『ケイオスリングス』がPS Vitaでプレイ可能に! 大手メーカー参入でPS Mobileも活性化

2013-07-18 00:01 投稿

●スマホアプリがPS Vitaへという新しい流れ

 

 

プレイステーション Vitaやスマートフォン、タブレットなど、端末の垣根を超えてプレイステーションの世界が楽しめるプラットフォーム“PlayStation Mobile”。2012年10月にサービスが開始され、さまざまなゲームが配信されているが、日本の大手メーカーであるスクウェア・エニックスが参入し、7月24日(水)にiPhoneなどでヒットしている『ケイオスリングス』が配信されることが決定した。ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)も『TOKYO JUNGLE Mobile』を7月10日(水)にリリース。有力タイトルがつぎつぎとPS Mobileでリリースされることで、同サービスの注目度は高まりそうだ。そこで今回は、PS Mobile担当である、SCEJA 戦略企画部 ジャパンビジネス企画課 課長の多田浩二氏と『ケイオスリングス』をリリースするスクウェア・エニックス 特モバイル二部 ジェネラル・マネージャー プロデューサーの安藤武博氏と同部の椎名崇徳氏へのインタビューをお届け。PS Mobileの現状と展望、大手メーカーがPS Mobileでタイトルをリリースする意図などを聞いた。

※本インタビューは、7月18・25日合併号(7月4日発売)に掲載したインタビューに一部追記し、再構成したものです。

 

 
【写真中央】
スクウェア・エニックス
特モバイル二部 ジェネラル・マネージャー
プロデューサー
安藤武博氏 Takehiro Ando ※文中では安藤
【写真左】
スクウェア・エニックス

特モバイル二部
椎名崇徳氏 Takanori Shiina ※文中では椎名
【写真右】
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア

戦略企画部 ジャパンビジネス企画課 課長
多田浩二氏 Koji Tada ※文中では多田

 

『ケイオスリングス』とは
スクウェア・エニックスより発売中のスマートフォン・タブレット用RPG。2010年4月20日にiOS版がiPhone/iPod touch用アプリとして発売され、2010年8月にはiPad版、2011年12月にはAndroid端末版が発売。スマートフォンアプリとしては、世界15ヵ国で売上ナンバーワンに輝く大ヒットを記録している。

 

 

やはりコントローラーによる操作が魅力 

 

──まずは、どのような経緯でPS Mobile版をリリースすることになったのかを教えてください。

安藤 『ケイオスリングス』は、2010年の4月にスマートフォン向けに作ったオリジナルのRPGなんですけど、家庭用ゲーム機のクオリティーをそのままダウンロードベースでリリースする、というのがコンセプトのひとつとしてありました。おかげさまでスマートフォン版は、世界15ヵ国で売上ナンバーワンになって、オリジナル作品としてはヒット作になりましたが、リリース直後からユーザーの方々に「ゲーム専用機で遊びたい」という声もいただいていたんです。我々自身も、ここ数年、『拡散性ミリオンアーサー』ほか、スマートフォン・タブレット向け、つまり物理的なコントローラーがないデバイス向けに多数のゲームを作り、タッチパネルだけで快適な操作ができるようインターフェイスも研究してきました。ですが、私自身が、もともとは家庭用ゲーム機のゲームを作っていたということもあり、改めて物理的なコントローラーというもののすばらしさを感じていて、ゲーム専用機でもリリースしたい、という気持ちは持っていたんです。

加えて、ゲーム専用機の中でもプレイステーション Vitaでプレイしたい、という気持ちが大きくありました。というのは、私自身がガジェット好きというのもあり、ゲーム機としてもPS Vitaはすごく可能性を感じていたからです。

そんな折、多田さんと共通の知人を介してお会いする機会があって。そのときは『拡散性ミリオンアーサー』の話も進んでいたんですが、PS Mobileの構想もうかがいました。そのときは、Xperia PLAYが出てたりAndroidの端末などいろいろなスキームがあったので、何がどうなっているのか正直わからない状態だったんですけど(笑)。

PS Mobileでいいなと思ったのは、一般の開発の方にはSDKを解放していて、すごくチャレンジングだな、ということです。SCEが“ゲームやろうぜ”というプロジェクトをやられていた、というのは存じ上げていたので、その現代版とも言えるPS Mobileの話を聞いたときには感銘を受けましたね、現在のスマホのマーケットでは、インディーの人が手早く出すタイトルもあれば、インディーの方々にはできない大手メーカーのものもある。これからのゲーム市場は、インディーとプロが混ざるマーケットであるべきだと思っていたので、プロの代表格として、PS Mobileで『ケイオスリングス』があっても、PS Mobile自体が盛り上がるんじゃないかなと思いました。

