長くて短い10年という回り道
2025年2月15日~16日、Nianticが開発・運営する位置情報アプリ『Ingress』を代表する大規模バトルイベント“アノマリー”と“ミッションディ”が、神奈川県横須賀市を舞台に開催された。
本イベントで、Nianticの副社長 川島優志氏、『Ingress』ディレクター ブライアン・ローズ氏にインタビューを実施。
10年ぶりの横須賀イベントに対する想いや、忽然として消失してしまったアレなど、フリーライター・深津庵が直近の話題と今後の展開を聞いてきたので、どうか最後までどうぞ!!
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すべてがつながる旅の魅力
横須賀を舞台にした大規模なイベントは2015年のミッションディ以来、約10年ぶり。
今回のアノマリーは『Ingress』の中でもっとも規模が大きく、世界中からエージェント(プレイヤー)が集まるバトルイベントということで、地域のみなさんによる多大なる協力のもと実施された。
ここからは、『Ingress』としては10年ぶりの再訪となる川島優志氏と、このイベントが初の横須賀となったブライアン・ローズ氏に本イベントへの想いや今後の展開を聞いていく。
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Niantic 副社長:川島優志氏(左)と『Ingress』ディレクター:ブライアン・ローズ氏(右)。
――横須賀でのイベントは2015年のミッションディ以来ですが、まずはいまのお気持ちを聞かせてください。
川島
何よりも我々を迎えていただくその熱量にものすごく感激したのをよく覚えています。当時はまだ『Ingress』も駆け出しという時期で、それでもみなさん手弁当でいろいろな催しを企画してくださった。その結果、何千というエージェントが訪問してくれたんですよね。そのときのこと、被り物をしてトークイベントをしたことなど、いまでも鮮明に覚えています。
――それが後のタイトルにもつながっていくわけですね。
川島
そうですね。この10年のあいだに『ポケモンGO』や『ピクミン ブルーム』のイベントを横須賀で開催できた大きな第一歩、基盤は『Ingress』があってこそです。そうした関係性、関わりが10年ぶりのミッションディ横須賀であり、念願のアノマリー開催の実現につながりました。
――昨年の函館から引き続き、今回の横須賀も驚くほどの歓迎ムードですよね。
川島
本当にうれしい限りです。横須賀中央駅前の横断幕やサイネージ、地元の数多くある店舗様もコラボレーションしてくださるなど、こんなに熱く応援していただけるとは……もう何も言葉が出ないというか、国内外から集まってくれたエージェントもね、なんて言ったらいいんだろう、ほんと、うん……。
――ブライアンは前日から横須賀を散策していましたが、どんな印象を抱きましたか?
ブライアン
横須賀はもともと外国の方が多いと聞いていましたが、今回はドイツやオーストラリア、中国やロシアなど各国からたくさんのエージェントが横須賀に集まっています。その影響もあってか、私が想像していた以上に特別な空間になっていると感じています。また、こんなにも立派なイベントを開催できることになったのは、横須賀市役所や横須賀市文化スポーツ観光部、各自治体のみなさんによるサポートのおかげです。そして、横須賀市観光情報サイトの公式Xアカウントによる連日のPRも本当にすばらしかった。我々チーム内でもビルボードや高速道路などの交通機関を活用したアプローチをもっとやるべきだという議題があり、今回こうして横須賀の光景を見て、その重要性をより強く実感することができました。
川島
シニアプロジェクトマネージャーの中島真由子をはじめとする国内スタッフが自治体と話し合いを重ねながら関係を深め、それを地元エージェントたちが支え働きかけてくれているんですよね。我々だけでは成し得ないたくさんの橋渡しや呼びかけ、そうしたバトンを函館から引き継ぎ、熱意を持って取り組んでくれる方々があってこそ今日という舞台があるのだと実感しています。
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開発チーム内でもビルボードや高速道路などの交通機関を活用したアプローチをもっとやるべきだという議題があがっていること。今回、横須賀の光景を見てその重要性を強く実感することができたとブライアン。
――函館観光部観光振興課の方が今回横須賀に参戦していることもそうですが、地域との関わりが近年より深くなてきたと感じますね。
川島
そうですよね。函館に関してはふるさと納税をするエージェントが増えていたり、実際に再訪するというつぎの関わりに派生していっています。地域のみなさんとその場限りで終わらない関係性や本気で楽しもうという想いもまた、10年前のミッションディから今回につながった横須賀にも強く感じています。
ブライアン
『Ingress』には“新しい場所”や“隠された魅力”を発見して共有しようというDNAのようなものが流れています。函館で数千のエージェントが体験したことを、「函館最高!」とSNS上で発信するメガホンとなって広めていく効果が抜群でした。そうした地域の魅力を広める効力が『Ingress』は純粋に強い。みなさんの“伝えたい”や“共有したい”という純粋な気持ちが共鳴しあっているのだと思います。
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イベント当日だけで終わらず、その後も開催地とのつながりを築いていく傾向が強いと川島氏はこれまでを振り返る。
――『Ingress』は昨年末に大規模な修繕、おもに速度の向上や節電化が行われました。1年でも長くこの世界を楽しみたいと思うエージェントにとってうれしい限りなのですが、今年はどのように変化していくのでしょうか?
