愛に溺れ、愛に燃える騎士!エレック【しゃれこうべが語る元ネタの世界 第49回】

2020-09-23 13:00 投稿

久しぶりに~

プロレス遠征がしたくなって参りました!!!

いやね、女子プロ団体のスターダムが12月に大阪エディオンアリーナ第一競技場、キャパ6000人ぐらいのでっかい会場で初めて大会を開くとの情報が出ましてね! こりゃ気になるなと!

もう半年以上遠征はしていなかったのですが、こ~りゃ迷いますよ!!

ってな近況報告はされおき、今週も始まりましてよ『元ネタの世界』!

人間関係がアレなことに定評のあるアーサー王物語ですが、今回はわりと純情(?)物語となっております!

主役となるのは騎士・エレック、そして乙女・エニードでございます。んでは、さっそくお話へ!

【目次】
・謎の騎士と乙女とドワーフと
・エレック、乙女と出会う
・愛に溺れるエレック
・愛ゆえに
・次回はトリストラムとイゾルデ!

謎の騎士と乙女とドワーフと

物語は、アーサー王と王宮の騎士たちが狩りに出かけるところから始まります。

当時は、白い牡鹿を狩ることができた者は領土でいちばん美しい乙女に口づけできる、という習わしがあり、アーサー王もこれにならって狩りをしようと言いだしたのです。

これに対し、円卓の騎士のひとりであるガウェインは待ったをかけます。

「王よ、そんなことをすれば誰もが自分の愛する女性こそいちばん美しいと言って揉めごとが起きますよ」

20200922_エレックエニード (1)

そう言葉をかけるガウェインに、アーサー王は答えます。

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そんなこんなで王と騎士たちは狩りに出かけることとなりました。

アーサー王の後ろをついて行くのは、王妃・グィネヴィアと彼女の侍女、そしてふたりについていた騎士のエレックです。

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ふと、彼らの近くを、乙女とドワーフを連れたひとりの騎士が通りかかります。

その騎士が何者か気になったグィネヴィアは侍女を使いにやって正体を聞き出そうとしますが、騎士に近づいた侍女はドワーフの鞭に打たれ、その肌に痛々しいアザをつけることとなってしまいます。

エレックは騎士とドワーフの行動にひどく怒りますが、狩りに向かう途中だったため、騎士と戦うような武具を持っていませんでした。

そのためエレックはその場で戦うのではなく、騎士の後をつけ、道中で武具を借りてから戦いを挑むことにします。

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グィネヴィア王妃と侍女はエレックを見送り、王宮へと戻ります。

一方、そんな事件に気づかず狩りに出ていたアーサー王は見事白い牡鹿を仕留め、乙女に口づけする権利を得ていました。

さて誰がもっとも美しいか、などと考えるアーサー王にグィネヴィアはエレックと謎の騎士との話を伝え、エレックが戻るまで口づけは保留するように言いつけたのです。

エレック、乙女と出会う

騎士を追ってとある街にやってきたエレック。

相手がその街で一泊すると見ると、自身も宿を求めて近くの民家を尋ねます。

エレックが訪れた家では、裕福ではないが親切な夫婦と、優しく、美しい美貌を備えた、エニードという名のひとり娘が彼を迎えました。

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エレックはひと目でエニードに心を奪われ、いつ求婚しようかと思案を始めます。

そんなことを考えているとはつゆ知らず、夫婦は食事のなかで近日開かれる大会の話を始めました。

いわく、その大会では騎士たちが恋人の美しさを証明すべく戦い、優勝者の恋人には美しさの証として1羽の灰鷹を得ることができるというのです。

しかしイデールというあまりに強い騎士がおり、彼と戦いたがる者がいないため、いつも不戦勝で優勝してしまうそうです。

話を聞いてピンと来たエレックは、夫婦に質問を投げます。

「もしやそのイデール殿は、鞭を持ったドワーフを連れておいでではありませんか?」

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エレックの勘は的中しており、イデールこそがグィネヴィアの侍女に鞭を打たせた騎士だったのです。

エレックは復讐のために大会に出場することを決意し、エニードにパートナー役、つまりは恋人になってほしいと申し出ます。

エニードの父親は紳士的で美貌も備えたエレックをよく思い、武具を貸すなど積極的に協力してくれました。

こうして、エレックとエニードは大会に向かったのです。

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大会当日、いつも通り不戦勝優勝を決めようとしたイデールの前に、エレックが歩み出ます。

エレックを命知らずと嘲笑う声も聞こえましたが、実際に戦いが始まると、エレックはイデールに圧勝してしまいます。

命乞いをするイデールに、エレックはグィネヴィア王妃のために戦ったことを告げ、イデールに王宮へ向かって非礼を詫びるように命じました。

こうして、復讐を果たすとともにエニードへの愛と彼女の美しさを証明したエレックは、エニードとともに意気揚々と王宮に帰ってきたのです。

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さてエレックとエニードが王宮に着くと、そこではガウェインの心配通り、どの乙女がもっとも美しいかではげしい口論がくり広げられておりました。

