アニメ版『イングレス』制作陣が語る現実とアニメを融合させる新たな挑戦!! 

2018-04-11 16:00 投稿

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Ingress Prime(イングレス プライム)

ナイアンティック×アニメ制作陣が目指す拡張現実

ナイアンティックが手掛ける位置情報ゲーム『Ingress』のアニメが2018年10月から放送される。

そこで、本記事ではアニメ版のプロデュースを担当するクラフターの石井朋彦氏、『ポケモンGO』のヒューマンキャラクターデザインを担当したことでも知られる監督の櫻木優平氏。さらに、ナイアンティックのアジア統括本部長である川島優志氏、同社の須賀健人氏を交え、拡張現実の世界と複雑なエージェントたちの戦いをどのように描いていくのかインタビューを敢行。

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▲左からナイアンティック須賀健人、櫻木優平監督、石井朋彦プロデューサー、ナイアンティック川島優志。

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アニメ版のプロジェクトは2年前から始まっていた

――まずはXMフェスティバル福岡お疲れさまでした。プロモーションで今回のようにファンの前に立つことはあるのですか?

石井朋彦氏(以下、石井) こういった機会はありますが、私はオリジナルの作品を手掛けることが多く、いつもは放送を通じて好きになってもらい、後日反響を受け取るんですね。しかし、『Ingress』はすでに熱狂的なファンがいますし、当然ハードルを上げて待っていますよね。もちろん作品に自信はありますけど、ここ福岡に集まったみなさんから感じた熱量はこれまでにない特別な体験でした。

――アニメ版『イングレス』を制作することになった経緯を教えてください

川島優志氏(以下、川島) 『Ingress』は拡張現実を使ったゲームであることはもちろん、YouTubeやSNSなどさまざまなメディアを通じて、ゲーム内ストーリーや出来ごとを外に向けて展開、現実世界との接点を作ってきました。そこに日本の誇るアニメという魔法のように世界を変える力を加えたい。新しいことができないかと考えていたとき、もともと私やジョン・ハンケ(ナイアンティックCEO)とも面識のあったプロデューサーの石井さんにお願いすることになったんです。

――石井さんとはどのような経緯で出会ったのですか?

川島 グーグルマップを日本でロンチして5周年が経った2010年。それを記念して押井守監督との対談が六本木ヒルズで行われたのですが、そこにモデレーターで石井さんが参加してくださったんですよね。

――アニメ化の話はいつごろ決まった?

石井 約2年前でしたっけ、サンフランシスコのスターバックスで川島さんとお話しをしたんですよね。

川島 そうですね、丁度ナイアンティックも『Ingress』のアニメ化を考えている時期だったことも覚えています。

――これは個人的な想いですが、アニメ版『イングレス』の監督が櫻木さんと聞いて安心した要素のひとつが、現実世界の裏に潜む見えざるもうひとつの世界をテーマにした『ソウタイセカイ』というアニメを手がけたかただからという点でした。その作品では迫力のあるバトルシーンも話題になりましたが、『Ingress』ではどのようにエージェントが戦うのでしょうか?

櫻木優平氏(以下、櫻木) もちろんスマホの画面を見て戦うだけではアニメにならないので、いろいろなアイデアを考え、ビジュアル的にも楽しんでもらえる演出を詰め込んでいます。街中で何気なくスマホを使っている人々、人の集まる場所では実際にそうした光景をよく目にしますが、その中にはエージェントもいて水面下では激しい戦いをくり広げている。これまでのXMアノマリーや今回のXMフェスティバル福岡でエージェントのみなさんが経験してきたことの延長線上にあるエキゾチックマター(通称XM、『Ingress』の世界ではこの謎のエネルギーを巡る戦いが続いている)に満ちた世界が本当にあるものと考え、ゲームのルールに則ったうえでアニメとしてしっかり見応えのある戦いを描いています。

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▲日本アニメ(ーター)見本市で『新世紀いんぱくつ。』を手がけた櫻木監督。その後、『花とアリス殺人事件』や『ソウタイセカイ』、今年は宮崎駿監督最新作『毛虫のボロ』でCGを担当するなど、CGアニメ界で注目を集める存在だ。