ブライアン
12年以上続く『Ingress』にはいろいろ技術的な負債があります。そうしたものをアップデートし効率的に動作させることが長期的な運営には必要不可欠です。昨年のアップデートはチーム内で何度も話し合った結果であり、グラフィックの改善もその一環。今年も長く楽しんでもらうため、これまでの負債を解消するための最適化や効率化を継続していく予定です。
川島
現在、インフラストラクチャーに関する改善にエンジニアチームは集中しています。それと並行してチーム全体で考えているのは、“かつてプレイしていたエージェント”がどうしたら戻ってきてくれるのか。各種広告を使ったPRもそうですが、新規ユーザーへのアプローチを含め、さまざまな方法と可能性を試していこうと考えています。
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現行モデル(Prime)になって7年目が経過。当初はさまざまな問題を抱えていたが、いまは大部分が改善。今回のアノマリー自体も戦う方式が一新されるなど変化を続けている。
――新規ユーザーを勧誘するという点で言うと、例えば今回のアノマリーに焦点を当てるならバトルビーコンやシャードの模擬戦(対NPC)ができるとか、いわゆるゲームらしい装置も必要な時代だと感じますね。
川島
なるほど、もっとカジュアルに練習できる環境があれば既存のエージェントも伝えやすいし興味を持ってもらえそうですね。
ブライアン
アクセスポイントレベルが16になればベリーレアのバトルビーコンを使って遊んでいただくことはできますが、たしかにそれだと新規の方にはハードルが高い。こうしたイベント(アノマリー)に興味を持っていただくためには、確かにそういったアプローチは必要ですね。
――セカンドサンデーについて、昨年末からミッション以外のタスクを通じて参加が可能になりました。これはどういった経緯から行われたのでしょうか?
ブライアン
毎月新しいミッションに挑める環境であればいいのですが、やむを得ず同じものを周回しなければならないエージェントも出てくる。それでは楽しくないだろうという議題から、ユニークポータルのハックやスキャニングなどミッションに限定しない形式を取り入れることになったんです。
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環境に応じて参加方式を選べるのが最近のセカンドサンデーであり、全盛期の『Ingress』にはないカジュアルなアプローチとも言える。
――スキャニングの先に何があるのか、新しい体験を楽しみにしているエージェントも多いと思いますが、今年は何か新しい展開はあるのでしょうか?
