【閲覧注意】この夏スマゲ界を震撼させたホラーゲーム『呪巣』の開発者にも怪奇現象が

2014-10-06 12:30 投稿

制作中に起こったリアル怪奇現象のエピソードも

2014年夏、アプリ業界は空前のホラーゲームブームが巻き起こった。その中でも、「怖くて進められない!」と口コミで広がり、話題になったアプリがある。

それが『呪巣(じゅそう)』だ。

編集部にもその噂はすぐに届き、怖いもの見たさに編集者がさっそくプレイ……。デスクのあちこちから、恐怖に怯える叫び声が聞こえてきたとか、ないとか(実際聞こえてきましたw)。

今回、ファミ通Appではそんな『呪巣』を制作した開発者にコンタクトを取ることに成功。インタビューを実施した。

お話を伺ったのは、EDGE’S(エッジズ)という制作チームのディレクターI氏と、エンジニアのK氏。諸事情により、顔も名前も明かせないということだが、これだけは言っておきたい。彼らはちゃんと生きた生身の人間だ。決して霊などではないということだけは覚えておいて、インタビューをご覧いただきたい(笑)。

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――EDGE’Sはどのようにして結成されたのでしょうか。

I 私はゲームの企画をしているんですが、もともとひとりでゲームを作っていたKに、「いっしょに作ってみないか」と声をかけたんです。そして『黒いところDEATH』というライトゲームを作ってみたんですよ。これが海外でそこそこダウンロード数が伸びたので、「これはいけるんじゃないか?」となりました。

K それで本格的にチームとして活動していくことになりました。

I もうひとり、私の兄もグラフィックの仕事をやっているのですが、昔からふたりで『RPGツクール』をひたすらやっていて、「将来はいっしょにゲームを作ろう」と言っていたんです。それがプログラムを組めるKが参加してくれたことで実現しました。

――『ツクール』!! そうやって『呪巣』の制作が始まったんですね。

K 『呪巣』は3人で3ヵ月間くらいで制作しました。土日だけで制作を進めていたので、実質1ヵ月ほどですね。ちょうど、中国のモバイルゲームの大会があったので、そこへ出すために作りました。

――中国の大会ですか。

K 私は中国の出身なので、中国の市場とつながりを持っています。中国で展開するために、その大会で何か1本出したいなということで、ホラーゲームがいいんじゃないかと思っていました。

――ホラーゲームを選ばれた理由は何ですか?

I 私も兄も大のホラー好きなんですね。プライベートでヒマを見つければ、「心霊」と検索してヒットした動画を片っ端から観ていくほどの大のホラー好きなんです。そんな彼と「いつか携帯をもう持ちたくならないトラウマになるようなホラーゲームを作りたい」と話していたのがキッカケです

K それに、中国ではまだ誰もホラーゲームは作っていなくて、市場にも空きがあります。法律のバランスもあるので、調整をしないと中国ではホラーゲームを簡単にリリースできないんですが、そのへんは私が理解していますし、Iたちはグラフィックの技術がありますから、「これは絶対いける」と思ったんです。

I 私もいっしょに中国へ乗り込んで、Kの友人の社長さんなど、いろいろな方とお話をしたり契約を結ばせていただきました。中国でも映画『呪怨』などのジャパニーズホラーが流行っていたそうなんです。

――中国の方もホラーはお好きなんですね。中国版は内容が異なるのでしょうか?

I 変えていないですね。作る段階で変えなくてもいいように開発を進めていましたので。ただ、中国の文化に合わせて、多少ローカライズをしています。たとえば、日本版のアプリアイコンはネコのぬいぐるみですけれど、中国版のアイコンはおばあさんの顔の白目バージョンにしています。

K 中国ではネコは怖いものじゃなくて食材ですから(笑)。そういった文化の違いの面を変えていますね。あと中国版はタイトルも違うんですよ。“巣”ではなく、“宅”なんです。中国の人はこの字を見て怖さを連想する文化があるので。“宅”にはお化けが出そうな廃墟のイメージがあるんです。

