『グラブル』7/16より水着姿の“ククル”&“ハレゼナ”が新登場するグランデフェス開催
2024-07-16 19:00
2023-08-25 13:01 投稿
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グランブルーファンタジー
2023年8月23〜25日に開催された開発者向けカンファレンス“CEDEC2023”。その中で“グラブルミュージアム蒼の追想MX4Dシアターのサウンド制作事例 〜ゲームの世界観とアトラクション体験の両立に必要なこと〜”と題されたセッションが行われた。
“グラブルミュージアム蒼の追想 MX4Dシアター”とは、『グランブルーファンタジー(グラブル)』の世界観を体感できるアート展にて上映された、同作のキャラクターたちによる激闘を体感できるライドアトラクション。
今回のセッションでは、システム設計や・サウンドデザインとミキシング・進行面での取り組みを、Cygamesの村上健太氏、宮本鈴奈氏、馬明泓氏が紹介した。
本セッションのおもな主旨は以下となる。
“グラブルミュージアム蒼の追想 MX4Dシアター”は、「ユーザーにおもしろい体験を届けたい」という思いで立ち上がった企画。「音もよいものにしたい」という考えから、総勢12名のチームを結成するに至ったという。
これを実現する上でまず課題として持ち上がったのは、本番環境の想定しにくさと関わる要員の多さ。
前者は本番のセットが組まれるのは本番直前であり、しかも期間限定ゆえに設備が特殊だったことに起因する。
これは事前にMX4Dコンテンツやアトラクションを実際に体験し、アトラクションの音の作りや流しかた、落下のリアルな感覚をメンバーがインプット。念入りな機材チェックや接続回線チェックにも腐心したという。
関わる要員の多さについては、情報共有を徹底することで齟齬が発生しないよう工夫。議事録はもちろん、外部ミーティングなども記録状況を全員が把握できるようにするなど、事前準備を徹底したという。
続けて、音響についてシステムの検討やフロー、どのようなセットアップを採用したかを紹介。
本アトラクションは半球面のスクリーンに上下左右の振動を体感できるシートを合わせ、さらに風やスモークを演出できる機能も備えている。
どのシートに座っても音響的な没入感を得られるよう、まずは映像アトラクション仕様の要素を洗い出し、機材の剪定に取り組んだ。
「現場での機材トラブルは必ず起こり得る」ことを前提に、ミキシング機材のセットアップとスピーカーの音響調整作業は担当を分けて進める必要があると判断。また仕様の把握として、映像コンテンツをくり返し確認し、内容と演出の理解を深めていった。
映像のアナライズを進めるにあたっては、映像コンテを貼り付けたDAW上に無音のクリップを配置。再生すべきサウンドの内容のメモを取る方法を採用した。
DAW上で実施することによって、タイムラインでの作品の全体像を把握できると同時にコンテンツを俯瞰で分析しつつ、細かな演出のタイミングや重なりも確認しやすくなる。
続けては再生フォーマットについての検討。ステレオでの再生は座る位置によって音像が右や左に寄ってしまうが、正面からの音声だけでは没入感を得ることが難しい。サウンドアセットの分離が不明瞭になるなどの理由から、マルチチャンネルフォーマットでのスピーカー構成が必要と考えた。
マルチチャンネル再生の優位性については、音源の定義が固定できることや、音源の分離が容易かつ明瞭、ダイナミックレンジを広く取れるといった点が挙げられる。
以上の理由からサラウンド規格フォーマットで製作する方向に。しかし「今回のアトラクション設備にマッチするスピーカーレイアウトはどういったものか?」という課題も同時に生まれることとなった。
そこで現場でアトラクション設備を仮組みし、設置可能なスピーカーレイアウトを現場で確認することに。
体験型アトラクションでは、音響的に有利な位置にスピーカーを置きたくても照明にかかり影が出てしまったり、スモーク演出で意図しない音が鳴ってしまう問題も発生する。
打ち合わせでは実際にシートの動きなどを確認するため、アトラクション設備を体験した。そして音回りでさらにヒアリングを進めたところ、サラウンド制作にて音響面で大量の課題があるということが発覚。一般的なサラウンド規格フォーマットで取り組むプランが崩れてしまったという。
