スクエニ新作『グランマルシェの迷宮』の“料理がテーマの作品ならでは”の話をキーマンに訊いた

2016-09-06 13:00 投稿

“料理”ならではのこだわりが随所に!

スクウェア・エニックス期待の新作ダンジョンRPG『グランマルシェの迷宮』は、2016年9月8日配信予定となっている。本作は、料理をテーマに扱ったユニークな作品となっており、いまもっともリリースが待ち遠しい1本だ。そこで今回は、『グランマルシェの迷宮』の魅力をさらに探るため、開発者インタビューを決行。

ゲーム誕生のきっかけや、料理を扱った作品ならではのおもしろエピソード、キャラクターデザインの秘密、気になる配信時期など、多岐にわたってガッツリとお話を伺ってきた。配信開始までのあいだ、本記事を読みながら待機してほしい。

▼『グランマルシェの迷宮』って?
作って食べて強くなれ!胃袋に訴えかけるスクエニの新感覚ダンジョンRPG『グランマルシェの迷宮』

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間一朗氏
(写真左。文中では間)

スクウェア・エニックスプロデューサー。『FF ブリゲイド』、『FF レコードキーパー』、『シアトリズム』シリーズなど、多数の作品を手掛ける。

鈴井匡伸氏
(写真右。文中では鈴井)

本作の開発ディレクターを担当する。インディーズゼロ代表取締役。スクウェア・エニックスとタッグを組んで『シアトリズム』シリーズなどの開発に携わっている。ほか、代表作に『しゃべる!DSお料理ナビ』などがある。

Excelで作ったゲームを会議の時間にこっそり?

――まずは本作の内容を改めて教えてください。

鈴井 “料理”をテーマにしたダンジョンクリアー型のRPGで、料理冒険家となって迷宮を探索しながら食材を集めて、その集めた食材で料理を作って食べるとキャラクターが成長するというゲームになっています。

間 ゲームの作り自体はダンジョンの攻略要素とか、食事でのレベルアップ部分も含めて少し特色はありますが、わかりやすく作っているので遊んでいて迷うことはないと思います。それこそ、モバイルゲームの黎明期に出ていたゲームみたいに気軽に遊べるんじゃないでしょうか。

鈴井 時間制限などもなく1手ずつ進められるので焦ることもないですし、逆に考えて遊ぶ人にはどこまでも考えられるようになっています。いつでも中断できるので、隙間時間にちょっと遊んでいただくこともできますね。

▼もっと詳しくゲーム内容を知りたい方はこちら!
作って食べて強くなれ!胃袋に訴えかけるスクエニの新感覚ダンジョンRPG『グランマルシェの迷宮』

 

――本作を作ることになったきっかけは?

鈴井 『シアトリズム』シリーズの制作が終盤に差しかかったころに、本作でチーフプランナーをやっている人間が、Excelでゲームを作ったんですよ。「間さん、これExcelで作ったんで会議中でもできますよ」って(笑)。

間 「えー、会議中でもできるんだ!」って食いついちゃいまして。なんか、会議の時間が隙間時間みたいな言いかたですけど(笑)。

――(笑)。それで、そのExcelで作ったゲームというのが?

鈴井 パネルを消してダンジョンを攻略していく、まさに『グランマルシェの迷宮』の原型となるプロトタイプのゲームですね。最初は間さん、「ふーん」くらいの感じだったんですけど、つぎに連絡をもらったときに、「俺いま40階で苦労しているんだけど、攻略はこれで正しいの?」みたいなことを言っていて。

間 そんなこともあったね(笑)。

鈴井 そういう攻略の話を会議の合間にしていて、そのうちにぜひこれを商品として形にしていきたいと思うようになりました。それで、改めて企画提案させてください、という流れですね。

間 鈴井さんのところはモバイルの基本無料型のゲームを作ったことがなかったので、チャレンジしたいというのがありましたし、僕らのタイミング的にもうまく合った感じですね。

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▲本作の基本はパズルゲーム。パネルを消して下層への階段を見つけ、どんどん深い階層に潜っていくことが目的となる。

――まさか、スタートがExcelで作ったゲームとは驚きです。しかし、なぜそのプロトタイプに“食”というテーマを結びつけたのですか?

