【ひらブラ vol.43】続:Google社のゲーム「イングレス」でダイエットしてみた(その2)

2014-11-14 12:00 投稿

イングレスを使ったダイエット、おかげさまで「ひらブラ」始まって以来の大きな反響を頂き、ビックリしております。今回も引き続き、ボクの体験談をお送りします。

まだ前号をご覧になっていない方は、ご一読をオススメします。イングレスって何?って方もどうぞ(下記リンクご参照)。

【ひらブラ vol.42】Google社のゲーム「イングレス」でダイエットしてみた(その1)
Ingress_icon

前号では、イングレスというゲームがどんなゲームなのかをご紹介しつつ、ボクとイングレスの出会いのきっかけや、ゲームプレイがダイエットという“実益”に結びつくことについて触れました。

今回は、前号での予告どおり、イングレスがダイエットに効く「ひみつ」や、ボクのイングレスのプレイスタイルについてご紹介したいと思います。

Ingressがダイエットに効く“ひみつ”は「ポータルの相対性」

Ingressをひとたびプレイしてみると、なぜダイエットに有効かはすぐにお分かり頂けると思います。

diet_measure
▲ダイエットの基本は「カロリーを消費する」こと!

Ingressで重要な役割を果たす「ポータル」と呼ばれる実在のスポットは、原則として運営側の恣意や規則性が含まれているわけではなく、地図上に点在しています(ポータル創設申請時の承認ガイドラインにより、ポータル同士が近すぎたり、万人が出入りできる場所ではなかったり、消防署などの緊急対応施設の場合は、申請が却下されるようです)。

ゲームシステム上、この「ポータル」をとにかくたくさん訪れることが、ゲームを進めるために不可欠になっています。陣取りの要素や攻撃&守備、アイテムの有効活用など、Ingressにはさまざまなゲーム要素が用意されていますが、とにかく「ポータル」を訪れないことには何も始まりません

ボクは、おもに、会社からの帰宅時にIngressをプレイしています。

自宅最寄り駅よりも、2〜3駅手前で降りてしまいます。そして、Ingressを起動。一般的に、駅の周りにはポータルが数多く存在することが多いので、まずは降りた駅周辺のポータルを巡ります。それが終わると、自宅を目指しつつ、その途中にあるポータルを開拓していきます。

ボクは埼玉に住んでいるので、都内に比べると、ポータルの数はあまり多くはありません。でも、そのおかげでポータルとポータルの間の距離が離れているため、よい運動になっています。

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▲温泉が湧き出すように出ているのがポータル。勢力に応じて色分けされており、まだどちらの勢力にも影響されていないポータルは白色で表現されます。

ゲームアプリ上、ポータルの位置はつねに相対的な関係で表現されます。アプリで確認できるポータルは自分の現在位置から近距離なものに限られ、Google Mapのように、自由な拡縮やドラッグ移動が出来なくなっています(ある程度はできますが制限されています)。

なお、ポータルの場所を地図上で自由にチェックしたい場合はWebブラウザから確認する方法(INGRESS INTEL MAP)が提供されていますが、ボクはあえてプレイ中は使っていません。

この、ポータルとポータルの相対関係が「絶妙」なんです。

あるポータルを訪れると、次に向かうべきポータルを選ぶことになるのですが、スキャナーに表示されるポータルはだいたい1km以内のものばかり。300mしか離れていないけれどポータルが1つしかないスポットと、800m先だけれどポータルが密集しているスポット、どちらを選ぶべきか?で悩んだりします。でも、いずれにしても1km以内。たいした距離ではありません。

ポータルとポータルの間の数100mを移動することは、まったく苦痛に感じません。アプリを起動するときに「ヘッドフォン推奨」と表示されるだけあり、ポータルまでの距離を「ソナー音」の鳴る感覚で直感的に教えてくれます。画面を見る必要すらありません。この音を聴いているだけでも、ポータル間の移動はあっという間に過ぎていきます。

そして、このポータル間の移動を繰り返していると、いつの間にか、とてつもない運動量になっているというわけです。

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▲ポータルが近くに見当たらないときは、スキャナー画面に最寄りのポータル候補が表示されます。

いつのまにか「遠回り」したくなる、不思議なゲーム性

Ingressにはスタート地点もゴール地点もありませんが、生活のなかでプレイするのですから、自宅やオフィス、駅など、現実世界で辿り着くべきゴール地点は必ず存在します。

