従来型ブラウザアプリも続々配信予定! 『釣り★スタ』岸田氏が語るグリーの新体制

2014-06-06 20:00 投稿

“苦戦”をバネに万全の体制で望むグリー

2014年4月に新スタジオ“Wright Flyer Studios(ライトフライヤースタジオ)”を立ち上げ、ネイティブアプリへの具体的な姿勢を示したグリー。しかしグリーは従来型のブラウザゲームに対しても、これまで同様に注力していくようだ。

今回は特別インタビューとして、執行役員の岸田崇志氏に加え、新作タイトルのプロデューサーを務める水上学氏、渡邊匡志氏にお話を聞いた。

▲グリー執行役員の岸田崇志氏。

――まずはファミ通Appの読者に向けて岸田さんの経歴を簡単に教えてもらえますか?

岸田 グリーに入社して5年となります。当時はまだ“SNSのグリー”と呼ばれているころで、私は『釣り★スタ』のプロデューサーを1年ほど務めました。そのあと約2年ほど『モンプラ』などグリーの内製ゲームのプロデュースを担当し、ここ数年は既存内製タイトル全般を見る立場でした。今後はグリーの強みを生かした新規タイトルを打ち出していくということをやりたいと考えています。

――なるほど。ここ数年はご自身でも「グリーが苦戦している」と感じることが多いと伺いました。そういう状況の中でどんな対策を取られてきたのでしょうか。

岸田 ここ数年は会社の急激な成長の反面、もの作りの部分では思うようにできなかったと感じていて、いまはものづくりを重視するための組織の改善などを行っているところなんです。グリーのブラウザゲーム事業というのは若干厳しいように見える部分はありますが、既存タイトルは依然として多くのお客さまに遊んでいただいています。とくに2年くらいまえに大きくリニューアルをした『探検ドリランド(以下、ドリランド)』は、そのまえからのお客さまにも非常に多く遊んでもらっているんですよ。ですので、直近はそういった長く遊んでいただいているお客さまにさらに楽しんで頂ける様、旧来のドリルで発掘する『ドリランド』を復刻したり、クイズのゲームを入れてみたりと、今までとは毛色の違うイベントをどんどん投入しているという状況です。

――まだまだ相当数のユーザーが『ドリランド』の新しい要素を楽しんでいるということですね。

岸田 そうですね。今は、いい意味でこれまでの『ドリランド』を壊すというテーマを持って進めています。

ゲームのおもしろさを追求するところに戻りたい

――そんな中、岸田さんは新規で2タイトルを発表されました。いままでは新作というとIPタイトルが多かった印象ですけど、今回は完全新作もありますね。今後はこういうタイトルが増えてくるのでしょうか?

岸田 個人的には、常にオリジナルで勝負したいという気持ちはあります。もともとグリー自体がオリジナルタイトルで大きくなった会社ですから、ゲームの本質的なおもしろさを追求するところは強みだったと思うんです。そういったところに再度回帰したいという思いは強いですね。ひとつ目の『ドラゴンズパーティー ~五神龍と7つのレシピ~』に関しては『ドリランド』というIPをさらに大きくして、既存の『ドリランド』のお客さまに新しい遊びを提供したいという狙いがあります。『ロストランドタクティクス』のほうは完全にオリジナルのものということで、ここ数年ゲームの面白さを追求するという姿勢のタイトルは出していなかったのですが、ようやくそういう体制が整ったのかなと思います。

――どういう風に体制が変わってきたのでしょうか。

岸田 少し言葉は選びつつになってしまうんですが(笑)……、やっぱり組織が大きくなる中で人を育成する面などが追いついていなくて、「これを誰に任せる」というようなことの体制が整っていなかったんです。

――いまようやくそれができる状況になってきたと。

岸田 私は“楽しんで作っている人には敵わない”というのをモットーにしていて、直近の2タイトルに関しても、リリースに向けてチームの雰囲気もすごくよくなってきていますし、自分たちの提供したい面白さを自信を持って追求しながら作られています。