鈴井 ゲーム内で、皮や石などの素材を集めるのっていまいちテンションが上がらないので、もっと別のことをしたほうが楽しいんじゃないかと考えたんです。もともとインディーズゼロでは『しゃべる!DSお料理ナビ』などを作っていたので、料理に対しての知見もありましたし、僕らならではの魅せ方をしたいという思いもありました。

おいしいものを食べるとみんなうれしくなるのはわかっているので、冒険の中で作って食べて強くなっていくサイクルは楽しいんじゃないかと。スマホを使う時間って朝昼晩の食事の時間だったりもするので、「今晩これ食べよう」みたいな話につながっていったらいいなというイメージもありました。

お皿では勝負しないでください

――料理のイラストがものすごくおいしそうですよね。

いちごのムース貝のバター焼き枝豆のポタージュ
▲見てるだけでヨダレが出てくるような、料理のイラスト。

鈴井 そこにはこだわりました。僕たちが最初に苦戦したところが、いかに料理を美味しそうに見せるかという部分です。実写で描き過ぎてもダメだし、イラスト然としていても美味しさが見えない。どのくらいの絵の感じがいいのか、いろいろなデザイナーに描いてもらって何度も試行錯誤しました。

モンスターから食材が手に入るので、“モンスターらしさをどう表現するか”という問題もありました。当初はモンスターらしいシルエットが入っているようなデザインにしていたのですが、気持ち悪くて食べたくならないんですよ(笑)。すごく時間をかけたんですけど、結論としては“見た目が美味しそうなイラストにしよう”という、当たり前のところにたどり着きましたね。

間 設定や世界観を優先して、奇抜な“ドラゴンナマズの何とか丼”みたいにすれば、オリジナリティがあってデザインとしてはかっこよく描けるんですけど、「食べたいか?」というと、「いやちょっと……」となるんですよね。だったら、食べたくなるものにしましょう、と。

鈴井 シンプルに美味しさを描くのってとても難しいんです。お皿で雰囲気を整えてしまうデザイナーさんもけっこういらっしゃったので、「お皿では勝負しないでください」と禁止したこともありました。あくまで料理が引き立つようにということで、すごくシンプルな食器を希望して、最終的にお皿も装飾感のないデザインになっていきましたね。

実際に料理の撮影に関わったことがあって、そのときも食器はあまり引き立たないようにしていたのですが、いまになってそれがすごく納得いきました。

作って食べて強くなれ!胃袋に訴えかけるスクエニの新感覚ダンジョンRPG『グランマルシェの迷宮』

――言われてみると、なるほど、と思いますね。

鈴井 余談ですが、モンスターのデザインを決める際もすごく試行錯誤しました。モンスターがグロテスクで生々しくなるほど、それが料理になったときのことを想像してしまう。お客さんに殺生を感じさせない、自然なモンスターにしてほしいと言われましたね。

間 逆にあまりにかわいらしいと「この子殺して食べちゃうの!?」みたいになって料理を食べないだろうと。ただ、“エダマメコトリ”というモンスターは枝豆がついているようなデザインになっているのですが、そのように部分的に食材のようになっているモンスターも多いので、必ずしも殺生をしているというイメージでもないですね。

鈴井 そういう事情もあってモンスターデザインは、かっこいいとかかわいいで決められなかったので、落としどころを考えるのがたいへんでした。食べ物を扱うのって難しいんだなと身に沁みた1年間でしたね。

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▲殺生を感じさせないように苦労した、モンスターのイラスト。

――今回、キャラクターデザイナーに、スクウェア・エニックスの板鼻利幸氏を起用された理由は?

鈴井 料理であったり食材であったり、モンスターはこういう方向でいきたいということが見えてきた中で、本作の雰囲気といちばんマッチするのは板鼻さんだろうと思いました。男性にも女性にも響きやすいデザインですし。

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▲本作のキャラクターデザイナーはスクウェア・エニックスの人気デザイナー板鼻氏。『チョコボの不思議なダンジョン』シリーズや『ファイナルファンタジー クリスタルクロニクル』シリーズなどのデザインに携わってきた。

――手描き感のあるタッチがいいですね。料理冒険家たちが持っているのは……?

鈴井 料理冒険家たちが持っているのは調理器具モチーフの武器ですね。コショウを入れるペッパーミルやフライ返しなどです。服装もコックコートだとか、料理人の服装に民族衣装が混ざったようなデザインにしていて、キャラクターデザインにもキチンと料理要素を入れました。

間 ふつうに絵を描いてもらって納品して終わりというような付き合い方ではなく、世界観から作り上げてくださるし、安心してお任せできるデザイナーさんです。

鈴井 いまでは板鼻さんには、アニメ監修などにもガッツリ巻き込んでしまって。昼夜を問わず、申し訳ございませんという気分です。ほかにも音についてやり取りをしていて(笑)。

――音ですか?

