シナリオ制作をAIでサポート?ヒューマンエラーの防止など、サイバーエージェント内のツール開発事例【CAGC2024】

2024-03-11 18:59 投稿

シナリオ制作をアシストするAIの使いかたとは?

サイバーエージェントは、2024年3月7日にエンジニア・クリエイター向け技術カンファレンス“CyberAgent Game Conference 2024”を開催した。

本カンファレンスでは、『呪術廻戦 ファントムパレード』、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』などをゲームタイトルを開発したゲーム・エンターテイメント事業部が、30を超えるセッションを実施。開発に関する技術やノウハウを発表した。

本記事では、セッション“AIを活用したシナリオ制作支援:あいまい検索(シナリオ・台詞データの意味検索)/台詞のキャラクターらしさ推定”で発表された内容をお届けしていく。

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多様な表現を検索でヒットさせるAI活用法

本セッションを実施したAI戦略本部は、2023年5月に設立された横断組織。ゲーム・エンターテインメント事業部(SGE)に属する各子会社に対して、AIを活用した制作支援を行うことを目的としている。

現在は業務効率化、新たなユーザー体験の創出の2軸でのAI活用を目指しており、とくに業務効率化に注力しているという。

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AIを使った業務効率化として実際に実施している例として、キャラクターのセリフを検索できるツールが挙げられた。

具体的に業務効率化でどのようにAIを使うのか、そもそもなぜAIを活用するかについては、スマホアプリの膨大なシナリオ量などが背景にある。

毎月イベントが実施され、新カードやキャラが実装されるアプリでは、必然的にキャラのセリフ数やシナリオも多くなっていく。そういった状況に対して、過去シナリオからセリフを参照する際に、はっきりセリフを覚えていなくても検索できるツールを開発したそうだ。

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実際にツールを開発している“あいまい検索プロジェクト”では、「こんなセリフがあったはず」という検索に対して、該当するセリフがヒットして参照できるようにしている。これは単純に文字列で検索をしているのではなく、同じような意味合いを持つセリフもヒットしているのがAIが機能している点だ。

検索例では、「アイドルは笑顔が一番です!」というセリフに対し、“笑顔”というワードだけでなく、遠くない意味合いを持つ“元気と愛想”や、“アイドルスマイル”という独特なセリフまで拾ってきている。

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そのキャラ独特のセリフや言い回しなどをAIを活用して検索できることで、新規ライターがキャラクターの特徴を理解する支援ができるとのことだ。

単純な文字列検索と違い類似した意味合いを持つセリフがヒットすることで、既視感の防止や、そのキャラが使わないような言い回しを避ける整合性の担保にも活用できることが期待される。

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このツールの実現には、セリフテキストをベクトル化し、ベクトル同士での類似度で似たセリフを算出するという手法を取っている。ベクトル化に使用したのは、文章の意味を捉えるのが得意なSentence BERT。

本ツールは現在導入を始めたばかりだが、汎用的に使えるため、今後多くのプロジェクトで展開していくことを考えているという。

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キャラの設定ミスを予防するキャラクターらしさを推定するプロジェクト

続いて紹介されたのは、キャラクターらしさ推定プロジェクトというもの。

こちらは作ったセリフがそのキャラクターに適しているか、“キャラらしさ”を図り、その結果によってミスの可能性がある場合はアラートが出るように開発を進めているツールとなる。

セリフに対して、意図しないキャラクターが発話者として設定されるミスを、発生前に予防することが期待できるという。こういった人為的ミスはボイス収録後に発覚すると大きなコストがかかるため、予防策としての活用が狙いとなるのだろう。

 

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こちらのツールでは、あいまい検索でも使用していたSentence BERTをチューニングして、キャラの台詞の特徴を学習させることで実現しているようだ。

まず学習させたSenteneBERTを用いて全てのセリフをベクトルに変換し、キャラごとに平均を算出する(キャラクターベクトル)。その後、推定したいセリフもベクトルに変換し、先述のキャラクターベクトルとの類似度を算出するという流れとなっている。

この類似度をキャラクターらしさとしてそのまま提示するほか、キャラクターらしさで順位づけすることでどのキャラのセリフと判断できるかを提示するという活用方法もあるという。

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本ツールには学習データとして26062件、検証・評価データを1850件実験で使用しているが、現状ではまだ精度的には十分とは言えない状況だという。

100名のキャラクターを対象に精度を図ったため、数の多さからも難しさがあったと分析していた。ただし、特徴的な口調をしているキャラクターについては、精度が高くなる傾向にあるようだ。

今後は新プロダクトでの検証や、必要に応じての精度改善のための手法を検討しつつ、ツール化しての導入を目指していくとのこと。セリフと発話キャラクターの不一致検出や、キャラクター性の担保に有効になる可能性が高いツールなので、今後実用化されればゲーム制作の手助けになることは間違いないだろう。

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