レビュー
投稿日2020.09.21
懐かしくも切ないひと夏の物語
2018年8月7日、駄菓子屋のおばあさんが亡くなったのをきっかけに、主人公の空木恭平は緑豊かな故郷に帰省する。
幼少期の思い出が詰まった懐かしの店舗。主を失いシャッターが降ろされたその店内にいた見知らぬ少女は、恭平にビー玉探しを手伝ってほしいと言い出すのだ。
本記事で紹介する『探しものは、夏ですか。』は、不思議な少女の出会いをきっかけに生まれ育った故郷を探索。
12年前の記憶に刻まれた不完全な思い出の真相を追っていく短編アドベンチャーだ。
ゲームの見どころ
●時を超え記憶をたどる数日間の夏物語
●追加シナリオを含む4種類のエンディング
時を超え記憶をたどる数日間の夏物語
幼少期に通った駄菓子屋のおばあさんが他界。
誰も居ないはずの店舗から聞こえる物音に恐る恐るシャッターのポストを覗き込んだ恭平は、見知らぬ少女・織原真琴が着換えている姿を偶然見てしまう。
偶然とはいえ覗き見てしまった恭平と不法侵入を疑われた真琴。
出会って早々互いの弱みを握った彼らの不思議な夏はそうして幕を開ける。
警察に通報しないかわりにと“ビー玉探し”を持ち出した真琴は、そのお礼として12年前の断片的な記憶を追っていた恭平の手伝いを申し出る。
この不思議な2人の関係性をより際立たせているのが、町で多発している失踪事件の存在だ。
12年前の祭りを最後に会えなくなってしまった記憶の中の少女が、もしかすると失踪事件に関係があるのかもしれない。
そんな最悪の事態を考えると、のどかな田舎町の背景をゆっくり楽しむ心の余裕がなくなっていく。
ノスタルジックな夏の景色に潜む違和感。
この町に言い伝えられる歴史をきっかけに動きだす2人の物語は、ほろ苦い青春の1ページを見ているようで目が離せない。
頑固なおじいいちゃんと穏やかなおばあちゃん、母親はちょっと厳しいけど何だかとても居心地がいい。
“みんなは元気かな”
家族や田舎のことを思い出させる不思議な体験だったぞ。
追加シナリオを含む4種類のエンディング
本作は2018年に公開されたWeb版(ティラノゲームフェス2018参加作品)をベースにスマホアプリとして移植。新たに書き下ろされた追加シナリオに加え、情緒ある田舎の光景やそれを引き立てる音楽もリニューアルされている。
また、本編中の選択肢によって物語が変化。4つのエンディングへと分岐していくのも本作のポイントだ。
選択肢の数は少なく忘れたころにやっている。
すべてのエンディングを見たいのであれば、選ぶ前に必ずマニュアルセーブをしておくことオススメする。
ぶっきらぼうだけど愛らしい真琴の存在。いろいろな表情を見てみたいと思わせる不思議な魅力を持っているのだが、彼女を含む登場人物はどれも立ち絵のバリエーションが少ない。
残念なのはその1点くらいで全体的にとても好感の持てる作品だった。
本作をプレイする際はぜひ、ビー玉で栓をしているラムネと駄菓子を用意してゆっくり楽しんでほしい。
P.N.深津庵
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