ブラウザゲームはまだ死んでいない gloops×DMM×DeNAセミナーリポート

2015-10-24 19:15 投稿

“ブラウザならでは”が勝負の鍵

2015年10月21日午後7時からgloopsで業界向けセミナーイベント“gloops×DMM×DeNA「ブラウザゲームの未来を考える」”が行われた。このセミナーでは、3社がそれぞれ「ブラウザゲーム市場にはまだまだ開拓していける余地がある」という観点のもと行われており、興味深いセミナーとなった。本記事ではこのセミナーの模様についてリポートしていく。

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gloops

■登壇者
株式会社gloopsマーケティング本部プロダクトマーケティング部部長:小池光氏

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株式会社gloopsソーシャルゲーム事業本部WEBアプリケーション部部長:夏賀丈氏

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・gloopsの過去および現在について

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上記スライドのとおり、いままでに47タイトルを提供。2015年現在は『大戦乱!!三国志バトル』および『スカイロック』が主力タイトルとして利益貢献している。いずれもコアユーザーに継続プレイを促すような運営を実施し、各ゲームとも受賞実績を残す息の長いタイトルとなっている。

・gloopsが見るブラウザゲーム市場

※データはgloopsの調査結果になります。

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ブラウザゲームの未来を見据える前に、市場の現状についても語られた。ネイティブアプリと比べるとやはり市場規模やアクティブユーザーの数は対比すると上のスライドのような大きな差が出ている。

しかし、「アクティブユーザーのARPUポテンシャルの高さはブラウザゲームもひけをとっていない」と小池氏。約200万人のアクティブユーザーに刺されば、売上に繋がるとも説明。

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その後、ブラウザゲームに挑戦するメーカーの減少に伴い、gloopsならでは強みを生かす形でチャンスをものにするという動きが出てきている模様。そこで定義するべき内容が上記3点としてあげられた。これらについては以下で紹介していこう。

・gloopsの見据えるブラウザゲームの未来

1:事業運営の適性判断による利益貢献について

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今後ブラウザゲームを運営していくうえで大事な事。それは、ゲームの質、クリエイター、予算などの各要素から事業運営に関する適正を見出し、長期的に考えて少数精鋭化を図ったり、運営態体制をパートナーに移管したりすること。

2枚目、3枚目のスライドは運営体制を少数に変更した場合の線グラフとパートナーに移管して運営したときの売上に関する棒グラフとなっている。

もちろん、移管したからといってすべてがすべてパートナー任せにするのは無し。「必ず適時連絡を取り合って運営方針を決めていくようにしている」と夏賀氏。(週間の定例会議や場合によってはデイリーでの連絡なども)。

2:ワンソース・マルチユースでの効率的な展開

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このセクションでは、ひとつのタイトルをさまざまなプラットフォームで展開していく場合について、単純なヨコ展開だけでなく、ひと工夫加えることで事業貢献できるようになることについての解説が行われた。具体的には、UIややり込み要素の追加。プラットフォームによってはPCブラウザに対応させるなど、手間はかかるが成果もしっかりでていることが上のスライドからもお分かりいただけるだろう。

3:ブラウザゲームを進化させるチャレンジ

最後はブラウザゲームの進化について解説がなされた……とその前に「ユーザーはこれまでの常識を覆すような“新しいブラウザゲーム”、“ブラウザゲームの進化”を求めているか?」という問いかけが行われ、これに対し「YESでもありNOでもある」と小池氏がコメントを残した。詳細は以下の通り。

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▲新しいゲーム体験は求めているが、「ブラウザゲームに」という形に区切って物事を考えてはいけないとのこと。
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そこで、gloopsは真に価値のあるブラウザゲームについて、上のように定義し、ブラウザゲームをもう一度盛り上げていきたいということを強く強調。

以上、3つの要素をまとめたのが以下のスライドとなる。今後もこれらポイントを押さえ、チャレンジし続けることでブラウザゲーム業界に貢献していくことだろう。

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・新作ブラウザゲーム開発中

なお、gloopsでは現在新作ブラウザゲームを開発中とのこと。この場では細かいタイトルに関する情報などは発表されなかったが、近々実施予定のセミナーで少し語れるかも……といった話もあったので、こちらも続報に期待したいところだ。

DMM:

■登壇者
株式会社DMM.comオンラインゲーム事業部アライアンス部部長:林研一氏

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株式会社DMM.comラボ第三企画部部長エグゼクティプロデューサー:斎藤祐士氏

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・“まだ死んでいないブラウザゲーム”とは?

