レビュー
投稿日2020.02.22
悲しそうな彼女の目に映るもの
夢の中、雪が降り積もるその場所で唯一覚えているのは、悲しそうにこちらを見つめる彼女の姿と、それを助けようと手を伸ばす光景だけだった。
本記事で紹介する『夢の中でさようなら』は、主人公のカケルが夢の中で大切な彼女“シズク”との思い出をたどりながらその行方を追いかけていく短編ノベル。
その胸に問いかける忘れられない約20分のゲーム体験。
悲しくも美しい2人の物語を覗いてみよう。
ゲームの見どころ
●誰もが結末にたどり着くRPG風短編ノベル
●心に訴えかける絶妙な演出と間合い
誰もが結末にたどり着くRPG風短編ノベル
雪に覆われた広大な土地に佇む1人の女性。シズクという名のその人を助けようと手を伸ばすカケルは夢の中をさまよう。
なぜ、そんな光景が浮かんだのか。
彼女の名前とその姿しか記憶がないカケルを操り、雪が降り注ぐ薄暗い世界でその真相に迫ってくのが本作の目的。冒頭からとても物悲しく不安を掻き立てられるのだ。
夢の中で出会うクマのぬいぐるみは、3年前カケルが彼女にプレゼントしたもの。
ぬいぐるみ曰く、ここは現実の世界で強く記憶に残ったもので構築された場所であり、2人の新しい思い出がどんどん生まれてきたのだが、最近は雪が降り注ぐばかりだという。
そんな不思議な空間をRPGのように探索、クマのぬいぐるみと力を合わせて失われた思い出を集めていく。
また、RPGと例えたのにはもう1つ大きな理由がある。
それが夢の世界を覆う雪そのものと戦うターンバトルだ。
このバトルは必ず勝てるバランスだが単なるお飾りではなく、しっかりとこの物語にひも付く重要な仕掛けを担っている。
なぜそんなものが襲いかかり何を残していくのか。
逃れられない戦いを通じてカケルとともに真実に1歩ずつ近づいていこう。
心に訴えかける絶妙な演出と間合い
約20分で結末を迎える本作をプレイして印象深かったのはストーリー演出ともう1つ、彼らの心情や背景を伝える独特な間合いだ。
プレイヤーによっては長すぎたり無駄にも感じてしまう絶妙なバランスだが、筆者にはそれがとても効果的に感じられた。
賛否あるポイントではあるだろうが、おそらくはこの間合にはクリエイターの伝えたい大切な想いが込められている。
約20分、それで完結する物語なのでそこはぜひ、焦らずゆっくり噛み締めてもらいたいところだ。
P.N.深津庵
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