【独占】『Ingress』世界設定に関わるラザ・アハメド氏がXMに秘められた謎を明かす

2017-01-31 14:15 投稿

『Ingress』が100倍楽しくなるXMの秘密

新ポケモンの登場にますます盛り上がりを見せるナイアンテック社(以下、NIA)の『ポケモンGO』。同社が配信する『Ingress』は、その基盤ともなった位置情報ゲームだ。

本作には、エキゾチックマター(以下、XM)と呼ばれ、アイテムなどにも含まれている謎のエネルギーが存在。レジスタンスとエンライテンドふたつの陣営は、そのおもな発生源であるポータルを巡って日夜さまざまな活動をしている。その一方、XMについてはいまだ謎が多く、エージェントにどのような効果を与えているのかあいまいな部分もある。

そこで、『Ingress』大好きライターの深津庵が、本作の世界設定やストーリーに関わるNIAの重要人物ラザ・アハメド氏に、XMの存在と効果について直接伺ってきた。

これは著者が個人的に許された独占インタビューである。

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▲ラザ・アハメド氏。

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XMの捉えかたから陣営カラーの意味に迫る

──レジスタンスの青、エンライテンドの緑。なぜどちらも寒色系なのでしょう?

ラザ・アハメド(以下、ラザ) たとえば暖色系の赤からは何か危険なもの、我々は「ダークエキゾチックマター」と呼んでいますが、そうしたものを連想します。しかし、一方のXMにはさまざまな可能性が秘められている。そう考えて対になる寒色系になったのだと思います。また、XMとは電波、周波数のようなもので何らかのコードが含まれていると考えられています。太陽光が7色にみえるのと同じで、XMに含まれている光りの中から、レジスタンスに導かれたエージェントには青、エンライテンドは緑の周波数を受け取ったというわけです。

──寒色系でありながら世界になくてはならない暖かく自然を感じさせるものですね。

ラザ その通りです。正しい答えはいまだ不明ですが、青空や大地を連想させるカラーを選んだのには大きな意味があるのかも知れません。

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▲当日はNIAアジア統括マーケティングマネージャーである須賀健人氏も同伴。過密スケジュールの中、深津のためにこの場をセッティングしてくれたことに感謝。

──そんなXMのおもな発生源であるポータル。これに触れることを「ハック」と呼ぶのもコードが影響している?

ラザ そうですね。『Ingress』に登場するものは、すべてXMによってプログラムのようにコーディングされています。我々はスキャナ(スマートフォン)というテクノロジーを使い、多数のコードの中から特定のものを引き出しているのです。そうしたアクションからハックと呼ぶようになりました。

──ポータルを奪い合う際、最大レゾネーターを8本設置しますが、この数に意味はあるのでしょうか?

ラザ レゾネーターとは増幅器であり、XMを発生させているポータルを崩壊させず安定させるのに適した数である、というのが現在の結果なのです。たとえば、バイナリコードも8文字で表しますし、この世界における8という数字には大きな意味があると考えています。

──ストーリーの発端を描く書籍の中に登場する、XM研究に関わるメンバーの数にも意味があるのでしょうか?

ラザ それはすばらしい観察力です、何か重要な意味があるのかも知れません。

コミュニティの輪はXMが自然とつなぐもの

──近年の多人数型ゲームにはギルドやフレンド機能といったコミュニケーションツールがありますが、本作に実装しなかったのはなぜでしょう?

ラザ XMはスキャナの中だけでなく世界中どこにでも存在します。スキャナはXMに触れるひとつのテクノロジーであり、すべてではありません。現実世界でもXMを巡る戦いをくり返し、その過程で地域間のコミュニティが自然と発生、東北復興イベント“レッドファクション”(献血を行い日本赤十字社を支援する試み)など、さまざまなアクションが自発的に起こっていますよね。

──ミッションデイ(スタンプラリーのようなもの)や、ファーストサタデー(初心者育成イベント)も、そのひとつですね。

ラザ そうですよね、我々がギルドのようなものを用意せずとも、エージェントたちはそうやって輪を広げていけると考えたわけです。スキャナを介して、また自然の中でXMに触れることができる人は特別な存在。そうしたセンシティブな皆さんが引かれ合うのも自然なことなのです。

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▲ポータルとはおもに歴史的な場所、アートや彫像、隠れたスポットなどに設置されている。本作をプレイ中、それら対象物がポータルにみえてしまう現象を「XMが見えた」と言うことがある。そうした感覚が強いエージェントもまた、センシティブの高い存在なのだとラザ氏。

ふたりの主導者がもたらした特殊アイテムの経緯

──本作には攻撃アイテムのひとつに、ADAリファクターとジャービスウィルス、同じ効果を持つアイテムなのに名称の異なるものがありますが?

