『マギレコ』、『オセロニア』、『ダンメモ』がプレイヤーに愛されるための試みとは?運営をテーマにしたトークイベントをリポート
2017-12-28 15:13 投稿
神運営とは何か? プロが語るスマホゲー運営の裏話
グリーのアプリ開発スタジオ“Wright Flyer Studios”主催の業界関係者向トークイベント“Flyers’ Lab”の3回目が2017年12月18日に開催された。ここでは、その模様をリポートしていく。
【Flyers’ Lab #1】
⇒スマホゲームにおけるシナリオとは?『マギレコ』、『アナデン』、『タガタメ』などのシナリオを手掛けた面々によるトークイベントリポート
【Flyers’ Lab #2】
⇒『シノアリス』、『アナザーエデン』の世界観はどのようにして作られたのか “ヨコオタロウ×加藤正人”トークイベントリポート
今回のトークテーマは“運営”。f4samuraiの佐藤允紀氏、DeNAの香城卓氏、Wright Flyer Studiosの野澤武人氏と下田翔大氏が登壇し、スマホゲームにおける運営についての取り組みについてを語り合う会となった。
スマートフォンゲームの運営を行っている人たちは、運営について何を思っているのだろう? ここでは、トークイベントで語られた内容をまとめていく。
登壇各社はどのような意識を持って運営を行っているのだろうか?
まず行われたのは、登壇者たちがどのように運営に取り組んでいるかという話。
これについてf4samuraiで最高マーケティング責任者を務め、『アンジュ・ヴィエルジュ』、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』の運営を行っている佐藤氏は以下のような話をしてくれた。
佐藤氏は「社内向けの時間よりも、ユーザー向けの時間を増やすこと、運用がダレないよう改善のサイクルをつくること、3年以上の運営を前提とした設計をおこなっていくこと」という自社の取り組みを紹介。
一例として、ゲーム内に掲示板を設けることでユーザーIDからいつゲームを始めてどれくらいの頻度でプレイしているかといったプレイ状況や端末などの環境を知ることができ、それを鑑みたうえでコメントを受け止めることで、より問題点が見えやすくなるという。
また、改善要望板では具体的に「使いやすくなった」、「ここがすごく良くなった」といったポジティブなコメントも寄せられることがあり、開発メンバーにとって一番嬉しい瞬間になっているとのこと。緊張感を持ちつつ開発のモチベーションを上げることで、良いサービスを作ることができ、それがユーザーにも還元される。佐藤氏の取っている施策は、良いサイクルを生む要因となっているようだ。
佐藤氏の話からは、しっかりとユーザーの声に耳を傾け、ユーザーと触れ合い、ユーザーもそして作り手も楽しめるような環境作りに意識を向けているように感じられた。
また、オフラインイベントとして初めてf4samuraiが主催した「f4ファンフェスティバル」の試みも例に上げ、Periscope(Twitter)、YouTube Live、ニコ生などの総計で53万人もの視聴を達成したのだという。
続いて話をしてくれたのは、『逆転オセロニア』のプロデューサー香城氏。
香城氏は「スマートフォンゲームにはゲームとしてプレイヤーに届くものと、サービスとしてプレイヤーに届くものがある」という前置きをした上で、ゲームの評価に大きな影響を与えるコミュニティをサービスとしてどのようにフォローしていくべきかを語ってくれた。
もともとコミュニティというものは自然発生するもので、そこに運営が関与する方法は少ないものと思われていたが、これに関して香城氏は「現代では、ものごとの価値が集合知で作られる時代です。以前だったら“俺はこのゲームをおもしろいと思う”という個人意志のもとゲームプレイが行われていましたが、最近では“このゲームやったほうがいい?”という意見に対してコミュニティ内で議論が起こり、その意志決定がなされる傾向にあります」とのこと。
人と人との繋がりがゲームのおもしろさを演出する要素の一端となっているスマートフォンゲームにおいては、そのゲームのおもしろさよりも、友達といっしょにゲームを始められるかどうかが重要視される。
香城氏はこの点を大事にし、それが実を結んだという。
オンラインの場ではTwitter、YouTube、オフラインの場では出演者ではなく来場者が主役となるようなファンイベントや大会などを催し、コミュニティを生み、成長させていったことが功を奏したそうだ。
なおこの施策、とくにオフラインイベントについては、ただプレイヤーだけにメリットがあっただけでなく、運営サイドにもメリットがあったという。
それは、プレイヤーと顔を合わせてコミュニケーションを取ったことにより、1アカウントという数字がただの数字ではなく、それは人の数であるということをより肌で感じられるようになったこと。
香城氏は「よりリアルに感じられるようになったアカウントがアクティブでなくなってしまうのは本当に心配になりますし、悲しいです。なので僕たちは、ゲームが原因でノンアクティブにならないよう、本当に注意するようになりました」と、自身の意識改革にも繋がったそうだ。
このテーマで最後に話をしてくれたのは、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~』(以下、『ダンメモ』)の運営を行っている野澤氏。
野澤氏はこれまでに出た話とは打って変わって、リリース前における運営の重要性について語ってくれた。
運営という行為は、おおよそディレクターやプロデューサーが指揮を執って行われるものだが、『ダンメモ』ではそれとは別に“運営プロデューサー”という役職を設け、開発段階から運営の準備を進めていたという。
運営プロデューサーが「アップデートをする際に、ユーザーの負担となる大容量ダウンロードを必要としない設計にするよう、どうしたらいいか?」、「原作ファンから愛されるためには、どういうシステムにすればいいのか?」といったような運営サイドからの目線を開発時から持つことで、リリース前から運営のしやすい状態を作り上げたのだそうだ。
サービスを長く続けるために、どんな工夫を?
