開発者向けイベントリポート②:国内ゲームメーカーの海外展開について

2015-01-22 19:08 投稿

2015年1月15日、アプリ収益化を支援するメタップス主催による、“Native Gaming Summit 2015 January”が新宿で開催された。前回の記事では第1部の模様をお届けしたが、今回は第3部の様子をリポートする。

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第3部のテーマは“日本ゲーム企業の海外展開について”。現在海外市場進出中のデベロッパー3社をむかえて、中国本土や香港台湾、ゲーム文化が大きく異なる欧米・韓国市場等の現状を踏まえつつ、各社どのように市場進出を果たしたのか、ここだけの特別な話を聞くことができた。

ゲストとして登壇したのは、昨年末100万DLを突破し台湾・香港・マカオへの進出を今月予定している『ゆるドラシル』のクローバーラボ社長の小山力也氏、累計1600万DL突破の『にゃんこ大戦争(以下、にゃんこ)』を生んだポノス取締役の永谷朋行氏、そしてgumi執行役員の佐々木智之氏と、こちらも第1部同様豪華な顔ぶれとなった。

“ヒット作を横展開”、“海外基盤があった”、
“世界NO1を目指す”、三者三様の海外展開の理由

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まず、スクリーンに表示されたテーマは“なぜ海外展開しているのか”という基本的かつ重要な部分。最初に口を開いたのは永谷氏。その理由を2点挙げた。

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▲『にゃんこ大戦争』を配信するポノスの取締役、永谷氏。

1点目は、同社の社員数は現在40名程で、人員体制としては、『にゃんこ』の運営で手一杯な部分があったという点。しかし、当然企業としては利益を伸ばさなくてはならず、ならばヒットタイトル『にゃんこ』を横(=海外)展開したほうが良いのではというもの。

2点目は、『にゃんこ』はリリース後約2年が経つが、社員全員が“にゃんこスペシャリスト”になってしまい、新作が出にくくなったという点。新作の議論が出ても、「それってにゃんこ大戦争に実装したらいいのでは」(永谷氏)という方向に話が移ってしまうのだそう。それなら『にゃんこ』を海外へ、と話が転換していったというわけだ。

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▲『ゆるドラシル』のクローバーラボ社長、小山氏。

小山氏は答えが異なる。『ゆるドラシル』以前にリリースしていた別ゲームをすでに海外に売却していた実績があったため、同作自体も最初から海外へ展開しようという頭があったのだそうだ。

最初に海外展開を見すえたゲームのライセンス条件がいちばん良かったからというのと、“ゲームとしての面白さ”を評価してくれたことから、台湾企業と契約。それがきっかけというのもあり、台湾での市場展開に力を入れているのだとか。

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▲gumi執行役員、佐々木氏。

そしてgumiの佐々木氏。“世界のNo.1のエンターテイメントコンテンツプロバイダーを目指す”と同社代表、國光宏尚氏が標榜する通り、つねに海外市場を見すえた事業展開をおこなっている

実際、現在海外に8社、国内に本社ふくめ4社の計12社、人数では840名超の体制で臨んでおり、日本国内のノウハウも当然活かしつつ、各拠点のヘッドを含めた現地スタッフによる主体的な行動を尊重し、各国におけるユーザーの取り込みをはかっているのだそうだ。

“儲かる”のはやはり話者の多い英語圏
今後視野に入れる国や地域は?

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続いて、海外進出の際、反応のアツかった国・地域について。永谷氏から興味深い話が聞けた。

ユーザーの熱狂度、ゲームのクオリティ、さらにクレームといった部分もふくめて、とくに反応が大きかったのが韓国だそうだ。さらに、“儲かる国”についても言及。やはり話者人口の多い、米国をふくめた英語圏が大きく「そこからオーストラリアもいけるし、カナダもいけるし、ぐるっと世界一周」(永谷氏)することで、“儲かる”とのこと。

また、今後の展開を視野に入れている地域として東南アジアを挙げ、その理由を、『にゃんこ』はサーバー通信が比較的少ないアプリなので、インフラ整備が未熟な同地域でも意外といけるのではと展望を語った。

東南アジア、東アジア、欧米
これまでもっとも投資してきた国や地域は?

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では、これまで実際にヒト、モノ、カネふくめて投資をしてきた国・地域はどこになるのだろうか?

東アジア、米国、欧州と世界に開発拠点を8箇所持つgumiだが、佐々木氏によると、直近では米国、カナダといった北米中心に投資をしてきたそうだ。その理由を二点あげる。まずアプリ市場を含めたトレンド面で先行している点。つぎに、人材を発掘しやすいという点。とくに人材面では、担当する現地プロデューサーがコンテンツのファンになるあまり、担当コンテンツのノベルティ制作にも意欲的であったりと、熱心なスタッフも多いのだそうだ。

永谷氏の場合は、市場規模をかんがみたうえで投資先に韓国を選んだという。社員数40名程の企業なので、“ヒトのキャッシュアウト”が大きく最初は苦労したそうだ。しかし一度成功すると、ある程度ノウハウがカルチャライズされそれをスタッフが覚えるため、翻訳はもちろんポリシー決めといった点がラクになり、「トップクリエイターでなくてもできてしまう」(永谷氏)のだそうだ。

各国の“端末レベル”を考慮
そのうえでのデバッグの重要性とは

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最後は、海外展開で一番困ったことというテーマについて。

三者とも、不正ツールを用いた“チーター”の存在が、日本と比べて多いという点で口をそろえた。チーターの存在そのものの存在ももちろん困るが、それが理由で“まじめにやっていることが馬鹿らしい”と正規ユーザーが感じてコンテンツから離れていくことの方が怖く、それを潰していくコストがばかにならないのだそう。

さらに永谷氏からは、“デバッグの大変さ”が語られた。たとえば韓国ではよりハイスペックで高額なスマホ端末に多く需要がある一方で、中国では比較的ロースペックの端末を使っている人も少なくなく、どの端末レベルに合わせたゲームにするかという点に苦慮するとのこと。上に合わせると、低いOSを搭載した端末では遊べなくなり、逆に下に合わせると、それでは物足りなく感じる人も出てくる……といった具合だ。

第3部のテーマである“日本ゲーム企業の海外展開について”。各デベロッパーとも、進出する国・地域や方針、方向性といったものがおのおの違い、各進出先での“苦労話”を含め価値ある話を聞くことができた。第3部の締めくくりとして設けられた質疑応答では、海外展開を視野に入れるデベロッパーから熱心な質問が飛んだ。

現地でのプロモーション開拓についての質問では、現地に出向き現地の会社と仲良くなり、その中で“その会社が当たり前にやること”を調べるという、“足でかせぐ”ことの重要性を永谷氏は強調した。日本へ進出する海外アプリも多い中、反対に海外市場へ進出する企業・アプリも少なくないことを再確認できた第3部だった。国内外問わず、今後のアプリ市場を引き続き注目していきたい。

(斎藤えいこう)

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