鈴井 効果音をキャラデザの方に見ていただくのも不思議なのですけど、「夜寝る前に遊ぶときはマイルドな効果音のほうが気持ちよくやれるので、アタックが強いところを少し下げませんか」みたいに具体的に意見をいただいて。僕らも実際にそう思ったので変えていきました。ほかにも「ここのパネルの破片はもう少し形を強くしましょう」という意見をいただいたり、世界観全体を大事に見てくださっていてうれしいですね。

――効果音についてお話が出ましたが、BGMはどういう風に作っているのですか?

鈴井 今回、サウンドは『シアトリズム』シリーズなどでも担当していただいたTTSプロダクツさんにお願いしています。テンポが早いとつぎの手を考えているときに慌ててしまうので、落ち着いた曲で遊べるようにしたくて、環境音っぽい始まりかたにしてほしい、とオーダーしました。

世界観が見えてからはTTSさんもノリノリになってきて、「ここは生音で再収録したいです」と提案されて驚いたり(笑)。気づいたらいろいろなところが生音に切り替わってリマスターされていましたね。聴き甲斐のあるいい曲に仕上がったし、効果音もステキな感じになっていると思います。クローズドβテストの感想でも、iTunesで出してくれというような意見もありました。

――クローズドβテストでは、プレイヤーからほかにどんな反応があったのでしょうか?

鈴井 感想はいろいろありまして、もっとタッチする回数を減らしてほしい、指が疲れた、などのきびしい意見もいただきました。その結果、オート取得やタッチ回数を減らす施策を導入しています。我々現場としてもすごく迷ってチョイスした部分なのですが、いまのスマホのニーズ的にもっとタッチが少ないほうがいいというご意見が多く、かなり調整させていただきました。

――一気にパネルを消せるようになったんですね。

間 そうですね。階段をタッチしたときに、装備品や食材など手に入るものが残っている場合はすべて手に入るようにも変更されています。ですから遊び勝手の部分は、すごく変わっていると思います。

鈴井 難易度についてもご意見をいただきました。簡単過ぎるということが行間から読み取れたので少し難度を上げましたのですが、「ちょっと難しくない?」となったので、いま、また少し調整しています。もちろん、キャラクターのスキルによって違いはあるのですが、手応えがなければ飽きてしまうし、かと言ってあり過ぎても壁になってしまうし、難しいですね。

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オーダーは“慢心で死にたい”

――バトルシステムも、スキルの組み合わせなど、かなり奥深そうですが?

鈴井 カードゲーム的なデッキ構成や、キャラの並び順での遊びはものすごくこだわって作っています。

――必殺技のチャージなどは、並びの位置が大事ですよね。

鈴井 大事ですね。あるキャラの攻撃スキルを多用して進みたいと考えてたら、そのキャラの横にチャージ力を高めるスキルを持つキャラを配置します。そうすることで、攻撃スキルに特化したデッキにすることができます。このように、スキルの関係性に気づいて考え始めると、「有利な組み合わせがいろいろあるんじゃないか」と思えるはずです。

たとえば、パネルを連続で消してコンボをギリギリまで増やした後、“コンボを6チャージ”するスキルを使い、さらに“コンボを2倍にする”スキルを使います。そのうえで敵を倒せば、大量に経験値を獲得して序盤から一気にキャラのレベルを上げることが可能です。

もっと特化したければ、同じキャラをデッキに入れるのも手です。本作は同一キャラを5人まで入れられるので、より戦略を特化させられます。ただそうすると特化しすぎて別の側面を補えなくなってしまうので、それをどうフォローするかなどを考えながら遊んでいただくことになりますね。

――確かにカードゲームのような……。

鈴井 デッキコストもないし、スタミナもないし、かなり縛りを取っ払ってあるので、いちばんやりたい戦略をとってもらえると思います。

間 そうですね。いいキャラを引いたら、どんどんデッキに組み込んでいただくという感じですね。

鈴井 キャラをたくさん集めれば集めるほどいろいろな戦略が可能になると思います。「これ無理じゃない?」という状況の中で、いま持っているアイテムを使ってどうやって乗り越えていくか、というところがダンジョン攻略の楽しさになっています。「こんな攻略法もあるよね」というのをみんなで話し合って遊んでほしいです。

間 ダンジョンの制作をお願いするときに、「慢心で死にたい。超余裕って思っていたら、これやばくない? って思い、気付くと絶望している」みたいな死にかたをしたいって話をしたんです。

鈴井 そういうオーダーでしたね(笑)。

 やられたときに、自分が悪かったんだった思えるようにしたい。何が悪かったのかということを考えて、「こういうやり方だったら突破できたな」というようなコンシューマー的な思考をお客さんにしてもらえたらいいなと思いますね。

