『ブレフロ』総監督早貸氏が新会社を設立! その真相とは……監修作品もお披露目

2016-03-09 13:01 投稿

新会社“AIDIS”に懸ける想い

エイリムの元代表取締役社長CEOだった早貸久敏氏が2016年1月27日に株式会社アイディスを設立。エイリム時代に『ブレイブ フロンティア』(以下、『ブレフロ』)の総監督を務め、スクウェア・エニックスから配信中の『ファイナルファンダジー ブレイブエクスヴィアス』ではエグゼクティブ・ディレクターとして立ち上げに関わっていた早貸氏が、あえて新天地でこのレッドオーシャンに飛び込む理由は何なのか。立ち上げまでの経緯や、すでに制作が始まっている新作の動向をお聞きした。

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今回インタビューは、まだ引っ越して間もないオフィスで実施。広々とした未完成のオフィスや、新たな出発に目を輝かせる早貸氏の姿にスタートアップらしい原動力を感じながら、お話をお聞きしていく。(聞き手:ファミ通App編集長 目黒輔)

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アイディス代表取締役社長
早貸久敏氏(文中は早貸)

ゲームに無限の愛情を注ぐための“円満”退社

――まずは、アイディスの設立、おめでとうございます。

早貸 ありがとうございます!

――いやー、突然の退社から新会社の設立、驚きました。どういった経緯で新会社を設立されることになったのかを伺えますか?

早貸 あ、その話、します?(笑)

――おそらく、この記事で新会社の設立を知った人もいると思うので、ぜひお願いします(笑)。

早貸 難しんですけどね……もっとも大きな理由は、何もしがらみのない状態で自分が好きなゲームを作りたかったからですね。原点回帰、と言いますか。自分自身、チャレンジ志向が強いクリエイターだと思っているのですが、クリエイティブなことだけに集中したいということです。

――このタイミングで独立されたのは?

早貸 いい頃合いかなと(笑)。エイリムには高橋(英士氏。現エイリム代表取締役社長)もいますし、私がいなくなって大きく変わることはないでしょうから。周囲の皆さんは、私がリスクを背負って戦うタイプだと知っているので、今回の独立は予期されていたらしく、「やっぱり独立したか」とか「むしろ遅かったね」とか言われています(笑)。

――少し聞きにくいのですが……円満退社なんですよね?(笑)

早貸 もちろんです!(笑) スタッフをまるごと引き連れて独立……というのではなく、身ひとつで再出発、という形ですし、お世話になってきたgumiの國光(宏尚氏。gumi代表取締役社長)さんにも、「ありがとう」と気持ちよく送り出していただきました。

――それを聞いて安心しました(笑)。そうなると、エイリムやgumiとタッグを組む……という可能性もあるのでしょうか?

早貸 3年くらいはそれぞれ個別でゲームを作っていくことになるとは思いますが、もしかしたらまたいっしょにやるかもしれませんね。海外展開もしていくとなると、gumiさんの協力を仰ぐという可能性もあると思います。巨大メーカーでないところで、海外で成功を果たしたのはgumiくらいだと私は思っているので、そういう仲間が同じ業界にいるというのは心強いです。

――海外展開といえば、『ブレフロ』で初めて海外展開をされて、『FFBE』では『FF』という強力なIPで「世界一を獲る」と目標を掲げてきましたよね。新会社での目標は……?

早貸  「新規タイトルで世界一を獲る!」ですよ!

――やはりそうなんですね!

早貸 今度はオリジナルのIPで世界を狙いに行きます。

――いいですね。ちなみに、“アイディス”という社名の由来は?

早貸 “Affection Infinity Devote Internet Studio”の頭文字を取って“AIDIS=アイディス”と名付けました。“Affection~”は、“無限大の愛情を注ぐ”という意味です。私は本当にゲームが好きなので、その思いを会社名に込めました。本当は“Game Studio”にしようかと思ったのですが、今後VRなどゲームの枠を超えたものに取り組むこともあると思うので、幅を持たせる意味で“Internet Studio”としました。

――ゲーム以外の選択肢もある、ということですか?

早貸 基本的にはゲームです。ただ、プラットフォームは意識せず、とにかく“いま一番使われている機種”に全力を注ぎたいな、とは思っています。クリエイターとしては、ひとりでも多くのお客さんに遊んでほしいですからね。それが、現在ではスマートフォンだということですね。

――ということは、家庭用ゲームへの進出もあり得るのでしょうか?

