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大ヒット『なめこ』アプリの広告予算はゼロ!? スマホアプリのマーケティング戦略

2013-09-25 19:43 投稿

デジタル広告分野で注目のスマホアプリ

2013年9月18日~19日にかけて開催された“ad:tech tokyo”は、デジタルマーケティングに関するビジネスイベントだ。このイベントの中で、スマートフォンのゲームアプリに関するパネルディスカッション “累計1000万DL以上!ヒットアプリのマーケティング戦略裏話”が開催された。

登壇者は、『おさわり探偵 なめこ栽培キット』を始めとする『なめこ』シリーズを手がけるビーワークスの アカウントディレクター 伴雄斗氏、『ぷよぷよクエスト』などが快調のセガネットワークスからは事業本部 事業企画部副部長の鈴木清司氏、スマートホンきせかえアプリ『CocoPPa』を展開するユナイテッドの取締役 兼 執行役員スマートフォンメディアカンパニー長の手嶋浩己氏だ。進行役はアドイノベーション代表取締役社長の石森博光。アドイノベーション社は広告主向けにスマートホン広告解析サービスなどを手がけている。

まずは石森氏から、このセッションが企画された背景について説明された。昨年までに世界のスマートホン契約台数10億台突破し、今年の出荷台数も10億台を突破した。買い替え需要もあるため、単純に20億人のユーザーが居る、とは言わないまでも、スマートフォンはデジタル広告分野で無視できないメディアになっているとのこと。また、調査会社のニールセンによれば、スマートフォンユーザーはひとりあたり月間で40時間ほどインターネットにアクセスしており、Webサイト閲覧に約13時間、アプリ利用が約31時間。つまり、これからの広告ビジネスにとって、アプリは無視できない存在というわけだ。

では、スマートフォンユーザーに支持されるアプリとはどのように作られ、スマートフォンアプリ自体はどのようなマーケティングを実施しているか? これをおもなテーマにトークが進行していった。

▲アドイノベーション代表取締役社長の石森博光氏。

自分が欲しくてマーケットにないものがヒットする

ビーワークスが手がける『なめこ』アプリシリーズは、全世界で約3400万DL(ダウンロード)を達成している。このうち2割強が海外、とくにアジア方面に支持されているという。内訳は初代『おさわり探偵 なめこ栽培キット』が1600万DL、『おさわり探偵 なめこ栽培キット seasons』が1200万DL、『おさわり探偵 なめこ栽培キット Deluxe』が800万DL。

『なめこ』アプリシリーズのヒットについて、伴氏は「自分がほしくてマーケットにないものがヒットした」と分析する。開発者が「こんなふうに遊べたらいいな」と思ったけれど、ほしいアプリがなかった。それは世の中にはないアプリ。つまり理屈ではなく、自分が使いたい、遊びたいという気持ちでアプリを作ることが大切だという。

▲ビーワークス アカウントディレクターの伴雄斗氏。

スマートフォンきせかえアプリ『CocoPPa』も、女性スタッフの「スマートホンを自分の好きなかわいい画面にしたい」というシンプルな提案がキッカケだったという。コミュニティサイトで質問してみたところ、そのようなアプリやサービスは誰も知らず、発案自体も否定されてしまったそうだ。

しかし、開発スタッフに相談したところ、「こうすればできるよ」とアドバイスを受ける。この会話がキッカケでユーザー投稿型の『CocoPPa』が誕生したのだ。ユナイテッドの手嶋氏によると、現在のユーザー数は1200万。とくに海外ユーザーが8割以上と高く、そのうち半分がアメリカだという。つまり、日本の感性にはない発想が、世界で支持された格好だ。

ヒットアプリをいくつも手がけているセガネットワークスの鈴木氏は「スマートフォンで流行るアプリは2種類ある。もともとすごく流行っているIP(版権・著作)か、オリジナルIPか。中途半端なIPではユーザーに受け入れてもらえない」と語る。「ユーザーは少ないけれど、一定の売上がある」という作品は、小さく成功しているように見えて、じつはジリ貧になっていると厳しく指摘した。

初動が大事。わずかなトラブルでユーザーは離れていく

多くのアプリを手がけてきた鈴木氏は、ヒットアプリの最低条件として「完成度の高さ」を強調。アプリをリリースしたら、スタート時のユーザーの反応が大切で、初期から参加するユーザーにダメ出しされるアプリは成功しないという。ダウンロードサイトのユーザー評価でネガティブな意見が出ると、それ以降のダウンロード数に影響が出るとのことだ。逆にスタート時に好評価だった場合、初期ユーザーはアクティブユーザーとなって、課金率も高くなるという。

つまり、リリースする時はわずかなトラブルやミスをなくし、最初から完成度を高めて出すこと。個人や小規模デベロッパーに見られるような、「スケジュール優先でこの日までに出さなきゃだめ」、「バグだらけだけど、とりあえず出してみようか」という考えでは苦戦すると指摘した。

▲セガネットワークス事業本部 事業企画部副部長の鈴木清司氏。

この意見に対して、進行役の石森氏は「初動で10万DLに達しないようなゲームはすぐにクローズしますか?」と問いかけると、「1ヵ月目でヤバイなと思ったら、3ヵ月くらいで修正し、そこで見極めます。早ければ半年でクローズするかも」とは鈴木氏。アプリの市場競争も激化している。

このほか、3氏とも共通するヒット要素として挙げれたのが“タイミング”。『なめこ』の場合は、個人デベロッパーのヒット作が落ち着いて、GREEやMobageなどが乗り込む前にクオリティの高いアプリを出せた。ユナイテッドも『CocoPPa』以前からアプリに取り組んでいた。セガネットワークスの『チェインクロニクル』も、当時のアプリゲームは軽いものが多く、ストーリーを作りこんだゲームがほかになかったこと。いずれもタイミングが良かったことが成功した要素だという。