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DMM登壇者がなぜセミナーのお題をこのタイトルにしたのか……。それはDMM.comというサイトとDMMゲームズの違いを見ると判明してくる部分があったとという。

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上の画像がDMM.com全体の利用者のデータ。下がDMMゲームズの利用者の性別ならびに年齢体のデータとなっている。両者を比較してみると、DMM.com全体が平均36歳で利用者が主に30代に集中しているのに対し、DMMゲームズは20代の合計が半分を占める形となっている。

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しかも「タイトルは明かせないが、上記のようにBのタイトルではプレイヤーの9割が20代を中心とした女性ユーザーで埋め尽くされている」と新規ユーザー層の開拓に成功できたことを語る林氏。PCブラウザゲームとはいえ、ユーザーに刺さる要素があれば、ユーザーは足を運び、プレイしていくれることが判明したという。

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しかし悩みがないわけではない。それはブラウザ側のサポート問題。Google ChromeはDMMを利用するユーザーの半数が使用しているブラウザとなっており、こちらがUnity web playerへのサポートをやめてしまった問題についてだ。Unity web playerを使用したブラウザゲームも多数あるとのことで、ここに関して、どのようにサポートしていくかが悩みの種とのこと。

ちなみに緑がInternet Explorer、黄がFire Foxとなっている。こちらに関しては、Web GL、デスクトップアプリ化(exe)、HTML5などでの対応を予定し、日々検証を続けている模様。

・新作ブラウザゲーム『銀河英雄伝説タクティクス』から見る開発環境

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『銀河英雄伝説タクティクス』とは?

小説発刊から30年以上経ついまなおファンに愛される『銀河英雄伝説』のOVA版を原作としたDMMゲームズが手掛けるPCブラウザ専用のシミュレーションRPG。

上記からもわかる通り、本作はPCブラウザ専用に開発が進められており、セミナー内では「現状マルチ展開の予定は一切ない」と斎藤氏。ではなぜPCブラウザのみという選択をしたのか?

1:DMMオンラインゲームはPCブラウザを軸に成長しているプラットフォームのため、外せないと考えた
2:銀河英雄伝説ファンとなるターゲットユーザーの年齢層とDMMを利用している平均ユーザー層が近しい=重複ユーザーがきっといる

以上2点から鑑みて、PCブラウザという選択肢に至ったとのこと。開発環境は以下の通り。

・自社開発チームが開発を担当
・フロントはFlashを採用
・バックはPHPを採用

上記は一般的なPCブラウザゲームにはよくある形式とのこと。以下、ブラウザおよびFlashの利点についてスライドのような紹介がなされた。

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なお、開発はかなり難航していたがブラウザを選択したために遅れたということは一切なかったとのこと。「ネイティブにしていたらさらに期間延長を余儀なくされていた可能性も」と斎藤氏も苦笑い。現在は上記のような開発進捗となっており、『銀河英雄伝説タクティクス』の配信予定が改めて今冬であることが発表された。待ち望んでいたファンは、引き続きリリースを楽しみに待っていてほしい。

・今後のDMMゲームズの動き方

DMMゲームズは今後もPCゲーム(一般、R-18)を軸に起きつつ、マルチデバイス展開も視野にいれているとのこと。まずはR-18のアプリ版をDMMゲームストア(Android向け)にて配信していき、そのほかの一般向けタイトルをAppStore、Google Playにて展開をしていくという。

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▲『千年戦争アイギス』というタイトル。もともとPC向けR-18版からスタートしたが、PC一般、R-18アプリ、そしてアプリ一般向けという形でさまざまに拡大を見せた。
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▲gloopsの話でも話題になったこちらのタイトル。「スマホブラウザからPCブラウザへと逆転の発想でリリースし、順調にユーザー数を拡大中」と語る林氏。
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上の画像から現状および今後のDMMゲームズがブラウザ・アプリにとらわれず幅広くさまざまなゲームを抑えていこうという考えが伺える(アプリの中にはPCへのクライアントDLタイプのものも含まれる)。PCブラウザを軸に起きつつのマルチプラットフォーム展開に注目してみていきたい。

