不当表示を防ぐ二重のチェック体制とは?ユーザーの誤認を防ぐための表示対策法【CEDEC2018】

2018-08-23 18:39 投稿

これからのアプリゲーム運営に必要な体制

2018年8月22日より開催されている、ゲーム開発者向けカンファレンス“CEDEC 2018”。

ここでは、いわゆるガチャの内容物やキャラクター性能表記に関する、不当表示リスクを軽減するための講演リポート“時代とともに変わるゲームアプリのテスト~不当表示対策編~”の内容をリポートしていこう。

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講演してくれたのは、グリー株式会社の堀米賢氏。

検証の専門会社を経てグリーに入社した堀米氏が、昨今のアプリゲームに求められる検証体制について語ってくれた。

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講演のポイント
・求められるのは従来とは異なる、時代に合った検証方法
・不当表示のリスクを軽減する“表示検証”

求められるのは従来とは異なる、時代に合った検証方法

講演で最初に触れられたのが、従来のQA(検証作業)と、アプリゲームで求められるQAの違いについて。ちなみにQAとは、ゲームの動作や仕様書との差異を確認する作業のこと。

インターネットを通じた修正アップデートが容易に実施できなかった時代は、ゲームが正確に動作することと、おもしろさに重点を置いた検証作業が必要とされていた。

しかし、インターネットを通したアップデートが容易に行え、またつぎつぎと新しいコンテンツが提供されるアプリゲームにおいては、正しく商品が供給されることが重要視されるようになったとのこと。

こうした環境変化を経て、ゲーム運用のQAは時代に合わせたテスト内容の“変化”、運用に向けた“効率化”、開発サイクルに応じた“スピード”の3点が重要になるのだそうだ。

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とくに、アプリゲームにおいては「掲載されていた文言とは違う」という、ユーザーの不利益となる不当表示を避けるためのチェックは最重要項目。景品表示法に抵触する“優良誤認”と“有利誤認”は、故意ではなく誤って表示してしまっても不当表示に当たる。

たとえば、新たに追加されるキャラクターの宣伝文句に“史上最強”という言葉を使ったのにもかかわらず、過去に登場したキャラクターのほうが強かった場合は、景品表示法に抵触する可能性があるということである。

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法に触れるということはもとより、ユーザーからの信頼が落ちるという側面からも、このリスクは最大限に軽減しなくてはならないポイントだ。

しかし、ゲームが仕様書と変わっていないか、正しく動作するかを確認するだけの、従来のQAで、そこまでチェックを回すのは難しい。そのため、グリーではゲーム内容自体のQAとはべつに“表示検証”を実施する取り組みに着手しているという。

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不当表示のリスクを軽減する“表示検証”

グリーの実施する“表示検証”とは、QAとはべつの側面から、ゲーム内容を検証するという仕組み。

この表示検証では“表示”にフォーカスした確認作業を執り行うことで、情報誤認を招く表記を、事前に修正することが可能になったそうだ。

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ここで実施される検証作業はゲームの仕様書だけでなく、社内細則やガイドラインなど多角的なプロダクトで汎用的なチェックリストを作成し、これとゲーム内容とを照らし合わせる作業になるそうだ。

実際に、グリーはこのチェックをこなすことで、問題の発見率を向上させているという。また、一度作成したチェックリストは、さまざまな運営タイトルにも適応できるという大きなメリットも得られたとのこと。

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グリーは、QAでゲームの機能をチェックし、表示検証ではリスクの観点からゲームをチェックすることで、問題が生じるリスクの軽減につなげているようだ。

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しかし、この手法を運用し始めた当初は、チェックリストを用いたテストでも、担当者によって差が出てしまったという。それはたとえば、人によってチェックの内容が異なったり、また再現できない状況が発生してしまい、ひとりの担当者のチェックに依存してしまうといった事態が置きたためだそう。

これは、一見すると「同じチェックリストを使っているのだから」と終わる話に思えるが、実際にはリスクを孕んだ事態。

たとえば、以前はテストで発見できた問題が、べつの担当者では発見できずに実装されてしまうというリスクである。

その対策として、グリーではテスト担当者の研修と試験を実施し、テストに適した人材を選出しているそうだ。テスト内容の再現性についても、一度発見した問題の状況や画像のキャプチャを残すことで、次回以降も同様の問題を発見できるシステムを構築することで対策しているようだ。

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QAと表示検証というダブルチェックの体制を導入した一例として、アイテムのパック販売の内容や、ガチャで確率アップの文言を実装前に修正できたという実例が紹介された。

具体的には、グリーの提供するゲーム内で、イベントを有利に進めるためのアイテムパックを“超お得”という記載とともに販売する予定だったものが、実際には個別で単品アイテムを買った場合と金額の差異がないことが発覚。

ユーザーがパック販売で割引されていると誤認する可能性があるため、“超お得”から“オススメ”へと表示を変更。これにより、ユーザー側がパック販売のアイテムが割引ではないことを担保してアイテム販売を実施することができたようだ。

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また別の例として、ガチャ表記についても語られた。そこでは、ガチャを回すたびに獲得できるキャラクター数が増えるガチャで、「11連ガチャ2回目で目玉キャラクターの獲得チャンスがさらにアップ!」と掲載する予定のものに問題を発見。

ガチャ回数が増えることで相対的に入手確率は増えるものの、当該キャラクターの提供割合には変化がなく、また目玉となるキャラクターの提供割合だけがアップすると誤認されるリスクがあったため、「この機会を逃すな!」という訴求に表現を修正することで、不当表記に当たる問題を未然に防いだのだという。

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どちらのケースも、ゲームに実装後に発覚、修正していた場合は問題となっていた可能性もあり、これを未然に修正できたメリットは非常に大きい。

2017年よりグリーの実施する表示検証の取り組みは、人材の育成も進み着実に成果を上げ始めている。テスト内容、確認する人材の育成が進めば、不当表記のリスクを最大限に軽減することも不可能ではない。

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以上が“時代とともに変わるゲームアプリのテスト~不当表示対策編~”の簡単な紹介となる。

法律への抵触はもちろんのこと、ユーザーとの信頼関係にも起因する不当表示の問題。今後のアプリゲーム運営において、重要なポイントとなりそうだ。

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