【新作】失われし記憶に刻まれた想いのカタチを解く脱出アドベンチャー『あさみエスケープ』
投稿日 2019.10.20
王道をたどり3度世界を覆す物語
記憶を喪い見知らぬ部屋で目覚める男。名前すら思い出せず困惑する彼の前に現れたのは“愚かなオタク君”と呼び捨てるモニター越しの怪しい女だった。
本記事で紹介する『あさみエスケープ』は、交換日記から始まる奇妙な男女を描いたホラー系ヤンデレノベル『うつろにっき』を手かげたクリエイター陣による待望の最新作だ。
ゲームの見どころ
●記憶の断片を集めていく4段階のウェブ体験
●絶望と真実のすべてを暴く3つの結末
記憶の断片を集めていく4段階のウェブ体験
主人公を“愚かなオタク君”と呼ぶのはキレイなブロンドの髪が特徴的でちょっと強気な女の子“浅海・D・アリアナウェーブ”(以下、あさみ)、本作のタイトルにもなっている、まさにその人だ。
自分の名前すら思い出せな主人公を監禁するあさみ。2人の奇妙な関係性を脱出ゲーム形式で紐解いていくのがプレイヤーの使命だ。
謎解きの仕組みは画面に触れて行う調査と、集めたアイテムを使った分析。脱出ゲームのセオリーをそのままに、毎ステージどこかに失敗すれば即ゲームオーバーという危険な仕掛けが施されたスリル満点のチャレンジだ。
第1からコモン(記憶の固執)、サーフェイス(戦争の顔)、ディープ(下水道)、チャーター(最後の晩餐)、4つの階層に区分されたウェブ(ステージ)。いっけん単なる脱出ゲームのように見えるが、この名前に大きな意味が秘められている。
自分が“えたろー”と呼ばれていたこと、彼女との出会いと関係性など、ウェブを重ねていくごとに失われた記憶が蘇っていく展開にどんどん引き込まれていくのだ。
序盤こそ平凡でありきたりな物語に感じるが、思いがけない方向へと転じていく回想の連続に、さすが『うつろにっき』のチームという手応えに変わっていく。
可愛らしい絵柄の恋愛アドベンチャーという雰囲気を出しつつも、どこか不気味で不信感を抱かせるアプローチがそこかしこに漂っている。
謎解きの難易度はとても低くあっさりとした印象だが、テンポよく読み進めていける点で考えれば十分なバランスだろう。
絶望と真実のすべてを暴く3つの結末
4階層から成る脱出に成功した主人公に突きつけられる“3つの選択”は、運命を決する重要なパート。
その中でも有料の“みすず編(みすずうつろセット)”と“真実編(あさみルートセット)”で描かれる物語は衝撃的である。
無料版では想定外の伏線を残して“バッドエンド”というカタチで物語は終了。みすず編でその断片を補完し、真実編ですべての伏線を回収していく。
予想をはるかに上回る彼女たちの想いと世界そのものの設定に驚かされっぱなしだった。
なお、本作は『うつろにっき』同様、バーチャルユーチューバー(Deep WebUnderground、郡道美鈴、朝ノ瑠璃)が声優として登場。フルボイスで物語が展開していくのも大きな魅力である。
クリアーすると個々のYouTubeチャンネルにアクセスすることもできるので、興味のある人はぜひ、そちらもチェックしてもらいたい!!
P.N.深津庵
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