【開発者インタビュー】『ドラゴンファング』”ローグライクRPG”を作りあげる覚悟

2014-01-28 21:17 投稿

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【事前登録】インディーズメーカーが放つ超注目のローグライクダンジョンRPG『ドラゴンファング』

トイディア代表松田氏に迫る

インディーズデベロッパー、トイディアから配信予定のスマートフォン向けアプリ『ドラゴンファング』。1月30日に基本無料でAndroid版がリリースされ、iPhone版とKindle版も順次リリース予定ということだが、ファミ通Appではこれまでに2回記事を掲載し、いずれも大きな反響を得ている。スマホゲームで日本製の本格的なローグライクゲームが少ないということもあって、コアなゲームファンからの注目度は日増しに上がっている。

そこで今回は配信を間近に控えたタイミングでトイディア代表取締役の松田崇志氏(以下、松田)へのインタビュー記事をお届けする。インタビュー内容は大きく分けてふたつ。ひとつはトイディア設立に至るまでの松田氏の歩み、そしてもうひとつは『ドラゴンファング』の内容についてだ。

トイディア 代表取締役 松田崇志氏

きっかけはゲームメーカーの援助だった

——まずは、松田さんの経歴を教えてください。

松田 大学時代はクルマやバイクなどをデザインする学部だったんですけど、すっかりCGに魅了されて。ゲームメーカーの援助があり、産学協同で大学にコンピューターが大量に導入され、それにハマってしまったんです。ゲームでやっていきたいというスイッチが入ってしまいました。運よくセガに入社できて、配属はAM2研。当時は『バーチャファイター』を作ったいた時代で、鈴木裕さんの部署にキャラクターデザイナーとして入れていただきました。当時はセガがドリームキャストを発売するタイミングで、会社全体がとにかく元気でしたね。なにしろ同期の新入社員が300人でしたからね。

——300人ですか、それは凄い。

松田 セガにいたのは約1年半で、期間としては短いんですけど、かなり濃密な時間を過ごしました。いわゆるゲームクリエイターとしての魂はその次代に、魂に染み込みました。良い意味で、やってやった感。突き抜けちゃうモノ創りの魂といいますか。その後マイクロソフトゲームスタジオに7年半ほど在籍していました。ここでは日本で発売するマイクロソフトのタイトルに広く関わりましたね。その最後に日本のスタジオの意地を見せるぞと言ってあげた花火のようなタイトルが、坂口さん(現・ミストウォーカー代表の坂口博信氏)や井上雄彦さんと作った『ロストオデッセイ』なんです。

——とても話題になったタイトルですね。

松田 マイクロソフトではチームの運営やマネジメント、外注の管理などゲーム作りの総合的な部分を勉強しつつ、個人的にはパッケージビジネスはもう違うんじゃないかなと思い始めていたんです。今後はオンラインが強くなるだろうし、携帯ゲーム機ももっと性能が高いものが出てくるはず。そのときにクリエイターとして作りたいゲームを作れるようにしたいなと思ったんです。パッケージだと流通に乗せるのにハードルが高いですけど、オンラインなどではその敷居は低くなりますから。

iPhone 4に出会い、夢が具体化する

——メーカーにいると作りたいものだけ作るというわけにはいかないということもありますよね。

松田 はい。そうしているうちに日本でもスマートフォンが流行りだしてきて、そのなかでもiPhone 4が出たときに「これは来たんじゃないか」と感じたんです。これこそ自分たちの求めてきたゲーム機であり、市場なんじゃないかと。そこから腹が決まったというか、志を同じくする仲間に声をかけ、起業に向けた準備を進めて、いまに至るという感じです。

——起業当時のメンバーは何人だったんですか?

松田 そのときはふたりだけです……(笑)。私と、ソニックチームでサーバの運営やプログラム担当をしていたものとふたりでした。彼はいまどき珍しく、ゲームのコアとなる部分を作ることができる人間ですが、基本的にはふたりとも何でも屋なので、最低限これでゲームが作れるよねというところからスタートしました。その後それぞれのツテでメンバーを増やして、現在は4名で活動しています。

——では『ドラゴンファング』もその4人で作られているんですか?

