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『HeavenStrike Rivals(ヘブンストライク ライバルズ)』キーマンインタビューで見えた新たなゲームづくりのカタチ

2015-05-22 12:00 投稿

日本とイングランドのハーフタイトル。その誕生までの道のり

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2015年4月28日にリリースされた、スクウェア・エニックスと北米のメディアトニック社による共同開発タイトル『HeavenStrike Rivals(ヘブンストライク ライバルズ)』

“スクエニの逆輸入タイトル”などと言われているように、“日本と海外での共同開発”“海外先行リリース”といった珍しい取り組みが話題のタイトルだ。

洋ゲーライクな雰囲気ながら、そのゲームシステムは和製ゲームの様式をしっかりと踏襲。本格的なストラテジー要素に加え、全世界のプレイヤーとのPvP(プレイヤーvsプレイヤー)など、いまの時世にマッチしたゲームシステムが高い評価を集めている。

今回は、そんな『ヘブンストライク ライバルズ』の開発会社であるメディアトニック社のポール・クロフト氏が来日していることを受けて、同じく本作のキーマンであるスクウェア・エニックスの市川雅統氏を含めた2名にインタビューを敢行。

『ヘブンストライク ライバルズ』誕生までの道程や、この珍しいタッグの結成秘話などを語ってもらった。

※ゲームの基本はこちらの記事でチェック!

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▲(写真右から)ポール・クロフト氏、市川雅統氏。そしてデモプレイなどに協力してくださった、メディアトニックのプロデューサー、ジェイミー・ライディング氏。

――今回のプロジェクトはいつごろに立ち上がったのでしょうか?

市川雅統氏(以下、市川) 『ヘブンストライク ライバルズ』は、2年ほど前にスタートしたプロジェクトになります。ソーシャルカードゲーム全盛のときにはじまり、そこから時間をかけて作り込んできました。

――スマートフォンゲームで海外の開発会社さんと協業する座組みは珍しい試みですね。

市川 スクウェア・エニックスという会社全体で言えば、もともと海外の会社さんともゲームをよく作っていましたが、スマホのゲームでは珍しいですね。

――具体的な狙いなどはあったのでしょうか?

市川 もちろん、海外展開を円滑に進めるといった狙いはあります。でもそれ以上に、私が家庭用ゲームを作っていたときに果たせなかった、「海外の開発会社さんとお仕事をしてみたい」という願いを実現したかった、というのが大きいですね。

――海外で先行配信というのも珍しい取り組みだと思ったのですが、これはどういった理由から?

市川 本当は同時でもいいかなって思っていたのですが、開発状況などのいろいろな事情から、それが難しかったというのが本音です。日本のお客様にも海外の方々と同時に遊んでいただきたかったのですが、ちょっと遅れた形での配信となりました。

――海外での反響はいかがでしたか?

市川 まず第一に受け入れていただけるかが心配だったのですが、出だしのレビューも高評価をいただけてホッとしています。日本と海外の最大の違いでもありますが、海外ではPay to Win(※)ではお金を払わないという風潮が大きいということです。これは今後はどうなるかわかりませんが、海外のプレイヤーが気にするポイントのひとつです。その影響で、海外のレビューサイトのなかには、『ヘブンストライク ライバルズ』の課金がいかに適切かについて語るコーナーが多くあります。日本でも課金に対して抵抗を持つかたは当然いますが、海外はそれ以上なんですよ。そうした背景がありながらも、ちゃんと評価をしていただけたのは幸運でした。

(※)Pay to Win:基本無料のゲームで、課金をすることで無課金プレイヤーより優位にゲームを進行できる仕組みのこと。

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運命の出会いは突然の訪問から?

――そもそも、スクエニさんとメディアトニックさんは、どのようにしてお知り合いになられたのでしょうか?

ポール・クロフト氏(以下、ポール) 私たちが企画の持ち込みをしたのがはじまりです。小さいころからスクウェア・エニックスのゲームをプレイして育ってきたこともあって、メディアトニックのスタッフは皆スクウェア・エニックスさ大ファンでした。そんなスクウェア・エニックスといっしょに仕事をするのは、会社として掲げた目標でもあったのです。

――メディアトニックさんからアプローチをされたとのことですが、その時点で企画は固まっていたのでしょうか?

