『モンスト』開発ディレクターの岡野修身氏がゲーム開発のノウハウを語る!“ディレクターのほこら”第1回会場リポート

2019-10-16 15:50 投稿

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モンスターストライク

門外不出の『モンスト』開発譚が公開!

2019年10月2日、『モンスターストライク』(以下、『モンスト』)でゲームデザインを担当した岡本吉起氏が代表取締役を務める“オカキチ”が主催するゲームディレクター勉強会“ディレクターのほこら”が、ミクシィ本社にて開催された。

本イベントは、ゲーム業界での業務経験がある参加者に向けた事前予約制のトークイベントで、登壇者によるゲーム開発話、登壇者への質疑応答や立食交流会が行われた。

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第1回目となる今回は、ミクシィのエンターテインメント事業を手掛ける“XFLAG”が提供するスマホアプリ『モンスト』の開発メンバーとして、当時プロデューサーの木村弘毅氏(現ミクシィ代表取締役社長執行役員)とゲームデザインを担った岡本氏からディレクターを任された“でらゲー”の岡野修身氏が登壇。

イベントは岡野氏への公開インタビュー形式で進行し、『モンスト』の開発に関する話だけでなく、当時から現在までを通したゲームディレクション論についても語られた。

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『モンスト』の原点はビリヤード!?

『モンスト』の開発がスタートした時期を振り返るにあたって、岡野氏は“対面マルチのビリヤード”、“はじめてのアクション”、“目指すは日本で2番”、“作品ではなくサービス”といったキーワードを挙げた。

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このうち“対面マルチのビリヤード”というのは『モンスト』開発当初にあったゲームの企画案。

『モンスト』が現在の形になる以前は、プレイヤーがミスをするとターンが入れ換わる“対面マルチのビリヤード”という構想があったという。

しかし岡野氏自身がアクションゲームのプレイが得意ではないとの理由から、経験がなくともプレイしやすいピンボール形式のゲームをイメージ。

そこからビリヤードとピンボールのイメージにキャラクターを乗せる形でシンプルにまとめていき、そのまま方針が極端にぶれることもなく完成にいたったそうだ。

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岡野氏は『モンスト』の開発が“はじめてのアクション”ゲーム開発だったとのことで、最初はしり込みしたものの、企画案がシンプルにまとまったため、完成までいたる確信ができたという。

“目指すは日本で2番”というキーワードは、岡野氏を『モンスト』の開発に勧誘した岡本氏からの言葉とのこと。

岡野氏は「『モンスト』のプロジェクトへ参加するときに、岡本さんからいちばんは無理かもしれないが2番になれる可能性はある。と言われた記憶はあるんですけど……」と当時を振り返りながら「この前、岡本さんに聞いたら世界で2番だって言ったんだと言われました(笑)。このスライドは世界で2番と訂正させてください(笑)」と続けた。

作品性とサービスの関係について

“作品ではなくサービス”というキーワードに関するトークでは、コンシューマーゲームとスマホアプリのビジネスモデルの違いを意識した戦略の重要性が語られた。

岡野氏は従来のコンシューマーゲームを「好きな人がお金を先に払って遊ぶっていう高いハードルを越えてコンテンツに接してくれる。その時点で遊んでもらう姿勢がクリアーされている」とし、結果として作品性がそのまま商品力につながっていたという特徴を解説。

一方でスマホアプリは不特定多数の人間に遊んでもらうチャンスがあるぶん、ストレスなくコンテンツを楽しんでもらうために“学習コスト”を下げる必要があるという。

ここでの“学習コスト”とは、「ユーザーが試行錯誤する時間」や「ゲームシステムを学習しながら遊んでいく時間」といったユーザー側の労力を指した表現。これを下げるにはわかりやすいユーザーインターフェースの実装を必要とするため、作品性と言えるような独自の芸術性を落とさざるを得ないことが多いそうだ。

『モンスト』でもこの“学習コスト”を下げるためにどこまでチュートリアルを簡素化するか、開発チームで大きな議論になったという。

岡野氏は「最初は『モンスト』というゲームシステムのシンプルさゆえにチュートリアルをなくす予定となっていたが、完全に何もないのも乱暴ということで現在の形に落ち着きました」と、ゲーム性の部分とは対照的に紆余曲折があったことを語った。

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ゲームディレクションの秘訣を公開!

トークイベントの後半では、ゲーム開発に携わる来場者から事前に寄せられた質問に岡野氏が応じた。

“プロジェクトの進捗が停滞したときに意識することはありますか”という質問には、そもそも進捗が停滞した経験があまりないと回答。

「受注業が長かったので納期やクライアントが納得する品質が作れるように叩き込まれていました。停滞したら終わるっていうくらいの強迫観念があって(笑)。そうならないように手を打ってきたつもりです」と答えた。

また、“プロジェクトを滞らせない具体的な方法”については「冷たい言いかたに聞こえてしまうかもしれませんが、できそうにない仕事を人に振らないことです」とも。

「納期までに求められている仕事をするのが重要なので、こぼれたらどうしようと考えて100できる人に100の仕事、80できる人には80の仕事をしてもらう。最初からリスクを拾ってどうするか考える」と現場での人材運用の重要性を語った。

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この質問に関するやり取りの中では、「なんでもかんでも自分でやるタイプで、プログラミングも自分で打ちます……。それは最初から興味があったわけでなく、プログラミングをやらざるを得ない。そうでないと間に合わない現場にいたので覚えました。グラフィックに関してもそうです。サウンドだけは諦めています(笑)」と、日本のゲーム開発現場の黎明期に携わっていたがゆえの自身の多才さも明かした岡野氏。

「とにかく全部経験してお願いする仕事に関しては自分だったらどういうやりかたをするだろうか、1日どれくらいの量をやることになるのか、自分に置き換えたときのシミュレーションを毎日毎日くり返して個々の作業量を見ているって感じです」と、マルチプレイヤーならではの視点からディレクションを行っているそうだ。

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一連の質疑応答の最後には“今後、ユーザーのストレスを軽減してできるだけ気持ちよくやってもらうゲームが増えていくのか、逆にストレスをかけるものも増加していくのか、どのようにお考えでしょうか”との質問が。

これに対し岡野氏は「“学習コスト”が高いゲームを遊ぶ人は、スマートフォンはスマートフォンである程度遊び、自宅に帰って気に入っているPC専用ゲームを遊ぶという形で、すでにゲームの遊びかたが細分化してる気がします。そこがクロスオーバーするようなイメージはあまりないです」と、ユーザー自身がゲームごとに遊びかたを分けているとする考えを展開した。

その上で「スマホアプリの中でものすごいディープなゲームを提供したとして、ファンの評価とはべつにビジネス的なスケールとしてそれが大きくなっていくかというと、あまりイメージがない。そういうサービスがいっぱいあってくれたほうが個人的にはうれしいですが」と語り、イベントを締めくくった。

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第1回目となる“ディレクターのほこら”は、これまで語られることがなかった岡野氏による『モンスト』開発トークに加え、具体的な体験談を交えた岡野氏のゲーム開発論を聞くことができる貴重な場となっていた。

次回開催は未定となっているが、本イベントは事前予約が必要となっているため、気になった方は第2回のアナウンスにぜひ注目したい。

モンスターストライク

対応機種iOS/Android
価格無料(アプリ内課金あり)
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ジャンルアクション
メーカーMIXI
公式サイトhttps://www.monster-strike.com/
公式Twitterhttps://twitter.com/monst_mixi
配信日配信中
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