ヒットアプリを支えるのはインフルエンサーの活躍?“App Ape Award 2018”トークセッションリポート

2019-02-28 17:00 投稿

大ヒット作の人気に迫る!

アプリ分析サービスを展開している“App Ape”が、2018年に勢いのあったアプリに賞を送る“App Ape Award 2018”を開催。

授賞式の前には、パネルディスカッション形式による講演が復数行われ、講演を目的とした来場者も多く列席をしていた本会。ここでは、その講演の中のひとつ“スマホゲームを継続成長させるコミュニティマーケティング最前線”のリポートをしていく。

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この講演では、MOTTOの佐藤基氏(以下、佐藤氏)をモデレータに迎え、パネリストにはPUBGより井上洋一郎氏(以下、井上氏)、Supercellの脇俊済氏(以下、脇氏)、ミラティブから赤川隼一氏(以下、赤川氏)が登壇した。

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▲左から佐藤氏、井上氏、脇氏、赤川氏。

新規タイトルがヒットするのは難しい環境に

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まずは、日本で遊ばれているゲームアプリ市場の動向について、佐藤氏より紹介がなされた。

現在のスマートフォンアプリ市場は、ひとりが遊ぶアプリの本数が減少傾向にあり、それに伴うMAU(月間アクティブユーザー数)も減少。また加えて新規アプリを遊ぶ人も減ってきている状況にあるという。新たなアプリが配信されても遊ばない、つまりヒットアプリが生まれにくい環境になってしまっているという。

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2018年に売り上げトップ100に入っているアプリのリリース数は、2017年の25タイトルから、2018年には22タイトルに落ちている。

また、IPタイトルとオリジナルタイトルの割合についても言及が。2018年にリリースされ、売上トップ100に入ったタイトルのうち、オリジナルタイトルは14タイトル、IPタイトルは9タイトルとなっており、オリジナルタイトルのほうが強さを見せる状況にあるという。

しかし、着実にIPタイトルは成果を伸ばしており、今後も増えていく可能性が高いという見かたもされているようだ。

そのため、オリジナルタイトルならば成功しやすいのかというとそういうわけではなく、この14タイトルのうち、日本開発のタイトルはたったの4本に収まるそうだ。

つまり国内スマートフォンアプリ市場にもグローバル化の流れは起きており、アプリ開発はきびしい状況になりつつあることが述べられた。

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重視されるのはインフルエンサーの存在

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続いてのトークテーマは“コミュニティマーケティングの具体的な取り組み”。こちらでは、『PUBG MOBILE』や『ブロスタ』など、ヒット作を抱える企業が、昨今生まれているコミュニティマーケティングをどう捉え、どのような施策を打っているのかが語られた。

これについてまず口火を切ったのは『PUBG MOBILE』の井上氏。『PUBG』はもともとPC版として展開されており、そこからスタートしているコミュニティマーケティングを『PUBG MOBILE』にも継続しているという。

ちなみに、『PUBG』、『PUBG MOBILE』が行っているコミュニティマーケティング手法は、インフルエンサーに出稿をしてゲームをプレイしてもらうのではなく、『PUBG』を心から楽しんでくれている配信者を始めとするインフルエンサーに、ゲーム内アイテムや、ルームを立てる権利などを提供し、配信をするためのモチベーション作りや環境整備に投資をするものだそうだ。

井上氏はこれについて「広告としてプレイをしてもらっても、“やらされている感”が出てしまうため、インフルエンサーとしての影響力が薄れてしまいますから」とコメント。PUBG社はインフルエンサーをインフルエンサーとして活躍させることで、大きなマーケティング効果を上げていることが伺えた。

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また『ブロスタ』などを手掛けるSupercellの脇氏も、同様にインフルエンサーを重要視していることを明かした。実際に『ブロスタ』では、配信前に世界中のYouTuberを集めてのイベントを実施したり、国内でもリリース記念パーティーを行ったりと、インフルエンサーを一堂に呼んでの施策を行った経緯もあるため、この言には説得力が感じられる。

Supercellがインフルエンサー、およびインフルエンサーとのコミュニケーションを大切にしている理由には、つぎのような考えがあるようだ。

脇氏「自分たちだけでスケールの大きな施策、大きなインパクトのある施策を企画し、実行していくというアクションには限界があり、それは思いの外早く訪れます。だからこそインフルエンサーの方たちに期待をし、インフルエンサーの方たちがコンテンツを作っていくための支援は大切なんです」

奇しくもなのか、当然の結果なのは不明だが、両社ともに“インフルエンサーに出稿する”のではなく、“インフルエンサーを支援する”ことが重要だという話をしてくれた。2019年はそういった動きが増えてくるのだろうか、注目していきたい。

『Mirrativ』を活用する意図とは?