ポール まったく固まっていませんでしたね(笑)。

一同 (笑)。

市川 そんな形だったので、僕たちも「なんかイギリスから持ち込みが来たらしいぞ!」くらいの気分でした(笑)。

――そこからどういった経緯でタッグを組むまでに至ったのでしょうか?

ポール その1年後くらいにふたたび市川さんにお会いして、運営に注力したゲーム作りをいっしょにしたいことを改めて説明させていただきました。そこで市川さんも私たちに興味を持ってくださり、いっしょに作ることが決定した形です。

市川 いまでこそ“運営が大事”っていうのは当たり前の話ですが、当時のスマートフォンゲーム業界では「おもしろいゲームを作れば売れる」といった風潮が強くて、運営はまだいまほど重視されてませんでしたんですよね。私も『エンペラーズ サガ』をはじめて間もないころだったので、運営の大切さを感じると同時に、運営が大事で、そこに注力したいという開発会社さんが少ないことに困っていました。そんなときに出会ったのがメディアトニックさんです。彼らはもともとFacebookでFree to Playのゲームをリリースしていて、日本でモバイルのゲームが流行り始めたころには、すでに世界ののマーケットでバリバリゲームの運営をしてきたので、彼らとなら作品が作れると思いましたね。

――日本のクリエイターと仕事をしていくなかで、ふだんの自分たちのやりかたとは違いを感じる部分はありましたか?

ポール 西欧だとゲームの全体像を決めてから大量のドキュメントを作り、そのうえで細かい部分も平行して進めながらゲームを構築していきます。ですが日本は、全部を縦割りにして細かい部分を作り込んでから、それを横に広げていくような作りかたをしていたのが驚きでした。

市川 国の違い以上に、スクウェア・エニックスとメディアトニックという会社そのものの違いが大きいんだと思います。たとえば、プリプロダクションの時点で世界観にぜんぜんマッチしていないキャラがいても、メディアトニックさんは「これは仮だから、ここから調整していくんだよ」といったように、全体像をざっと作った後に、段階を踏んで完成させていくやりかたをされています。ですがスクエニの場合ですと、プリプロダクションの段階で全体ができていなくても、しっかり完成したキャラクターがそこにいるのがふつうなんです。

――ポールさんの視点から、日本のマーケットはどのように見えていますか?

ポール 日本のモバイルマーケットは、欧米と比較しても一歩先に進んでいます。そのため本作の開発を通じて、私たちもたくさんのことを学ばせてもらいました。もちろん学ぶだけではなく、我々が欧米で培ったFree to Playのノウハウも『ヘブンストライク ライバルズ』には集約させているので、より完成度の高いゲームを作れたと思っています。

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――コミュニケーションの部分で苦労はなかったですか?

市川 今回の経験のなかで強く感じた部分なのですが、日本のようにあまり話さなくても意図が伝わったり、曖昧な表現でもなんとなく相手に言いたいことが伝わったりというのは通用しないことを思い知って、それはとても印象的でした。

――そうしたコミュニケションにおける”察し”の文化は、日本独特のものですよね。

市川 そもそも同じ日本の開発の場合、見てきたアニメが同じだったり、触れてきたゲームが同じだったりといった共通認識が根底にあるので、具体的に話さなくても感覚で伝わることが多いと思います。一方、メディアトニックさんはイギリスの会社さんですが、社内にはいろいろな国のかたがいらっしゃいます。根底となる価値観が違う分、曖昧な表現ではなく、より具体的な言葉や内容で意思疎通を行う必要がありました。それに文化が違ってくると生活の違いや宗教の違いも出て来るので、相手のことをちゃんと尊重して話をしないとダメ。伝えたいことを具体的に伝えるということは、私自身案外できていないんだなと改めて思いました。ですから、そこは意識してコミュニケーションを取りました。

――時差もあったと思いますが、そういった点でも大変だったのでは?

市川 メディアトニックさんが僕たちに合わせて動いてくれていたので、そこはとくに苦労しなかったですね(笑)。

ポール 私たちも、無理して頑張ったというわけではありません(笑)。もともと社員全員が憧れていたスクウェア・エニックスとのタイトルですから、みんなの情熱もすごくて。このゲームに関しては、何も言わなくてもみんな遅くまで残ってやってしまうんですよ(笑)。

じつは”ロンドン”が題材だった!