ラザ XM研究者でありエンライテンドの主導者だったローランド・ジャービスがもともとの発端なのです。彼の思念体がポータルネットワークの中をさまよい、その過程でレジスタンスのポータルをエンライテンドのものに変換する方法を発見しました。

──作中、“啓示の夜”と呼ばれる大事件で大量のXMを浴びた彼が死後、その身を13の思念体に変え、ポータルネットワークに移したという話でしたね。

ラザ はい、そのあいだに発見したわけです。一方、レジスタンスの主導者であり人工知能のADAは、そうした手法を発見したジャービスを分析し、それ同等の効果を発揮するすものを発見。その後、改良を加えてリファクトするに至ったことからくる名称なのです。

──ストーリーの流れ、順番を追うと理解できますね。ちなみに、スキャナはナイアンティック計画(XMを研究する作中に登場する計画であり、人工知能ADAの開発もその中で行われた)によって作られたものですよね。

ラザ はい、それをジャービスがハッキング、ポータルの中で思念体となった彼がスキャナの中に入りこみ、改造してエンライテンド用のものを生み出した。そうした経緯から、スキャナはレジスタンスとエンライテンド、両陣営が使えるようになったのです。

──ADAリファクターとジャービスウィルス、青と緑の異なるXMを放って見えるのは、エージェントの感覚が鋭敏に、つまりセンシティブな存在であるということ?

ラザ その通りです。レジスタンスはADAに近い存在だからリファクターが青く見え、エンライテンドはジャービスに近いからウィルスが緑に見えるというわけです。

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▲これが問題のジャービスウィルスとADAリファクター。いずれも敵陣営が所持するポータルを、たった1発で反転させる恐ろしいアイテムだ。

両陣営が危険視するナジーアって何者なの?

──ストア(有料アイテムページ)に並ぶキーロッカーなどに使われ、ジャービスを分解までさせたもうひとつのエネルギー、赤く光るカオティックマター(以下、CMU)。ダークエキゾチックマターとも呼ばれるこれは危険なものであり、ひとの精神に影響を与え、突然変異を引き起こす可能性もあるということですが、持ち歩いていて問題はないのでしょうか?

ラザ じつは、キーロッカーに限らず、すべてのものに少量のCMUが含まれているのです。ポータルを破壊したとき一瞬だけ赤い光が放たれますよね。あれもCMUが影響しているのかも知れません。

──そういえば赤いですね、一瞬ではありますがかなりの量に感じますが?

ラザ ちょっと心配になりますよね。精神に影響を与えるというのは皆さんご存じの通り、CMUを含むXMはつねに危険なものなので取り扱いには注意してください。

──ポータルの破壊すると気持ちいいと感じる気持ちはもしかすると!?

ラザ 内なる衝動がXMによって溢れているのかもしれませんよ!!

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▲ストアで入手できるアイテムに見られる赤い光。さらに、ポータル破壊時に放たれる光、いずれもカオティックマターであるとラザ氏。通常アイテムに含まれるXMが紫色に見えるのは、CMUが混ざっているからなのだ。

──これまで“オブシディアンシールド”“イージスシールド”、アーティファクトを巡るXMアノマリーが国内では浜松と東京で開催されました。そのすべてに、Nzeer(以下、ナジーア)の召喚と阻止、両陣営の思惑が関わっていますが、来るぞ来るぞと言われながら姿のみえないナジーアとは、どのような存在なのでしょうか?

ラザ まず、オブシディアンとイージス、これは同じシールドを指していますが、このアーティファクトはエンライテンドによって破壊されました。その結果、ナジーアを含む多次元のものがXMを介して人類社会に来てしまうようになったのです。

──両陣営が恐れる力を持つナジーア、それ同等のものが複数存在すると?

ラザ はい、多次元から介入できる危険な状態だとわかってます。

──エージェントのあいだナジーア=ドラゴンというイメージが強いのですが?

ラザ ドラゴンの形状は、ジャービスが発見したドキュメントに描かれていたもので、それはあくまでも捉えかたのひとつなのです。XMとは何千年も前から人類社会とともにあったもので、その時代、そのひとごとにナジーアの感じかたは異なると考えられています。もしもいま、ナジーアを感じた人がいれば、それをドラゴンとは違った表現をするかもしれませんよ。

 
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アイテムのサイズは量子レベルで捉えるべき!!

──アイテムを最大100個まで収納できるカプセル。とても便利なものですが、大量のアイテムをどのように収めているのか。そもそもアイテムの原寸サイズも気になります。

ラザ XMに関する話題の中で私がたとえたコード、これはDNAみたいなものです。人間もDNAによって構成され、ひとという形を作りあげていますよね。これはひとつの説で最終結果ではありませんが、カプセルは人間をDNAの状態まで還元するようなもの、我々は現在そう考えています。

──量子レベルでアイテムを保管している?

