レビュー
投稿日2020.07.12
退屈な毎日に秘められた真価
代わり映えのしない平凡な日々に愚痴が溢れる女子高生の永夢メアリ。
そんな下校中の最中、突然意識を失った彼女は夢の世界で目を覚ます。
本記事で紹介する『夢境のアリス』は、不思議な世界に迷い込んだメアリとその道案内を担当するアリスが、出口までの道のりを2択を通じて進めていく短編アドベンチャー。
1プレイ約5分、ミニマムな世界の中で描かれる少女の決意を見届けよう。
ゲームの見どころ
●生と死をさまよう不思議なマルチストーリー
●短すぎ? 伝えたいことが明確な潔いアプローチ
生と死をさまよう不思議なマルチストーリー
退屈な毎日にへきえきとした想いをつぶやく永夢メアリ。
本作の主人公である彼女はまもなく終わってしまう高校生活と友だちができなかった3年間を振り返る。
“こんなの死んでいるようなもの”
そんな言葉が脳裏をよぎったつぎの瞬間、真夜中の森を連想させる夢の世界で目を覚ます。
そして見知らぬ少女との出会いが、メアリに“大切なこと”を思い出させるかけがえのない旅になっていく。
本作は“不思議の国のアリス”を連想させるものがとても多い。
出口を知っていると歩み寄るアリスはもちろん、主人公の“メアリ”という名前もメアリー・アンと呼ばれる白ウサギの家にいる使用人が浮かんでしまう。
どういった意図でこういった名前を選んだのか、ストーリーを追う限り明確な答えは見えてこないが、たった2人の登場人物とその関係性から、何かしらの意味があるのかとつい考えてしまう。
なお、本作はマルチストーリーであり、ルート次第で大局的なエンディングを迎える。
夢か現実か、メアリといっしょに旅の真相を解き明かしていこう。
短すぎ? 伝えたいことが明確な潔いアプローチ
本作は約5分程度であっさりとエンディングを迎える短編のアドベンチャー、2択のバリエーションも数えるほどで淡々している。
しかし、全ルートを回収して感じたのは、おそらく製作者には“たった1つ伝えたいこと”があり、それを押し付けがましくないよう2択で導いているのだ。
死んでもいいと一瞬でも考えてしまったメアリと夢の世界で道標となるアリスの関係。
どこか見覚えのキャラクターデザインは似ているだけか否か。
とても気になってしまうのだが、まずはグッドエンドの中に秘められたテーマに注目してほしい。
P.N.深津庵
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