そういうこともあって、「PS Mobileでやらせていただけないですか」とお話をさせていただいたのがきっかけです。

多田 安藤さんとお会いしたとき、今後、携帯ゲーム機とスマートフォンというのは、ボーダレスになっていくのではないか、という話にもなりましたね。ただ、そうは言っても、決定的に違うのは、ゲーム専用機の物理的なコントローラーで、それがいかに快適かという話になり、「一度、PS Vita上で動かしてみたいですね」と話が弾み、今回のプロジェクトがスタートしました。

安藤 タイトルに関しては、我々は新しいデバイスやプラットフォームに参入する際、完全新作をリリースすることが多いので、今回もどうするか考えました。PS Mobileは、個人やインディーズ系の開発会社でも参入できる間口の広いプラットフォームですので、斬新な作品が多くなることは予想できました。個人的にそういった作品は好きですし、自分自身も作ってきました。ですが、今回はスクウェア・エニックスらしさを感じていただける王道RPGがいいのではと思い、『ケイオスリングス』をリリースすることにしました。

多田 我々としても、『ケイオスリングス』を遊んだことがないPS Vitaユーザーの方々に提供できるのは、非常にありがたいと思っています。また、PS Mobileで、家庭用ゲーム機用ソフトと遜色ない本格的なRPGはまだリリースされていないので、PS Mobileの幅広さを知ってもらう点においても、とても意味があることだと考えています。

 

ほぼ作り直してPS Vitaに最適化

 

――PS Mobileに移植するにあたって、苦労した点はありますか?

安藤 先ほど言ったように、もともと『ケイオスリングス』は、家庭用ゲーム機のクオリティーをスマートフォンで実現する、というコンセプトがありました。2010年配信の作品ですが、フル3Dで描いたバトルは、いまのゲームと較べても見劣りしませんし、Google Playでは、昨年、ベストゲームに選ばれるなど、コンテンツとしても色褪せてはいません。ですが、当時のデータでは、PS Mobile上では動かないことがわかって、ほぼ丸々作り直しました。いちから作り直さないと動かないということがわかったときは、プロデューサーとしては、「どうしようかな」と正直迷ったのですが、PS Vitaでのプレイ体験はとても魅力的なものになる、ということは、試作段階でわかっていたので、チャレンジすることにしました。PS Mobile版は内容はスマートフォン用と同じなのですが、画面の解像度、物理的なコントローラーに加えて前面タッチの両操作に対応させるなど、PS Vitaに最適化させています。単なる移植ではない、ということを強調したいですね。

椎名 『ケイオスリングス』は、当時のスマートフォンのスペックの最大限を引き出すように作っていましたので、PS VitaとPS Certifiedデバイス(PS Mobileタイトルがプレイできるデバイス)でアプリが落ちないか、技術検証ではヒヤヒヤしていました。

多田 今後は、最初からPS MobileのSDK(開発キット)で作っていただければ、PS VitaとPS Certified端末両方に簡単に対応させることができますよ(笑)。

安藤 これから開発するタイトルに関しては考えます(笑)。たとえば、アクション性の高い作品などは、PS Vitaでプレイしたほうが快適でしょうしね。

椎名 SDKを使うと、「PS Vitaとスマホの両方でこんなに簡単に動くんだ」という驚きがありました。

安藤 結果的に、『ケイオスリングス』のPS Mobile版の開発には労力がかかってしまったのですが、できたものを見ると、やってよかったなと思います。これまで、いろいろなデバイス向けに移植してきた経験から、画面が少し大きくなるだけでも違う感覚でプレイできる、ということはわかっていました。ですので、PS Vitaならではの操作も含め、ユーザーの方々にはかなり違う印象を持ってプレイしていただけるはずだ、という確信はありました。実際に試しに動かしてみたとき、思わず声を上げてしまうほどインパクトがありました。実際に見ていただかないと、そのインパクトが伝わらないのが残念ですが(笑)。スマートフォンからPS Vitaへ、という作品の流れもあまりないので、十分に新しさを感じていただけるかなとも思いました。

多田 安藤さんは、新しいことが好きですよね?

