レビュー
投稿日2020.05.06
虚無感が漂う奇妙な世界へ
遊園地といえば笑顔が溢れ歓声に包まれた夢の楽園。
しかし、そこは表情を失い感情がまったく読み取れない人々が幽閉された奇っ怪な空間だった。
謎に包まれたシュールレアリスムな世界をさまよい、人々が持っている本来の姿と芸術を解き明かしていくのが『ISOLAND: The Amusement Park』だ。
ゲームの見どころ
●柔軟な発想力と記憶力が試される不穏な楽園
●シュールレアリスムの世界に潜む芸術の欠片
柔軟な発想力と記憶力が試される不穏な楽園
小さな海辺の町に佇む遊園地でショーを開催。その後、園内から誰ひとり帰ってくるものはいなかった。
奇妙なことだがそれが真実であることを当事者であるプレイヤーは目の当たりにする。
本作は『見失い島』から始まるCOTTONGAME Network Technologyが手掛ける人気シリーズの最新作。
不可解な世界観と手応えのある謎解きは本作でも健在。十分満足できる買い切りタイプのアドベンチャーに仕上がっている。
本作は最初から行動できる範囲が広く、多くのものに触れることもできるので何から解くべきなのか困惑しやすい。
そこで注目したいのが、謎解きのヒントにもなっている各エリアに残されたメッセージだ。
うねった針金と赤いカバン、ソーセージの切り口とトビラの暗号、無地のキャンパスと対になる本の表紙、劇場のトビラを開くためのカラー電球など、明確な答えは伏せておくが関連性のなさそうなものの中に解読するためのカギが隠されている。
解けば解くほど謎が深まる奇妙な遊園地。
どこまで続くんだと途方に暮れるほどボリュームも十分。低価格の有料アプリとしては満足度の高い体験になるだろう。
シュールレアリスムの世界に潜む芸術の欠片
シュールレアリスムをテーマにした本作には、ジョアン・ミロやピエト・モンドリアン、サルバトール・ダリなど多くの画家と関連する作品が各所に隠されている。
また、とあるエリアで入手するカメラで顔のない人々を撮影すると本来の表情が浮き上がり、その瞬間をとらえた写真をアルバムに登録することもできる。
生前の記憶かそれともレンズ越しにしか人を見ることができない主人公の体質なのかとても不思議な体験だ。
本作はマルチエンディングタイプ。
1回では理解しきれない複雑な世界観だが、多角的に捉えることで言わんとしていることが徐々に判明していく。
買い切りでありがながらヒント機能は別途課金が必要なのは正直残念。
それに頼らずとも攻略できる柔軟な発想力で奇妙な世界の真実を暴いていこう!!
P.N.深津庵
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