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【CEDEC 2014】制作期間6ヵ月『消滅都市』を生んだWright Flyer Studiosは修羅の国!?

2014-09-03 23:14 投稿

納期6ヵ月、スタッフ総数17名のチームの裏には

グリーが設立した新スタジオWright Flyer Studios。ゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC2014で行われた講演では、リリースから1か月で100万ダウンロードを達成した同スタジオの第1弾タイトル『消滅都市』の開発メンバーが、ヒットの裏に隠された開発秘話を語ってくれた。

▲写真左から、プロデューサーの澤智明氏、リードデザイナーの濱坂真一郎氏、ディレクターの下田翔大氏、リードエンジニアの渡部晋司氏、エンジニアマネージャの吉川毅氏。

プロデューサーの意志がチームを育てる

『消滅都市』プロデューサーの澤氏が掲げる開発のモットーは「いいと思ったことはなんでも実行する」。これまでグリーの人間、Web屋と呼ばれる人間として仕事をしてきたが、新しいブランドを立ち上げるにあたり、それまでの経験や知識を捨て、再スタートをするには、この精神が大いに役立ったという。たとえば、これまでグリー出身のゲームのほとんどはゲームエンジンUnityによって作られていたが、今回は“COCOS2d-x”を採用したりと、すべての選択肢を見つめなおすことにより、新たな答えが見えてきたそうだ。

▲澤氏は講演会観覧者に向けても、過去の成功や制約を忘れて挑戦してほしいと提案を差し出している。

また、同時に澤氏は「いいゲームを作るにはチームワークが必要」とも述べている。企画立案時からプログラム、アートに至るまでみんなで納得するまで話し合いを重ねたそうだ。そのほかにもチームごとに毎週活動の振り返りをしてみたり、朝会、週次セレモニーを行ったりと、チームワークを高める努力を細かく行ったという。

こうしてチームワークを育てた結果、通常なら仕事が増えるため仕様の変更や余計な仕事を嫌うプログラマが「ここのUIにアニメーションつけておいたよ、こっちのほうがいいでしょ?」と自発的な動きを見せたり、スタッフが公式Twitterを運営、アート担当がTwitterアイコンを作成などというここともあったそうだ。

みんながチーム全員のために自律的に改善に向けて働くという、理想的なチームは、プロデューサーの努力により作られたようだ。

なお、なぜここまでチームワークにこだわったかというのには、もうひとつ「納期が6ヵ月と明確に示されていた」という背景もあったとのこと。

アート、シナリオに隠された努力

このほか、アートやシナリオがどのようにして作られたかも語られた。アートのチームは全員で4名しかいなかったため、全員にキャラクターデザインの参加機会を与え、短い期間で作るための努力をしたそうだ。

▲基本的にキャラクターデザインはリードデザイナーの仕事とされているが、この一番楽しい作業だけを持っていくというスタイルだけはしたくないと、濱坂氏がデザインをしたのはこの中の2キャラのみだという。

シナリオに関しては、絶対にブレないコンセプトを立ち上げてから、コアとなる部分を作成。そこから感情を動かすゲームデザインを作り上げ、今の形に。なお、シナリオを実際に作成するときにはミッドポイント理論というものを用いて作成、プレイヤーの感情に対して真剣に向き合い、感情の波を考えながら書きあげられたという。また、下田氏は『消滅都市』のシナリオを書く上での10のTIPSというものも紹介。以下にその内容を書き留めていくので、ぜひ参照してみてほしい。

【シナリオを書く上での10のTIPS】

1.単純で理解しやすい目的を作る
(右に向かう話というのは進捗をイメージしやすいので、右に向かうという目的を設定)

2.コンフリクトを起こして解消する
(コンフリクト解消の過程で人間性が描ける)

3.1話にひとことで表現できるテーマを設定する
(ひとことで言えないことは、書き方が不明瞭)

4.ふきだしひとつに平均20文字
(セリフが長くなるときは、一目で読めるサイズに区切り、あえてページを分ける)

5.口で言いやすいセリフを書く
(書く前に、実際に口にしてみるとわかりやすい)

6.何回も何回も同じことを書く
(目的を何度も書かないと、プレイヤーは目的を忘れてしまう)

7.細かい疑問を生んで、細かく解消する
(つねに次のウィンドウが気になるように、意識をする)

8.プレイヤーの気持ちを主人公に代弁させる
(主人公が“自分はわからない”とアピールすることで、同じく分かっていないプレイヤーに安心感を持たせる)

9.ノベルシーンだけがシナリオじゃない
(謎のタイトルも敵の攻撃もシナリオの一部)

10.音楽がシナリオの半分を占める
(テキストと音楽のタイミングは同時に決めていく)

プログラマーたちの戦い

プログラム、サーバー管理に関してもこのチームならではの工夫が。

通常なら仕様書を組んで、そこから完成品の動きを予想して議論を交わしながら開発を進めるところだが、議論を実機ベースに変更。そのため、仕様書からの想像によって話が進むことがなく、机上の空論が生まれず、スムーズな開発が行われたという。そのほか、Jenkinsを使った開発ツールの共有や、データの共有も行われ、プログラマそれぞれがすべてを共有し、並行して開発を進めることができたそうだ。

リードエンジニアを務めた渡部氏はこのシステムに関して「お互いを信じてそれぞれが自発的に動いたため、納期に間に合わせることができた。プログラマチームは、基本的に空気を読んで適当になんとかするという雰囲気が出来上がっていたので、よそからは修羅の国とも呼ばれていた。他人の担当箇所でも間違いがあったら勝手に直すということを続けていたからこそ、納期に間に合ったが、運営をする今となっては後悔しかしていないし、絶対にこの進行はオススメできない(笑)。1行ごとに書いた人が違うプログラムを見るなんて、なかなかない経験だが」と語る。

▲渡部氏が作成した、ステージエディットツール。これにより、ステージ作成の手間は大きく省かれたという。

サーバープログラムの管理について、グリー生え抜きの吉川氏は「今回こういった形でアプリが出せたのは、任天堂、スクエニなどコンシューマ出身のスタッフがいたからこそできたこと。僕たちWeb屋だけの編成では『消滅都市』は作れなかった」と振り返る。また、リリースから1ヵ月で100万ダウンロードを達成したことに関しては「当時想定していたピークを軽く突破してしまったので、サーバーに関する問題が多数発生してしまった。当時予算や開発期間が限られていたため、AWSの採用にチャレンジしたが、事前の検証不足により思うように性能を引き出せなかった。最終的にはノウハウのあるグリーの自社インフラに移行した。AWSは良い製品だが、ソリューションの選定と検証に時間を割かないと失敗する。サーバーは用法用量を守って正しく扱わないとダメ(※)」とコメント。想像以上のアクセスには、かなりの苦労をしたようだ。

※9月4日:原稿のニュアンスに一部違いがあったため修正致しました。

▲半年という短い期間でAWSのメリットを得るのはやはり難しかったと吉川氏。

かなり特殊な環境で作られた『消滅都市』なので、なかなか参考にできることは少ないかもしれないが、少人数でも、開発期間がたった6ヵ月であろうとも、努力と工夫があればここまでヒットする作品が作れるといういい指標になるだろう。

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