トリックアートダンジョンの概要

レビュー

投稿日2019.06.15

祖母に連れられ博物館に来た少年は、そこで待っている両親と会うため館内を探し始める。

母の後ろ姿を見つけ追いかける少年と、それを導くように舞う1頭の蝶々。その先で待っていたのは目の錯覚を利用してさまざまな表情を見せる異空間だった。

本記事で紹介する『トリックアートダンジョン』は、錯視効果が生み出す奇妙な世界の中で、離れ離れになってしまった両親を追っていく少年のパズルアクションゲームだ。

ゲームの見どころ
●脳を刺激する神秘的な錯視バズル
●少年の内に秘めたる感情を紐解く物語

両親に会うことを望み、祖母とタクシーに乗る少年。サトシと言う名の彼は、その車中でエジプト神話に登場する冥界の神アヌビスが襲いかかる奇妙な夢を見る。

そんなプロローグから始まる本作は、冒頭から錯視効果を使った仕掛けでプレイヤーを不思議な世界にいざなっていく。

各所に点在している“不思議なディスク”や“バルブ”といったアイテムを回収。所定のポイントに設置して画面を左右にスワイプすると隠された背景が姿を現す。

この、みずからの手でトリックアートを操る感覚がとても気持ちがいいのだ。

また、サソリやワシなど攻撃的な相手も続々登場。トリックアートを使ってギミックを解き、それら驚異を回避する術を探すといったアクション性も楽しめる。

視点を変え崖を作って迫りくる狼を落としたり、サソリの出入り口を隠してしまうなど、トリックアートの世界だからこその体験が随所に感じれたぞ。

両親とはいつもすれ違ってばかり。“嫌われているんだ”とか“邪魔な存在なんだ”という他者の声に苦しむ少年の内面が本作では描かれている。

少年の内に秘めた想いと不安定な心、それをトリックアートが具現化しているように筆者には感じられた。

非現実的なトリックアートの世界で体験したことを両親に伝えるも、まったく聞く耳を持ってくれない。

“本当は聞いてほしい”

そう願う子どもの想いが仕事に明け暮れる両親にまったく届かず、少年の心はどんどん傷ついていく。

少年が過去にどんな体験をし、大好きな両親に何を願い博物館を訪れているのか。ゲームを進めていくことでさまざまな側面が描かれ、少年の想いが明かされていく。

トリックアートとしてのゲーム性はもちろん、そうした世界観に注目してほしい作品だぞ。

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