【逆鱗日和ワールド】第4回:ドスジャグラスの憂鬱
2018-01-31 18:36 投稿
ドスジャグラスのメスがいるらしい
『モンスターハンター:ワールド』の世界に飛び込んだ人が最初に対峙する大型モンスターは、よっぽどのことがない限り“ドスジャグラス”なんじゃないかと思う。……まあ、指令を無視してフィールドに飛び出し、アンジャナフあたりに遭遇しちまった人は「よっぽどお!!」とでも叫んでもらうとして、話を進めたい。
我ら、“へっぽこ3人組・シーズン3”(中目黒目黒、バキ、俺の3人)もご多分に漏れず、ドスジャグラスの討伐に出向くことになった。クエストを貼りながら、余裕たっぷりの口調で目黒が言う。
「正直……ドスジャグラスじゃあ物足りないんですけどね。なぜなら我々、βテストで吐きそうなくらいコイツを狩っていましたもんね!」
そうなのだ。
昨年末から何度かに分けて行われた『モンハン:ワールド』のβテストで、俺たち3人は連日、夜中から明け方にかけてフィールドを駆けずり回っていた。配信されていたクエストを遊び尽くしたのにプラスして、「ごく稀に、古代樹の森に“プケプケ”が出現するらしい!」という情報を聞きつけ、くり返しくり返しこのフィールドに出掛けていたのである。その際、必ずやドスジャグラスがドスドスと現れてきたので、
「ひとまずコイツを狩ってから!」
を合言葉に、3人で襲い掛かっていたのだ。多少のダメージはものともせずにゴリ押しし、最終的には2分くらいで狩っていたんじゃなかろうか。そういう意味では完全に、ドスジャグラスは“お得意さん”だったのだ。
それにしても、このモンスターが醸し出す“憎み切れないニクいヤツ”感たるやどうだ……。
そこはかとないかわいらしさ、にじみ出る哀愁、飼いネコにも通じる隠しようのないおバカさ……。
とくに、その登場シーンで表現される“腹ペコキャラ”のインパクトは絶大だ。
「ε=(Φω´Φ#)オラ、腹減っただ!! 腹減った腹減った!!!」
そうわめきながら、森の奥からドスドスドスと駆けてくる。そしてアプトノスを見るや、
ε=(Φω´Φ#)ε=(Φω´Φ#)ε=(Φω´Φ#)
と大興奮状態に陥り、
「ε=(Φω´Φ#)肉! オラの肉ッ! 誰にも渡さねえだ!!」
そう主張して、アプトノスに躍りかかるのである。無印の時代からアプトノスは、
“歩く生肉”
と呼ばれてきたが、ドスジャグラスほど彼らに“肉を見ている”ものはいない。きっとヤツには、アプトノスがバサバサと振る“名物特上ハラミ! 希少部位のザブトンもあるよ!”なんていう焼き肉屋の旗が見えているに違いない。
そんなドスジャグラスに俺たち3人は、特上級の油断満載で斬りかかった。
「瞬時に片付けて、つぎのクエストにいこう!」
そんな気持ちは、隠しきれていなかったと思う。ところが……。
最初こそ、
「うおおおお!! 余裕ぅぅううううう!!」(目黒)
「竜撃砲、いっきまぁぁああす!!」(俺)
「ふたりに任せて、探索行っちゃおかなあああ!」(バキ)
なんてハシャイでいた3人だったが、徐々に(……あれ? おっかしいな)と思い始める。その証拠に、どんどん元気がなくなっていった。
「う、うおおお。……けっこう堅い(苦笑)」(目黒)
「……りゅ、竜撃砲、ぜんぜん効いてねえ^^;」(俺)
「……倒せる気配がないんですけど」(バキ)
そして口々に、「おっかしいな」、「簡単だったのに」、「居眠りしてても狩れたのに」なんて言葉が出始めたとき、ついに“違和感の正体”に気づいた。それも、3人同時に。
「あ、βテストのときに余裕だったのって……」(目黒)
「よ、用意されていた武器が……!」(俺)
「強かったからだぁぁあああ!!!」(バキ)
そうなのだ! βテストのときはあらかじめ用意されていた装備で狩っていたので、その時点で初期装備の現在よりも圧倒的に優位だったのである! それを俺たちは、
「わしら、ぜんぜんへっぽこじゃなくね?w むしろ、エリートかも?w」
なんて勘違い砲をぶっ放してふんぞり返っていたのだ!! けっきょく、
「わあ!! こんなところでちんだ!!」
と目黒が断末魔の悲鳴を上げたことで我に返り、以後マジメに狩ることにしたのであった……。
以下、余談。
それにしてもドスジャグラス、「誰かに似てるんだよなぁ……」と思っていたんだけど、最近その答えにたどり着いた。ファミ通Appにいる女性編集者、さとるりっぽいのだ。
いや、彼女はドスジャグラスのように髪を振り乱して大口を開け、「肉!! 肉ッ!!」なんてわめいていないが(たぶん)、“大食い”という点において共通点が多いのである。
昨年、E3取材でロサンゼルスに行ったとき、俺、目黒、さとるりらでサンタモニカを散策していた。そして、いままさに昼時……というタイミングで、さとるりがブツブツと言うのである。
「お腹減ったぁ……お腹減ったぁ……。何か食べたぃ~……何かぁ……」
うつろな目でうわ言をいう彼女にゾッとした俺と目黒は、慌てて近くの中華に入り、チャーハンやら餃子やらを片っ端から注文。「うおおおおお!!!」と吠えたさとるりは、アプトノスを丸呑みするドスジャグラスのごとき勢いで、そのほとんどを食べつくした。パッと見、大食いには見えない細身なのに。
しかもその夜、取材陣一同でステーキハウスにいき、おっさんどもが残したステーキのカタマリ(500グラムのを頼んで、3分の2くらいしか食べられないヤツが多かった)を見て、さとるりは言うのだ。
「あの~……。その肉、食べないんですか……? 私、食べてもいいですか?」
おっさんどもが無言でうなずくと、さとるりは再び、「うおおおお!!!」とわめいて肉にかぶりつき、瞬時にそれらを平らげていた。その瞬間、俺の脳裏をよぎったのは、E3で見たばかりの『モンスターハンター:ワールド』の映像--。そして、つぎのように思った。
(さとるり……ドスジャグラスのメスだったんだなぁ……)
とね……。
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大塚角満(おおつか・かどまん)…… 作家、ゲームエッセイスト。ゲームのプレイ日記を書くことをライフワークとしており、『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど著書多数。現在、ファミ通のフェロー(特別編集員)を務める。 |
▼βテスト時の動画
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