早貸 個人的にはやってみたいですね。スマホ向けのゲームと違って、データの容量もたくさん使えるので可能性が広がりますし、ちょっとくらいローディングに時間が掛かっても、ユーザーさんが許してくれますから。スマホだと、少し時間が掛かるだけで「重い!」と怒られてしまうんですよ(笑)。

――早貸さんのコンシューマー作品も見てみたいなあ。今回渋谷という土地を再出発の拠点に選ばれましたが、やはり早貸さんの原点でもある、ウィルアーク(2007年に早貸氏らが設立、GREEで『女神フロンティア』をヒットさせた)があった土地ということも大きいのでしょうか?

早貸 そうですね。“原点に帰る”という意味で選びました。まぁ、もともとウィルアークを渋谷に作ったのは、単に“渋谷が好き”という理由だったのですが(笑)。

――これまでと気持ち的には変わりましたか?

早貸 毎日が楽しいです。ふるさとに帰ってきたようなものですね。交通の便がよくて、打ち合わせにも行きやすいですし。美味しいご飯屋さんも毎日開拓していて、企画がどんどん浮かんできます。

――アイディスの立ち上げに関わったコアメンバーというのは何人いるのでしょうか?

早貸 私を含めて3人です。これから何人か入ってくることが決まっているので、今月(2016年3月)中くらいには十数人にはなるかと思います。

――今回インタビューをしているこのオフィス、現在とても広々と感じますが(笑)、だいたい何人くらい入れるのでしょうか。

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早貸 いまは人間よりもお祝いのお花のほうが数が多くなっていますが(笑)、机と椅子だけなら80人分くらいは入るスペースがあります。ただ、席はブース式にしようと考えているので、だいたい最大で40人くらいが入ることになるのではないかと思います。

――ブース式にするのは、やはり制作環境に集中させるためですか?

早貸 そうですね。やはり素通しになっていると、どうしても集中できないじゃないですか。あと、私も気兼ねなくフィギュアとか置きたいんですよ(笑)。

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――さっそく、大きなフィギュアを置かれていますね。

早貸 こういったところも、独立してよかったことのひとつです(笑)。人員に関して言えば、すぐにこのオフィスを人で一杯にしようとは考えていません。半年で20人くらいになればいいのではないかと思っています。ただ、何をするにも必要な、エンジニアだけは早く揃えたいですね。もし、現在フリーのエンジニアの方がいらっしゃったら、ぜひアイディスにお問い合わせいただければと……(笑)。

――じゃんじゃん求人しちゃってください(笑)。

早貸 ありがとうございます!

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グッドスマイルカンパニーと組んだ期待の新作『グランドサマナーズ』

――現在アイディスが関わっている作品についても伺っていきたいと思うのですが、すでに開発が始まっているタイトルはあるのでしょうか?

早貸 会社を立ち上げてからすぐ、何本か企画をスタートさせています。「2、3人じゃ作れないだろう」と言われるかも知れませんが、監修という立場で関わっているものや、作業を開発会社に委託しているものなど、さまざまな形で制作に携わっているということです。

――今回発表された『グランドサマナーズ』も、そのうちの1本ということですね。

早貸 この作品に関しては、“監修”として関わらせていただいているタイトルになります。会社を立ち上げたのが(2016年)1月なので、さすがにそうそうすぐには自社制作タイトルは作れません。

――たしかに(笑)。

早貸 その『グランドサマナーズ』は、グッドスマイルカンパニーさんがパブリッシャーで、制作をNextNinjaさんが担当していて、アイディスは監修だけしています。実際に手は動かしていませんが、口は死ぬほど出しています(笑)。ですから、クオリティー面ではかなり期待していいのではないかと。

――ユーザーにとっては、聞き慣れない名前が並んでいるのですが、グッドスマイルカンパニーと言えば、“ねんどろいど”などで有名なあの会社ですよね?

