ガチャのない課金システムとは?スクエニの新たな挑戦に迫る『フレイム×ブレイズ』開発者インタビュー

2017-04-06 09:00 投稿

フレイムブレイズメインビジュアル
【『フレイム×ブレイズ』情報まとめはこちら】

バトルシステムも課金も、挑戦したタイトル

2016年9月15日に行われた東京ゲームショウ2016のステージで、スクウェア・エニックスから突如発表された新作スマホアプリ『フレイム×ブレイズ』は、同社では珍しい、いわゆるMOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)系ジャンルのアクションゲームだ。会場では、同社の代表取締役である松田洋祐社長が登壇し、みずからもプレイに参加したことで、同社の中でもとくに気合いが入っているタイトルであることが垣間見えた。

▼初報はTGSでした
松田社長もプレイ!スクエニ、3on3バトルがアツいMOBA系新作アクション『フレイム×ブレイズ』を発表【TGS 2016】

今回、本作のプロデューサーである岡山博紀(おかやまひろのり)氏と、ディレクターの阿部雄仁(あべゆうじ)氏にお話をうかがうことができた。本作に込められた思いや、開発の背景にあるスクウェア・エニックスの新たな挑戦を探ることができたので、その内容をお届けしよう。

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▲岡山博紀氏(写真左)と阿部雄仁氏(写真右)。

新ジャンルへの挑戦

――まず、開発に至った経緯について、お伺いできますか?

岡山博紀氏(以下、岡山) 僕がとある仕事をしているときに、部門長の北瀬(※)から「阿部といっしょに1本やってくれないか」といった話があり、任せてもらう形になりました。

その後、社長の松田と話したときに、「みんなでワイワイ、スマホで遊べるタイトルがあるといいよね」という話もあったので、“ワイワイ遊べる”ことに軸をおいて、本作を作り始めました。

※北瀬佳則氏。『FF』シリーズをはじめ、ざまざまなタイトルのディレクターやプロデューサーとして制作を統括する。

――松田社長直々のアイデアだったということですか?

岡山 ワイワイ遊べて大会もやって……といったようなイメージは持っていたようですが、この時点ではジャンルの縛りはありませんでしたね。

――最初からMOBAというわけではなかったんですね?

岡山 そうですね。この“みんなでワイワイ”というお題に対して、僕たちが出した答えがMOBAでした。

――なぜ、MOBAだったのでしょうか?

岡山 日本ではプレイ人口が少ないですが、世界で見たら、8000万人がプレイしているというキャッチーなジャンルだったからです。日本ではなじみがないことはわかってはいたのですが、それだけ人口がいるということは、おもしろいものであることは間違いない。なら、そのおもしろさをどうやったら伝えることができるか、という思いで動き出しました。

阿部雄仁氏(以下、阿部) 日本ではコアなゲーマーにしか認知されていなかったジャンルなので、ゲーム開発者の中でも、MOBAと言われてもピンとこない人が多い時期でした。そこをいかに日本に浸透させる形にできるか、というところが課題でしたね。

――具体的に、どういう部分を日本のプレイヤー向けに変えようと意識しましたか?

岡山 はじめ阿部から「1バトルどのくらいの時間にするか」といった話が出て。僕が10分と決めて、そこからバトルシステムを考えていきました。

阿部 当時、海外のMOBAタイトルの対戦などを見たときに1時間はプレイをしている状態だったので、そこをコンパクトにすること。それから、“プレイヤーが勝ち負けに関してどこまで責任を感じなくさせるか”という部分は重要視しました。

バトルシステムも、直接勝ち負けを競うのは、プレイヤーではなく大きいモンスター(リアクター)にして、勝ち負けが決まったときのヘイトの何割かをモンスターが集めるシステムにしました。

――なるほど、変わったシステムだなとは思っていましたが、そういう意味合いがあったのですね。

【リアクター同士の熱い激突】
▲最終的に勝敗を決めるのは、リアクター。

海外への挑戦

――イラストのテイストがアメコミ風に見えますが、キャラクターデザインなどは日本向けに意識したのでしょうか? 海外からの評判がよかったとお伺いしていますが。

岡山 キャラクターは完全に日本向けに作っていましたね。日本人にはアメコミ風に見えるみたいなのですが、海外の方からしたら完全にジャパニメーションに見えるので、それが刺さったようです。

じっさいに、機会があって海外の方に見せたときに、キャラクターもシステムもかなりウケがよかったんです。

――システムもですか。

岡山 海外のほうがMOBAというジャンルが根付いていて、そのジャンルが人気あることがわかっている人が多いんですよね(笑)。

ただ、時間が長いし、難しい部分も多い。食わず嫌いをしている人の母数が日本よりも圧倒的に多いんです。だからそういう人たちがライトにはじめたいMOBAとして、本作はすごくいいのではないか? という感想をいただきました。

僕たちは、どう日本向け作ろうか考えていたのですが、結果的に、海外にも刺さるのではないか、という話になりました。

海外でも人気のデザイン
▲海外からも人気のキャラクターデザイン。

目指すは世界大会の開催

――本作は海外を視野に向けても展開予定であるというお話も伺っていますが、展開時期などの予定は決まっているのでしょうか?