エージェント活動に参加してリアリティを学んだ

――櫻木監督に決まった経緯を教えてください。

石井 川島さんと話し合ったときに決めたポイントがいくつかありました。ひとつは単なるアニメにせず、ゲームや現実にシンクロするものにしたいということ。まだ多くは明かせませんが、放送が始まるまでのあいだ、そして放送中アニメの外でもいろいろなことが起こります。櫻木監督が得意とするフル3DCGを使ったキャラクターなら、今回のXMフェスティバルのようにARを使って現実世界に登場させることもできる。そうした点からも彼しかいないだろう、と。そしてもうひとつは“いまの作品を作る”ということです。時代にマッチしたものを目指すには若い監督がベストですし、彼が得意とする世界観に『Ingress』がマッチしていると感じていました。

川島 日本のアニメーションは2Dの歴史が長く、3Dで描くことに最初は不安がありました。しかし、櫻木監督がこれまで手掛けてきた作品やサンプルを拝見して心を動かされ、この方になら任せて大丈夫だと判断しました。アニメにはうるさい須賀も現実世界との接点をしっかり構築できるだろうと納得してくれました。

石井 そうなんですよ、須賀さんはハードルが高くてね(笑)。

須賀健人(以下、須賀) どうしてもオタク視点で見てしまうので、多くの方におもしろいと感じてもらえるよう意見はたくさん出しましたね。毎朝金曜日にシナリオ会議があるのですが、『Ingress』のシナリオクリエイターなども参加しながら、納得できるものに仕上げていきました。アニメ化自体のお話はこれまでも多く、その中でも櫻木監督やクラフターさん、フジテレビさんとプロジェクトを進めることで、最新テクノロジーを使った我々にしかできない新しいエンターテイメントが完成したと感じています。

川島 ナイアンティックでシナリオに関わっているクリエイターはハリウッドでも活躍しているスタッフなんですが、グローバルに通用するものを作るという面で日米のあいだで考えかたも違い、たくさんの議論を交わしてきました。そこで、海外のクリエイターと共同作品を手掛けるクラフターさんの経験が活かされていますね。

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▲『Ingress』の世界設定やストーリーに関わる重要人物ラザ・アハメド氏もプロジェクトに参加(写真は2017年1月にインタビュー時のもの)。彼が関わっているということだけでもエージェントにとってはうれしいポイントである。

――『Ingress』といえばレジスタンスとエンライテンド、ふたつの陣営が存在します。プレイヤーは実際どちらかに所属しているわけですが、アニメでどう扱うのでしょうか?

須賀 ナイアンティックからリクエストしたのは、両陣営が世界中で活躍していることを描いてほしいということでした。

櫻木 もともとストーリーがある作品で、実際にプレイされているエージェントたちの戦いがゲーム展開に反映されるなど、『Ingress』はかなり珍しいタイプのコンテンツだと思っています。そうした特徴を活かした作品にしたいと考えています。

――アニメ版の制作にあたってロケハンを行ったということですが、それは現実世界だけでなく、これまでエージェントたちが歩んできた活動も含まれているのでしょうか?

石井 じつはこっそり須賀さんに連れられて、日比谷公園で行われたシャード戦(『Ingress』を使った戦いのひとつ)を見学しに行ったんです。そこでエージェントのみなさんが戦う本気度を肌で感じ、ここにいる方々を相手にアニメを作るのかと驚きつつも、しっかり作らなければと、同行した櫻木と制作への姿勢を再確認したのを覚えています。両陣営の戦いは現実世界、この社会で起こっていることとリンクしていると思うんです。それこそ、トランプ政権になった時期でもあったのですが、まさにリアルタイムで『Ingress』を連想させるものが現実でも起こっている。そうした多くの体験からも、『Ingress』が本当にあったら世界はどうなったんだろういう視点で今作のシナリオを考え始めました。

川島 アニメ版のスタッフの方々にも『Ingress』のオペレーションに参加してもらい、エージェントがどんな気持ちで活動しているのかを知ってもらいましたよね。

石井 撮影監督なんてレベル16(『Ingress』における最高レベル)になってましたよ(笑)。

須賀 以前、1部エージェントにも協力してもらい、アニメスタッフのみなさんと巨大なコントロールフィールドを作成しましたよね。

石井 その直後に破壊されちゃったのですが、そんな臨場感もアニメに活かしたいですね。

櫻木 ゲームの世界観、ジョン・ハンケ氏の描くものをいちばん大切にしたい。しかし、ゲームとアニメでは表現方法が異なります。エージェントのみなさんだけが楽しめるのではなく、プレイしていない方にも『Ingress』の世界に興味を持ってもらえる、アニメだからこそできる手法を積極的に取り入れています。

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▲これは2018年4月7日に開催されたXMフェスティバル福岡で公開されさ最新映像。そこに映し出されたのは、まさに日々体験している『Ingress』を視覚化した思い描いた世界だった。

拡張現実という世界を知らしめ波紋を投げかけたい

――監督がとくに悩ましいと感じた部分はなんですか?

