『君と霧のラビリンス』に登場する男子生徒たちの日常を描くオリジナルSSの伽羅学園編をお届け!

伽羅学園

白木院 聖
CV:柿原徹也

蓮見 湊
CV:興津和幸

菱川穂高
CV:梅原裕一郎

八神アケト
CV梶裕貴

春、伽羅学園──。

街路

白木院 「春といえば、桜!」

いきなりオーバーな身振り手振りで話し始めた白木院に、驚きもしない伽羅学園生徒会執行部一同。

かまって欲しいオーラ全開の白木院に、蓮見がため息を添えて「それが?」と言葉を返す。

白木院「 つまらない反応だな。春だというのに、うれしくはないのかい?」

蓮見 「 うれしいなどという感情とはほぼ無縁だな。花粉の多くなる忌々しい季節の到来をなぜ喜ばねばならん」

蓮見は重度の花粉症。
この季節は室内でもマスクが手放せないという。

白木院「 花粉症はツライと思うけど……凍えるような寒さの冬が終わり、暖かい春が来たんだよ? 喜ばずにいられるはずがないだろう!

菱川 「ふあー……春眠暁を覚えずって言うし、寝ていいかな?

八神 「おいおい、さっき起きたところじゃん」

菱川 「だって……」

「眠いんだもん」と言い終える前に、菱川は寝息をたて始めた。

八神 「そんな寝てばっかいると、体鈍っちゃうぞー」

菱川 「くー……」

八神 「……完全に寝てるな」

蓮見 「放っておけ。それより、春の祝賀会の件なんだが……

白木院「それなら昨夜、ミハエルくんと一緒にまとめておいたから心配ないよ。はい、これ資料ね」

ミハエルとは白木院の執事の名前。

蓮見 「いい感じにまとまっているな」

白木院「でしょ?」

蓮見 「ああ、さすがミハエルくんだな」

八神 「さすがミハエルくんですねー」

白木院……意地でも僕のことは誉めてくれないんだね

八神 「 あはは、なんとなくノリで。会長ががんばってくれたのもわかってますよ! いつもありがとうございます」

白木院「八神〜〜! そうやって言ってくれるのは、君だけだよ」

抱きつこうとした白木院をさらりと交わし、八神は「ところで」と話題を切り替えた。

八神 「さっきから甘〜い匂いがするんだけど……

白木院「 ふふふ……よくぞ気づいてくれた!! 春といえば、桜! という訳で、さくら味のシフォンケーキを焼いてみたんだ」

八神 「さくら味?」

白木院「さくらの花びらの塩漬けを入れてみたんだよ」

蓮見 「和風なのか洋風なのかわからないな」

白木院「 和洋折衷ってことでいいじゃない。せっかくだから、紫苑学院の桜を見ながら食べようよ。お花見、まだしてなかったでしょ?」

蓮見 「……お花見、だと?

八神 「いいですね! 紫苑の桜、ちょうど満開だって話ですよ〜!」

白木院「お、詳しいね」

八神 「紫苑学院の弦とはバスケ仲間なんで。今朝も一緒にバスケしてたんですよ

白木院「なるほどね」

蓮見 「……俺は、今すぐ行かねばならないところを思い出した」

白木院「どこへ?」

八神 「 伽羅学園生徒会執行部の親睦会を兼ねてのお花見なんですから、湊先輩にも出席して貰わないと」

蓮見 「親睦会……んなの、いつ誰が決めたんだ?

八神 「今、オレが」

蓮見 「ああん?」

八神 「 せっかくのお花見なんですから、全員いないとつまんないっしょー! 穂高も起きろ、行こうぜ」

菱川 「むにゃむにゃ……」

白木院「では、張り切って紫苑学院へ向かうとしよう」

紫苑学院、校門近くのお花見会場──。

八神 「 めっちゃいい席取れた(ミハエルくんが取ってくれてたから)のはいいとして……なーんで肝心のシフォンケーキがぺっちゃんこなんですかねぇ?

白木院「えっと……ほら、さっきフォッグに襲われた時についケーキの箱を落としちゃって」

菱川 「それをぼくが蹴っちゃって……

蓮見 「俺が踏んづけた

八神 「ケーキ箱、フルボッコじゃないですかー!!

蓮見 「 うるさい、形は悪くとも味は一緒だろ。黙って食え! くしゅん。あー……目がかゆいわ、鼻水でるわ。だから来たくなかったんだ」

菱川 「はい、ティッシュ」

蓮見 「……悪いな」

白木院「 まあまあ。ミハエルくんにお花見弁当を届けて貰っているから食べようよ。八神の好きなカツサンドもあるよ」

八神 「カツサンドも好きだけど、シフォンケーキが……」

白木院「うう、そこまでシフォンケーキを想ってくれるのは八神だけだよ!」

八神 「会長のシフォンケーキ、マジうまなんで」

白木院うれし……じゃなくて、コホン。うちのミハエルくんは料理が上手だからね!

蓮見 「この期に及んで隠せると思ってんのか? くしゅん! 菱川 、ティッシュもう1枚……」

菱川 「ボックスごとあげるよ」

蓮見 「……なんで持ってんだ?」

白木院「ほらほら、せっかくの満開の桜! 見ないと損だよ」

菱川 「キレイだね」

蓮見 「……悪くないな」

八神 「すっげー満開! なんつーか、生まれ育った寺を思い出すなぁ……

蓮見 「そういや、あそこの桜も美しかったな」

白木院「へぇ……それは1度見てみたいものだね」

菱川 「会長は桜が好きだね」

白木院桜だけではないよ。美しいものは何だって好きさ

八神 「会長は博愛主義者だから」

白木院惜しいね! 僕 はみんなのお兄ちゃんだ。お兄ちゃんは弟たちを愛し、守るものだからね

八神 「それ、いつも言ってますよねー」

白木院「そう?」

菱川 「マシュマロおいしい……」

蓮見 「ギモーブだろ」

白木院「こら、それは食後のデザートだよ。先にお弁当を全部食べなさい」

菱川 「全部とか無理」

白木院「食べられるだけでもいいから……。成長期に栄養偏るのはよくないよ」

菱川 「これ以上伸びなくていいよ

蓮見 「嫌味か? 売られた喧嘩は買うぞ

菱川 「……え?」

八神 「湊先輩、許してやってください。こいつ、無意識っつーか、天然なんで」

蓮見 「…………」

白木院「こうやっていると、フォッグのことなんて忘れちゃうね」

蓮見 「先ほど襲われたばかりだがな」

白木院「そう言われると、元も子もないじゃない。この平和な感じがさ、わかんないかなー?」

蓮見 「……わかるさ。みんな望んでいるんだ。フォッグがいない、元の平和な学園島を

菱川 「早く戻って欲しいね……」

八神 「その為にはレゾナンスがいないと

蓮見 「レゾナンス……どこにいるんだろうな」

白木院「 きっと見つかるよ。強く願えば願うほど……願いは叶うっていうからね。僕たちの願いはレゾナンスに届く──そう信じているよ

世界観・シナリオ/さかもとゆかり(株式会社ラプター)