【新次元ゲーム開発セミナー】未経験者だらけのAppBankGamesがいかにしてハイクオリティーアプリを完成させたか

2012-10-19 20:40 投稿

●ゲーム開発未経験者を大量採用してiPhone用ゲームを開発!

2012年10月18日、都内にてオートデスク、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン、グリー共催による“これからのモバイルゲームはこう創る! 新次元ゲーム開発セミナー”が開催された。このセミナーではゲーム製作ソリューションや、実際にソリューションを使用しているユーザーの事例が多数紹介されていた。本セミナーの最後の講演者として登壇したのが、今年2月、“極上の開発環境”を銘打ってスタートしたAppBankGames代表取締役の宮川義之氏。その宮川氏が語った『Dungeons&Golf(ダンジョンズ&ゴルフ)』の開発秘話や開発環境構築の秘訣とは。

▲AppBankGames 代表取締役 兼 ゲームクリエーター 宮川義之氏

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●個人開発から2012年2月のスタジオ創設へ

“ゲーム開発未経験者が世界市場に挑戦する方法”と題して行われた本セミナー。宮川氏の経歴とスタジオ設立の経緯から語られた。もともとはゼペットという個人会社で、1日に10万人ものプレイヤーが遊ぶゲームを開発し、運営していた宮川氏。そのころからAppBankの村井智建氏(現AppBank株式会社代表取締役兼AppBankGames取締役)から「もっとたくさんゲームを作りましょう」と勧められたという。しかし、ひとりで4ラインものゲームを並行して開発したことで限界を感じ、そのことがきっかけで2012年2月にAppBankと協力してAppBankGamesという開発スタジオを創設することになった。

▲2012年2月にAppBankの村井氏の提案でAppBankGamesスタジオ創設

●iPhone 5時代のゼロからのゲーム製作事例!

そこから宮川氏はスタジオの大多数を占めていたゲーム開発未経験者による“ゼロからのiPhone 5時代のゲーム製作事例”と題して、その経験談を語り始めた。製作事例として挙げたのは、unity(ユニティ)で製作し、間もなくリリースする予定の『Dungeons&Golf(ダンジョンズ&ゴルフ)』だ。iPhone 5の時代にどんなゲームを作るべきかを考えた宮川氏は「iPhone5を代表とする端末の高性能化、ユニティによる開発環境の低価格化によってスゴイことができそうだと夢が広がったんです」と楽しそうに語っていた。

最初に目標とする成果を、

・iPhoneとゲームは最重要市場
・いいゲームをたくさん作りたい
・本気のクリエイターを育成、発掘するという命題
・育成するには実戦が第一

と順に考えた。

目標のつぎには“仮説と決断”として、

・大量採用しても、定番ゲームなら完成像がブレない
・経験不問でも、敷居が低い開発環境なら問題ない
・市場的に、発明ゲーとの競争は確度が低い
・上位にある定番のゲームとクオリティーで勝負!

と考えて、その当時ランキングで人気だったゴルフゲームでの勝負を決定したそうだ。

●2ヵ月後のテストプレイと渦巻く悲観論!

「スタッフに経験がなくてもユニティがあれば大丈夫!」、「Terrainエディタでゴルフコースも簡単に量産できるだろう」と一挙に20人ものスタッフを大量採用して開発をスタートした。しかもその大半は、なんとゲーム開発未経験!! 2ヵ月後、だんだん形になってきたゲームをスタッフでテストプレイをしてみたところ……。「ようやく遊べるようになったのに、「つまらない」「なんでゴルフなのか?」「土台から無理」「違うゲームを作ろう」などマイナスの感想ばかりが出て、チームに悲観論が充満し始めたんです」(宮川)。

 
 
▲ユニティを頼りにして未経験者を中心に開発を始めたが……。「問題が発覚し悲観論が充満しました」と宮川氏。

●ゴルフの何がおもしろいのか実際に色々な体験をした

最初の壁はチーム内の悲観論を覆すことだった。問題として、最も重要なことは“ゴルフって何がおもしろいのか?”ということだった。その解決策として実際に現実のゴルフをプレイしてみたり、石川遼選手やタイガー・ウッズ選手などプロの気持ちのいいプレイを見に行くということを実践してみたそうだ。想像だけの開発はつまらないので、実際のコースをとことん研究したところ、「そのときのゲームと実物はもの凄い違いがあることがわかりました。実在のコースはすごく雄大で、起伏が半端じゃなく、Terrainエディタでは再現は無理」と実感。それが5月ごろのことで、さまざまな取材のおかげでスタッフ間のビジョンの共有もより進んだということだ。

●その後にできたものを初見のゲストに毎週毎週テストプレイしてもらう

問題を解決するために、毎日山のような意見を出し合い、開発者同士のラリーを行った。そして改善していったものを、毎週そのゲームを初見のゲストにテストプレイしてもらう。そして新たな問題もつぎつぎと浮かび上がってきた。それらのゲストの意見を参考にして信じられないほどの回数の“破壊と再生”を繰り返し、マスターアップぎりぎりでも全ボツも辞さないという気持ちで作り上げたというのが『Dungeons&Golf』だ。

宮川氏からは「大量の初見ゲストによる意見を取り入れ、その問題をひとつひとつ丁寧に除去しましたが、なんと合計1万6千回も修正しました」と驚きの発言も。その結果できあがった最新のゲームを、そのときちょうどiPhone 5の発売に備え、社員総出でアップルストアに並んでいたAppBank本家の人々に見せたという。

▲iPhone 5の発売に備えてアップルストアに並んでいたAppBank本家のスタッフ。すごいリアクション(笑)

▲ちょうどiPhone 5発売日前にできたゲームのデモ映像を会場でも流した。

●iPhone 5の発売! そして常時マルチプレイの採用!!

『Dungeons&Golf』は、iPhone 5に完全対応して製作し、常時マルチプレイオンリーという画期的なシステムも採用した。マルチプレイなので、つねに世界中で誰かが遊んでおり、その人々とマッチングしてもらえるということだ。宮川氏によると「先に打ったプレイヤーの打球を見ることで、風や地形の影響を参考にすることができるというメリットや現実に即したおもしろさがあります」とのこと。

▲半年間のトライ&エラーの大きな成果。

●本講演のまとめと第二期生の募集開始も説明!

講演のまとめとして、

・環境が究極化し、ダウンタイムが減ることで製作に集中できる
・仮説を実験して失敗しても再挑戦する余裕が増えた
・世界市場のライバルを自然に意識
・ゼロベースでも充実したゲームが作れる

ということを挙げていた。

最後に、AppBankGamesでは第二期生の募集を開始したことを説明し、場内を沸かせた。プログラマーの課題は、“ブロック崩しをZipで提出”することだという。ちなみに2月に採用した第一期の募集では、パチンコゲームのデモプログラムの提出が条件だったということだ。そのときは80人もの応募があったようだが、「ゲーム製作未経験の人たちの、“やりすぎ度”が半端じゃなかった(笑)」とのことで、「経験者の人より限度を知らないところがよく、そいう人を上から順に採っていったら、自然にほとんどがゲーム製作未経験者になってしまいました」と振り返った。講演終了後はそのパチンコゲームを会場内のデモコーナーで展示した。宮川氏は終始ユーモアを交えてわかりやすく講演し、なごやかにセミナーを終えた。

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