ラザ はい、そう考えるにはふたつの理由があります。ひとつは、このXMによる量子的なレベルで起こっていることなので、もともとがとても小さな存在であるという説。もうひとつは、最古のポータルであるサインフランシスコのリンコンパークにある“キューピット・スパン”のような、巨大なポータルを増幅、レゾネイトするにはそれ同等の巨大なレゾネーターが必要かも知れないということです。

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スウェーデン生まれのアーティスト、クレス・オルデンバーグ、オランダ生まれのアーティスト、コーシャ・ヴァン・ブリュッゲンによる作品。以前、このポータルに何かが隠されていると話題になり、対象をハックして得た画像を解析した結果、次期XMアノマリーに関する情報を得ることができた。

──サイズの概念を語るのはナンセンスだと?

ラザ その通りです、サイズというのはこの世界において大きな意味を持たないのです。我々は3次元の世界に住んでいますが、XMの世界は必ずしもそうではなく4次元、5次元、さらに異なるものかもしれないのです。人間が認識できない次元の出来事なので、どんなサイズでも、それはセンシティブな皆さんの感じかた次第。他次元であればみる角度でサイズは変化する可能性があるというわけです。

──スキャナでみている世界こそ、4次元の入り口かもしれないのですね。

ラザ 私もそう感じています。たとえば、テレビ画面の中にあるひとつの点、ピクセルを思い浮かべてください。ある番組ではそれが赤い点でも、チャンネルを切り換えれば青や緑、どんな色にでも変化しますよね。我々が見ているスキャナはその1点にすぎない。いろいろな可能性をXMに触れ、スキャナを介して感じているというわけです。

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▲最大100個のアイテムを収納できる便利な箱。某〇型ロボットのポケットのようなイメージを持っていたのだけど、さらにかっこいい仕組みであることが判明。本作を使った2次創作をする皆さん、どんなサイズでもOKってことですよ!!

物語を作り伝えることの意味

──XMアノマリーの勝敗によって変化するストーリーですが、毎回両方のシナリオを事前に用意しているのでしょうか?

ラザ 大きなビジョン、勝敗によってどのような展開になるのか、両方の派生をつねに俯瞰で、とても広い視野で考えています。ただし、細かなディテールに関しては勝敗が決まってから決定していますね。

──スザンナモイヤー(さまざまな動きを伝えるキャスターのような存在)が本ストーリーから離脱という噂がSNSなどで話題になっています。これは、次期XMアノマリーに向けての動きなのかその真相が知りたいです。

ラザ 彼女は“テクトゥルフ”に吸収されてしまったのです。

──前々回のXMアノマリー“ヴィアラックス”(国内では瀬戸内)の最終戦で表ざたになった文献(太古の機械や召喚の儀式などが書かれていたとされるもの)に関わることでしょうか?

ラザ その通りです。テクトゥルフに何が記されているのか。彼女の失踪と文献の真実にどのような関りがあるのか。XMアノマリーをはじめとするさまざまなアクションが、人類の未来をどのように動かしていくのかは誰にも予測がつきませんね

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──ストーリーを構築するうえで心がけてることは?

ラザ ストーリーは複数のメンバーで考えています。その中にジョン・ハンケ(NIA CEO)、フリント・ディル(脚本家)などがいまして、ジョンはテクノロジーフリントはファンタジー、そして私はサイファイやアニメが大好きでした。そうしたメンバーが集まり、得意なジャンル、興味を足し合わせて完成したのが『Ingress』のストーリーなのです。

──ちなみに、ラザが好きなアニメーションは?

ラザ 『AKIRA』と『もののけ姫』。後、『攻殻機動隊』も好きです。ほかにもたくさんありますが、宮崎駿監督の作品は全部観ていますよ。そうだ、『カウボーイビバップ』もお気に入りですね。

──いいですね、じっくり語り合いたいところですが、グッと堪えて……。最後にひとつ、シナリオライターを目指したきっかけは?

ラザ 人間社会が進歩していく中で、それぞれが自分の中に持っているストーリーをお互いに共有することは、とても大きな意味を持っていると考えています。私はその1部を担いたかったのです。伝えることで新しい発見をしてもらい、何かを感じてもらいたかった。人はいいストーリーに触れればより違ったものを感じ、見ることができます。それはとてもパワフルなもので、私もそのきっかけを与えたかったのが大きな理由ですね。

──最近の作品は似たようなコンセプトのものが多く刺激がありません。同じ道を志す人にとって、これは大きなメッセージになると思います。今回はありがとうございました!!

ラザ 今後どのような展開になるのか、それはセンシティブな皆さんの活躍にかかっています。XMが導く未来をともに歩んでいきましょう!!

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P.N.深津庵(撮影協力:あしたづひむ)
※深津庵のTwitterはこちら

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ジャンル
オンライン位置情報ゲーム
メーカー
Niantic, Inc.
配信日
配信中
価格
無料(ゲーム内課金あり)
対応機種
iOS/Android

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