意外にもアプリの初期プロモーション予算は少ない

続いて、アプリをどのように広めていくかという話題に。スマートフォンの広告展開を手がけてきた石森氏は、アプリのプロモーションは短い期間でユーザーを集めないといけないため、代理店にとっては厳しいビジネスだと語った。ヒットさせようと思ったら、初動で1000万円以上の予算を使い、毎月300万円くらいかけるという。

しかし、ゲームアプリの場合は初動に予算を使わない場合が多いようだ。たとえばセガネットワークスの場合、告知広告は自社アプリ内の広告などで実施する。予約特典などは課金アイテムの数十万円くらいを目処にしているという。

石森氏が「ゲームの場合は事前登録という方法でユーザーを集めるようですが」と促したところ、「事前登録が多くても、アクティブになる転換率が低い場合は、プロモーション費用が割高になる」と指摘。稼働後のユーザーが大切で、それだけに有料プログラム開始のタイミングが重要とのこと。

『CocoPPa』の場合も、手嶋氏は「初期プロモーション費用は一切使っていない」と明かしたうえで、8月からプロモーション予算を使い始めたと話す。プロダクツの成功が見えて、さらに飛躍させるため、つぎの目標を3000万DLに定めたとのことだ。

▲ユナイテッド取締役 兼 執行役員スマートフォンメディアカンパニー長の手嶋浩己氏。

『なめこ』もプロモーション費用は一切使っていないという。理由は簡単で『なめこ』のアプリシリーズ自体が、そもそもニンテンドーDS用のゲーム『おさわり探偵 小沢里奈』のアプリ版の宣伝用として作られたからだ。宣伝の宣伝をするとは本末転倒。アプリをきっかけとした”なめこキャラクター”の人気によって、『おさわり探偵 小沢里奈』の収益も上がっているという。

アプリの広告プログラムの選びかた

アプリゲームの広告媒体としての位置づけについても、各社に考え方の違いがあるようだ。セッションの最後は、アプリ自身が収益を上げていく方法について、各社の考えが披露された。

セガネットワークスはアプリ内に広告表示用のプログラムを組み込んでいる。このプログラムはSDK(開発キット)として、広告代理店から提供され、ゲームメーカーはアプリに組み込むという仕組みだ。ヒットゲームとしてユーザー数が多いほど、広告代理店から「ウチのSDKを入れてください」と依頼されるという。そのSDKの選びかた、つまり広告代理店の選び方について、ゲーム開発側はかなり慎重だ。

「広告主と代理店の連携も大事ですが、代理店さんの緊張感も重視します。全体的に良いプランでも細かいところで連携ができていないとダメ」と鈴木氏。スマホアプリにSDKを組み込むと簡単に言うけれど、それでアプリを改変したら、iPhoneの場合はアップルに申請する必要がある。組み込み作業に当然ながら開発チームに負担になるからだ。SDKのトラブルに対して「このように対応せよ」と主導権を握っておくことが大切だ。

では、SDKに起因してゲームが起動できない場合はどうなるか? 復旧するまでの間に課金ができないばかりか、ユーザーも離れていく。この機会損失は大きい。こうした事態を防ぐため、広告代理店とはトラブルの際の補填を約束させるという。これはお金が目的というよりも、危機感を共有することが目的とのこと。広告代理店の僅かな手数料では、損失補てんだけで経営危機になる場合も考えられる。そうならないためにも、代理店経営には営業活動だけではなく、SDKの整備にもきちんとお金や人材を割いてもらいたいというわけだ。また、広告代理店を選ぶ時は、SDKの整備だけではなく、AppleやGoogleの規約の変更にすぐに対応できるかなど、情報収集力も自由詩するという。

一方、『なめこ』アプリの場合は広告収益を重視していない。アプリに広告用SDKは組み込んでいるが、これは自社広告を表示させるため。ユーザー解析などの機能も使っていないという。ただし『なめこ』は広告よりもキャラクターの収益が大きいという。当初はゲームから人気に火が着いた『なめこ』も、最近ではぬいぐるみなどキャラクターグッズで“なめこ”というキャラクターを知り、アプリにたどり着く人も多いという。例えば、台湾の集集線で、なめこのラッピング列車が走った。これはラッピング広告ではなく、鉄道会社から「集客のためにキャラクターを使いたい」という申し出があったから。つまり、広告料を払うのではなく、ロイヤリティを払ってもらっているそうだ。

「なめこは嫌われたくない」と伴氏。これは、キャラクターの安売りによってユーザーに飽きられたり、キャラクターとタイアップした商品とのミスマッチで嫌悪感を抱かれたくない、という意味だ。引き合いがあっても、実際には断っている事案も多いと語り、タイアップについては二人三脚でじっくり取り組んでもらえる企業を選び、「ドカンと儲けるより 目立たなくやっていきたい」そうだ。

「小学生がなめこの歌を歌ってくれたり、なめこ体操をやってくれたり、かなり広い層に広まっています。だからなめこは10年以上続くコンテンツに育てていきたい。ドラえもんやポケモンのような定番の人気者になってほしい」(伴)。その上で、今後はいままで遠慮していただいた企業ともコラボレーションしていきたいそうだ。

この伴氏の発言に、「うちとどうですか?」とセガネットワークスの鈴木氏が提案すると、「なめこはゲーム出身ですから、ゲームコンテンツとは……」と伴氏。これには鈴木氏も「やんわりと断られちゃいましたね」と苦笑いしていた。

アプリが広告媒体として注目される中で、ゲーム開発会社は「キャラクターを大切にすること」「ユーザーを意識すること」など、ブレない方針が大切だとあらためて感じる講演だった。

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