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新規獲得ではなく既存のファンも大切に!中長期目線で売上を伸ばす“ファンベース”という考えかた【CEDEC 2019】

2019-09-06 14:43 投稿

ファンを土台(ベース)とした考え方を熱弁

2019年9月4~6日の期間、神奈川・パシフィコ横浜にて開催されるゲーム開発者向けカンファレンス“CEDEC 2019”。

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ここでは、本カンファレンス内で行われたセッション“ファンベース~これからの時代になぜファンベースが重要か”のリポートをお届けする。本セッションを行ってくれたのは、コミュニケーション・ディレクターとしても活躍を見せる、株式会社ツナグ代表の佐藤尚之氏。ファンベースの提唱者でもある氏が語る、その効果、重要性とは?

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▲ツナグ代表の佐藤尚之氏。

本セッションでは、新規顧客に目を向けるよりも、その商品を変わらず愛してくれる“ファン”に目を向け、中長期的に売上を伸ばす“ファンベース”という考えかたについての話が行われた。

ファンに目を向けるといいことだらけ!

まず、そもそもファンとはどういう人を指すのか? 佐藤氏が考える定義は【企業やブランド、商品が大切にしている価値を支持してくれる人】であるという。この“大切にしている価値”には、“創業の志”や“オリジナリティ”など、商品背景にあるものや考えかたも含まれる。

通常、どんな企業やブランドでも、ファンを大事にしているというイメージが大なり小なりあるものだが、佐藤氏は「ファンという存在は軽視されがち」と語る。それは「ファンは黙っていても商品を購入してくれる」という理由に起因する。

企業はつねに成長を目指していくため、すでに開拓出来ている既存ユーザー層ではなく、新規顧客の獲得のほうな注力しがちになってしまうのだ。

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こういった考えかたをする企業はいまも多いが、しかし最近では逆に、“新規から既存へ、そして既存からファンへ”という考えかたに変わりつつあると言う。こうした動きの背景にあるものはやはり“ファンが売上の大半を支え、伸ばしてくれている”という純然たる事実。

参考として出された某飲料メーカーの売上データによると、2割の顧客が売上の8割のを支える“パレートの法則”に近い数値となっていて、上位のコアファン&ファンが売上の大半を作り出していることがわかる。また、このほかにもさまざまなデータが提示されたが、そのいずれもパレートの法則に則るような結果となっていた。

このように売上に貢献している熱狂的なファンにフォーカスしていくことで、中長期的に売上を伸ばしていく。これこそがファンベースという考えかたである。

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加えて佐藤氏は「既存顧客維持のコストは、新規顧客獲得に要するコストの5分の1で済む」(1:5の法則)、「顧客離れを5%改善するだけで、利益が最低でも25%改善される」(5:25の法則)といったものも紹介してくれた。そして、「こういった観点から、売上の大半を占めるファンに目を向けてほしい」とまとめている。

また佐藤氏は、人口の急減や既視感などによる若者の物欲不足、類似商品が山のように出ることで発生する超成熟市場&USP(Unique Selling Proposition:独自性)の陳腐化、さらに情報量過多によって起こるメーカーリリース(メーカー発信情報)の埋没といった現象が起きており、新規獲得の道が非常に険しくなっていると語る。

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▲人口の増減を示したグラフ。2010年をピークに減少、それもかなり急激なペースで減少していくことが予想されている。

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▲数が多いと迷ってしまい、逆に購入されないといった例を記載したスライド。超成熟市場ならでは問題点だ。

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▲テラバイトの1000×1000×1000倍にもなる“ゼタバイト”級の情報が流れているという現代社会。これでは情報が直ぐ埋もれてしまうのも納得だ。

こうした理由から、佐藤氏は「いまこそ、現在そのタイトルを愛してくれていて、売上にも貢献してくれるファンをさらに大事にした施策を進めるべきだ」と力説。さらに、ファンはその作品に対し新たな顧客を導いてくれる存在であるともいう。

大手PR会社の調査結果によると、もっとも信頼できる情報源は家族・友人であるという。これは、自身と価値観が近い人から得た情報に対して安心、信頼を置く傾向に起因する。友人から勧められたゲームは、購入のハードルが下がるほか、しっかり楽しめるという経験は、ゲームファンならば誰もが通ってきた道だろう。まさしくそれである。