松田 はい。基本的にはすべて内部で作っています。ただ、サウンドなどは外にお願いしていまして、今回はAppBank Gamesの『ダンジョンズ&ゴルフ』のサウンドを作ったところが担当しています。『ダンジョンズ&ゴルフ』のボスキャラなどを私が作っていたのですが、そのとき知り合ったご縁でお願いしています。

なんと3ヵ月で制作

——コンシューマー畑から移ってスマホのゲーム作りということですと、違和感もあったんじゃないですか?

松田 いや、もうそればっかりです(笑)。インディーズってことが、いまはすごく危ういものに感じています。夢を見れた時代はとっくに過ぎていて、同じスマホのゲームでも大手メーカーが売りかたを理解して、人員とお金を使ってくるときなんですよ。まわりを見渡すと私よりさきに起業した熱い魂を持った人たちがオリジナルをやめて受託中心に切り替えたりしています。

せっかくハードウェア的に最高の環境が揃ってきている、そして私がクリエイターとしてがむしゃらに働ける時期もそう長くない。正直絶望感がすごく大きかったのですが、そこで原点回帰というか、やっぱり自分たちが作りたいものを作って、それで出しきって勝負しようと決めました。

——覚悟の一本ということですね。

松田 ええ。ちょうど3ヵ月前くらいのことです。そのタイトルが『ドラゴンファング』です。いまいるメンバーは、会社のなかは企画書だらけなくらい4人とも作りたいゲームのアイデアはいっぱいあるんです。でもお金の問題もあるし、関われるのはこの4人だけだというのもわかっているし、話題性もほしいし、と矛盾するいろんな要素をわかった上で喧々諤々と時間をかけた話し合いをやって、最後に落ち着いたのは「俺たちが好きだったローグに懸けてみよう」ということでした。

——そこからたった3ヵ月で配信目前まで持ってきたんですか?

松田 起業するまえから1年くらい研究期間を設けていたんです。3Dならプレイステーション、2Dならスーパーファミコンレベルのものを最低でも作れないとダメだということで、まずはふたりで徹底的に追い込んでみることにしたんです。当時はまだ珍しかったUnityも徹底的に触って、ラン系ゲームを1本作りました。日本で売るのは恥ずかしかったので、こっそり北米で配信してみたりもしたんですよ。

▲バイク版の『テンプルラン』といった感じのもの。少し触らせてもらったが、グラフィックも操作性も本家に引けをとらないクオリティーだった。

そういうこともあり、技術力があるという自負はありました。でもそれって自分たちで言うだけで、だれもが知っているタイトルを作って認知してもらわないと、技術力の高さも理解してもらえないんですよ。ですから、『ドラゴンファング』でその証明をできればと思っています。

——めちゃくちゃ魂こもっていますね。

松田 本当は2ヵ月で作りたかったんですよ。「2ヵ月で作ったぞ、どうだ!」って言いたかったんですけど、それはちょっと無理でしたね(笑)。

——いや、十分すごいですよ(笑)。ところで、松田さんがスマホのゲームを作るにあたって、既存のもので衝撃を受けたゲームってありますか?

松田 『Infinity Blade』ですね。マイクロソフトに入ったばかりのころは、私は日本のクリエイターこそがいちばんだと思っていたんですよ。それが段々とエンジン周りというか、描画やプログラムの部分はアメリカ式に勝てないなと思うようになりました。

それでもスマホのゲームだったらまだ日本がいちばんだろうとずっと信じていたんですけど、『Infinity Blade』を触ってみて、箱庭的には小さいですけど、レベル的にはもうコンシューマーと変わらないなと思いましたね。一般のユーザーが感じ取れるレベルとしてはもう最高のものだと思います。あとは『Temple Run』は廃人になるくらいやり込みました(笑)。

——えええ、何でまた(笑)。

松田 先ほどお話した試作したラン系ゲームのモデルとして触ったんですよ。「こんな感じのゲームがいいんじゃない?」って言ってやってるうちに廃人になってしまったという。ですからこのふたつには非常に衝撃を受けましたね。

叩かれて育つタイトルと覚悟しています

——ではそろそろ『ドラゴンファング』を遊ばせてもらえませんか?(笑)

