【注目】ブラックユーモア満載！“絶望の宇宙遊泳”を楽しめる8bit風アクション『Sunburn!』が海外で大ブレイク！

宇宙空間における極限状況を題材にしたアカデミー賞受賞作『ゼロ・グラヴィティ』。絶望的なまでの闇と静寂の中、それでも生へ執着をし続ける女性飛行士を描いた作品だが、今回紹介する『Sunburn!』はその真逆。宇宙船大破後に散り散りになったクルーたちを回収、惑星間を移動しつつ“成仏”するためにゴールである太陽へ向かうブラックジョークの利いた8ビット風アクションゲームだ。まずは公式動画を掲載するので、その世界観をチェックしてみてほしい。

ジャンプや方向転換、酸素放出によるブーストなど、操作要素はかなり限られているが、舞台が宇宙なだけに、地上のアクションと違いキャラに働く慣性などを考慮しなくてはならず、けっこう手間取る。また、ステージを進めるに連れて、ブラックホールや高速で飛び交う隕石、惑星の周囲を回る衛星など、やっかいな障害も多様に用意。直感に任せてタップしているだけでは思わぬ方向へ飛んでいき、酸素がなくなりすぐに死んでしまう。

宇宙船はコッパミジン
地球に帰れないなら最期はみんなで……

あらすじとしては、事故で宇宙船が大破→クルー全員が宇宙空間へ放出・散り散りに→もう、地球には100%帰れないので太陽に突っ込んで成仏しよう→ひとりでは嫌だ、仲間を回収して皆で仲良くあの世へ……といった感じ。

文字にしてしまうとふざけているようだが、静けさの中こだまする不気味な不協和音、ブーストや惑星にぶつかったときのリアルなSE、そして8bit風ながら細部にこだわったグラフィックなど、すべてが“絶望の宇宙”の世界観の構築に貢献。

イヤホンを付けて寝る前などに遊ぶと、プレイ後は、宇宙の膨張には限界があるのか？　ないとしたらやがて収縮して無に？　そもそも宇宙の起源って？　と、誰もがしたことがあるであろう宇宙への思いをはせることになるので注意が必要。

地上の物理法則とは無縁の宇宙
操作もヒトスジナワではいかない

操作要素は冒頭におおかた紹介したとおり。操作は画面両端の領域でおこない、どちらか一方を押すことでその方向へ歩行、両側を押すとパワーを溜めてジャンプ、遊泳中に両側同時押しで酸素放出によるブーストといった具合。

画面上部には酸素ゲージがあり、惑星を離れて遊泳モードになるとどんどん消費されていき、再度惑星へ降り立つと酸素が回復。各惑星にこまめに立ち寄り酸素回復しながら確実にクルーを回収、太陽を目指すことが本作において基本的なプレイスタイルとなる。

クルー全員を無事回収し、太陽へ。それぞれ仲間たちが順々に太陽に焼かれ、最後にリーダーが“Am I Dead?（死んだの？）”と一言。焼かれる苦しみを味わうイトマもなく無事成仏ができたようだ。本当は地球に生還できればそれがいちばんのハッピーエンドなのだろうが、見方を変えれば、これもまたひとつのハッピーエンドなのかもしれない。

ステージは全60
ブラックホールに吸い込まれたクルーは……

序盤のステージは、本作特有のゲーム内容、操作感に慣れることも目的なのだろう、そう難易度の高さを感じない。が、だいたいステージ10を過ぎたあたりから、吸い込まれるとなかなか抜け出せないブラックホールや、煌々と燃える隕石、惑星への着地を阻む小さな衛星など、やっかいな障害が徐々に登場。

ステージ26ともなると、ブラックホールにはまりもがいているクルーなんかもおり、嫌でも突入しなくてはならない。

ブラックホールに一度はまると、当然ブーストをかけて脱出する必要が出てくるが、不必要に連打・消費するとすぐに酸素が0となり死んでしまう。クルーを回収したら、あせらず冷静に惑星へ向けて方向転換し、目当てが定まったらブーストをかけて脱出。といった感じで、操作の正確さと宇宙におけるキャラクターや障害の動きを読むことが重要なのは全ステージ共通して言えることだ。焦って連打することだけは避けたい。

本作の開発は“キス・食・笑い・そして死”を主題にゲーム開発を続けるニューヨーク発の独立系デベロッパー“Secret Crash”。ブラックユーモアあふれるセリフやストーリーの中に用意された恐怖をあおるリアルな描写など、同デベロッパーだからこそつくり得たゲーム内容と言える。

昨年11月のリリース以来、海外のレビューサイトでは軒並み高評価を獲得し、アップストアの“Best New Game”としてもピックアップ。さらに昨年末には、飲料水で有名なRedBullが優れたインディーゲームとして本作を“12 best indie iOS games of 2014”に選出。同時選出された他の11作の中には、“だまし絵”を舞台にした雰囲気ゲーとして大ヒットした『Monument Valley』なども選出されており、本作の注目度・実力の高さをうかがうことができる。

いずれも趣向のこらされたステージが全60用意されており、“絶望の宇宙遊泳”を楽しむことができるので、300円と有料でも遊ぶ価値は十分ある。アクションゲームや宇宙が好きな人はもちろん、スマホゲームを通してまた新たな感覚を堪能してみたい人にもおすすめしたい作品だ。

（斎藤えいこう）