――そうなんですか! そもそも、『呪巣』のタイトルの由来はどういったものなのでしょうか。

I 過去にあった事件が原因で、家が連鎖的に人々を呼び込み、そして人が死んで溜まっていって巣のようになるというイメージですね。タイトルを考えるとき、“呪”はわかりやすいので入れたくて、それと呪いが溜まっていく様子を漢字一文字で入れたかったのがありました。でも、B級ホラー映画などで使われている字も多くて……。いろいろ検討して最終的に『呪巣』になりました。

裏打ちされた恐怖演出

――『呪巣』はグラフィックが抜群に恐ろしいですが、どのように作られているのでしょうか。

I 兄が3Dモデルでグラフィックを作り、平面的に描き起こしています。でもじつは、3Dで作っていないところがひとつだけあるんですよ。

――どの部分ですか?

I いちばん最初の、家の軒先なんです。あそこはウチのおばあちゃんの家を撮影して使っているんですよ

――まじですか(笑)。どうりでリアルだなと思いました。モノクロでハッとさせられましたし。

K 全体的に色が爽やかだと、恐怖を植え付ける目的からブレてしまうのでモノクロにしたんです。

I それに、3人で作っていますのでカラーにすると、それだけ時間もかかってしまいますので、キーカラーとして血を連想させる赤の部分と、アイテムのところだけは色をつける形にしました。あとは、人や顔に見えそうな影や、壁のシミなどを入れたり。不安感をあおるデザインになるよう気を遣っていましたね。

――なるほど。背景だけでなく、途中で出てくるお婆さんもすごく描き込まれていて怖いですが……。

I あのお婆さんの顔は3回くらい描き直していましたね。「まだ怖くない、まだ怖くない」と。いかに怖がらせるかという、兄の念がこもった顔になっているかと思います(笑)。

K I兄弟は怖いのが平気なんですけど、私はあの怖いグラフィックが届くたびに怖かったですね。いまはもう慣れましたけど(笑)。

――恐怖に慣れてしまうと、どれくらい怖いのか判断しにくいと思うのですが、どうやってテストされたのでしょうか?

I Kのガールフレンドや、私の奥さんにプレイしてもらいました。最初の郵便受けのところで絶叫していましたね(笑)。あとは、私と兄はホラー映画を200本以上観ていて、独特の“恐怖を溜める間”というのが刷り込まれているので、それをもとに「あとコンマ5秒遅らせて出したほうがいいかな」と調整していきました

――培ったものが活かされているんですね。

I 調べる回数なんかもそうですね。1回、2回と調べて何も起こらないと、3回目は油断しきっていると思うので、そこでドーンと来たら恐怖をより感じられるかなと。

――そういえば、このゲームは3回調べるのが基本ですね。では、そういった仕掛けや物語はどのように組み立てているのでしょうか?

I お話は私と兄とで考えています。いままで観てきた映画やプレイしたゲームを踏まえて、「いちばん怖かった要素って何だろう」と話し合って作っていますね。風呂場や子ども部屋など、ベタなシーンが多かったかと思うんですけど、どういう部屋があったらホラー要素を仕込みやすいかというのを軸にして考えていました。そこにストーリーをつけていった形ですね。

アップデートと続編

――ストーリーで気になるのがエンディングなんですけれども、現状は1種類なのでしょうか?

I そうなんです。いまは1種類ですが、アップデートで増える予定はあります。

K エンディングはしっかりと練って、皆さんが納得できるようなものを追加したいですね。主人公が生きて帰るエンディングも考えていますよ。

――よかった……!

K それと、先日アップデートしたバージョンは、“完成度”という機能やアチーブメントが入っています。

I 『呪巣』は“ビビリ度”という、ふわっとしたリザルトがありますけど、現バージョンは完成度。つまりイベント達成度になります。いろいろな条件を満たさないと出てこない霊とかもいるんですよ。

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K 完成度を100%にするのはけっこうむずかしいと思います。

I 全部のフラグを踏んで、すべての霊を見てエンディングまで行けたかどうかがアチーブメントと連動しているんです。また、くり返しプレイしても、毎回恐怖のタイミングが異なって、いつもドキドキできるようになるかと思います。

K エフェクトもより雰囲気が出るよう強化しています。暗がりでもちゃんと懐中電灯のライトで照らしながら探索できますし。

I 最初のバージョンでは、懐中電灯に電池を入れて使えるようになったのに、暗くなった部屋で使えなかったと思うんですが、これは中国の訪問会社へ持っていくために時間がなくて入れられなかった機能なんです。現バージョンでは使えるようになり、使うことでイベントが起こる仕組みもいくつか入れています。

――ちなみに続編はお考えでしょうか?