――いまオリジナルタイトルを作っている人たちというのは、以前からグリーで既存タイトルを手がけてきたのでしょうか。

岸田 そうですね。既存タイトルをやっていた人間が新規タイトルに関わっているケースは多いですね。特に『ロストランドタクティクス』プロデューサーの水上(学)は『クリノッペ』に長く関わってきたという経験があります。『ドラゴンズパーティー』の渡邊(匡志)は新しく入った人間ですが、そういう新旧の人間が切磋琢磨しながら作っているような感じですね。

社内のゲーム作りを変える育成プログラム

――グリーでは“CIPプログラム”という育成プログラムを実践されていると聞いたのですが、これはどういうものなのでしょうか。

岸田 少し前までは企画書ベースでゲームのことを話していたんですが、よりお客さまに近い立場でゲームを作っていこうというスタンスに切り替えています。遊んでもらいたい方に伝えるのは企画書ではないので、実際にプロトタイプを作ってモックベースで議論を進めるほうが、おもしろいと思う感覚を追求しやすいと思ったんです。この試みは去年の末くらいから始めました。いまはその一環で“モックワングランプリ”というのをやっていまして、その名のとおりなんですが、全社員からゲームのモックを応募して、おもしろいものをピッアップしていこうと考えています。

――立場や現在の仕事など関係なく、おもしろいものを思いついたら提案できる環境ができているわけですね。

岸田 そうですそうです。私はゲームに関わるすべての人はクリエイターであってほしいと思っていて、いままではコンテンツを作るという点において優秀な人はたくさんいるんですけど、組織の壁で実現できていないこともあったと思うんです。たとえばエンジニアだけでは、デザイナーだけでは作れないということでアイデアを形にできなかったところを、モックワングランプリをベースに強引にチームを組ませちゃうんですよ。それで新しいサービスやゲームを創発していければと思っています。

――実際どれくらい参加されているんでしょうか。

岸田 ちょうど今日(インタビュー実施日)が締切なんですが、20数タイトルくらい出てきていますね。もちろん玉石混交だとは思うんですが、実際に動くレベルのものが出てきていると思います。

――そのなかから新規タイトルへと移行するものもあるということですね。ちなみに今回の2タイトルのきっかけは何だったのでしょうか。このプログラムではないですよね?

岸田 この2タイトルは違いますね。『ロストランドタクティクス』は去年の7月くらいから動き始めていたもので、すぐにでも遊んでもらえるよう準備を進めています。『ドラゴンズパーティー』のほうはCIPプログラムの前身のような形で渡邊が2週間くらいでたくさんの企画書を書いて、その中から選抜してモックを作るという形で始めたものです。それが良かったので、CIPプログラムを全社的に広げつつあるということです。

――方向転換のきっかけは何だったのでしょうか。

岸田 やはり、ここ数年グリーとしてメガヒットタイトルが出せていないという部分は大きいですね。であれば、やり方を変えたほうがいいと思っていました。仕組みに関しては今後もいろいろなアプローチを試していきたいです。

――CIPプログラムでのモック選定は以前にもやられていますけど芽が出てきそうなタイトルはありますか?

岸田 そうですね。すでに優秀なものをいくつか選んでいるんですけど、また毛色の違ったおもしろいものになりそうですよ。

――こういうものがあると開発の人は活気が出てきそうですけど、どうですか?

岸田 ひとりで数タイトル作っちゃう人もいますよ(笑)。クリエイターの登竜門的な位置づけになればいいなと思っています。

――岸田さんが入られた当初のグリーもこんな感じだったんじゃないですか?

岸田 あ、そうですね、それに近い空気感ですよ。作ったものを即リリース、みたいな。組織が大きくなると変に構えて作っちゃうから、なかなかいいものが出ないんですよね。ミュージシャンとかもそうだと思うんですけど、初めから売れる曲を目指して作るのって難しいじゃないですか。

グリーはブラウザなのか、ネイティブなのか

――今回の2タイトルや今後のタイトルに関してなんですが、岸田さんのチームはブラウザゲームにこだわって作るということなのでしょうか。

岸田 今回はそうしています。それはなぜかと言うと、グリーの既存のお客さまに対してなんですが、長く新規タイトルを出していないのでお待たせしてしまっていると思っているんです。そこに向けたタイトルということでブラウザゲームにしています。ただ今後に関してはブラウザにこだわるのではなく、お客さまがどういうタイプのゲームを望んでいて、どういう技術がマッチするかというところで選んでいけばいいかなと思います。

――そこはブラウザでもネイティブでも関係ないというスタンスなんですね。

岸田 実際、いま仕込んでいるタイトルのなかにもネイティブアプリもあります。

――ではもうゲームありきで技術を決めていくっていうことですね。岸田さんのチームで大事にされているのはあくまでも“おもしろさ”というところですか?