DeNA:

■登壇者
株式会社DeNA Games Tokyo代表取締役社長
兼 株式会社ディー・エヌ・エー リージョンゲーム事業本部エグゼクティブプロデューサー:田川啓介氏

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 ・ブラウザゲームの長期運営で得た教訓

プラットフォームを運営しつつ、さまざまなブラウザゲームおよびネイティブアプリを提供してきたDeNA、そんなDeNAがブラウザゲームにて長期運営を行ってきたタイトルで発生した課題。それに対してのどのように対処してきたかについて語られた。

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長期運営は「ユーザーが長期間遊んでくれるから」と田川氏が付け加えつつも、運営サイドの地道な努力により、教訓が泥臭く身についていくもの。魔法のように「パッ」とできてしまうテクニックや技術などは存在しないという。

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長期にわたる運営およびブラウザゲームだからこその各種課題が上記のように挙げられた。各内容を詳しく掘り下げると以下のようになる。

1:ユーザーの分散が広がってしまう
プレイヤーのステータス分散化やプレイスタイル多様化などの影響により、各ユーザーが楽しめる施策を撃たなくてはならなくなる。しかし、そのためには工数がかさばる

2:ユーザーが飽きてしまう
長期運営していくと、必ずぶつかる課題。アップデートなどで新たな遊びを導入していく必要があるが、積み重ねていけば行くほどコストおよび工数にひびく

3:アップデートしやすいが故に“反応癖”が出てしまう
ブラウザゲームならではといえば、アップデートなどの調整対応・その後変更内容をすぐに確認できる点だろう。しかし、それゆえに目的も決めずにアップデートしすぎてしまうと運営サイドでの目的を見失いがちになる

4:1ヵ月サイクルで考えがち
キャリア決済などのことから、1ヵ月スパンでモノを考えることが多くなってしまっている。必ず1ヵ月後に施策すればいいではダメ。広い視野で見た計画が必須

以上のような数々の課題を乗り越えて得た教訓が以下8種類となっている。

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▲ビジョンを決める。それを実行すべく検証する機会を設けることは、ユーザーの意見が必要不可欠となり、よりユーザーにマッチしたものを提供しやすくなる。
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▲ユーザーからの問い合わせ、フィードバックにはとことん配慮していく必要がある。もちろん全部やっていてはキリがないので、対応していくことを決めるということも大切になるが、コアユーザーが続けてくれる理由のひとつにもなるので大事だ。
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▲短期のアップデートをしつつ、かといってユーザーに飽きさせない工夫が上記2点。とくに仕様を変えずに目新しさを作るには「UIの変更やログイン時の演出」なども重要なファクターとなりえるとコメント。
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▲ただ早いだけのアップデートで運営側がやりたいことを見失わないためにも、アップデートするスパンを3つぐらいに分担し、各スパンで何をするかを決める方がいい。
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▲各情報の基盤となるペルソナのアップデートも必要不可欠。1年前のユーザーはこうだったという情報では市場の動きに敏感に対応できなくなるので、こまめに機会を設け、最新情報で対応できるように心がけよう。

以上、8つの教訓を踏まえるにあたり、つねに大事なことを語り続けていた。それは「開発サイドとユーザーサイドで捉え方が異なる点」だ。例えば、ターゲットに対するビジョンでは「いままでも流行ったからもう一度あのイベントを復刻すればいい」と考えていても実際は「過去の景品は弱くてデッキに入れられない」とか「もう持っているからほかのイベント遊びたい」など、捉え方にズレがある点に注意しなければ失敗してしまうとのこと。

これを打破するために、公式コミュニティの掲示板ならびに外部サイトのコメント情報。運営への問い合わせなどに目を通したり、アップデート機能に関しては、会社にユーザーを招いてプレイしてもらい、即反応を返してもらっているなど、色々な施策が行われていることがわかった。

以上を踏まえて、DeNAは今回のセミナーがブラウザゲーム開発を進めている企業の参考になり、今後の業界発へとつながれば嬉しいと締めた。

以上で3社によるブラウザゲームにかかわるセミナーは終了となった。ネイティブアプリ市場はいまやレッドオーシャンといわれる厳しい市場。そこをあえて、競合が減りつつあるブラウザゲームに光明を見出す選択肢はアリなのかもしれない。

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