K もちろん続編は考えています。死んだままでは続かないですけれど、生きて脱出できたら、続編につなげられますよね。

――たしかに。続編はどんなお話になりそうでしょうか?

I 昔、あの家で起きた事件の当日のお話を続編で出したいなと考えています。過去に遡ることになりますね。『2』をプレイした後で『1』をやると、あの部屋のあれはこういう意味だったんだとわかるような、リンクしている作品にしたいですね。『1』では、怪しすぎるのに何もなかったところがいくつかあったと思うんです。そこを掘り下げて、なぜああいう事件が起こってしまったのかを描いていければと。

K そうやって、どんどんつながっていくシリーズを作っていって、いずれ映画化されたりするといいですね。

I そうですね。それぐらい夢を持ってやっています。

恐怖のアハ体験

――いちばん影響を受けた作品はなんですか?

K 『バイオハザード』シリーズの『1』と『2』、あとは『4』ですね。ゲーム中にパズル要素があるので、そこが好きです。油断したところに、クリーチャーが出たりする演出が怖かったですね。また、部屋の中の雰囲気や光、音の使いかたも日本のホラーという感じがしました。あとは、『サイレントヒル』も好きですね。

I  私は『零』シリーズですとか、『CALLING~黒き着信~』ですね。FLASHゲームの『THE HOUSE』も、恐怖の掻き立てかたがすごく上手で、こういうゲームを作りたいと思いました。また、ホラーゲームの実況動画なども観て参考にしています。それと、稲川淳二さんのライブに行ったりとかもしています。

――やはりジャパニーズホラーなんですね。

I そうですね。『呪怨』の小説版を読んでみたりもしました。なぜ文字の表現だけでこんなに場面が想像でき、動作が理解できるんだろうかと思いました。映画ですと、『呪怨』の劇場版より前に公開されたビデオ版が好きですね。ダラっとした映画だと思われるかもしれないですが、間の使いかたや、要所要所で誰も触れないけれど、画面にずっと顔が映っていたりと恐怖演出が巧みで。

――それは気づくとゾーッとしますね。

I 要は、恐怖のアハ体験みたいなものですよね。心霊写真を見せられて、霊がどこに写っているんだろうと探したときのような。「いた!」と霊を発見すると、もうそれにしか見えなくなるという現象があると思うんです。

――恐怖のアハ体験!

I ありがたいことに、『呪巣』も実況プレイをしていただているんですけど、何も仕込んでいないところに、「ココに顔がある!」って思っていただく方もいらっしゃったりして……。

――先ほど、何かに見えるように描かれた部分があるとおっしゃっていましたが、そうでないところでも!?

I ええ。ノイズのエフェクトをつけたりしてはいるんですが、何かいるだろうという思い込みでそう見えてしまうみたいですね(笑)。

リアル恐怖体験のエピソード

――制作中に何か怖い体験をしたことはありましたか?

K 夜の3時くらいに、ちょうどエンディングの部分を作っていたら、黒いネコが家に来たんです。私は1階に住んでいるんですけど、ドアの前ですごい唸るような鳴き声がして。最初は、ネコどうしでケンカでもしているのかと思っていたんですが、どう見ても1匹しかいないんですね。そのネコ、3日間連続で来たんですよ。アレは不思議な体験で怖かったですね。

――よりによって、あのネコの首と胴をくっつける、エンディングのときにですか……。

K 中国では、黒いネコは地獄の使者みたいに思われているので、余計怖かったです。

I 私の場合は、奥さんが霊感が強くて……。そういう家系らしいんですけど。『呪巣』の制作中は、なぜかテレビの電源が切れなくなったことがありました。ホラー番組の『本当にあった怖い話』を録画していたんですけど、ちょうどスロー再現のシーンでハードディスクが、ガガガガガッて止まって、テレビも切れなくなって……。

――こ、怖い……! 大丈夫でしたか?

