レビュー
投稿日2020.09.22

1日でも長く大好きなおじいさんと
腎不全を患い余命幾ばくもない犬は、のどかな土地でおじいさんと最期の時間を過ごしている。
本記事で紹介する『renal summer』はそんな犬の腎臓となり、腎機能を補助しながら1日でも長生きさせ、2人の時間を見守っていくアドベンチャーゲームであり、『ひとりぼっち惑星』で注目を集めたところにょり氏の最新作だ。
タップ操作で腎機能を助けなければ血圧が低下。リアルタイムで進行する死と隣り合わせの毎日に多くのことを考えさせられるだろう。
ゲームの見どころ
●腎機能を助け命をつなぐタップの重み
●残された時間を過ごす彼らの日常描写
腎機能を助け命をつなぐタップの重み
腎不全を患う犬の余命はあとわずか。
腎臓であるプレイヤーは1日でも長生きしてもらうため、画面下に蓄積されていくブロックをタップで破壊。血圧を高めて犬への負担を軽減させなければならない。
腎臓の上部にあるのが犬の血圧ゲージ。画面左上の時間が現在時刻を、そして右上にある7つの点が延命できる日数を示している。
どう抗っても余命の最終リミットは決まっていること。
それに加えリアルタイムで進行する設計であることが、のどかな2人の生活で大きな緊張感を生み出しているのだ。
腎臓の左側にあるタブを選ぶと、“けつあつ”と“こうこく けし”の項目が現れる。
とくに前者の“けつあつ”はブロックを破壊する速度を高める強化要素。破壊をくり返して集めたポイントを消費して段階的に高めていく重要な項目だ。
放置ゲームとしての要素がある一方で、油断していれば犬の余命を早めてしまうという恐れが出てくる。
ただし、血圧ゲージの低下速度はゆるやか。
数時間間隔でも十分維持できるのだが、“もしかしたら”という不安がつきまとう。
悔いが残らないようしっかり最期の瞬間までケアしてほしい。
残された時間を過ごす彼らの日常描写
本作はリアルタイムで進行するゲーム。
5時に起床して22時に就寝する犬とおじいさんの生活は使用している端末の時計に紐付いており、時間帯によってさまざまな様子を見ることができる。
昼間はおもに畑仕事や散歩、夜になると家に戻って2人の時間をゆっくりと過ごす。疲れると荷台に乗せてくれたり、いっしょにご飯を食べたりと見ているだけで癒やされる。
そんな、互いに寄り添い生きているこの関係がまもなく終わってしまう。
抗えない現実を知っているだけに、そうした光景を見ていることがただただつらい。
なお、画面左上にある長方形のアイコンにふれると、画面表示を縦横切り換えることができる。
横向きは2人の様子を見守る特化型の視点。腎臓の枠が消えてしまうが、その分この世界を画面いっぱいに感じられる。
シチュエーションに応じて表示を切り換え、2人の日常をやさしく見守ってあげよう。
P.N.深津庵
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