松田 すいません、今日プレイアブルなものお持ちするのを忘れていました。私は個人的にiPhoneユーザーですので、お見せできるのはiPhone版だけで、1月以上前のバージョンです。かなり前のバージョンになりますが、こんなの触って頂いていいんでしょうか? 操作感などコアの部分は、理解していただけるかなと思います。最新でもないしAndroid版でもないし、完成度が低くて、非常にお恥ずかしいですが……何もお見せしない訳にはいかない空気ですよね?w

▲操作パッドはデジタルとアナログの2タイプから選択できる。

——操作性のよさはこのバージョンでもかなり感じることができますね。

松田 エフェクトの派手さとかも、いまのスマホユーザーによろこんでもらえるように調整を続けています。

——(ゲーム画面を見て)あれ? この“保険”って何ですか?

松田 死ぬと所持品をすべて失ってしまうっていうのはローグのおもしろみでもありますけどいちばんショッキングな部分でもありますよね。回数制限はあるんですけど、“保険”をかけるとそれを持ち帰ることができます。

——それはちょっと甘さを加えてきましたねえ(笑)。

松田 そこは社内でも大論争になった点ではあります。ローグらしさで勝負する怖さってそこにあると思うんです。事前予約に食いついてくれているお客さんに関しては純粋なローグファンに注目してもらえてるんだと思います。

ただ、もっと広い層に遊んでもらうためには、そのあたりをうまくアジャストしていかないといけないと思うんです。そうは言ってもひりついたローグらしいダンジョンを遊びたい人に向けたものももちろんべつに用意してあります。

——なるほど。オリジナルの要素で“ファングシステム”というのがありますけど、これはどういうものですか?

松田 もうどうにもならない状態のときに使ってもらいたいんですが、プレイヤーキャラクターをモンスターに変身させてピンチを切り抜けることができます。罠が多いとかいった特徴のあるダンジョンを用意しています。ユーザーにはダンジョンに合わせたモンスターを用意してもらって攻略してもらいたいなと考えています。

▲こちらがダンジョンに連れていけるモンスターの一部。このキャラデザ、そそりますね。

——コアなファンの多いジャンルですから、オリジナル要素を入れるとそれはそれで火種になりそうな気もしますから、むずかしいところですよね。

松田 おっしゃるとおりです。ただ、我々は『ドラゴンファング』は叩かれて育つタイトルにするしかないと覚悟を決めています。どうあがいても叩かれるしかないんですよ。スタッフのひとりは「俺はそんなマゾじゃない!」って言ったりもしていますが(笑)。それでも戦うしかないんですよね。ローグが好きですから。そういうことも考えてAndroid先行にしています。AppStoreだとユーザーさんの声にスピーディーに対応することができませんから。まずはAndroidで出してガシガシと修正してアップデートしてをやっていきます。

——運営ゲームの怖さみたいなものは感じていますか?

松田 正直怖いです。でも私たちは作りたいものを作って勝負したいんですよ。正直ゲームにこじらせた人間なので、こじらせた人間がどう勝負するのかを見てもらいたいですし、こじらせたあげくにやりたくないものをやるのは本当に嫌だったんです。やる意味ないですよね。そういうなかで運営ゲームというのはひとつの妥協点でもあります。勝負したいのはローグです。ただ現在の市場を考えたときに自分たちなりの考え方で、ビジネス的な観点とユーザーさんに受け入れられるものという観点から運営要素を取り入れました。いまの時代に合うのは閉じたローグではないということです。

——それは始めからそういうプランで進めていたのですか?

松田 いえ、当初は売り切りの形を想定していました。最初の2週間だけそうでした(笑)。ですからそっちに舵を切るのはいつでもできるんです。すでにゲームのコアとなるエンジンはできましたし、アニメーションシステムや、ローグを作るシステムも完成しているんですよ。

——なるほど。とはいえ、いまのところ反響はかなり大きいんじゃないですか?

松田 おかげさまで事前予約も15000件を超えてきまして、なんとかいけそうな感触を得ています。スタッフ全員疲れ果てているんですけど、こういう数字を見るとパッと明るくなるんですよね。

——ひとまずAndroid版の配信は目前に迫っているのでギリギリまでがんばってください(笑)。スタート時はどれくらいのボリューム感になりそうですか?