岸田 面白さの基準は人によってさまざまではありますが、大切にしていることは、アイデアを形にする能力を養って、それをみんなで感じられる場を作れば、お互いが刺激を受け合いながらよりおもしろいものを生み出せるような組織になれるのではないかなと思っています。

――現時点でもかなり手応えを感じてらっしゃいますか?

岸田 CIPに関してはモックの部分で手応えを感じていますし、新規の2タイトルもグリーの「これぞ内製」と言われるようなクオリティーの高さはやっぱりすごくあると思っています。

――おもしろいゲームが続々出てくると期待していいと?

岸田 そうですね。いままで逆に打って出られなかった部分があるので、そういったところに関してもちゃんと作れているなと感じています。

――既存タイトルをやりながら新規もというと、何名くらいの体制なんでしょうか。

岸田 私のところで言えばトータルで70名くらいですね。『ドリランド』が30~40名で、残りが新規といった内訳になっています。

――『ドリランド』のほうも継続して新しいことを、という形ですよね。

岸田 はい。新しいイベントをどんどん企画しています。そこでいいものがあればスピンアウトして新プロダクトに組み込んでいくこともできますし、あまり形にはこだわっていないです。

――ゲームのおもしろさを追求していきたいということですね。

岸田 そうですね、事業を推進していくことも非常に大切なのですが、やはりおもしろいものをどう生み出せるかを考えていかなければと、この数年で痛感しました。ですので、新しいものに挑戦していくという方向に舵を切っていきたいなと思っています。

――まだ答えにくい部分かとは思いますが、年内にどれくらいの本数を出していきたいと考えていますか?

岸田 私が係る部分に関しては、まずは発表済みの2タイトルに力を入れつつ、もう1本新しいものが出せればとは思っています。ただ部署としてはそのほかに数タイトルは準備しています。オリジナルではないIPものもいくつかは控えています。

――IPもやりつつ、第2の『ドリランド』のようなタイトルを生み出していきたいということですね。ネイティブとブラウザのどちらもということでしたが、市場的にはネイティブのほうが盛り上がっていますよね。

岸田 戦略的なところで話しますと、今遊んでいただいている方と、興味はあるけれどまだグリーのゲームを遊んだことがない方ではアプローチの仕方が違うと思っています。ブラウザゲーム、ネイティブおのおの良い面、悪い面がありますのでゲームの特性やアプローチしたいお客さまを考えながら戦略を練っています。

――ブラウザゲームでも現状のグリーのユーザーを新しいゲームで継続してもらうということですね。では『ドラゴンズパーティー』は既存ユーザー向けということですので、そういう性質のゲームになるんですね。

岸田 『ドリランド』というところをフックにして、現在遊んでいただいているみなさんはもちろんですけど、過去に遊んでくれた方々にも広げていきたいなと考えています。

――岸田さんがゲーム作りで大事にしていることを教えてもらえますか。

岸田 以前といまとでだいぶ変わったんですけど、スマートフォンのプレイ感でどこまでリアルなおもしろさを表現できるか、ですね。例えば、鬼ごっこだとか脱出ゲームみたいなリアルで熱狂できる遊びってあるじゃないですか。そのような感動体験って普遍的だと思うんです。それをスマホで再現できるかどうかというところを重視しています。小さい頃に初めてファミコンに触れた感動や、縁日などで金魚すくいをする楽しさや驚きなど、そういったひとつひとつの感動や驚きをうまくスマートフォンという端末で作っていてあげたいですね。