鈴井 チャレンジダンジョンという50階層の難しいコンテンツがあるのですが、これはあの手この手を駆使しながら最奥を目指すというものです。最初に気軽に遊べると言っていて、入り口に関してはまったくその通りなのですが、やり込むとコンシューマーゲームみたいな深い駆け引きみたいなものもしっかりと確保してあります。

――なるほど。しかし、これはプレイヤーの性格が出そうですね。

 相当、出るでしょうね。キャラクターのチョイスも含めて。

鈴井 間さんは“ソウルを5得る”とか、そういうスキルが好きですよね。

 好き好き。それでとにかく前半にパワーアップして有利な状況で抜け切っちゃうみたいな戦略をよく使いますね。

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IPタイトルとの違い

――間さんはIPタイトルを担当されることが多いイメージですが、今回オリジナル作品にチャレンジしてみてどうでしたか?

 それはもう、全然違いますね。『FF』や『ドラクエ』のシリーズであれば最初から共通言語があるので、何かを説明しなきゃならいときでもすぐに伝わるんですよ。『シアトリズム』みたいな切り取りかたをしたゲームであっても、「この曲が好き」って言えばすぐにその音楽が思い浮かぶじゃないですか。でも今回は共通言語がないので、そこが大きく違いますね。ある意味、“料理”が共通言語ではありますが、どの料理でどのくらいレベルアップするとかわからないですし。

ただ、欲張った言いかたをするなら、まだ色の付いていないタイトルのほうが、より多くの方に対して最初から勝負ができるのかなという思いがあります。

鈴井 新しいタイトルというところの難しさは現場にもありました。ディレクターとプロデューサー、現場と、みんな違うイメージを持っていますので。ただ、キーワードやプロトタイプのおかげで、ゲームデザインとして目指したいものはわりと早いうちに見えたので、うまくいい形にできたと思います。

 いままで自分が見てきたモバイルゲームの中でも、初手からかなり丁寧にできているんですよ。先々まで作ってあるので、食い尽くして遊ぶところがないという状況にはならないのではないかと考えています。

これはアーケード版の『ディシディアFF』をやっているときから話していることなんですが、最近はバージョンアップで「後から入れればいい」と考えてしまう部分がありますよね。でもそれは本気でダメだなと思うようになったんです。ですから、最初からボリュームを用意しておきたかったというのがありました。

作って食べて強くなれ!胃袋に訴えかけるスクエニの新感覚ダンジョンRPG『グランマルシェの迷宮』

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鈴井 僕らもコンシューマーゲーム的な準備をした感じはあります。最初から13エリア遊べたり、難易度もノーマルとハードが用意してあったり、チャレンジダンジョンやランキングも最初から導入していて、用意できるものはすべて詰め込んであります。オリジナル作品を立ち上げて新しい提案をする中では、本当に一通りのものを最初から用意できたと思います。

 そうだね。バージョンアップという言葉をすごく都合よく取ってしまっていたところがあって、本当はそうじゃないというのを、いまもの凄く強く感じますね。ですから、初手の準備と計画が重要だなと改めて思いました。そういうものも含めて今回、我々はこのタイトルを超丁寧に作り上げられたなんじゃないかと思います。もちろん、受け入れていただけるかいただけないかというのも大事ではありますが、このタイトルを我々は胸を張って送り出すことができます。

 

――では、最後に読者へのメッセージをお願いします。

 インディーズゼロとは付き合いが長くて、我々のこともよく知っていてくれて、お互い気心もしれている。自分が話をできるメンバーの中でも最高の人間たちといっしょに仕事ができています。いままで彼と組んで作ってきたゲームがおもしろかったように、今回のこのタイトルも間違いなくおもしろいものになります。「どうせスマホだろう」と思っているお客さんにこそ遊んでもらいたいタイトルです。コンシューマー好きの方でも絶対満足いただけるものになっているはずなので、ぜひ遊んでみてください。

鈴井 入り口は簡単で見た目も複雑ではないようになっていますが、その実、深くも遊べる要素も盛り込んだ内容になっています。ですので、そういう部分も気づいてもらえるくらいまで遊んでもらえるとうれしいです。板鼻さんのイラストを始め、見た目とか音楽とかも含めて雰囲気もすごくいいので、できれば音を出して遊んでいただけたらないとと思っています。ぜひいちど手に取って遊んでみてください。

鈴井 よろしくお願いします!

『グランマルシェの迷宮』公式サイト

『グランマルシェの迷宮』公式Twitter

 

グランマルシェの迷宮

ジャンル
RPG
メーカー
スクウェア・エニックス
配信日
2016年9月8日配信予定
価格
基本プレイ無料(アイテム課金型)
対応機種
iOS/Android
備考
著作権:
SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
Developed by indieszero Co., Ltd.

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