レビュー
投稿日2020.11.21

すれ違う青春と不可解な物語
水に飲み込まれて溺れていくような現象に苦しむ男子学生と、その隣りの席に座る女子学生。
とある出来ごとをきっかけにひとつの秘密を共有することになったふたりは、徐々にお互いを意識し合う関係に変化していくのだが……。
本記事で紹介する『デュアルノベル』はそんなふたりの視点をふたつのウィンドーで同時に描いているサウンドノベル。
甘酸っぱい青春の中に潜む不思議な描写、周を重ねるほど真実に近づいていくストーリー展開に注目だ。
ゲームの見どころ
●揺れ動くふたりの感情を同時に描く心の窓
●周回プレイによって明かされる真実
揺れ動くふたりの感情を同時に描く心の窓
蒸し暑い6月の夜、村崎文人はベッドの上で全身が水の中に投げ込まれ、さらには部屋が水で満たされ息ができなくなるという不思議な体験をする。
これがことの始まり、時と場所を選ばず発生する奇妙な現象に苦しむ彼の日常は、隣りの席に座る同級生・永島陽菜の存在によって激変していく。
そんな彼と彼女の高校生活をふたつのウィンドーで同時に展開していくのが本作の特徴だ。
陽菜に手を握ってもらうと水が引いていく、苦しみから開放されることに気づいた文人は彼女に特異な症状を告白。陽菜は彼を助けるためのサポートを承諾する。
それをきっかけに人気のない校舎の影や登下校はもちろん、さらには授業中、クラスメイトに見つからないよう手を握ってもらう文人の心には恩人以上の感情が急激に芽生えていく。
いっけんすると馴染みあるサウンドノベルだが、本作の見どころはふたりがいっしょに過ごすシーンにある。
互いに意識し合う関係なのにどちらもそれに気づけない。
“きっと自分のことなんて”という感情を抱くふたりの距離はどこまでいっても平行線。そんな彼らの背中を押してあげるのが節目に現れる選択肢というわけだ。
2分割されたウィンドーは心の窓であり、それを知ることができるのはプレイヤーだけ。
“手を握る”
文人を救うための行為が陽菜に思いがけない感情を芽生えさせ、ふたりを取り巻く環境に思いがけない歪みが生じていく。
思わず背筋がゾクッとしてしまうミステリアスな展開から目が離せないぞ。
周回プレイによって明かされる真実
本作は全4章で構成され選択肢によって結末が変化していくマルチストーリー。驚きの展開と謎を残して終わっていく初回は、躊躇なく2周目を始めたくなるだけの魅力がいっぱいだ。
具体的なストーリー展開には触れないが、定番の魔法少女系だと思ったらダークファンタジーだったり、学園を舞台にした日常系だと思ったらパンデミック始まってた!! みたいな、ちょっと大げさかもしれないがそれに似た驚きがあった。
なお、周回してこそ魅力を発揮する本作にはスキップや任意のセーブ機能。分岐点からのリトライといった要素がない。
1周約2時間、長くはないがくり返しプレイするのは面倒に感じてしまう。
ここはぜひ、今後のアップデートで改善されることを願います!!
P.N.深津庵
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