岡山 まずは日本先行してやっていきます。

――海外で配信される場合は、海外向けに作り直しなどはされるのでしょうか?

岡山 世界大会を開きたいので、地域に分けて調整を入れることなく、同一バージョンで配信する予定です。調整などをする場合は、地域は問わず、要望やご意見などは積極的に取り入れて、共通のバージョンアップにつなげていこうと思っています。

まずは日本のプレイヤーが増えて、意見が多数飛び交うようになればいいなと思います。

――もともと大会を開く前提で企画されたゲームなんですよね。

岡山 そうですね。なので、まずメディア対抗戦を開催させていただいたんですよ。

▼メディア対抗戦の様子はこちら!
スクエニ新作『フレイム×ブレイズ』6メディア対抗戦でひと足先に熱いバトルを体験!

そこでイメージはできたので、なるべく早めに大会の開催ができればと思っています。たとえば日本でゲーマーが集まるTGSやほかのイベントなどに合わせてオンライン予選を進め、上位の人を集めて盛り上がれるような大会を実現できたらいいなと思っています。ゲーム人口が増えて、単独イベントを開催するのが夢です。

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▲先日行われたメディア対抗戦の様子。

課金要素はお得なパック

――本作は、ガチャがないとお伺いしたのですが、課金要素はどこで発生してくるのでしょうか?

岡山 まず、1週間に1回購入できるパックです。パックの内容は、7日間全エージェント使いたい放題と、有料コインのセットです

無料で使えるプレイヤーの操作キャラクターであるエージェントは日替わりで、数名しか使えないようになっていますが、このパックを購入すると、制限なしに、好きなエージェントを使うことができるようになります。

――有料コインのほうはいかがですか?

岡山 有料コインの使いみちは大きくふたつあって、まず“カードの購入ができます。カードというのは,装備するとキャラが強くなるものです。

もうひとつの使いみちはエナジーの回復ですね。

このゲーム、1回バトルするごとにエナジーというものをBETしてもらうシステムが入っているのですが、エナジーのBETは全員で共有するので、ひとりが全BETしてもいいですし、みんなでちょっとずつ出し合ってフルBETしてもいいですしが、BET数によってバトルクリアー時にもらえる報酬量が変化しますので、フルBETが推奨です。

――エナジーの回復手段というのは?

岡山 基本は定時回復ですが、有料コインで一気にエナジーを回復されることができます。また、エナジーを回復させるために、広告動画を見るという選択肢も用意しております。

広告動画への挑戦

――広告動画を入れる、というのはスクウェア・エニックスのような大手企業のゲームだと珍しいように感じるのですが。

岡山 このあたりはプラットフォーマーさんから、やったほうがいいという提案がありました。自社でこの仕組みを内部に組み込んだアプリはあまりないのですが、僕らとしてはドンドンやっていこうかなと。

サーバーに負荷をかけながら運営していくゲームなので、ぜひ、みなさまにお願いなのですが、動画を見ていただけると、Win-Winになれるのではと思っています(笑)。

――プラットフォーマー側も、本作の課金部分は気にされていたのでしょうか?

岡山 そうですね。そもそも海外でMOBAが成功につながっている理由は、プレイ人口が多いからなんです。しかし、日本国内のみでその人口は獲得できるものではありません。

どうやってビジネスとして成立させるかというのは、本プロジェクトがはじまったときからの課題でしたね。プラットフォーマーさんからは、海外では動画に誘導するといったことは積極的にやっていることを教えてもらいまして、踏み込んでみました。

この動画広告に関しても、先ほどのパック販売に関しても、課金部分では我々としてはかなりのチャレンジをしているのではないかと思っています。

業界全体で見ても、ガチャが売り上げの多くを占めている以上、ほかの課金方法には怖くて手が出せない。本作を通して、別のやりかたもあるということを示すことが、我々の使命なのかもしれません。勝手に、そう思っているだけですが(笑)。

観戦してもわかりやすいバトルに

――ゲーム部分についてお伺いします。プレイヤーが操作するエージェントには、パワースタイル、ランナースタイルなどという形で、属性のようなものがあるようなのですが、これで極端に差がつくのでしょうか?