こうして各社の取り組みが披露されたあと、トークイベントは座談会へと移った。
座談会で最初のトークテーマとして挙げられたのは「運営を長く続けていくのに、どのような工夫をしているか?」というもの。
これに関して、まず口を開いたのは香城氏。
香城氏「長く続けていくとなると、重要なのは“どう事業として成長させていくのか?”という点と人員マネジメント。1年先のさまざまな未来を見据えて、さまざまなルートを予め想定しておくことが大事です」
香城氏曰く、リリース後低調な動きを続けていた『逆転オセロニア』が爆発的なヒットを遂げた後も、落ち着いた運営を続けられたのは、それも想定ルート内だったからだという。
続いて工夫について語ってくれたのは佐藤氏。佐藤氏はスマホゲームではすっかりなじみの深いものになったコラボについて「コラボをするときは、何とコラボをするかではなく、どう盛り上げるかが重要だ」と語っている。
佐藤氏は、本編やキャラクターを大事にするうえでコラボは3カ月に1回までを目安とし、また、3カ月ごとのサイクルで運営方針を固めて動いているとのこと。
工夫について、『ダンメモ』運営の野澤氏は「僕はこれまで何本かタイトルを運営をしてきているのですが、失敗の連続でした。しかし今回は成功の芽が出始めているので、出し惜しみをせず、やれることは全部やるというスタンスで全力で取り組んでいます」とのこと。
定量評価のみならず、定性評価も重視するようになった企業の意識変革
DeNAの香城氏は「私たちは、(定量評価のみと向き合った際に)プレイヤーに本当に喜びを与えてこれたのだろうか、という自問自答がなされ、数字偏重という時代が終わったのだと思います。そして、現在は定量評価のみならず、定性評価も重視しゲーム運用しています。」とコメント。
また、こういった業界の動向については佐藤氏も思うことがあるらしく、「ゲーム作りに関して本気の話をするようになって、ホントズルイですよね(笑)」とコメント。
やはり、ノウハウが蓄積され、経験を積むことで重要視する指標も移り変わっていくようだ。
神運営とは一体何なのか? そもそも神運営とは存在するのか?
最後のトークテーマは、“何を以て、神運営が実現できていると言えるのか?”というもの。
さまざまな場所でユーザーが発する“神運営”という言葉。果たして“神運営”とはいったい何なのだろうか?
これについてまず口火を切ったのは香城氏「インセンティブを配布すると“神運営”だと言われることがありますが、私たちは、それは神運営ではないと思います。そもそも、神運営というものは存在しないのではないかと。」
香城氏曰く、インセンティブを配布する行為は、利益をプレイヤーに還元するというループが出来ている状態であるとしか言えず、その行為のみを捉えて神運営と評するのは少々違うという考えのようだ。
また、野澤氏は「運営とユーザーという対立構造ではなく、運営にもひとりのユーザーとしての目線がともなうようにならないと満足したサービスは提供できません。それが神運営と言えるかどうかは分かりませんが」と、運営としてのあるべき理想像を語りつつも、神運営の定義には悩みを見せているようだった。
そして佐藤氏もこれに同調するように「このイベントの講演依頼をいただいたときに、神運営にはとても及ぶとこに至っていないと、「神運営を目指す」にテーマを変えて欲しいとお願いした」経緯を語った。
サービス期間の長い『アンジュ・ヴィエルジュ』は、プレイ期間の長いコアユーザーも多く、また同時に新規ユーザーもコラボきっかけなどで参加してくるコンテンツ。そうなってくると問題になるのが、新規ユーザーとコアユーザーが求めるものの乖離。この両者を同時に満足させることは難しく、UI変更ひとつを取ってみても、便利にしたつもりが、慣れていたのに変えられて使いづらいと言われることも多いという。
長期運営でコアユーザーの要望に応えていくのは勿論のこと、新しく入るユーザーが満足をして盛り上がってくれれば、コアユーザーにとっても活気あるサービスとなり喜んでもらえることも多いのではないかと考え、改善に取り組んでいるとのこと。
こういった点から見ても、万人を満足させる運営は難しいのだが、それを実現できたとしても神運営と呼ばれるのかどうかは難しいというのだ。
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