貸 基本いっしょですね。ぼんやりとした世界観をまずノートに書き留めて、それを実現させるにはどんなシステムがいいかを考えます。そうして思いついたものを脳内で動かしてみて、いい感じだったら企画として相談する感じですね。

安藤 そうなんですか。僕はプロデューサーなので、システムの考案は最後のほうなんですよ。最初にくるのはテーマで、その次はテーマに沿ったターゲット。ターゲットが決まったら、そのターゲットを狙うためのプラットホームを選択して、最後にゲームシステムを考える感じです。高橋さんはどうですか? 高橋さんもプロデューサーですが。

高橋 僕も早貸と同じくプログラマー出身で、彼とは同じ環境で育ってきたこともあり、進めかたはほぼほぼ同じですよ。たとえば、次はタクティクスを作りたいなぁと思ったら、タクティクスを骨にした世界観を考えてと。これはさきほどお話した「ゲームは愛だ」という考えに通じますね。自分が遊びたい、作りたいゲームのほうが制作にかける熱量、愛情は大きくなりますから。

(最終回に続く)

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ブレイブ フロンティア

メーカー
エイリム
配信日
配信中
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iOS4.3以降対応、iPhone4以降/iPod touch第4世代以降/iPad/Android 2.3.3以上/Kindle Tablet Edition

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