なので、Ingressプレイ中も「ゆるやかに」自分のリアルワールドでのゴール地点を意識しながらプレイすることになります。

この「ゆるやかに」ってところが大事なポイント。

帰宅時や目的地に向かって移動する際、通常は、ナビアプリなどがオススメしてくれる「最短の」経路を辿ったり、いつも慣れ親しんだ道を選んでしまうもの。

これでは、必然的に運動量も毎日、一定量になってしまいます。積極的に遠回りしようとしても、なんだか無駄な行為に思えてしまうものです。そしてなにより、毎日の同じ繰り返しに飽きてしまうでしょう。

でも、Ingressをプレイしていると、不思議なモチベーションが生まれるのです。

「遠回りしたい」

「もっと歩いていたい」

「すぐに帰りたくない」

…別に、筆者が家庭に問題を抱えていて、帰りたくないというわけではありません(笑)。もうお分かりかと思いますが、ポータルをなるべくたくさん訪れるために、いつの間にか「遠回り」してしまうのです。

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▲歩くことは、時と場所を選ばずに出来る運動。その継続性と娯楽性を高めてくれるのがイングレス。photo byAntonio Foncubierta (CC BY-SA2.0)

とはいえ、あまり帰宅時間が遅くなりすぎるのもいけないので、時計の時刻と相談しながら、遠回りの「範囲」を見極めたり、走って時間を短縮したりします。これがまた、ゲーム的で楽しかったりします。

時間が自由に使える休日は、あえてゴールを決めずに、ポータルを次々と数珠繋ぎで訪れてみたりもします。あっという間に数時間が経っていて、普段はクルマでしか訪れたことのなかったようなスポットにいつの間にか自分が辿り着いていたりして、ビックリすることも。

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▲詳しくは次号で触れますが、ボクはイングレスのバックグラウンドにナビアプリを起動してプレイしています。

前号でご紹介した岩手県の町おこしの事例のように、まったく知らない旅先で、観光地巡りを兼ねてIngressを遊ぶのも楽しそうです。いつか時間をみつけてやってみたいと思っています。

このように、「辛くない」、むしろ「楽しい」ダイエットができるのが、Ingressダイエット(勝手に命名)の特長です。

このブログでも過去に何度か扱ったことのあるテーマですが、Ingressをプレイしていると「ゲーミフィケーション(Gamification)」という概念を思い出さずにはいられません。

ダイエットという目的を実現するための「手段」としては確かにゲーミフィケーション的なのですが、いつの間にか「手段」が「目的」に変わってしまうほど夢中でプレイしてしまうのがIngressの魅力。その点では、ゲーミフィケーションというよりも「ゲーム」そのものであることに気付かされるわけです。

疎結合のソーシャル要素と、連帯感/使命感/貢献感

数あるポータルの中には、辺鄙なところに存在したり、現在地よりもかなり離れた地点にあったりするものもあります。

とくに、都市部以外でのIngressプレイでは、駅前や繁華街、景勝地や歴史的建造物に密集しているポータルをひととおり巡ってしまうと、行く先がなくなってしまい、次のポータルを求めて、遠出のために覚悟を決める必要が出てきたりします。(Ingressでは、ポータルを一度ハックすると、加熱のために5分間はそのポータルを再ハックできなくなります。また5回目のハックは4時間も待たなければなりません。)

巷はもう11月、日照時間もずいぶん短くなりました。

ポータルは記念碑や寺院などに設定されていることが多く、日没後に訪れると、そうした場所は、とても物悲しいシチュエーションだったりすることも珍しくはありません。お墓も近かったりして(汗)いきなり肝試しの様相になったりもします…。

そんな孤独な状況に置かれても、不思議な連帯感を抱くことができるのがIngressの特長です。

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▲夜間、人気のないポータルを訪れるのは、とっても孤独!? photo by mrhayata (CC BY-SA2.0)

既述のとおり、Ingressの基本設定は、2勢力に分かれての陣取り合戦。

苦労して訪れたポータルが自勢力のものであれば、そのポータルを護り強化してくれている「仲間」への敬意や連帯感を抱くことでしょう。また、敵勢力のものであれば、そのポータルを攻撃し自勢力の拡大に貢献しようと使命感に燃えるでしょう。

基本的にシングルプレイで黙々と遊べるゲームですが、勢力戦という設定のおかげで、真っ暗で人気のないポータルなどで心が折れそうになったときにも、「自勢力のために!」という使命感が力強く支えてくれるわけです(もちろん個人差があるとは思いますが…)。