そのため制限のある環境で可能な表現を模索。オーディオプロセッサーを使用して会場で調整可能なものを検討し、最適化されたサラウンドシステムを構築することを目指した。
その中でもっとも大きな課題は、サラウンド制作をするうえで重要なセンターチャンネルを設置できないことだった。
キャラクターのダイアログやフォーリーが再生されるチャンネルとなるが、これを今回のアトラクションでステレオ再生してしまうと画面中央にキャラクターがいるにも関わらず、座る位置によっては右や左に寄った画面外から音声が聞こえてしまう問題が発生。
これを可能なかぎり実現できるスピーカーのレイアウトとプロセッサーを探したところ、波面合成という技術に行き着く。波面合成はスピーカーのレイアウト情報を対応したプロセッサに入力することで、その空間上にオブジェクトベースで音源を再生・配置できるもの。
対応できるオーディオプロセッサーは大きく分けてハードウェアベースとソフトウェアベースの2種類。ハードウェアベースは独立した回線を持ち機材調整が可能、ソフトウェアベースはDAWと連携させPC内部での同時処理ができる違いがある。
ミキシング用で持ち込むPCとは切り離して運用したほうが安全と判断し、結果としてハードウェアプロセッサーを採用することとなった。
そして設備担当会社より、国内では舞台音響などで使用された実績がある“SARA IIプロセッサ”が提案。スピーカーレイアウトを設定し、波面合成技術を使用したオブジェクト音源を提示させる仕様となる。
この時点でアトラクション側の仕様が決定したため、スピーカーのレイアウトも固まった。このスピーカーレイアウトをプロセッサーに入力し、オブジェクト音源を配置させ再生する。
ミキシングも考慮しながら、オブジェクト音源を使用して仮想のチャンネルベースを構築。SARA IIの機能でオブジェクトを動的にパンニングさせることも可能だったため、オブジェクト音源の単体利用も実施した。
現地でのミキシングシステムのDAWは、Protoolsを使用。インターフェースからDanteを使用してプロセッサーへ信号を送る形を取った。
プロセッサーへの出力回線の順番のみ気をつけ、普段のProtoolsのワークフローで使用しているトラッキングやバス構成をそのまま使用することが可能だった。詳細な機材構成は以下。
機材の事前チェックでは、リハーサルスタジオを借り、実際のスピーカーレイアウトにてサウンドチェックを実施した。
SARA IIからオブジェクトで配置したセンターチャンネルがぼやけて聞こえてしまうという問題が発生したものの、予備スピーカーを用い、上下2点からセンターチャンネルの補正をすることでこれは改善した。
サウンドデザインを制作する上でもっとも意識したことは、普段ゲームを遊んでいるユーザーが聞いても納得できるサウンドであり、かつ体験型アトラクションならではの没入感あるサウンドを両立させることだった。
また「『グラブル』らしさを伝える音」として、シグネチャーサウンドを意識。ただし、『グラブル』本家の音素材をそのまま移植してもアトラクション運行に最適とは言えないため、補強や調整を入れ制作することに。
続けてサンダルフォンの鐘の音とルシファーの攻撃音を例に、シグネチャーサウンドのアレンジ方法が紹介。サンダルフォンはオリジナルに寄せて制作、ルシファーはオリジナル音源を活用した。
また、アトラクションの動きを体感することがメインのパートか、登場キャラのドラマを押し出す物語がメインのパートかで音作りのアプローチを変えたという。
体感メインでは、カメラ画角や移動の速さ、高低差の変化を意識。登場キャラにとっての環境音ではなく、オーディエンスに体感してもらいたい音を付けることが重要とのことだ。
物語メインのパートではどの面を押し出したいかを決めてセリフの合間を取るなど、他の音に対して対旋律を作るようなイメージで入れることがポイントと語られた。
また、アトラクションにとってLFEは主役級の存在と強調。今回のアトラクションは風や振動、ストロボなど五感を刺激する特殊効果が豊富にあるだけでなく、オーディエンスのシートが全方向に動くことも特徴だった。
これらとLFEが連動することで没入感を高められるとし、実現できるようなデザインを目標にしたことが語られた。
最後は本施策のミキシングについて解説。3段階に分けた構成は、膨大な数のトラックを扱うことになるため、作業工程を事前にデザイナーとすり合わせ、認識の違いを徹底的に排除することが目的だった。
