『Ingress』これからの10年は? 苦難を乗り越え未来に進むNianticの理念と新機能のヒントを開発陣に聞く

2023-09-23 12:00 投稿

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Ingress Prime(イングレス プライム)

マキナの存在ってまさかの!?

2023年9月16日(土)、Nianticの位置情報ゲーム『Ingress』を代表する大型リアルイベント・アノマリーが神戸で開催された。

これに合わせて現地を訪問していたNianticのCEOジョン・ハンケ氏、『Ingress』のプロデューサーであるブライアン・ローズ氏、プロダクト責任者に就任した川島優志氏に今後の展開についてフリーライターの深津庵がいろいろ聞いてきた。

いくつかのプロジェクトが中断・終了する中で継続が決まった『Ingress』とはNianticにとってどんな存在なのか。

それではさっそくいってみよう!!

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▲左からプロダクト責任者:川島優志氏、Niantic CEO:ジョン・ハンケ氏、Ingressプロデューサー:ブライアン・ローズ氏。

ジョンは杖をつくまで続ける?

――これまでの10年、そして今後の『Ingress』をどう考えていますか?

ジョン・ハンケ(以下、ジョン)10年前の石巻から今回の神戸まで、この現実世界で位置情報ゲームというものがどう変化してきたのかを私は興味深く見てきました。『ポケモンGO』や『ピクミン ブルーム』、最近では『モンスターハンターNow』というタイトルもありますが、我々にとっては『Ingress』がオリジナルであり、Nianticが掲げるミッションをもっとも体現しているピュアな存在です。

“The world around you is not what it seems.”

この世界は見たままのものとは限らないというのがつねに私たちの心にある。こういったいちばん重要で革新的なことをエージェントのみなさんは理解し体験してくれていることをうれしく思っています。

ブライアン・ローズ(以下、ブライアン)2014年に開催した石巻イベントでお会いしたエージェントに今日再会したのですが、その方は当時のインベントを通じてパートナーと出会い、いまではお子さんもできたのだと写真を見せていただきました。『Ingress』がこの10年という月日の中で何を作り出してきたのか、こうしてみなさんと再会することでとても実感することができています。

川島優志(以下、川島)10年前の石巻では100人ちょっとだった参加者が何千人、そして1万人以上の規模にまで拡大。その後、パンデミックをきっかけにユーザーが減った時期もありました。それでも『Ingress』がこうして10年継続できているのはエージェントの凄まじい熱意があってこそなんです。何としても『Ingress』をフォーエバーゲームにしていこうというみなさんの想いが、ジョンやNianticのチーム一同の支えとなってここまで歩んでこれたのだと感じています。そうした経験を知恵として積み重ね、不屈の精神でみなさんといっしょに今後も継続していく。イングレスベイビーもたくさん見てきましたが、この先“イングレスグランドベイビー”が誕生するまで続けていきたいな、と!

ジョン そのころ私はもう杖をついているだろなw

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▲この10年を振り返るあいだ、終始笑顔が絶えることはなかったことがとても印象深い。

人々の支えがあってたどり着いた現在

――ちなみに今回の参加希望ってどれぐらいになるんでしょう?

川島 今回は合計で2300人以上?

ブライアン 現地参加はそれくらいだったかな。そのほかにも神戸各地のポータルキーを通じてリチャージで参加してくれているエージェントもたくさんいる。インテルマップやいろいろな方法で神戸を数千人のエージェントが見ているのだと思います。昨年の横浜には来られなかった海外のエージェントが今回はじめて日本にきて、たくさんの友だちと会い、神戸の地を楽しそうに散策している様子も見ました。こうして再びアノマリーが復活したことで、国の異なるエージェントのみなさんが『Ingress』という共通言語を通じて同じ時間を共有してくれていることが私たちにとってはとてもうれしいことですね。

――Niantic(位置情報ゲーム)にとって新型コロナによるダメージは計り知れないものがあり、今後も続く課題になると思いますがどうリカバリーしていくのでしょうか?

ブライアン 昨日、GORUCKの“ステルス”を見に行ったのですが、そこでひとり体力が持たず倒れ込むエージェントがいたんです。するとそこに5人くらいのエージェントが集まり、みんなでマッサージをしたり冷たいタオルを与え助け合う光景がありました。私はまさに『Ingress』もこうしてコミュニティのみなさんに助けられながら、今日まで存続できているのだと思うのです。

――たしかに安心して身を任せられる仲間の存在はとても大きな支えですね。

ブライアン その通りです。支えてくれる仲間がひとりでも多くいるから『Ingress』は楽しくなる。みなさんもそうであることを昨年の横浜で経験したからこそ、さらに大きな規模で今回開催することが叶ったのだと感じています。パンデミックの影響もあってユーザー数が減ってしまっているのは事実ですが、みなさんが共に手を取り合うことで再び盛り上がっていけるよう我々はその基盤を再構築しなければならない。1度離れてしまった人が思い出を振り返り、また集まろうと感じてもらえるよう『Ingress』を成長させていきます。

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▲Nianticにとって『Ingress』エージェントひとりひとりが特別な存在なのだとジョン。Niantic Labs当時から支えてくれているエージェントの表情が支えになっていること、それはユーザー数よりも重要なことなんだと当日受け取ったBIOカードを広げ、眺めながら語ってくれた。

新規ユーザー獲得に向けた新機能

――現状のままでは新規ユーザーの開拓は困難だと思っています。具体的にどんなプランを持っているのでしょうか?