川島
まだ公表できる段階ではないのですが、例えばナイアンティックパーク(明治公園)のように広域をスキャンすることで、どんなゲームを実現させることができるのかを実験中です。いまは特定のエリアを対象にしていますが、この試みが前進すれば、つぎはきっとみなさんの身近にあるスキャンしたポータルが新たな環境につながっていくと思います。
ブライアン
我々が提供している3Dスキャニングアプリ『Scaniverse』を含め、いろいろ検討と試作をくり返している段階です。いまはWebアプリでその空間を体験することができますが、今後はそれをより身近に触れてもらうための開発を進めています。
――今年はGoogleが新たに開発したXRデバイス用のプラットフォーム“Android XR”にも期待が集まっています。
川島
GPSを活用したゲームの問題点として、そのデータが示す経度と緯度に正しくポイントを合わせる精度が求められます。スマートフォン(スキャナ)を介してであれば問題はなくても、実際にARグラスで見てみるとそのズレが露骨に出てしまうことがあります。
――より正確なデータが必要になるというわけですが、我々ユーザーはどうスキャンすることが重要なのでしょうか。
川島
以前、『Scaniverse』のアカウントや“8th wall”の講座でその方法を解説しているので、よかったらぜひ!!
【Niantic:8ht wallガイド】
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過去にNianticが公開したスキャニングのコツ。より正確なデータが必要になるので念のためチェックしておこう。
――作戦任務(グローバルチャレンジ系)、直近ではバレンタインディがそうですが、達成後に報酬はあれど結果として残るものがなくさみしい。作戦任務用の実績メダルを実装する予定はありますか?
ブライアン
そのアイデアはいいですね。我々がそのコンテンツを実装するとき念頭にあったのが、エージェントが迷わず挑戦できるアプローチでした。簡単だと感じてもらえるものから難しいものまで、“今回はこれだったらできそう”と感じてもらい実行できるタスクが好ましい。もっとプレイしたいと背中を押すアプローチとして実績メダルはとてもいいですね。
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実績メダルがないから気楽でいい反面、どうしても形に残る結果が欲しくなるのは深津だけだろうか。
――『Ingress』のストーリーにはとても魅力がある一方、膨大な量であることから追いきれないジレンマがあります。これを最初期から現在に至るまでを書籍化する予定はないでしょうか? “読むIngress”みたいな……。
ブライアン
それは素晴らしいアイデアです。ゲームの中で表現することも重要ですが、ストーリーを追うための書籍というマテリアルが存在すれば、この世界がより多くの人に広がっていく。アニメ版『Ingress』のキャラクターが双方の世界で影響し合うようなものがあってもいいと考えていたところなので、ぜひ検討させてもらいます。
――2月6日未明、“啓示の夜”のポータルが消えたと話題に。姫路駅前にあったのが最後らしいのですが……
ブライアン
これが答えになっているかわかりませんが、例えば“ストーリー上で何かあって消えた”としたら、“それを取り戻す新しい展開の兆し”だとしたらどうでしょう。“啓示の夜”という存在は本作においてとても重要な存在で、それはストーリーだけでなく我々にとっても同じです。もしかしたら今回の事例が今後の展開を示唆するものかもしれません(笑顔)。
【消えたと話題になったきっかけのポスト】
――最後に、みなさんにとって『Ingress』とはなんでしょうか?
ブライアン
『Ingress』とはエージェントのみなさんといっしょに作り上げてきた特別なもの。それはコネクションや絆など本当に多岐に渡る貴重なものだと考えています。だからこそ、私自身はもちろんチーム全体でも『Ingress』を永遠に続けていく必要があるし、そのために何が必要なのかをつねに真剣に話し合っています。
川島
私が『Ingress』とは何なのかを話すとき、ジョン・ハンケの「Ingressとは旅である」という言葉をみなさんに伝えています。いろいろな場所に人を動かすきっかけ、その旅の入り口になっているからこそ、今回10年ぶりに横須賀という舞台でこれだけ大きなイベントを実現できた。10年という回り道もまた旅ですし、その経験があってこそ今日という日に深い意味を与えてくれるのが『Ingress』だと思います。
以上が2月15日のアノマリー直前に行われたインタビューの全貌だ。
Nianticにとって『Ingress』は重要な存在であるのはみなさんご存知の通り。
それでも継続していくには今回のようなイベントに参加することはもちろん、ブライアンがいう通り開催地域への貢献やその後の関わりを通じて“また来てほしい”と感じてもらえるアクションも欠かせない。
この旅を1日でも長く続けていくこと、それが将来に活かされることを信じていっしょに『Ingress』をつぎのステージにつなげていこう。
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