――メディアトニックさんはスクエニさんとのお仕事が目標であるとおっしゃっていましたが、いっしょに仕事をしてみて「ここはスゴイ!」と感じた点はありましたか?

ポール いちばんスゴいなと思ったのは、ゲームの世界観にこだわりを持っているところですね。ひとつの言葉であったり、キャラクターの背景だったりにものすごく力を入れて作られている。その工程をいっしょに行えたのは、とてもいい経験になりました。

――世界観と言えば、今回は空中都市や聖女といったファンタジー要素が強く出たものになっていますが、題材となるテーマはあったのでしょうか? それとも完全なオリジナルでしょうか?

ポール 舞台は1920年くらいのロンドンを想定していました。作中に出てくる“七聖女”も、“セブンシスターズ”というロンドンの駅名が名前の由来だったりします。そんな風に、自分たちが住んでいる街並みから、着想を得ている部分が要所要所にありますね。ただ、実際のセブンシスターズはとても治安が悪いんですけどね(笑)。

市川 (笑)。本作きっかけで何度かロンドンへ行くようになりましたが、とても素敵な街なんですよね。自分も好きなロンドンの街の雰囲気を、作中に入れたいという意見には大賛成でした。

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――『ヘブンストライク ライバルズ』には、ロンドンの平和な街並みからは創造もできないようなダークな側面も見えますが、それも構想段階からあったのでしょうか?

ポール いえ、初期のころの世界観は、平和で幸せに溢れた世界になっていました。ですが、ある日市川さんから「これだと日本のユーザーさんから、「戦う理由がないのにどうして戦うの?」って言われちゃうよ」と指摘を受けて、ダークなトーンへと変えていき、いまの形に落ち着きました。

市川 プリプロダクションが上がってきた段階で、「なんで街が浮いてるのか?」とかの説明が一切なかったんですよ。これはスクエニだからなのかもしれませんが、そういった物事の理由付けをもう少し詰めて、世界観を細かく作ったほうがいいんじゃないかと思ってしまうんですよね。それにこうした下地作りをちゃんとしておかないと、運営したときに後々トラブルのもとになりかねないですから。今回の場合ですと、その打開策として世界観の設定資料を相当量作りました。それをみんなでシェアして、「これはおかしい」とか「そういう展開だと、こうだよね」といった意見を吸い上げながら、物語に深みをつけていった感じです。

――分厚い資料とのことですが、それほどの量になるのですか?

市川 PCのドキュメントなので具体的な量はお伝えしづらいですが、紙にプリントしたらちょっとした辞書くらいの量にはなると思います。シナリオ・世界観の監修をベニー松山さんにお願いをしているのですが、「ここが矛盾している」などのご指摘を多く受けまして。メディアトニックさんにはそのたびに日本に来ていただいて、ベニーさんと丸一日くらいひたすらケンカしながら調整してきました(笑)。

ポール 世界観というのは、ゲームの肝になる部分です。どれだけの時間がかかろうとも、設定資料がどれだけの量になろうとも、言葉の違いでコミュニケーションに時間がかかろうとも、相談をくり返しながらしっかりと世界観を作るべきです。私たちとしても、スクウェア・エニックスのファンとしてだけではなく、欧米の人たちにもアピールする物語を作っていきたかったので、そこの摺り合わせには本当に時間をかけました。

市川 それと今回のタイトルでは、伊藤龍馬(※)がメインキャラクターデザインをしているのですが、日本の一流イラストレーターさんって、ただ指示通りに描くだけではないんですよ。彼はキャラクターを描くときに「このキャラクターは、きっとこういうことを考えているだろう」といったところから入って、「このキャラクターがこの髪型である必然性は何なのか?」「どうすればこのキャラが目立つようになるのか?」「どうすればシルエットが映えるか?」みたいなことを考えたうえで描きます。だからキャラクターを描く上でも、設定がとても大事になってくるんですよ。