――おもしろさを言語化するのって難しいですよね。

岸田 昔『モンプラ』でレイドイベントを初めてリリースしたとき、MMOのレイドをいかにソーシャルゲームに翻訳するかということをトライしました。テーマは颯爽と現れて助けてくれるヒーローを演出したくて。そこでみんなで倒す感じをガラケーで見せるために要素はそぎ落としたんですが、倒しているところをちゃんとリアルタイムで何時何分に誰が叩いたというのを見せるといった工夫でプレイ感を感じられるかどうかを意識しました。その後『ドリランド』にレイドイベントを導入して爆発的ヒットになりましたが、多くの方が楽しんでもらえる仕組みを作るのは得も言えぬ感動があります。

――手触りとか感覚的な部分を大切にしている、という感じでしょうか。いままでたくさんのヒットタイトルを手がけてきましたけど、ガラケー時代でもスマホ時代でも不可欠なことってなんでしょうか。

岸田 根源的な部分は変わらない気はするんですけど、5年くらいプロデューサーをやっていまして、失敗のほうが多いというか(笑)、ヒットっていうのは昔はそんなに出せなくて、半年に一回あればいいほうなんですよ。大切なのはやり続けることかなと。ただ、いまは他社さんもスマートフォンゲームを多く出されていますので失敗が許されないというか、リリースしてからの数ヵ月で結果が出てしまう。それを許容しながらモノを作り続けるというか、本来お客さまとの対話で作っていくものなので、自分たちが表現したいものに向けて半年とか1年やり続けるみたいなことが重要ではないかなと思います。

――今後のタイトルも腰を落ち着けてじっくり運営していくという感じになりますか?

岸田 いまも結構じっくりとプレイしながら作っていて、チームメンバー自身も楽しいと思っているようです。自分たちが楽しめることがまずは大事ですよね。

――ゲームってそもそもおもしろいものですからね。作っていてもおもしろさを感じられるものがいいですよね。

岸田 料理人といっしょだと思います。自分がおいしいと思っていないと出せないですよね。少しでも自信がないものはお客さんに出せないですから。

――なるほど。ではまずは2品のおいしいゲームを期待しています!

『ロストランドタクティクス』のマップ系GvGはお風呂で生まれた!?

――まず『ロストランドタクティクス』での水上さんの役割を教えてもらえますか?

水上 役割としてはプロデューサーになります。と言っても開発もやりますし、細かいスタッフとしても動いたり結構いろいろと、自分のできる範囲のことはすべてやっています。絵だけはできないんですが……(笑)。

▲新作タイトル『ロストランドタクティクス』の水上学プロデューサー。

――なるほど。どれくらいの人数で作っているんですか?

水上 いまは全部で19人くらいですね。

――チームはどんな感じですか? 水上さんが手広くやられているということは、縦割りではなく意見を言い合いながら作っている?

水上 はい。僕は口うるさいって言われてますけど(笑)。結構ワイワイやっていますね。

――ファミ通Appでも誌面で取り上げましたけど、ロゴひとつとってもいままでのグリーとは違うなと感じました。「何かおもしろそう」という声は編集部でも上がりました。どういうきっかけで作ることになったのでしょうか?

水上 もともと新しいプランとして、既存プロダクトでGvG(ギルドvsギルド)系のものが何かないか、というところがあったんですが、同じようなGvGを出してもおもしろくないと思っていたんです。それでお風呂に入りながら置いてあるおもちゃで遊んでいるときに、「マップ系のGvGはおもしろいかも……!」と思いついたんです。

▲こちらが『ロストランドタクティクス』のゲーム画面(※画面は開発中のものです)。

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――お風呂で思いついたんですね(笑)。既存のGvGとは違うというのがいちばんのアピールポイントになると思うんですが、具体的にはどういうところになりますか?

水上 既存のGvGに8×5マスのマップを用意して、そのなかでお互いが城を攻め合うという攻城戦になっています。ただマップを用意しただけでなく移動という要素を追加しているので、そこでお客さま自身の選択が戦況を大きく左右するようになっています。たとえばひとりで前線に突っ込んでいっても敵側にボコボコにされてしまいますよね。チームを構成している5人がいっしょにまえに移動するとか、分かれて攻めようとか連携して行動することがポイントになります。いままでのGvGだと、ひとりが強ければそれだけで勝てたりするのですが、このゲームだとそうではないバランスになっています。

――なるほど。全員がキープレイヤーになるということですね。そのほうがやりがいはありますよね。いま完成度はどのくらいですか?