阿部 基本的には、最初にエージェントの設定をするときに、スタイルの有利、不利の差はつけているのですが、そこからエージェントごとにステータスをアレンジをしているので、単純なグー、チョキ、パーのような関係ではなく、グーに対してある程度抵抗できるチョキもあると思っていただければと思います。

――スタイルチェンジすることで、戦いかたが変化するんですよね。

阿部 はい。他のMOBAタイトルには、ゲーム中に買い物をし、買ったもので属性を変化させるような仕組みがあります。

ただ、10分間という短いバトル時間に、それをそのまま導入するのは難しいので、ひとりのキャラでふたつの属性を持ち変更できる、スタイルチェンジという形で実現しました。

――バトルで何が行われたのかが、とてもわかりやすいですよね。

阿部 そうですね。初めてMOBAの動画を見たときに、プレイヤーたちが何をしているのか、理解できなかったんですよ。なので、何かを切り換えたことが、見てわかるようにしたほうがいいなと思いました。

岡山 見た目が変わるとプレイヤーのテンションも上がりますし、対戦相手もその変化をみて対策をとりやすいのではないかと思います。ふたつのモデルを作るので製作のコストはかかりましたが、プレイヤーはもちろん、大会を見に来た人たちが、いま、何が変わったのかというのことがはっきりわかるようにもなったと思います。

スタイルチェンジ【フィールド】
▲スタイルチェンジをすることで、戦いかたが変わる。
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▲エージェントによっては、スタイルチェンジで見た目もまったく変わるものも。

――確かに、プレイを傍から見て、何をしているのかよくわからないゲームは手を出しにくいですよね。

岡山 そうなんです。たとえば格闘ゲームは見ている人にわかりやすいから、自分がプレイしていなくても観戦しているだけで楽しいじゃないですか。見て、おもしろそうだからやりたいと思ってくれる人もいるでしょうし、スタイルチェンジはいいアイデアだったと思います。

――モンスターを倒して、ひきつれて戦わせるという部分も、独特ですよね。

阿部 本作はスマートフォンで遊ぶなので、環境によってどうしても通信速度が遅くなるなど、対戦に支障が出てくる可能性があります。なので、モンスターがある程度勝手に動けば、たとえラグが激しくても、ユーザーの行動をいくらかはカバーしてくれるんですよね。

それに、僕が下手なプレイヤーだったら「モンスターを操るだけでなんとかならないだろうか」と考えると思うんです。対プレイヤー戦が苦手でも、モンスター狩りをがんばることで、チームに貢献できているのかもしれないという考えもありました。

 

フレブレ_モンスターを仲間に
▲モンスターを引き連れて戦おう!

クローズドβをやってみて

――クローズドβテスト、ユーザーからの反応はいかがでしたか?

岡山 いろいろでしたね。ランクマッチしかプレイできないようにしたのですが、その結果、「対戦が怖い」というコメントや、「こういうゲームを待っていた」みたいなのもいただきました。

阿部 クローズドβテストでは、3VS3の6人対戦をローカルで検証して確認するのが難しかったんです。なので、オンラインに限定して、調整の指針にさせていただこうという目的がありました。

――クローズドβテストを受けて、修正予定の個所はありますか?

岡山 モンスターのコボルは固定ダメージなので、ダウン前のリアクターにも一定のダメージが通るし、数が多ければ多いほど有利になる強いモンスターなんですが、そのことが伝わらなかったですね。

阿部 仲間にした際のモンスターがリアクターに与えるダメージをわりと大きく設定していますが、数字が大量に表示されると画面がゴチャつきそうだったので、味方モンスターが与えるダメージ数値は消していました。

そこをいま、モンスターごとに役割がわかるよう、修正を加えている段階です。連れて歩くモンスターのダメージはすべて表示されるようにも修正しています。

コボルとキングコボル
▲キングコボル(左)とコボル(右)。

配信後のスケジュール

――エージェントは配信時に何キャラクター使えるのでしょうか?

阿部 12キャラクターの予定です。そのあと、配信日程の翌月にはメディア対抗戦でお見せしたエージェントを追加予定で、現在制作中です。

岡山 配信後に追加予定のアサシンはスタイルチェンジすると姿がガラッと変わるんですよ。

阿部 武器を持っていなくても戦えるようなイメージで作ったので、いつも連れている影を使用して戦います。アサシンのつぎもイメージは出来上がっているので、月1体ぐらいのペースで追加できればいいなと思っています。

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▲メディアの対抗戦でお披露目となったアサシン。

――バージョンアップに関しては、何か予定はありますか?

阿部 バランス調整は対戦ものなので細かく実施していく予定です。エージェント追加に合わせて、月1ペースでバランス調整はしていきたいですね。大きいバージョンアップは、今後運営していきながら考えられればと思います。

――ありがとうございます。最後におふたりから、読者の方に向けてメッセージをいただけますでしょうか。

阿部 メディア対抗戦を見て、誰かしら何かしらの役割で戦えるゲームになっていることを感じましたので、まずは気負わず、負けてもいいからやってみようという感覚で遊んでいただければいいなと思っています。

岡山 僕はこのゲームのいちばん楽しい遊びかたは、友だちとのプライベートバトルだと思います。学生の方はお昼休みに、大人の方は飲みの席でプレイされたりといった形で、スマホを持ち寄って、ちょっとした時間でワイワイ遊んでもらえれば嬉しいです。ぜひ、食わず嫌いせずに遊んでもらえたらと思います。

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フレイム×ブレイズ

ジャンル
アクション
メーカー
スクウェア・エニックス
配信日
2017年配信予定
価格
無料(アイテム課金制)
対応機種
iOS/Android

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