ソーシャルの要素も程よいバランスになっており、あまり直接的なコミュニケーションを前提としないゲームバランスになっています。まさに「疎結合」という感じで、自勢力であっても敵勢力であっても、CPUやNPCではなく、まさに「生身の人間」が一緒にプレイしているんだなぁ、という感覚を間接的に感じることができるのです。

その感覚は、実際にIngressをプレイしてみて感じて頂くのがいちばんだと思います。

ちなみに、ボクが思わず「ニヤリ」としてしまうのは、線路に沿ってたくさんのアイテムが線状に落とされているときや(ゲームを始めて間もないプレイヤーのために自分の持っているアイテムをDROPすることができるようになっています)、COMMと呼ばれる簡易チャットウィンドウで「◯◯のポータルをリチャージしてくれた方ありがとうございます!」というメッセージを偶然目にした時、などです。

逆に「ムムッ…」と思ってしまうのは、敵勢力のポータルを攻撃して中立化(白くする)した直後、レゾネーターを設置しようとしたら先に敵勢力のものが置かれていた時です。…つまり、その場にIngressをプレイしている方が居たということですね。

なかには、そうしたリアルな出会いやコミュニケーションを楽しむプレイヤーもいらっしゃるようですが…ボクはあえて「Agent」というゲームの設定にこだわり、敵味方関係なく、そそくさとポータルを後にするようにしています(笑。だって、そのほうがAgentっぽいじゃないですか。ボクの頭のなかには、いつも『ミッション・インポッシブル』のテーマ曲が流れています(笑。

でも、人気のないポータルへの挑戦はほどほどに…。たまに、日中しか開いていない施設にポータルが設定されていることがあり、こうした施設に時間外に立ち入ることは不法侵入になりかねません。また、夜間にスマホを持って特定のポータル間を右往左往している様子はいかにも怪しく、実際、職務質問をされるケースもあったとのウワサなのでご注意を(幸いボクはまだ大丈夫ですw)。

何事も、マナーと節度を守って、遊びましょう!

さて、今回のひらブラはここまで。

Ingressダイエットの話は、次号も続きます。

次号では、ボクのIngressプレイスタイルについてご紹介する予定です。そして、気になる「ダイエットの成果」についても…!?

Ingress

メーカー
Google, Inc.
配信日
配信中
価格
無料
対応機種
iOS 7.0 以降。iPhone、iPad および iPod touch 対応。  Android 要件 2.3 以上

それでは、また次回の更新でお会いしましょう!

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※vol.0:創刊準備号ということでジコショーカイ

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幅朝徳(はば とものり) 株式会社CRI・ミドルウェア 商品戦略室 室長、CRIWAREエヴァンジェリスト。学習院大学卒業後、CRIの前身である株式会社CSK総合研究所に入社。ゲームプランニングやマーケティング業務を経て、現CRIのミドルウェア事業立ち上げに創業期から参画。セガサターンやドリームキャストをきっかけに産声を上げたミドルウェア技術を、任天堂・ソニー・マイクロソフトが展開するすべての家庭用ゲーム機に展開。その後、モバイル事業の責任者として初代iPhone発売当時からミドルウェアのスマートフォン対応を積極推進。GREE社やnhn社といった企業とのコラボでミドルウェアの特性を活かしたアプリのプロデュースも行う。近年は、ゲームで培った技術やノウハウの異業種展開として、メガファーマと呼ばれる大手製薬会社のMR(医療情報担当者)向けのiPadを使ったSFAシステムを開発、製薬業界シェアNo.1を獲得しゲーミフィケーションやゲームニクスの事業化を手掛ける。現在、さらなる新規の事業開拓や未来のサービス開発を担当する傍ら、ますます本格化するスマホゲームのリッチ化を支援するためにモバイルゲーム開発者におけるミドルウェア技術の認知向上のためエヴァンジェリストとしての活動に注力中。

趣味は、映画鑑賞とドライブ、クロースアップマジック、デジスコによる野鳥撮影、コンパニオンバードの飼育、そしてもちろん、ゲーム。

CRI・ミドルウェア ウェブサイト

http://www.cri-mw.co.jp/

Ingress

メーカー
Google, Inc.
配信日
配信中
価格
無料
対応機種
iOS 7.0 以降。iPhone、iPad および iPod touch 対応。  Android 要件 2.3 以上

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