さまざまな配信ツールの中で、『Mirrativ』を活用する目的、意図について質問されると、脇氏はゲームコミュニティとの相性のよさを挙げた。

相性のよさ、その理由のひとつは、俗に『Mirrativ』のメインユーザー層にあるという。脇氏曰く、『Mirrativ』のメインユーザー層は、俗に言うリア充ではない層となっているそうだが、彼らはネット上で出来たコミュニティを大切にするという傾向が強いため、ゲーム配信との相性は最適なのだという。

また、そこで生まれる特有の関係性も『Mirrativ』の利点になるそうだ。『Mirrativ』では配信者と視聴者の関係性が独特な距離感が形作られることが多く“友人でも他人でもないが、ゲーム中いざというときに頼りになる”という不思議な関係が構築されるという。そして、そういった人とゲームを楽しむコミュニティとなると『Mirrativ』が最適になるのだと語ってくれた。

赤川氏はこの話を受けて「一度コミュニティができる、つまりいっしょに遊ぶ人がいるとゲームからの離脱率が下がりますよね」と、ゲーム運営をする側の視点から、そのメリットを挙げた。

これまでは、スマホゲームの実況をしようとしても、特殊な機材をはじめとする配信環境が必要になっていたが、『Mirrativ』が登場して以降は、誰もが手軽にスマホゲームの配信が出来るようになった。これは配信をベースとしたコミュニティを作りやすく、また参入のハードルが下がったためインフルエンサー候補が増え、彼らがゲームの離脱率低下を抑止しているという。

『Mirrativ』がユーザーコミュニティ市場に大きな影響を発揮し始めたことは、間違いない事実のようだ。そして、『Mirrativ』を使ったコミュニティ施策の成功例も出始めているようだが、逆に失敗するコミュニティ施策というのはどういったものになるのだろう?

これについて語ってくれたのは、PUBGの井上氏。

井上氏「目の前のユーザーと真摯に向き合うことを忘れると、手のひらを返されて攻撃の対象になってしまいます」。そう口を開いた井上氏は、コミュニティを健全に維持していくには、真摯に対応し、何かあったら丁寧に説明をしていく必要があると語る。

一方で脇氏は、目標設定を曖昧にすることの危険性を語った。目標設定がないとコミュニティ施策の目的も曖昧なものになってしまう。ゲームとして目指すところは何かをしっかりと考え、それにコミュニティ施策の目的を紐付けるべきとのこと。

売り上げやインストール数、Twitterのフォロワー数を増やすなど定量的なゴールだけを持つことや、ユーザーと仲良くなるなど定性的で曖昧なゴールだけを持つことは避けたほうが良いという考えのようだ。

2019年に目指すべき目標とは

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最後に、2019年に目指すべき目標についての3者がコメントした。

井上氏は、拡散力がどれだけ出たのか成果を確認しつつ、この先も取り組んでいきたいと発言。コミュニティ施策は始めてすぐに成果が出ないことは理解した上で、何かしらの成果が上がったときに、その要因と紐付けできるように、定量的にマーケティングをしていくという。

脇氏は、スマホゲームでもプレイヤースキルが重要になる作品が増えてきていることに触れ、だからこそゲームがうまい配信者が注目されるようになる時代が訪れたと語り、そこで効果を発揮する『Mirrativ』も積極的に利用していきたいとコメント。

赤川氏は、今後の展望として「ユーザーと同じ目線に立つことがキーになってくるだろう」と語った。氏は運営とユーザーの距離の取りかたが、従来のそれとは変わってきている点を重要視しており、ユーザーと同じ目線で情報を発信するツールとして『Mirrativ』を活用していきたいという考えのようだ。

また続けて、昨今爆発的な流行を見せたバーチャルYouTuberについても言及。赤川氏は「アバターやボイスチェンジャーの利用によって、配信のハードルが下がり、配信者の数は増えて来ています」とその波及が順調に上昇推移していることに触れつつ、「今年も世の中にありそうでなかったものを作っていきたい」と、バーチャルYouTuberという技術やコンテンツに可能性を感じていることを示してくれた。

すでに『Mirrativ』では”エモモ”という、スマホ1台でVTuberのようにアバター配信ができる機能も用意されており、今後さらにゲーム配信の敷居が下がることが予想される。マーケティング手法のひとつとして、インフルエンサーを活用することは『PUBG MOBILE』、『ブロスタ』といったヒット作品の事例を見ても重要性が増していることは明らかだ。

今後、ゲーム運営サイドとユーザーコミュニティサイドがどのような関係性を構築し、どのようなツールが用いられていくのか、その動向に注目していきたい。

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