水上 いまは8割くらいのところまできています。GvG部分はもうかなりテストプレイをして作り込んでいます。あとはUIを少し変えていこうと思っています。

――どんなユーザーさんに遊んでいただきたいですか?

水上 シミュレーションゲーム好きというのはもちろんそうですけど、それプラスみんなで遊ぶようなゲームが好きな人にもオススメです。

――世界観でこだわった点はありますか?

水上 ゲーム内で人の存在を意識できるような作りにしているのと、ストーリーは万人にウケるファンタジーものを選択しました。

――コアな部分はGvGですが、初見の人も入りやすくしたという感じでしょうか。

水上 そうですね。ライトなユーザーの方にも楽しんでもらえるように、後ろから支援したり、戦いを観戦して応援したりといった機能もありますので、多くの方に盛り上がってもらえたらと思います。

――配信はいつごろの予定でしょうか?

水上 今夏になんとか出せればと思います。

――わかりました。期待しております!

くり返し遊びたくなるダンジョンRPGを目指した『ドラゴンズパーティー』

――『ドラゴンズパーティー ~五神龍と7つのレシピ~』は、『ドリランド』のスピンオフということなんですが、触ってみた限りでは絵柄がそれっぽいくらいでシステム的にはまったくべつの方向性ですよね。

渡邊 そうですね(笑)。

――どういったコンセプトやテーマで作られたのでしょうか?

渡邊 岸田のほうから説明があった通り、新規ゲームの企画が募集されている中で手を挙げました。僕はもともと新規にゲームを作りたくてグリーに来たので、ぜひにという感じですね。そのなかで『ドリランド』のIPを使えないかという話があったんです。『ドリランド』は僕の中ではものすごいIPという存在だったんですよ。それを使ってゲームが作れるというのは本当に恵まれているなと思いました。それで企画をいくつか作って試行錯誤があったんですが、最終的にはこういうダンジョンゲームになりました。コンセプトとしては、毎日多くのお客さまに遊んでもらえるようなゲームを作りたいという大枠から考えました。そのなかで『ドリランド』のお客さまはもちろんですけど、以前『ドリランド』を遊んでいて、現在は休眠しているお客さまへもアプローチしたいと思っています。ゲームの特徴はランダム生成のダンジョンと、死んだら持ち物を失ってしまうという緊張感をうまく作って、食材や料理など限られたリソースの中でどれだけ攻略できるのかを問いながら、くり返し遊びたくなるダンジョンRPGを目指しています。

▲新作タイトル『ドラゴンズパーティー ~五神龍と7つのレシピ~』の渡邊匡志プロデューサー。

――『ドリランド』のスピンオフということですけど、タイトル名には『ドリランド』という文字が入っていないですし、一見するとわからないですよね。どういう意図なのでしょうか。

渡邊 外伝ではなくスピンオフなんですよね。ダンジョンゲームのイメージとしては、スクウェア・エニックスさんのタイトルで例えると『ファイナルファンタジー』に対する『チョコボの不思議なダンジョン』のような、内容もジャンルもまったく別ラインで出していくというような感じです。外伝としてしまうと『ドリランド』寄りのものにしないといけないのですが、スピンオフにすることで結構自由にやれています

――あ、わかりやすいですね。『FF』から『聖剣伝説』とか『Sa・Ga』シリーズが生まれてきたような感じがしっくりきます。

渡邊 そんな感じです。

――現状でかなりよくできたダンジョンRPGだと思いますけど、どうしてこれをブラウザで出そうと思ったのでしょうか。

 ネイティブアプリで出してもよかったと思っているんですが、『ドリランド』のスピンオフという位置づけですので、『ドリランド』ファンのなじみのあるプラットフォームで出したいと思っていました。そこが大きいですね。あとはエンジニアリングの点でもグリーはサーバーやブラウザをコントロールする技術に長けたエンジニアが多数在籍していますし、僕自身ももともとWebのエンジニアなのでサポートできる部分は多いと思います。

――なるほど。そこまでこだわってはいないけど、今回はWebでといった感じなんですね。

渡邊 あとはブラウザの場合、インストールは不要ですし、運用時のアップデートも素早く簡単で、プラットフォームと密接に動いてくれるというところがあります。ネイティブアプリですと、開発費やチーム編成など諸々今回の企画に合わなかったんです。