I いや、私は怖いの全然平気なんです(笑)。ハードディスクは、5分くらい待ってコンセント抜いたんですけど、直りませんでしたね。けっきょく壊れました。

――冷静ですね。ところで、霊はいると思いますか?

I 間違いなくいると思っています。私は霊感はまったくないですし、心霊体験もないですけど「あ、いるんだな」と思った体験をしたことがあります。それは曾爺さんの葬式のときのことなんです。祖父が家族写真を持っていたんですけど、そこに白い霧がかかったような感じで、亡くなった曾爺さんが写っていたんですよ。明らかに曾爺さんとわかる輪郭で、わりとハッキリ写っていて……。怖くはなかったですが、やっぱり霊体ってあるんだなと思いました。それから、親戚にお祓いをやっている方がいるんですが、実際に話を聞いたりとか、そういう現象が起きた写真を見せていただいたこともありますね。

K 中国では、霊でなく“魂”なんですよ。

――それは知りませんでした!

K 恐怖感も日本とすごく近いですけれど、微妙に違う。この微妙な違いをうまくクリアーしていけば、もっと怖いものが作れるかなと思っています。

EDGE’Sのこれから

――EDGE’Sの今後の展開をお聞かせください。

I まずは英語版をリリースするために、翻訳作業をしています。出してみて、また様子をみようかと。あちらでもジャパニーズホラーの人気はありますし。

K 中国では、『呪巣』がこのジャンルのトップを取れるんじゃないかと期待しています。

I EDGE’Sといえばホラーゲームというようになるといいですね。もちろん日本でも。今回、皆さんの反響で手応えを感じたんです。ツイッターなどで、学生さんとかが罰ゲームの代わりに、『呪巣』をひとりでプレイして報告するというのも見かけました。あとは、怖すぎて画面下の広告に救われたという声もありましたね。

――わかる気がします。広告は今後、課金などで取り払えたりということはありますか?

I 広告で恐怖が削がれるというのは、中国でも話に上がったんです。中国版では広告はなくして、課金の部分で厚みを少し出したものをリリースする予定です。日本版では、今後の制作資金のために広告に頼る部分がどうしてもあるので……。

――なるほど。では、続編はいつごろ出そうでしょうか?

I 続編は1年越しでリリースしたいなと思っています。来年の夏ごろでしょうか。急に冬バージョンが出たりするかもしれませんけど!

K お婆ちゃんの家に雪が積もっていたりとかね(笑)。

I 北海道ですからね(笑)。『呪巣』以外ですと、いまオンラインゲームを作り始めています。こちらはホラーではなく、野菜と果物が登場するかわいい作品です。さすがに、3人ですときびしいので、何人か参加していただいています。

K こちらのオンラインゲームが先にリリースされる予定ですね。

FvsV

――最後に皆さんへのメッセージをお願いします。

K 私は、ディベロッパーの方々に、自分の作りたいものがあれば、EDGE’Sに入ってくださいと言いたいです。EDGE’Sというチームは、開発メンバーの作りたいものを作れる場所なので。EDGE’Sの力で作りたいものをもっとレベルアップさせられるような体制を作っています。また、いい作品があれば中国市場に出すことも可能です。ぜひ、ご興味があればご連絡ください。

I EDGE’Sというチーム名のように、今後も尖ったゲームをホラーに限らず作っていきたいと思っています。『呪巣』では、電話がかかってくるシーンがありますが、そんな風にユーザーさんの生活とリンクするような、このゲームをプレイしたせいで何気ない生活のワンシーンが怖くなるような、日常に溶け込む作品ができたらいいですね。「あのゲーム怖かったな」と思い出したときに、そこにEDGE’Sという名前があるような、心に残るゲームを作っていきたいです。

――本日はありがとうございました!

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呪巣

メーカー
EDGE'S
配信日
配信中
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
iOS 6.0 以降、Android 2.3.3 以上

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