安藤 そうですね。新しさがひとつでもないと、モノは作るべきじゃない、というのが僕のポリシーなんですけど。20代のときは、何から何まで新しいものじゃないと気が済まず、『鈴木爆発』(プレイステーション用ソフト)などを作りましたけど、新しさってすべてが新しいものである必要はない、ということに気づきました(笑)。あと、隠れた新しい点としては、開発を担当していただいたメディア・ビジョンさんは、かつてプレイステーション用ソフトの『クライムクラッカーズ』や『ワイルドアームズ』を制作されていたところで。もともとプレイステーションフォーマットの作品を作っていたメディア・ビジョンさん開発のゲームが、巡り巡ってPS Mobileという新たなプレイステーション フォーマットでリリースされるというのは、これまでにない新しい流れかな、と思いますね。同時に、いまのゲーム業界のボーダレス化、クロスオーバー化を象徴しているような気がします。

椎名 『ケイオスリングス』をコントローラーで違和感なく操作できるように仕上げられたのは、もともとプレイステーションのソフトを開発していたメディア・ビジョンさんのノウハウがあったからこそだと思います。

多田 スタッフは家庭用ゲームソフト並に豪華ですよね。

安藤 そうですね。キャラクターデザインは『ファイナルファンタジー』シリーズでおなじみの直良(直良有祐氏)ですし、シナリオは北島さん(北島行徳氏。携わったおもな作品は『428 ~封鎖された渋谷で~』や『タイムトラベラーズ』、『閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-』など)声優さんも豪華ですし、音楽は上松さん(上松範康氏。携わった作品は『ワイルドアームズ』シリーズや『白騎士物語』ほか多数)。すごく豪華なんです。これら豪華スタッフの本格的RPGでありながら、価格は800円[税込]なので、かなりお得だと思いますよ!(笑)。

 

PS Mobileは無視できないマーケットに成長

 

──サービス開始から9ヵ月経過した現状のPS Mobileについては、どのようにお考えですか?

多田 PS Certifiedデバイスも徐々に増えてきていますし、ソフトに関しては、非常に多くの個人の方々にSDKをダウンロードしていただいており、ラインアップもどんどん増えています。我々がPS Mobileで目標のひとつとしている、“新しいエンターテインメントを生み出す”ということに関しては、一定の手応えを感じています。あとは、ビジネスとして、さらにどうやって広げていけるか、が課題です。

安藤 我々ソフトのプロデューサーの立場からすると、PS Mobileのマーケットの規模が大事になってきます。PS Vita版の『拡散性ミリオンアーサー』は、おかげさまでご好評をいただいております。当初は、PS Vitaで基本プレイ無料(一部アイテム課金あり)のビジネスは成立するのか、と疑問視する声はありました。ですが、熱心なゲームファンが多いPS Vitaのマーケットは、ビジネスとして成り立つことがわかりました。つまり、PS Vitaは、今後はビジネス的にも意識せざるを得ないゲーム機なんです。PS Mobileに関しても、『ケイオスリングス』が成功すれば、ひとつの光明になると思います。PS Mobileのマーケットの拡大には、スマートフォンアプリのように、個人やインディーズの作品だけではなく、大手メーカーの作品も混在するような、活気が必要だと思います。

多田 大手メーカー様の参入や有力タイトルの配信は、ユーザーの方々にはもちろん、開発者の方々にPS Mobileの可能性を知っていただくためにも、とても重要なのです。今後も積極的にさまざまなタイトルを誘致し、我々としても『TOKYO JUNGLE Mobile』を始めとして、多彩なタイトルをリリースしていきたいですね。

安藤 『ケイオスリングス』が、その大手メーカーの代表格のソフトとして、PS Mobileの盛り上がりにひと役買えれば、うれしいですね。我々としては、作ったコンテンツが動くデバイスであれば、どんどん対応させていきたい。そのひとつの答えが今回のPS Mobile版『ケイオスリングス』であり、PS Vitaの『拡散性ミリオンアーサー』なんです。今回、家庭用ゲーム機の物理的なコントローラはいいなと、改めて思いました。すでにスマートフォン版ではリリースされている『ケイオスリングスΩ』と『ケイオスリングスII』のPS Mobile版も、当然出していきたいと強く思っています。『ケイオスリングス』は800円[税込]とお手ごろ価格の本格RPGですので、ぜひ遊んでいただきたいですね。そして、本作が成功し、PS Mobileの本格展開に向けた、いいきっかけになればいいなと思います。

※PlayStation Mobile公式サイトはこちら
※『ケイオスリングス』公式サイトはこちら

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