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しかし、エニードを見た騎士たちは口を揃えて「彼女こそがもっとも美しい乙女だ」と語り、意外な形で論争は決着を見るのでした。

アーサー王も満足気にエニードに口づけをし、白い牡鹿狩りもようやく幕を下ろすのでした。

愛に溺れるエレック

その後、みずからの領土でエニードと幸せに暮らすエレックでしたが、次第に騎士としての評判にかげりが見られるようになってきます。

というのも、彼はエニードに夢中になるあまり、武闘大会にも出ず、領主としての務めも疎かにしてしまっていたのです。

このことにエニードが胸を痛めていると、エレックはエニードを連れ、名誉挽回の旅に出ます。

しかしこのとき腹を立てたのか、エレックはエニードにひとつの命令を出します。

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こうして、沈黙のなかふたりが進んでいると、道の脇にある茂みを並走する3人の騎士が現れました。

先行していたエニードは騎士たちに気づきますが、エレックが気づいている気配はありません。

エレックの言いつけがあったため声を出すことをためらったエニードでしたが、愛する人を守るためならば迷うことはない、と声を発します。

「エレック様、横の茂みから私たちを襲おうとする者たちがいます!」

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エニードのおかげで茂みに隠れていた騎士たちを瞬殺したエレックでしたが、感謝するどころか彼女が沈黙を破ったことに腹を立ててしまいました。

しかしその後もたびたびエニードはエレックに危機を知らせ、そのおかげでエレックは5人組の騎士や、エニードをさらおうとする領主などを撃退します。

冷たく接したにもかかわらず何度も危機を知らせてくれたひたむきさにエレックは心打たれ、ようやく彼女に優しく接するようになるのでした。

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その後、今度は正面から勝負を挑んでくる騎士が現れました。

ギフレイスと名乗るこの騎士は正々堂々と戦い、エレックと互角の勝負をくり広げます。

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なかなか勝負がつかずに剣を振るい続けた両者でしたが、戦いの果てに剣が折れてしまったのはギフレイスでした。

互いの実力に敬意を抱いたふたりは盟友となり、困ったことがあれば助け合おうと誓ったのち、その場は分かれて別々の道を進んでいきます。

愛ゆえに

さらに旅を続けるなか、エレックはひょんなことから人助けのために巨人と戦うこととなり、なんとか勝利はしたものの、その代償に重傷を負ってしまいます。

傷を癒す場所を探すふたりのもとに、オリングレスという名の伯爵が通りかかります。

伯爵はひと目でエニードを見初め、彼女を誘拐してしまうのです。

当然エレックは伯爵を止めようとしましたが、傷のため思うように動くことができず、なぜかオリングレス伯爵が持っていたに叩きこまれてしまいました。

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エレックが入った棺とエニードを連れ、自分の城へと戻った伯爵は、棺のそばで無理矢理に婚礼の儀を執り行おうとします。

しかし、誓いの言葉を求められたエニードは毅然とした態度で答えます。

「私の夫はエレックただひとり。あなたの妻になるつもりはありません。

あぁ、愛しのエレック。いっそ私もあなたの後を追って死んでしまいましょうか」

と、彼女が言葉を響いたそのとき、棺の中で死んでいたと思われていたエレックの身体に力がみなぎり、彼は棺のふたを吹き飛ばしながら飛び出してきたのです。

オリングレス伯爵が呆気に取られているあいだにエレックは近くの剣を取り、ひと振りで伯爵を倒してしまいます

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まわりにいた兵士たちも、エニードでさえも、まるで亡霊を見たかの驚きようでした。

やがて兵士たちは平静を取り戻しましたが、そこに事態をを聞きつけたギフレイスが加勢し、エレックとともに兵士たちと戦いながら城を脱出します。

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こうして、ドタバタ騒ぎの冒険を終えてエレックとエニードは領土に戻ってきました。

その後、エレックはエニードへの変わらぬ愛を注ぎながら、彼女が悲しまぬよう、騎士として、領主としての務めもしっかりと果たすようになり、ふたりは幸せに暮らしたのです。

~ めでたしめでたし ~

次回はトリストラムとイゾルデ!

と! 綺麗なハッピーエンドでございました!

わりとこれ一本で映画化もできそうな感じがしますね!

余談ですが『乖離性MA』のエレックは最初見たとき女性だと思ってたので、設定を確認して男性だと知ったときに衝撃はなかなかでしたわ……!

さて次回ですが、おつぎはアーサー王物語のなかでも有名、というか何ならアーサー王物語を超えて有名までワンチャンなトリストラム(トリスタン)とイゾルデの物語をご紹介!

これまた騎士と乙女の愛情物語なのですが、エレック&エニードの物語とはまたぜんぜん違う展開を見せるので、乞うご期待!

【“元ネタの世界”まとめはこちら】

文/しゃれこうべ村田(@SRSWiterM

参考文献

Chrétien de Troyes, Arthurian Romances, U.S.A, 1974.

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