早貸 そうです。グッスマさんにとっては、初めての自社オリジナルタイトルということになります。(グッドスマイルカンパニー代表取締役社長の)安藝さんという方は、いい意味でぶっ飛んだ人で、とにかく精力的にいろいろなことをやりたがるんですよ。そもそも、フィギュアを作り始めたこともそうですし、アニメに参入したり、レーシングチームを作ったり……。“世界最速のモータースポーツ”と呼ばれる、“レッドブル・エアレース”を日本で初めて開催したのも、安藝さんなんですよね。

――制作を担当しているNextNinjaさんについては……?

早貸 NextNinjaさんは、ソーシャルゲームをずっと作ってきた会社で、技術者が多いところです。すごく頭のいい方が揃っていて、以前から「当てかたさえわかれば売れるはず!」と思っていたので、飲み話から始まったんですが協力させてもらうことになりました。

――PVを拝見したところ、ボイスが入っていますよね?

早貸 今回、初めて採用しました。これまで、私は快適性を重視していたので、データ量が多くなってゲームを“重く”してしまうボイスの採用には消極的でした。でも、やはりボイスが入っているとバトルの臨場感がぜんぜん違うんですよね。気持ちよくゲームを進めるために、今回はバトルやガチャなど、爽快な演出が求められるところにボイスを入れることにしました。

――ストーリーの会話シーンには入らないんですか?

早貸 容量の関係で入っていません。ただ、ストーリーに関しては私が世界観をガッチリと監修して進めています。内容は、いつものベタベタな王道ですので、RPGファンの方は安心してください(笑)。

――バトルの声を重視するっていうのが早貸さんっぽいですね(笑)。ゲームは4人パーティーで行動する形のようですが……。

早貸 この作品では、4人でマルチプレイができるようになっています。むしろ、マルチプレイが前提なんです。リアルタイムで同期して、連携プレイが楽しめるんですよ。しかも、NextNinjaさんの技術でラグもほとんど出ない。手前味噌ですが、これは正直すごいと思いましたね。ビジュアルについても、2Dから一歩進んだ形を取り入れていて、演出には気持ちよさを感じてもらえると思います。また、UI(ユーザーインターフェース)についても、“ながらプレイ”を意識して、かゆいところに手が届く……というものになっています。

――とくに印象的なのが音楽でした。ストリングスなどもふんだんに使われていますよね。

早貸 音楽は、Elements Gardenの上松(範康)さんにお願いしています。オーケストラも駆使して、私のイメージ通りのものをキッチリ作ってくれるだろうと確信しています。皆さんも薄々気付いているかと思いますが、私はどんなものにもあれこれと口を出すのですが(笑)、今回の上松さんの音楽についてだけは、ほとんどリテイクを出していません。それほど、世界観に合ったものになっているということです。

――一方、キャラクターは相変わらず“口”がないデザインですね。

早貸 キャラクターデザインは、NextNinjaのデザイナーさんがやってくれています。キャラクターも、ゲームの柱となる部分ですので、こちらはかな~りリテイクさせてもらいながら、完成形に近づけています。もちろん、リリース後もキャラクターはどんどん追加されていくことになりますので、そちらも私が監修する予定です。

――『グランドサマナーズ』以外に、自社タイトルを開発してたりは……?(笑)

早貸 自社タイトルについては、“完全オリジナルで世界を獲る”を目標に、現在進行形でアイデアを固めていっているところです。ジャンルはもちろんRPGです。むしろ、RPGしか作りません(笑)。

――やっぱりそうなんですね(笑)。

早貸 そうです! あと、いま構想段階のタイトルは、ビジュアル面で特殊なことをするつもりで、2Dと3Dを融合させたある仕組みを考えています。いまはそのお手伝いをしてくれる、エンジニアを絶賛募集中しています!

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――2回目の告知ですね(笑)。もうひとつお聞きしたいのが、早貸さんが去ったことで、『ブレイブ フロンティア』などのタイトルはどうなっていくのでしょうか?

早貸 高橋がいますから大丈夫ですよ! 私が抜けても優秀なスタッフが残っていますので、安心してゲームを続けてください。

――安心しました! それでは、最後にファンの方々へのメッセージをお願いします。

早貸 私たちのゲームを遊んでくれる人のために、私たちが本当に作りたいものを愛情込めて作っていくのが使命だと思っています。世界中、ひとりでも多くのプレイヤーに遊んでもらえるよう、日々努力していきますので、期待していてください。

――僕らも早貸さんのタイトルなら手放しで応援していく姿勢ですので、期待しています!

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