エディット作業では、まずはレギュレーションを共有。サラウンドサークルや作業時のモニター、音声レベルの統一化を行うことで、作業者同士の視聴時のサウンドの印象の差を排除し、作業効率化を目指した。
また音素材のカテゴライズを事前共有し、作業内容と工数を算出しやすく、スケジュールを組み上げ進行できるよう工夫した。
プリミックスでは、エディットで作業したサウンドアセットに対して各カテゴリーごとにミックスを進行。
カテゴリーごとのミキシング作業を進めていくことで、デザイナーからのミキシング時の要望を落とさず確実に進めることが狙いだった。
ミックスをしてオーケーとなったカテゴリーは 7.1.2chで書き出し、そのデータをつぎのカテゴリーセッションに移植という形を取り、基本的に前作業に戻ることがないように心がけた。なお、各カテゴリーを合わせたトラック数は500に及んだという。
続けては各カテゴリーのプリミックス作業について言及。
サウンドの主役と言えるダイアログでは、ダイナミクス、音質を最適化し、存在感を強調。このセッションはバウンスをせずにProtoolsセッションのままつぎのミックスへ持ち込んでいる。ディレイを付与し、空間を表現するシーンの切り換わりをわかりやすくする処理はここで実行した。
アンビエンスは、ストーリーに説得力が出るようなバランスを目指した。おもにダイアログとの関係性・距離感を意識してのリバーブ処理や、レイヤー要素をサラウンドに再配置していく処理が行われている。
フォーリーは、キャラクターに実在感を与えることができるバランスを心がけた。
実写的なバランスを目指しすぎると『グラブル』の世界ではなくなってしまうため、制作者の中で基準を作ることに時間がかかったカテゴリーだったという。
アンビエンスとの関係性を考えながらリバーブを付与し、ダイアログと同じくハードセンターから出力、調整現場で気になった箇所のノイズ除去を実行した。
SFXは物語に躍動感を加え、『グラブル』世界を確立する要素。レイヤーされている音の要素の帯域バランスを考えながらEQで調整していく。
立体的な表現にふさわしい派手な残響感やスキル演出の存在感を強調させるため、ディレイやフランジャーなどのエフェクターを使用。アトラクションの風や振動などの特殊効果と合わせパンニングを考慮し、非現実的な音の実在感も高めた。
SFXのプリミックスはパンニングの連続。手作業のため数をこなす忍耐力が試されたが、すべての音が合わさった時の感激はひとしおだったという。
アップミックスでは、普段ゲーム内で使用されているステレオの音源と印象が変わってしまわないよう注意しながらミックスを進める。
とくに楽器が分離してしまうことで、フレーズやハーモニーなどの各楽器が持つ音楽的な役割が破綻してしまわないように注意した。なお、アップミックス作業は作曲家本人も現地で立ち会いチェックをしている。
全要素が揃い、いよいよファイナルミックスへ。プリミックス作業でまとめ上げた全カテゴリーをVCAでフェーダー制御していく。盛り上げ過ぎに注意しながら、入力レベルも意識していく。
ファイナルミックスの最終的なトラックは397トラック。数の多いトラックもプリミックスの工程のおかげで、1クリップも処理をし忘れず望めたという。
本セッションの内容は以上。最後に登壇者は「今後も弊社サウンド部は、ゲーム以外でも最高のサウンドにするべく最善を尽くしていく」と意欲を語った。
対応機種 | iOS/Android/ブラウザ |
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価格 | 無料(アプリ内課金あり) |
ジャンル | RPG |
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メーカー | サイゲームス |
公式サイト | http://granbluefantasy.jp/index.php |
公式Twitter | https://twitter.com/granbluefantasy?lang=ja |
配信日 | 配信中 |
コピーライト | (c) Cygames, Inc. |
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