松田 いまのところダンジョン数は5つです。それがメインストーリーを追っていくものになります。それとはべつにやり込み系のストイックなダンジョン、イベント系の期間限定ダンジョンの7つが遊べるようになっています。もっと増やすこともできましたけど、そっちを優先して薄くなることは避けたかったんです。

——お話を伺ってきて気になったのは、ローグの原点である裸一貫でどこまで行けるかという要素は少し薄まっているような気がします。とくにファングシステムはどの程度ゲームの進行に影響力があるのでしょうか?

▲ゲームオーバー時の喪失感が大きくても、立ち直れるならそれは良ゲーの証。

松田 ファングシステムは課金と絡んでいる部分ですから、まったく何もない状態ではさすがにクリアーがきびしくなるようにはなっています。そういう意味では純粋なローグではないと言えます。社内では「これはローグではない」という点で喧嘩にもなります。ガチャや変身の要素を入れた時点でピュアなローグではなくなっています。そういった意味でも叩かれることは覚悟しています。

——いまの時代に合わせた新しいカタチのローグになっていると。

松田 ただ、そういう仕組みが入ったからといって絶対に課金しないとクリアーできないというようにはなっていません。そこにはクリエイターとしての良心があります。

——なるほど。ぜひともローグライク系のファンが挑戦しがいのあるものにしていただけるとうれしいです。

松田 ローグのダンジョンって、いわゆるオリジナルの『ローグ』タイプと、『トルネコ』タイプと、『シレン』タイプに分かれているんです。うちではその3つをブレンドした特徴のあるダンジョンを生成できるエンジンを作っています。それがいまの時代にあったバランスになっていると思うので、そこは注目してもらいたいですね。しかもそこは調整が効くので、お客さんの反応を見てさらにいいバランスを見極めていきたいですね。

——なるほど。あとは先ほどステージのボリューム感についてお話いただきましたけど、武器やモンスターなどはどうでしょうか?

松田 モンスターに関しては、21種類で、武器防具は7種類の予定です。アイテムはある程度ボリューム感を持って出していこうと思っています。武器はあまり増やさない方向で考えています。それぞれ特徴があるので、7種類でも使い込む楽しさは見いだせると思っています。合成で強くしていくこともできますし、売ると価値のあるものもあります。裏パラメーターとして敵にはタイプも設定してあって、特定のタイプに強い武器などもあったりします。

▲育成要素は継続プレイにもつながる。決してマイナス要素ではないはず。

——本当にさまざまな苦労を経てのリリースとなりますが、いまの心境を聞かせてください。

松田 ファミ通Appに取り上げていただいてからは某掲示板での反応なんかも見ちゃいけないと思いつつもチェックしたりして、そうすると早くも「俺は認めない」とかいう書き込みがあったりして(笑)。

——そもそも尖っているジャンルではありますからね。

松田 かつ自分たちの規模で作っても、良い意味でゲーム作りで原点回帰できるジャンル。手作り感や温もりが感じられる作品性で勝てるんじゃないかというのがローグなんです。そうでなければ勝負できないですよ。

——たしかにまだローグ系のいいタイトルは少ないですよね。だからこそユーザーも期待していると思います。では最後に改めて意気込みをいただけますか。

松田 自分たちは、ゲームをこじらせちゃったクリエイター集団です。ゲームが好きでこの仕事をわざわざ選んでいますが、いまは自分たちの作ったものが日本だけでなく世界に届けられるという夢のような環境ができています。

そのなかで自分たちが培った技術や、ゲーム作りの熱さなんかを自分たちで証明したいと思っていまゲームを作っています。叩かれることも覚悟していますが、自分たちの存在証明を見届けていただければ思っています。もし可能であれば、叩きでも構いませんのでリアクションをして育てていただければと思います。ですので、配信されましたらぜひ遊んでみてください。よろしくお願いします。

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ドラゴンファング〜竜者ドランと時の迷宮〜

ジャンル
本格ローグライクRPG
メーカー
トイディア
配信日
Android版は1月30日(木)配信予定(iPhone版は近日配信予定)
価格
無料(アイテム課金あり)
対応機種
無料(アイテム課金あり) Android 4.0 以上、iOS 5.1 以降

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