(※)伊藤龍馬:『ファイナルファンタジータクティクス S』や『聖剣伝説 HEROES of MANA』などのキャラクターデザインを手がけるイラストレーター。

ポール 市川さんと伊藤さんにもロンドンに来ていただいて、メディアトニックにいる日本人のイラストレーターとどういうキャラクターを作っていくか話し合って詰めてもらいました。日本と欧米両方で受け入れてもらうためには、頭、胴体、目の大きさやそのバランス、スタイル、シェイプなどをどうしたらいいのか。伊藤さんのテイストを活かしたまま、そこにどう落とし込んでいくかなど、ひたすら試行錯誤しましたね。

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2年前からPvPの構想はあった

――企画がはじまった2012年だと、スマートフォンプラットフォームのストラテジーゲームはほとんどなかったですよね? しかもPvPが組み込まれたものだとしたらなおさらです。企画をスタートさせた当時は、かなりの冒険だったのではないですか?

ポール 最初のころから、OSや国などを度外視して、リアルタイムで対戦できるようにするといった構想はありましたね。『スタークラフト』や『エイジオブエンパイア』みたいなリアルタイムバトルができるストラテジーはすごく人気だし、やっぱりおもしろい。それをモバイルで、しかも日本のスマ-フォンビジネスで試したら、おもしろいことになるんじゃないかとは思っていました。

市川 私も当時運営をしていた『エンペラーズ サガ』に、リアルタイムPvPがあったらおもしろいんじゃないかと思っていたので、彼らの考えに賛同しました。とにかくリアルタイムのPvPはおもしろいし、盛り上がりますからね。

――PvPのバトルシステムがターン制というのも、国内外での通信ラグを考慮して実装されたのでしょうか?

ポール そうですね、ターン制だと通信環境による影響を受けにくいというのは大きいです。

――PvPについてですが、ユーザー目線だともう少しバランス調整がほしい気はしていました。そこは今後も順次調整がされるのでしょうか?

市川 調整に関しては、海外版、日本版関係なく、つねに行っていきます。

ポール このゲームにはいろいろな戦略がありますが、あまりにも特定の戦略が猛威を振るうようでしたら、大胆な修正も入れていきます。運営をしながらつねにゲーム内のバランスをチェックして、必要に合わせて随時調整を行う方針です。

市川 日本では、キャラクターの強さをあとから下方修正することはあまりしませんが、我々は必要があると考えればそこにもしっかり介入していこうと思っています。アーケードゲームやMMORPGなんかでは、ゲームの運営が好調なときでも頻繁にバランス調整を挟みますよね? 『ヘブンストライク ライバルズ』の運営は、あれに近いものになっていくと思います。

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――いままでメディアトニックさんが出されていたゲームと比較して、ユーザーから得られるリアクションで何か違いはありましたか?

ポール 海外では本作の巨大なコミュニティが完成していて、それが自発的に盛り上がっていることには驚きました。みんなそこに集まって、シナリオの攻略法やPvPの戦略について激しく議論を交わしています。これまで私たちが作ってきたゲームでは、コミュニティが自然に生まれて盛り上がるということはなかったので、素直に嬉しかったですね。

――自然にコミュニティが発生したということは、熱烈なファンが大勢いるということだと思います。そういったお客様の熱に応えるために、オンライン/オフラインイベントなどを考えていたりしますか?

ポール それはもちろんあります。具体的なことはまだ何も決まっていませんが(笑)。

市川 『ドラゴンクエスト モンスターズ』や『ロード・オブ・ヴァーミリオン』、『ガンスリンガー ストラトス』などの、日本で私たちが出している対戦型のゲームで行われてきたようなイベントや大会を、国内外で開けたらいいなと思っています。

――すごいですね、世界大会。

市川 開きたいですね。お客様の反応をつねに見ながら作り上げてきたものなので、そこには力を入れていきたいです。

――ありがとうございます。それでは最後に、ユーザーへメッセージをお願いします。

ポール 一生懸命働きましたし、作っていてもすごく楽しいタイトルでした。日本とロンドンと離れたチームでの共同作業でしたが、“ひとつになって仕事をした”という実感も得られたタイトルです。ぜひみなさんにも、楽しんでいただけたらと思います。

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HEAVENSTRIKE RIVALS (ヘブンストライク ライバルズ)

配信日
配信中
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iOS 7.0 以降 Android4.1 以上

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