TrymenT -今を変えたいと願うあなたへ-の概要

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レビュー

投稿日2019.12.15

ネットワークを制約された島に集まったのは社会生活の中で心に傷を負い苦しむ若者たち。

彼らは公益法人社会福祉公社LieFが、国からの支援を受け運営するトライメント計画に参加。

もう1度学園に通い、社会への適応力やコミュニケーション能力の向上を目的とした計画を1年に渡って体験していく。

本記事で紹介する『TrymenT -今を変えたいと願うあなたへ- TriaL』は、年齢の異なる若者たちが集団生活を通じて過去と向き合い、成長していく群像劇。

透き通るような美しい景色と魅力的な登場人物。複雑に入り組むストーリー展開にどんどん引き込まれていくビジュアルノベルアドベンチャーだ。

ゲームの見どころ
●他者との関わりを通じて自身を見つめ直す物語
●トライメント計画に隠されたもう1つの世界

コンビニやファミレスといったものがいっさいない御雲島。

娯楽施設もごくわずか、そんな離島でマンガ家の肩書きを持つボーイッシュな君島翔と車椅子に乗った星乃あやめは出会う。

本作には学園の教師らを含め30人のキャラクターが登場。トライメント計画で翔と偶然の再会を果たす後輩の河居織鶴や大学を中退して参加した喜羽正明など、すべてのキャラクターにスポットを当てた現在と過去、心に秘めたさまざまな葛藤が丁寧に描かれていく。

結婚願望が強く未来の夫を探しにきたと語る女性。さまざまな職業を渡り歩いてきた経験をカタチにしたいと願う男性。人の生きかたは十人十色、登場人物の数だけ存在する“いまを変えたい”という想い。

他者との距離感の異なる面々の触れ合いは、どこか自分を投影する鏡のようで引き込まれるものがある。

また、30人の登場人物はすべてフルボイス。とても感情移入をしやすい自然な会話と聞き心地のいいキャストの声も本作の魅力だ。

ちょっとミステリアスで複雑に入り交じる人間関係。可愛らしいビジュアルとは真逆の世界観と、そこに生きる彼らを突き動かすトライメント計画。

1年の離島生活を通じて描かれる30人の群像劇から最後まで目が離せないぞ。

2019年12月2日現在配信されている『TrymenT -今を変えたいと願うあなたへ- TriaL』はその名の通りのトライアル版。本編にあたるAlpha編は2020年2月にリリース予定であることが告知されている。

戸惑いながらも徐々に互いの距離を詰め、ゆっくりと離島の生活にもなれていく若ものたち。

トライメント計画に希望を見い出していく彼らを日々を描くトライアル版をプレイして、とくに興味を引いたのが平穏な世界とは真逆の不可解なシーンだ。

回想かそれとも未来なのか。

トライアル版で描かれるのはごく1部であり真実を知ることはできなが、考察が好きな筆者は本作のアプローチにすっかり夢中。

多くのシーンで描かれる日差しや夕焼け、月明かりなど自然の光が、彼らに手を差し伸べる希望の光のようでとても印象的だった。

なお、登場人物のプロフィールをまとめたライブラリーや会話だけでなくシーンを巻き戻すバックログといった便利な機能があるいっぽうで、用語を掘り下げるアーカイブ要素がない点は残念だ。

トライアル版とはいえネタバレしたくないと感じさせる魅力的なストーリー。現段階で何時間でも語りたくなるだけの情報がここには詰め込まれている。

本編にあたるAlpha編のリリースまであと3ヵ月弱。

ぜひ、トライメント計画に隠されたもう1つの探しものを彼らといっしょに追いかけてもらいたい。