――実際遊んでみると、「これがブラウザゲームなの!?」という印象です。演出や操作性などものすごく凝ってますよね。

渡邊 ありがとうございます。5月22日から事前登録が始まっていまして、体験版が遊べるようになっています。体験版ではダンジョンとバトルを遊んでもらうのが目的ですが、製品版では食材を集めて持ち帰って料理を作り、ハンターを育てていきます。体験版のおすすめポイントとしては、企画面や技術的なものというよりは、複雑なダンジョンをカジュアルに表現しているところです。今回の体験版はゲームとしては荒削りの状態なので、現在も作っては壊しをくり返しながら、チューニングしています。

▲『ドラゴンズパーティー』の画面写真(※画面は開発中のものです)。

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――そうですね。かなりしっかりしていると思います。

渡邊 手触りが分かりやすくなるように作っていますので、普段ゲームを遊んでいないお客さまでも楽しんでいただけると思います。ちなみに事前登録なんですけど、「登録すると〇〇がもらえる」、というようなものをまったく用意していないんです。体験版を遊んで楽しいと思っていただいた方にぜひ事前登録をしていただきたいスタンスなんです。事前登録をしてくれた方にクローズドβの案内を出そうと思っています。まずはゲームを手軽に遊んでもらい、気に入ってもらえたらより深く遊んでもらいたいですね。クローズドβを楽しんでいただいた方の意見は、製品版に積極的に反映する予定です。

――それはいい流れですね。でも食べ物の部分のシステムって、言葉や説明で伝えるのが難しそうですね。

渡邊 そうですね。あえて食べ物を使っている狙いとしてはキャラクターが何かを食べて成長するという誰にでも分かる表現を採用したかったからです。目的としてはわかりやすいんですけど、パラメーターの話になったりすると、だいぶ要素が増えてきますからね。この体験版をあえて本編とは違うサバイバルモードにした思惑としては、作り手としてはカジュアルなダンジョンとしてリリースしているつもりですが、実際のお客さまがどこまで遊んでいただけるかを見たいので、結構難易度が高めになっているんです(笑)。ですから、死んでしまっても何度も繰り返して遊ぶことができるようになっています。

――いままでだと、そこって「死んだらそこでやめちゃうからヌルくしよう」と考えていたところですよね。

渡邊 何度もプレイしてもらえればいろいろな意見があると思います。たとえば“探検リュック”というボタンが左下にありまして、押すと持っているものを食べることができるんです。最初気づかないと思うんですけど、遊んでいるうちにそういうところを気がついていただければ。バトル中はカードをタップするとスキルが使えるというところも、わざとゲーム内で表示しないようにしています。ランダムダンジョンの構造も、歩いていくうちに一定のルールに気づきますので、遊べば遊ぶほど簡単になるはずです。

――事前登録というよりは体験版でプレイしてもらうことがいちばんなんですね。

渡邊 事前登録もぜひしていただきたいのですが(笑)、体験版のお客さまが増えていただければ、体験版の内容を更新したいなと考えています。リリース直前まで出し続ける予定なので、ぜひ遊んでみてください。

――これは新しいですね。

渡邊 ブラウザだからできるスピード感ですね。いまグリーはプラットフォームとして“プレイファースト”(※)というものを掲げているんですが、それよりもさきに実践してみました。ハイクオリティなゲームほどダウンロードや更新に時間がかかる傾向がある中で、ブラウザだと一切無いので、手間は解消できていると思います。インセンティブ要素がないのでどれくらいのお客さまが事前登録や体験版を遊んでもらえるかドキドキしていますが、クローズドβに参加された方と作っていく製品版のゲームは、面白いものに仕上げる自信があります

――オンラインゲームのβテストっぽいやりかたですね。

渡邊 じつは6月下旬にクローズドβをやるんですけど、それよりもまえにオープンβをやるような形になっちゃってますね(笑)。

――しっかり調整されたいいゲームを期待しています。今日はありがとうございました。

※GREEに登録していなくてもある程度ゲームをプレイでき、ユーザーは任意のタイミングでGREEに登録ができるというもの。

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