櫻木 それは『Ingress』が持っている言葉の多さですね。バックストーリーで描かれている歴史を掘り下げるだけでも複雑で、それらを事細かに説明するのは難しい。ゲームをプレイしていない方もアニメは見ますので、そうした方々にどこまで作品に入りやすく且つ、辻褄が合わせられるかのバランスがとてもたいへんでしたね。

須賀 そこをいちばん大切にしました。むしろアニメを観た人が『Ingress』を始められるようなものになっています。

川島 『Ingress』のエージェントがこれまでプレイしてきてよかったと感じてもらえるもの。裏切らないものを目指していますし、アニメという力を得ることで多くの方にこの世界観を体験してもらいたい。実際、フジテレビでアニメを多く編成されている方たちからも、テレビアニメの域を越えていると言ってもらえるクオリティになっていますので期待してほしいですね。

――アニメ版は何を達成すれば成功だと思いますか?

石井 いま日本のアニメは特定の方程式の中で楽しまれるものが主流だと思います。ただし、世界では圧倒的にテーマとキャラクター、そしてストーリーが重要視されている。今作を見ることが楽しみでしかたない、見終わった後は実際に『Ingress』を起動して外に出たくなる。放送中、世界中がざわつくような現象が起きたら成功だと考えますね。

川島 『ポケモンGO』の原点である位置情報と拡張現実を組み合わせた『Ingress』が、アニメを使ってさらなるエンターテイメントに拡張する試みを目指しています。それはゲームファンだけでなく多くのメディアが、いまナイアンティックが何をしようとしているのか、波紋を投げかけるような試みになるでしょう。

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▲いまあるARは完全なものではないが、それに恐れていては技術の進歩は望めない。アニメを含め、ARの総合的なエンターテインメントをナイアンティックは推し進めていきたいと須賀氏は語る。

櫻木 日本のアニメーションという文化はなかなかサブカルチャーから抜け出せていません。そんな立ち位置から抜け出し、新たなフィールドで勝負できるものにしたいですね。アニメという文化には演出面において良くも悪くも嘘をつきます。これは現実そのままの表現をしないという意味で、たとえばコマを飛ばして演出すると日本の視聴者はスピード感のある手法だと捉えますが、海外では描写が省かれコマが飛んだと捉えることもあるんです。そうした面に配慮しながらも日本の良さを積極的に取り入れています。

須賀 櫻木監督の描く世界は本当に美しい。これは、ナイアンティックが伝えてきた世界のすばらしさがしっかり描かれています。ぜひ、そうした要素にも注目してほしいですね。

川島 コントロールフィールドやXMなどの表現も『Ingress』や『Ingress Prime』をリスペクトしたうえでアニメでダイナミックに描いてくれています。アニメで見たことが現実、つまりスキャナを通じて起こっていると感じてもらえる作品になるよう努力しています。また、アニメの公式アカウントが公開されましたが、今後そちらでも情報を提供していきます。放送は10月からですが、すでにキャラクターたちは現実でどこかで何をしているんです。それがいったい何なのか、どこで起こっているのかを、『Ingress』のエージェントはゲームを通じて探っていくことになるでしょう。さらに、そうした活動がアニメに影響を与えるようなチャレンジを計画していますのでご期待ください!!

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▲インタビューのあいだとても楽しそうにアニメ版『イングレス』について語ってくれた川島氏。その表情からも満足のできるクオリティに仕上がっていることが感じられた。

2018年10月からフジテレビの深夜アニメ枠“+Ultra”。その第1弾であるアニメ版『イングレス』が、我々にどんな体験をもたらしてくれるのだろうか。

“The world around you is not what it seems.”
あなたの周りの世界は見たままとは限らない

『Ingress』のキャッチコピーであるこの言葉が意味するものとは?

少しでも興味が湧いた人は『Ingress』をダウンロードして、すぐそこに広がっている拡張現実を体験してもらいたい!!

P.N.深津庵
※深津庵のTwitterはこちら

テレビアニメ『イングレス』公式HPはこちら

Ingress Prime(イングレス プライム)

対応機種iOS/Android
価格無料(アプリ内課金あり)
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ジャンルその他
メーカーナイアンティック
配信日配信中
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