【新作】どこまでもやさしい時間が流れる癒し系脱出ゲーム 『ぼくのおねがいきいて』

病気で寝込んでいるお母さんとぼくの物語

小さなぼく（主人公）の側にいたい、そんな想いから入院せずに家にいてくれた病弱なおかあちゃん。

医者が家を訪れることも多くなり、とてもつらいはずなのに、少しでも元気なときは精いっぱいの愛情をぼくに注いでくれた。

本記事で紹介する『ぼくのおねがいきいて』は、そんな様子をみて育ったぼくが、おかあちゃんに代わって、部屋の掃除や買い物など、いろいろなことにチャレンジしていく、親子でプレイしたい脱出ゲームだ。

やさしさと思いやりが詰まった25のエピソード

自分が生まれたとき、すでにおとうちゃんは天国に旅立っていた。

そう聞かされて育ったぼくは、病気で起きるのもつらいはずなのに、そんな顔をいっさいせず、いつもやさしくしてくれるおかあちゃんのことが大好き。

本作は、脱出ゲームというカテゴリではあるが、内容は日々発生するお手伝いを簡単な謎解き形式で解決していく、密室とは無縁の平穏な日々を過ごす物語だ。

布団に入って外を見ながら寝ていれば、風邪を引いちゃいけないと窓を閉めたり、薬を飲む水がなければ注いであげる。

各エピソードのボリュームは小さく、やるべきことも明確なので、親世代のプレイヤーはもちろん、小さなお子さんでも安心して楽しめる難易度だ。

このゲームにはやさしさしか存在しない。

汚れきってしまった大人な著者には、眩しすぎる日々が描かれていく。

しかし、ステージ進行に合わせて、寝ている時間が増えていくおかあちゃん。

体調が徐々に悪化しているのか、この先どうなってしまうのかと心配でならない。

精いっぱいの笑顔で接してくれるおかあちゃんと、安心させようと小さいながらにがんばるぼく。

“ぼくのおねがいきいて”

タイトルにもあるこの願いが何を示しているのか……ぜひ最後までプレイしてもらえたらと思う。

商店街で開催されるくじ引きで思い出集め

ステージが3分の1程度進むと、行動範囲が家から商店街へと広がっていく。

ここでも、人々のやさしさ全開の交流が描かれ、“こんな商店街のある場所に住みたい”と、日々のストレスから解放されたい自分の感情が爆発しそうになる。

家の中だけだったお手伝いは商店街にまで広がり、働く大人たちの相談にも応えちゃう。

風邪気味なさかなやさん、忙しくて買い物に行けないくすりやさんなど、一見関係のない個々の悩みが、ぼくの活躍によってすてきな解決策につながっていく。

やさしさで溢れる商店街には、あちこちに“にこにこ引換券”が落ちている。

これは福引屋さんで使えるアイテムで、集めた景品に応じて、おかあちゃんとの思い出がコレクションされる重要なものなのだ。

ティッシュを引いてハズレだとぼやいた著者も、“ぼくんちポケットティッシュあつめてるんだ！”と、ぼくの言葉に心がギュっとなる。

他愛もないものだって大切な思い出、毎日家族との時間を大切に生きている彼だからこそ、素直にそう言えるんだよね。

どうか、おかあちゃんが元気になりますように。

そう願わずにはいられない、“ぼくのおねがい”をぜひ叶えてほしいと祈りながら、この物語を最後まで見届けてもらいたい!!

P.N.深津庵
※深津庵のTwitterはこちら

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