つまり、既存のファンを大事にすれば、それがそのまま新規獲得につながる可能性があるということだ。それが実際にどれだけの効果を発揮しているのかは不明だが、無視できないことは確かだろう。

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3つのアプローチでファンの支持を強くする

では、企業にとって大事な存在であるファンから、さらなる支持を得るにはどういった施策を行えばいいのだろうか? この点についても佐藤氏はひとつの答えを提示してくれた。ファンの支持を強くするには、以下の3つのアプローチが効果的だという。

・ブランドなどの価値自体をアップさせる(共感を強くする)
・ブランドなどの価値を、ほかに代えがたいものにする(愛着を強くする)
・ブランドなどの価値の提供元の評価や評判をアップさせる(信頼を強くする)

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この共感、愛着、信頼という価値は情緒的価値であり、感情(情緒的価値)は機能と違ってコピーできないというのも重要なポイントだ。粗製乱造から自社ブランドを守るといった意味でも有用な考えかただろう。

各アプローチの詳細は以下にまとめていく。

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◆共感を強くする:ファンの言葉に傾聴し、フォーカスする

共感を強くするにはファンの言葉を傾聴していくことが重要。ただし、アンケートおよびヒアリングは佐藤氏曰くあまりよい手ではないとのこと。佐藤氏のオススメはファンミーティングの開催。ファン同士がひとつの場に集まると話が盛り上がりやすいだけでなく、会話の中でその商品の長所についても飛び交うのだそうだ。

佐藤氏は、そんなファン同士の会話を傾聴し、そこに焦点を当てていくことが重要なのだと語る。

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◆愛着を強くする:ファンが参加できる場を増やし、活気づける

ファンからの愛着を強くするには、ファンが参加できる場を増やし、ブランドの活気につなげていくことが重要だという。ここではその例として、自動車メーカーのMAZDAが行った施策が取り上げられた。その施策とは、新車発表。

MAZDAは、新車発表をメディア(プレス)の前ではなく、ファンが集まる場で実施しているという。これによりファンを第一にしているという姿を見せつつ、ブランドへの愛着を高めているのだ。そしてこのほかにも、ファンが楽しめるイベントを数々企画しており、積極的に行っていることも伝えられた。

自分が好きなメーカーが、自分たちのために新商品を紹介してくれるというのは、ファン冥利に尽きることだろう。

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◆信頼を強くする:本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する

ファンからの信頼を強化するために有用であると紹介されたのは、開発現場などを紹介する施策。

開発現場やそこで働く人を見せることで、ファンとブランドの距離を縮めることにもつながるほか、そのブランドをより深く知ってもらえる機会にもなる。ファンにとっても、この施策はおもしろくうれしい体験として記憶に残るであろうことは、想像に難くない。

また、プロジェクトに携わるメンバーが、ファンとの接点を持つこともブランドの信頼獲得に有効であると、佐藤氏は語る。マンガアプリ『GANMA』は、リリース当初こそ評価の伸び悩みを経験したが、プロジェクトメンバーが直接、ストアレビューへの返信をしていったところから、アプリの評価はポジティブな方向へとシフトしていったという。

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以上が、ファンの支持を強くするためのアプローチとして紹介された内容となるが、欲を言えばさらに上を目指したい。ファンがコアファンになり、さらに支持を集められるようになれば、万々歳だ。

これに対しても、佐藤氏は答えを用意しておいてくれた。それは、先程紹介した【共感・愛着・信頼】という3つの要素を【熱狂・無二・応援】へとパワーアップさせることだという。具体的にどうすることがパワーアップになるのかは語られなかったが、そこはタイトルによって色を出した施策を行っていくのがベストなのだろう。

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セッションの最後に、佐藤氏は「ファンを土台(ベース)とし、彼らとともに歩んでいく施策を進めていくことで、生き残りはもちろん、中長期的な売上は上昇し、ゲームタイトルはよりよい方向へと進み、ブランド力も強まっていくと思います」とコメント。

運営型タイトルが多いスマートフォンゲームでは、新規ユーザーの獲得に傾注し、新規ユーザーにのみ焦点を当て、そこを手厚くサポートする施策は確かに存在する。そしてそれを受けて「既存ユーザーに還元してほしい」と声を上げるユーザーも少なくないのが現状だ。

筆者もひとりのゲームファンとして、このファンベースの考えが広く浸透してくれることを願う。

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