【TGS 2012】グリー田中良和社長が基調講演で語る、ソーシャルゲームの進化のカタチとは?

2012-09-20 18:38 投稿

●「ゲームは成長産業」

東京ゲームショウでもすっかりおなじみとなったTGSフォーラム2012基調講演では、バンダイナムコゲームス、鵜之澤伸氏により行われた第1部の講演に引き続き、第2部ではグリー代表取締役社長、田中良和氏が登壇。“スマートデバイスがもたらすソーシャルゲームの進化”と題された講演を行った。

全世界10ヵ国で11拠点を展開し、1年前に比べて3倍となる1864人のスタッフを擁するといった、会社の現状説明から講演をスタートした田中氏。世界各地と日本のスタジオとの交流も進んでいるそうで、「短期的には日本のスタジオで作るゲームの競争力があるが、3年後には各地でゲームを作る重要性が高まる」と世界展開の意義を説明した。極めてレアだったのは、世界各地のオフィスの風景が写真で紹介されたこと。「全世界統一のコンセプトでオフィスを作りたいということで、同じような感じになっています」(田中氏)とのことで、紹介された各地の写真は、日本のオフィスを見慣れた記者からすると、とても親しみのある雰囲気になっていた。

本題のテーマとなったのは、まずは“ソーシャルゲームの進化”。田中氏は、「答えがあることではないので、お互いのヒントの交換ということで……」と前置きした上で、ハードウェアとインターネットの発達によりソーシャルゲームが誕生したこと、コンソールとPC、モバイルはこれまで別々の進化を遂げてきたが、それらが融合して新しいプラットフォーム(スマートフォン)ができつつあること、そして、これからのハードウェアの主役であるスマートフォンの性能は、今後さらに高性能になっていくであろうことなどが語られた。

そんな、モバイル端末とネットワークの進化にともないもたらされるのが“ゲームモデルの進化”。ソーシャルゲームが脚光を浴び始めて5~6年。これまでカジュアルなコミュニケーション中心だったソーシャルゲームは、よりゲーム性やストーリー性重視へと進化していくことが明言。そして、そうしたトレンドの最新例として、東京ゲームショウの会場で出展されている、『MONPLA SMASH(モンプラスマッシュ)』や『War Corps(ウォー・コア)』といった最新作が紹介された。「フラッシュベースではなくて、ネイティブで動かすことで、表現がよりリッチになり、家庭用ゲームに負けないビジュアルを実現できる」と田中氏。「ゲームでは、その時代で流行りのゲームジャンルがありました。つねに新しいゲームデザインが求められています。私たちは、新しいチャレンジをしていきたいです」(田中氏)とのことだ。

その上で、田中氏がいま注力しているのが、自社コンテンツのIPビジネス展開。時代を振り返るまでもなく、コミックや家庭用ゲームなどのアニメ/映画化、玩具化といったマルチメディア展開は盛ん。田中氏は、「ソーシャルゲーム発の新しい文化を生み出したい」として、ソーシャルゲームで育ったコンテンツや世界観の他領域への展開を目指すことを改めて明言した。その一例として挙げられたのが、『探検ドリランド』のアニメ化やお菓子とのタイアップ展開。「コンテンツのファンや世界観を愛してくれる人を増やしていきたいと思っています」(田中氏)とのことで、今後『探検ドリランド』だけではなく、ファーストパーティー、サードパーティーを問わず、IPビジネスを展開していきたいとの展望を明らかにした。「ソーシャルゲームを作っている会社だけではなくて、文化も生み出せる会社になりたい」との田中氏の言葉からは、強い意気込みを感じることができた。

講演のつぎなるテーマとして田中氏が挙げたのが“ソーシャルゲームのグローバル化”。わけても田中氏が注目しているのは新興国への展開。コンソールビジネスにおいては、海賊版問題や価格面などがネックになり、どうしてもビジネス的には先進国中心となってしまったのは周知の事実。ところが、そのネックを一気に解決してくれるのがスマートフォンという端末。いま新興国において、スマートフォンはこの4年で11倍という伸びを見せており(先進国では4倍)、「スマートフォン関連のビジネスは新興国におけるポテンシャルのほうが高いです」と田中氏。いずれ、スマートフォン全体の売上の8~9割が新興国で販売される時代が到来するという。つまり、コンソールで開拓し切れなかった新興国に、スマートフォンならアプローチできるというのだ。「これまでゲームを遊びたくても遊べなかった人たちが、ゲームで遊べるようになるんです」と田中氏は言う。いまよりもさらに多くの世界中のユーザーに、ゲームに触れてもらえる可能性が生じるというわけだ。

ただいま、世界展開を行う世界各地のパートナーとともにさまざまな国のユーザーに楽しんでもらえるサービスを提供しているというグリー。田中氏は、「さらに大きな発展を遂げるべく全世界でゲームを開発中です。いっしょに全世界で楽しんでもらえるゲームを作りましょう」と来場者したゲーム業界の関係者にエールを贈りつつ、世界的にモバイルインターネット環境が拡大している現状を踏まえ、「ゲームを提供するフィールドは爆発的に広がっています。日本のゲーム市場はこれからも成長していくし、世界のゲーム市場もこれからもっと成長します」(田中氏)と力強くコメントした。

「ゲームは成長産業」と断言する田中氏。成長していく産業において求められているのは新しいコンテンツ。「今後、ソーシャルゲームの進化はさらに加速すると思っています。そんな中、求められるコンテンツはどんどんかわっていきます。今年作っているものと同じものを来年も作っているようでは、ユーザーには受け入れられない。今後さらに新しいゲームジャンルが出てくるハズなんです。もちろん、新しいゲームジャンルの発掘は難しいとは思いますが、挑戦を辞めてしまっては新しいものはでません。新しいものを生み出すために、さらに挑戦していきたいです!」(田中氏)とまとめた。

今後通信環境はより整備され、スマートフォンという端末の進化により、さらにリッチな表現方法が可能になろうとしている。そして、グローバル化によりさらなるチャンスも生まれる。「ゲームは成長産業」と力強く語る田中氏だが、グリーの今後の戦略が見えた基調講演となった。

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