ブライアン まず、よりよいチュートリアルを準備する必要があります。先日リリースされた『モンスターハンターNow』からも新しいユーザーを開拓するチャンスもあるはずです。そのための仕掛けを用意すること、そして既存のエージェントのみなさんに関しては引き続きさまざまなインベントを提供していこうと考えています。

――以前、横浜でお話を伺ったときもエージェントが築いてきた“コミュニティを通じて数を増やす”といったお話が出ました。もちろんそれは私を含め輪を広げる努力は今後を続けていきますが、そこに頼り切りでは先細りする未来しか見えないのです……。

ブライアン じつは、マキナは新規ユーザーのためにも役立つ存在として取り入れたのです。壊せばたくさんのアイテムが手に入りますし、まとまったAPを稼ぐこともできる。

――マキナポータルは中立状態が続いた場所、つまりエージェントの動きがない場所ということになります。そこに新規ユーザーを導くのはちょっと困難ではないでしょうか?

ブライアン 本来だれかが魅力を伝えるために生まれたポータルが中立化しマキナに支配されてしまう。それは望まれたカタチではありません。そういった場所にみなさんを導き新しいエージェントを生み出すきっかけを、そして本来持っているポータルの魅力を再発見してほしいという思いを込めています。

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▲正直、マキナを導入した真意については疑問が残る。本当にマキナが新規ユーザーに向けた存在でもあるならもっとこう……と、さまざまな提案をしてはおいた。

『Ingress』のあるべき姿を問う

――かわらず存在し続けるゲーム環境も重要ですが、新しい体験を望むエージェントも多いと思います。これからの『Ingress』はどこに向かうのでしょうか?

ジョン 私が先日チームのみんなに孤独というものが社会問題になっているというニューヨークタイムズの記事をシェアしました。アメリカはもちろん日本でもこれは大きな問題になっていると思うのです。何かしらの方法で関わりを持ち心をつなぐきっかけを我々のプロダクトで提供できないかと考えています。

ブライアン そこで2021年に“ハックストリーク”という機能を導入。毎日ポータルをハックすることを習慣化することで、他者との関わりを取り戻すきっかけを多少なりとも生み出そうとしたんです。これを今後、より活性化させるための機能にしていこうと考えています。たとえば、毎日レベル7や8のポータルを作ろうっていうアプローチ。当然ひとりでは成し得ないので友だちを誘ってみたり、レベルがあがりそうなポータルにエージェントが集まれば交流が生まれるかもしれない。何かしらそういった新しい習慣を提供できないか模索しているところなんです。

――サブスクリプションの価格変更は継続性を揺るがす問題にも感じますね。

ブライアン 為替の都合でみなさんにとって大幅な増額になってしまったのは理解しています。今回の値上げに伴いましてCMUの比率を2500から10000CMUに変更、みなさまにより自由な使い道を提供できたのではないかと考えています。この値上げ以降も多くの方が購読を継続を選択していただけていることに我々は感謝しています。

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▲値上がった分の価値を感じられる内容になっているかがとても重要。当日はここを詰める時間がなかったので後日いくつかの提案を出してみる予定だ。

――最後に念のため『Ingress』は終わらない?

ブライアン 我々チームがつねに重点を置いて議論しているテーマ、それが『Ingress』を永遠に続くゲームにすることです。そのためにも新規ユーザーの獲得は必要不可欠であり、こうして支えてくださっているエージェントのみなさんに新しい体験を提供するための施策も忘れてはいけない。

川島 ブライアンはそこに対して本当に集中して取り組んでいます。エージェントのみなさんと地域コミュニティを大切に考え、パンデミックを乗り越えたいま、再開に向けてさまざまなことを具体的に検討しているところです。

ジョン 今日この場でいただいた提案もそのヒントのひとつです。とてもいい話を聞くことができて本当によかった。ぜひ、今後も我々Nianticと『Ingress』を支えていただけるよう願います。

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▲今回とても印象的だったのはエージェントたちについて語るジョンの表情だ。言葉に偽りなく、本当に大切な存在だと考えているのだと強く感じられた。

なお、このインタビューの席とは別にミッションの申請枠を増やせないかという相談や、アノマリー会場で流れているかっこいいBGMをサブスクか何かで提供してもらえないかなど、いくつかブライアンたちに持ちかけてみた。

そのひとつがアノマリー翌日、頒布会で行われたミートアップの場でブライアンが明かした“ミッション枠を増やせない”という現状抱える複雑な事情につながっている。

また、BGMに関しては快く快諾。どういった方法になるかは不明だけど後日みんなが視聴できるようにすると深津に明かしてくれた。

ジョンが語っていた通り、『Ingress』こそがNianticが掲げるミッションをもっとも体現している唯一の存在であり続ける限り、我々の冒険はまだまだ可能性に満ちているということになる。

今後はより陣営の垣根を超えた関係性が重要になるだろう。

ふたつの陣営があってはじめて成立するこの世界。

互いをリスペクトしながら戦い、盛り上げていけるエージェントであることを強く願う。

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▲取材でバタバタしていてチャンスがなかった彼らのサインをここぞとばかりにおねだり。

P.N.深津庵
※深津庵のTwitterはこちら

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対応機種iOS/Android
価格無料(アプリ内課金あり)
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ジャンルその他
メーカーナイアンティック
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